「マンションの大規模修繕はいつ行われるの?」「費用は?」など、マンションの大規模修繕にまつわる疑問について、宅建士が解説しました。自身が住むマンションにも、賃貸用マンションのオーナーとしてマンションを所有している場合も、定期的に大規模修繕が行われるため、マンションを購入する際には事前にチェックしておくと安心です。大規模修繕の内容や費用に加え、起こりがちなトラブルや解決策もまとめているので、気になる方はぜひご一読ください。
1. マンション大規模修繕とは
マンションの大規模修繕とは、マンションの中でも日常的な修繕が難しい躯体や外壁、共用部分などにおける大がかりな修繕工事のことを言います。RC、SRCのマンションでも築年数が経過するにつれてコンクリートや外壁の劣化が目立ってきます。
また、エレベーターや配管などの建物設備部分についても、耐用年数が経過すれば交換しなければなりません。このような大規模な修繕・交換工事は工期が長く、工事費もかなりかかることから、計画的に行っていく必要があるのです。
1-1. マンションの大規模修繕は何年ごとか
マンションの大規模修繕は、一般的には12~15年ごとに行われます。
修繕工事の内容は建材や設備の耐用年数によって異なりますが、おおむね当初建設時に立案された大規模修繕計画に従って工事内容を決定します。その他建物診断等によって発見された経年劣化、災害による損傷の修繕が工事内容に加わることもあります。
1-2. マンションの大規模修繕の手続き
マンションの大規模修繕は、管理会社から提案される場合もありますが、基本的にはマンション住民(所有者)の代表が主導して決定します。
具体的には、管理組合にて大規模修繕を主導的に行う住民の代表を決定して、大規模修繕計画の立案、工事予算の振り分けなどを決定し、施工業者に大規模修繕を依頼するという手順を踏みます。住民の代表は、管理組合の理事会がそのまま役割を担うこともありますが、修繕委員会など特別の組織を結成して任に当たることもあります。
1-3. マンションの大規模修繕の工事内容
最初の大規模修繕(新築から10年前後)は錆の塗装や屋上防水、バルコニーやインターホン、電気設備の修繕など軽微な補修を行うことが多いでしょう。
2回目以降の大規模修繕(第2回:築20年~築25年前後、第3回:築30年~40年経過後)には前回の補修個所の追加修繕のほか、給排水管、給水・排水ポンプなど、大型の設備の補修・設備更新を行います。
設備については、機械式駐車場、エレベーターやバルコニー・廊下手摺など多岐にわたりますので、耐用年数を考えて計画的に行います。築20年から30年が経過するころには、外壁や屋上防水など建物の基本的な部分についても修繕が必要な個所がでてきます。
2. マンション大規模修繕の費用
令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査(国土交通所調べ)によると、半数以上が一戸当たり75万円以上の費用がかかったとされており、中央値で100万円前後となっています。これは築年数が経過し、2回目、3回目の大規模修繕の場合であってもそれほど変化ありません。
2-1. 修繕積立金の算出方法
国交省の修繕積立金に関するガイドラインを参照すれば、積立金の適正額がわかります。ガイドラインによれば、建物の延べ床面積や階数によって区分けされた専有面積1m2当たりの修繕積立金額の平均値(178~218円/m2)に、専有面積を乗じて求められた金額が、修繕積立金の目安とされています。さらに機械式駐車場がある場合には、修繕費等の調整費を加算します。
もっとも事例ごとのばらつきが大きいため、マンション分譲会社から提示された積立額の金額が平均値から離れていても、直ちに不適切とは言えないとしている点については注意が必要です。また、築年が経過すると修繕費が増える傾向にあるため、経過ごとに値上がりする設定をしているマンションもあります。
2-2. 修繕積立金を払えなくなったらどうする
修繕積立金の支払いに関しては管理規約によって定められています。マンションの所有者は、管理組合に対して修繕積立金を支払わなければならない義務を負っているとされ、積立金を払えない状態が続けば管理組合から民事訴訟を提訴されるとともに、敗訴すれば財産が差し押さえられる可能性もあります。
3. マンション大規模修繕のトラブル事例
