「今すぐ自宅を売り出したら、いくらぐらいで売れるのだろう?」
「隣のマンションが高く売れたみたいだけど、うちならもっと高く売れるのでは?」
「そもそも中古マンションの価格って、どう決まるの?」
こういった疑問を抱える方もいらっしゃるのではないでしょうか。
中古マンションを売るときには、「相場価格」を把握しておくと有利になります。相場価格が分かれば無意味に安く売ってしまうリスクを避けられますし、逆に相場とかけ離れた高額すぎる価格をつけて全然売れなかった、といったリスクも避けられるからです。
実は中古マンションの価格には複数の種類があります。
この記事では「中古マンションの価格」や「なるべく高く売るコツ」について、解説します。
1. 中古マンションの「価格」とは?
「中古マンションの価格」には複数の種類があります。
相続税や贈与税を計算する際の「路線価」、固定資産税額を計算する際の「固定資産税評価額」などもありますが、これらは税金を計算する際に用いるものです。中古マンション売却の際にはそこまで重要ではありません。
売却活動を行う際に注目すべきなのは「実勢価格」です。
「実勢価格」とは、実際の不動産市場で取引される相場の価格を言います。
実勢価格の高いマンションは高額で売れる可能性が高く、実勢価格が下落するとマンションは低額でしか売れない可能性が濃厚となります。
知っておきたいのは「査定価格」「売出価格」「成約価格」の3種類なので、以下でそれぞれについてご説明します。
2. 中古マンション売却の際に知っておくべき
3種類の価格
中古マンション売却の際、知っておくべき「査定価格」「売出価格」「成約価格」の3種類の価格を表にまとめました。
査定価格 | 仲介を担当する不動産会社が、客観的なデータとし調査をもとにプロの立場から割り出した価格。現在の不動産市場で、概ね3カ月以内に売れる価格としてアドバイスする。 |
---|---|
売出価格 | 査定価格を参考に不動産仲介会社の担当者と売却計画を打ち合わせしながら、売主が自分の事情や希望を織り込んで決めた価格。売り急いでいるか否かによっても変わる。 |
成約価格 | 売出価格で売却活動をした結果、最終的に売主と買主が合意して、売買契約が成立した金額。売出価格と同じか、低いことが多いが、稀に高い場合もある。 |
2-1. 査定価格
査定価格は、不動産仲介会社へ物件の査定依頼を出したときに、提示してもらえる相場の価格です。
近隣の取引事例や物件の個性を考慮して、プロの視点から「売れそうな価格」を算定します。査定価格は、マンションの売出価格を決めるに当たって参考となる重要な指標です。
ただ査定を依頼する不動産仲介会社により、査定金額に大きな差が出る場合があります。各社の査定結果をみて、信頼できそうな不動産仲介会社に売却活動を依頼しましょう。高い査定価格=信頼ではありませんので、必ず査定価格の根拠を確認し、客観的に納得しうるものかを判断してください。
2-2. 売出価格
売出価格は実際に中古マンションを売り出す際の価格です。
例えばインターネットサイトやチラシなどの広告に出ている価格が「売出価格」です。
売出価格はお問い合わせ、見学数などの反響数を見ながら変更するケースがあります。最初の売出価格で売ることが理想的ですが、相場は日々変化していくため、売却活動を続けるうちにいつの間にか価格が相場と合わなくなっている可能性もあります。
こうした変化にいち早く気づくためにも、不動産仲介会社と密に連携を取り日々の反響状況を確認していくことが理想です。毎日は大変だと思いますので、週1回程度確認できると良いでしょう。詳細は不動産仲介会社に相談してみましょう。
2-3. 成約価格
成約価格は、売却活動をした結果、売主と買主が合意し、売買契約を締結するときの価格です。
3. 「査定価格」はプロがアドバイスする「売却適正価格」
上記の3つの価格の中でも「査定価格」は非常に重要です。査定とは、仲介を依頼する不動産仲介会社に「自宅がいくらで売れるか」を専門的な立場から調査・確認してもらうことを言います。