マンション大規模修繕を行うときには、多くの人がかかわるため、トラブルが生じやすいものです。周辺に住んでいる住民や大規模修繕の依頼先である施工業者など対外的なトラブルのほか、管理組合の理事会・修繕委員会や住民同士のトラブル事例も散見されます。また、近年では自然災害や地震が多くなっており、予算が不足することによる金銭的なトラブルも増えてきそうです。
3-1. 工事金額が高い・修繕積立金が足りない
最近では、地震や大規模な水害による損傷をその都度修繕するために、修繕費を修繕積立金から支弁しているケースがよく見られます。大規模修繕の時期の前に修繕積立金を使ってしまっているために、大規模修繕の時期を迎えると計画通りの修繕ができないことがあるのです。
また、災害の際に出費しなかったとしても、大規模修繕前の建物診断で、予定外の修繕工事が必要となることが判明し、予算オーバーとなることもあります。
3-2. 修繕委員会の足並みが揃わない
大規模修繕を主導する人員は、予算決めから施工業者まで重要なことを決定しますので、責任は重大です。そのため修繕委員会の人員がなかなか決まらなかったり、予定の会合に人員が集まらない、意見がまとまらず決定事項が合意できないなど、修繕委員会が機能不全になってしまう事例も見かけます。
3-3. 居住者・近隣住民からの苦情
マンションの大規模修繕に関する決定事項について、マンションの住民や周辺住民の全員の賛成を得るのは難しいものです。そのため、大規模修繕に不満な居住者が共用部分の私物を片付けなかったり、騒音クレームを起こしたりする例もあるそうです。加えて、近隣住民からも騒音、ほこり、においなどのクレームが管理組合に届くこともあります。
3-4. 施工不良など工事会社に対するクレーム
施工会社とのトラブルもよく見られます。修繕工事の施工不良や工期の遅れはありがちなトラブルですが、中には工事中に施工会社が倒産してしまったというケースも実際に起こっています。この場合、修繕工事の引継ぎをほかの施工業者に依頼する必要がありますが、工期や予算の制約で困難に直面するケースがあります。
4. マンション大規模修繕のトラブル解決策
マンション大規模修繕は長期間にわたって行われ、予算もかなり高額になります。遅くとも1年前にはどのような工事が必要かなどを把握しておくことが大切です。早めに専門業者や建築士に建物診断を依頼したり、管理組合での協議を行うことで準備を進めておくべきでしょう。
4-1. 早めの建物診断で予算を把握する
建物診断とは、マンションの劣化や損傷の度合いを調査し、調査結果に基づいて必要な修繕工事を明らかにすることを言います。まずは、建築事務所やマンション建設会社などに依頼して見積もりを取得することからスタートします。費用は規模によって異なりますが、30万円から100万円程度です。あわせて、補助金の活用などについても早めに協議しておくと良いでしょう。
4-2. 工事内容やスケジュールの周知徹底
マンション住民や周囲の住民に対して工事内容やスケジュールを早めに伝えることで、伝えられた側も事前の準備が可能になり余計ないざこざを避けることができます。特に住民に対しては、共用部分の残置物の撤去など協力してもらうことが多々ありますので、主体的に取り組んでもらうよう、工事の必要性についても事前に告知することが必要になります。
4-3. コンサルタントに相談する
大規模修繕に関する理事会、修繕委員会の運営については、経験のあるコンサルタントにサポートを依頼することもできます。コンサルタントの資格として必須のものはありませんが、建築士やマンション管理士で経験が豊富なコンサルタントであれば信頼できます。現状の把握から修繕計画の立案、予算の決定、マンション住民・周辺住民への告知・説明などサポートが必要な場面は多岐にわたります。
5. まとめ
マンションの大規模修繕について主体的に行うのはマンションの住民です。管理会社から提案がある場合もありますが、修繕計画や予算など詳細を決定するのは住民から選ばれた理事会・修繕委員会ですので、決定・工事完了まで時間がかかることも想定して、早めの準備が求められます。何をして良いのかわからないときには、管理会社や専門コンサルタントに相談してみることをおすすめします。
宅地建物取引士
株式会社イーアライアンス代表取締役社長。中央大学法学部を卒業後、戸建・アパート・マンション・投資用不動産の売買や、不動産ファンドの販売・運用を手掛ける。アメリカやフランスの海外不動産についても販売仲介業務の経験をもち、現在は投資ファンドのマネジメントなども行っている。
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