プロでなければ不動産の適正価格を算定するのは難しいでしょう。そこで一般的には売り出し活動を行う前に専門知識をもった不動産仲介会社へ査定を依頼して、実際にいくらくらいで売れそうか調べてもらうのです。
査定方法や算出された価格は不動産仲介会社によって異なるケースがほとんどで、査定依頼を出したときの担当者とのやり取り、提出された査定書の内容によって不動産仲介会社を比較することもできます。
この意味で、不動産査定は依頼先の不動産仲介会社の実力や信頼度を見極めるポイントにもなると言えます。
4. 中古マンションの売却価格決定要因
実際に中古マンションの売却価格は、どういった要因によって決まるのか、みてみましょう。
4-1. 近隣の取引相場価格
まず重要なのは近隣の取引相場価格です。
不動産仲介会社による査定の際にも、近隣の取引事例との比較は必須です。取引事例の比較によって価格算定する方法を「取引事例比較法」と言います。これは、過去の類似事例を集めて、それらの成約価格との比較によって物件価格を割り出す方式です。
不動産仲介会社はさまざまなデータを参考にしますが、中でも自社における過去の取引事例は重要なデータとなります。自社の取引事例が豊富だと、各事例における物件の詳細な状況や、契約に至った経緯から検討できるため、査定価格の信頼性が高まります。その意味で、多数の取引実績のある不動産仲介会社は信頼しやすいと言えるでしょう。
同じマンション内で取引事例があれば参考にし、同じマンション内で最近の取引事例が見つからない場合、近隣の似たような条件のマンションを参考にします。
以下で取引事例比較法において、どういった要素が考慮されるのか表にまとめました。
表2.取引事例と比較する主な要素
住戸配置 | 階数、主要開口部の方位(向き)・日照 |
---|---|
眺望 | 抜け感、眺望の阻害要因の有無 |
専有部分 (住戸内) |
・売りやすい間取り、地域ニーズにあった間取りか ・バルコニー・専用庭・外部収納などの有無・広さ ・室内の使用状況、設備状況(リフォームの必要性) |
立地 | ・交通アクセス。最寄り駅からの所要時間 ・周辺環境(住環境、生活利便施設) |
---|---|
建物 | 設備仕様のグレード、築年数、建物劣化状態 |
管理状態 | ・管理員の勤務形態、メンテナンスの程度 ・管理費・修繕積立金の月額 ・修繕積立金のストック状況、修繕履歴 |
ブランド力 | 分譲会社(事業主)やゼネコンの実力・実績 |
価格算定する手順や重要となる要素
集めた取引事例と、実際に売り出す住戸の個別条件とを比較して、プラス・マイナスの評点をつけます。特に差が出やすいのは部屋の汚れや設備の状況で、リフォームが必要かどうか、眺望の良し悪しも重要なポイントになります。
査定の種類
査定には、住戸内調査は行わない「机上査定」と、実際に現地に行って部屋の中までチェックする「訪問査定」がありますが、正確な価格を出すには訪問査定が適しています。
4-2. その他、売却価格に影響を与える要素
取引事例にもとづく相場以外にも重要な要素がいくつかあります。
例えば住環境や立地、交通の便、築年数、管理状態です。分譲会社やマンションブランド、ゼネコンなどの知名度や信頼性も価格に影響を与える可能性があります。
立地としては交通の便が良いほうが有利ですが、単純に駅に近ければ良いとも限りません。駅周辺に風俗営業系の店舗や施設がある場合、駅から徒歩3~7分ほど離れたほうが、住環境的に優れていることもあり、その場合は査定における評点も高まります。
また最寄りがバス駅の場合、交通の便が良いとは言えません。査定においてもマイナス点が厳しくなる傾向が強くなっています。
管理状態の良し悪しも査定に響きます。例えば大規模修繕の時期が近づいているのに修繕積立金が十分にたまっていない場合、マイナス評価となります。
最近では「ブランド力」の差が査定価格に響くケースもあります。駅からの距離、築年数、専有面積や間取りが同じでも、ブランド力の異なるマンションでは価格が1割~2割程度異なってくる可能性があります。
5. 中古マンションを高く売るための価格設定方法
中古マンションをなるべく高く売るには、どのようにして価格を設定すれば良いのでしょうか?
基本的には売主の希望や事情、同一マンションや近隣マンションの売出状況を見ながら「売出価格」を決めます。
あまり相場と離れた高い金額をつけても売れませんし、反対に安くしすぎると損をしてしまうので、「相場にかなった適正価格」をつけることが重要です。
5-1. 一般的なケース
現実的には不動産仲介会社が出した査定価格をもとに、売主の希望も取り入れながら売出価格を決めるのが一般的です。「査定価格より高めで売出したい」方がほとんどですが、大幅に高い価格をつけて相場とかけ離れてしまうと売れ残るリスクが高まるので、加減が重要です。
5-2. 売り急がないケース
事情があって現金化を急いでいる場合でも、いきなり安くしすぎずに、まずは信頼できる仲介業者の査定価格に近い価格で売り出すほうが高く売りやすいでしょう。
5-3. 売り急がないケース
特に期限を決めず「この金額以上で売れるなら売りたい。ダメならやめる」程度の気持ちで売り出すなら、ある程度査定額から離れていても、希望の金額で売り出すという判断も良いと思います。相場より高いと長期化するリスクが高くなりますが、買主側にも色々な事情があります。「この場所でどうしてもマンションが欲しい」という人もいるため、うまくマッチングできれば高くても売買が成立する可能性があります。
5-4. 相場が過熱しているタイミング
都心をはじめとして不動産価格が右肩上がりの時期には「高く売れるなら売りたい」売主が増加します。確かに相場が過熱していると、高くても売れる可能性がありますが、いくら人気のあるマンションでも同時に10戸以上も売りに出ていると売れにくくなるでしょう。強気の売出価格が連鎖して値段がつり上がってしまい、買い手がついてこられず物件が滞留してしまう可能性が高まります。
買主側も勉強しており、インターネットで売出状況をウォッチングしたり、同好の士と情報交換したりしています。購入検討者が「いずれ下がるはず」と一斉に様子見に入ると、相場全体が値上がり基調でも、個別物件ごとに価格調整が入って下落する可能性があります。
中古マンションを売る際には、市況の動きに加えて、同一や近隣マンションの売出状況も考慮しましょう。何戸くらいが売り出されたのか、反響はどうか、売れ残りは何戸くらいあるかを把握します。結果によって売出価格の設定も変わり、場合によっては、売り出すタイミングそのものを考え直す必要があります。
例えば同一マンション内で売り出しがあると、その部屋と競ってしまうため価格下落要因となります。
その場合、別の部屋が売れてから売却活動を始めたほうが良い可能性もあります。
6. 不動産仲介会社の選び方
マンションを高い値段で売るには、不動産仲介会社選びが非常に重要です。
以下のような視点をもって選ぶと良いでしょう。
6-1. 同じエリアにおいて中古マンションの取引事例が多い
実際に数多くの事例を扱ってきた不動産仲介会社であれば、レインズなどの公示されている取引事例だけではなく自社内のデータも参考にアドバイスをしてくれます。
実績が高いと、その分ノウハウなども蓄積しているでしょう。
できれば同じエリアで中古マンションの取引実績の高い不動産仲介会社を選ぶのがおすすめです。
6-2. 査定書の内容が丁寧で信頼できる
査定依頼を出したとき、査定書の内容が丁寧な不動産仲介会社を選びましょう。
なぜその数字が出たのかが明らかにされていて、きちんと説明してくれる不動産仲介会社は信頼できます。
一方で、査定書に適当に数字だけが書いてあるような印象の不動産仲介会社には依頼を控えたほうが安心です。
6-3. 販売計画がしっかりしている
しっかり販売計画を立ててくれて確立した手順で売却を進めてくれる不動産仲介会社は頼りになります。
6-4. 担当者の対応が良い
マンションの売却は、担当者と二人三脚で進めていく作業です。
査定価格の根拠を尋ねたら丁寧に説明してくれて、売り出し価格の設定などについてもアドバイスしてくれる、対応の良い担当者がついてくれる不動産仲介会社を選びましょう。
以上のような視点で不動産仲介会社を選択すると、あなたのマンションが高く売れる可能性も大きく高まるでしょう。今後の参考にしてみてください。
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