相続登記にかかる費用と司法書士への依頼報酬

  • facebookでシェア
  • twitterでシェア

相続登記とは、相続によって取得した不動産の名義を、故人の名義から相続人への名義に変更する手続きです。
相続登記は、現時点では義務ではありませんが、2024年(令和6年)には、相続登記が義務化され、相続登記を怠った場合罰則がつくこととなります。
そのため、なるべく早期に手続きをする必要があるのです。
しかし、手続きをしようにも相続登記をする際に、どの程度の費用がかるのか気になりますよね。
本記事では、相続登記の費用について、登記のプロである司法書士が解説します。

目次

1. 相続登記にかかる費用と税金

相続登記には、以下のような費用や税金がかかります。

1-1. 古家付きの土地の特徴

項目概要
必要書類の取得費 不動産の調査や相続関係の調査のために取得する書面の料金です。
郵送費 必要書類を郵送で取得したり、登記申請を郵送で行った場合に必要となります。
司法書士への依頼費用 司法書士に相続登記の手続を依頼した際にかかる費用です。

2. 登録免許税

相続登記の手続きをする際にかかる税金で、税額は不動産の固定資産税評価額の0.4%です。相続不動産の固定資産税評価額が1,000万円の場合、登録免許税は4万円となります。登記申請書に、納める額の分の収入印紙を貼ることで納めます。収入印紙は法務局や郵便局などで購入することができます。

3. 必要書類の取得費

必要書類の取得には、それぞれ取得費用がかかります。具体的には以下の10点です。役所によって異なることがありますので、司法書士としての経験から一番多いケースの費用を説明しています。

※2021年(令和3年)8月時点での費用です。

  1. 登記事項証明書:登記簿謄本のこと。不動産についての権利関係を調べる書面。どこの法務局でも取得できる。
    不動産1物件につき600円
  2. 名寄帳:固定資産税課税台帳から対象者の情報を抽出した書面。相続不動産のある市町村役場で取得できる。
    市町村役場ごと300円
  3. 評価証明書:相続する不動産の固定資産税評価額を証明する書面。相続不動産のある市町村役場で取得できる。
    1通300円
  4. 戸籍謄本:いわゆる戸籍のこと。相続関係を調べるための書面。本籍地のある市町村役場で取得できる。1通450円
  5. 改製原戸籍謄本:法律改正による作り直しがあった戸籍の作り直し前のもの。当時の本籍地のあった市町村役場で取得できる。1通750円
  6. 除籍謄本:死亡や婚姻により戸籍からすべての人が抜けた時に閉鎖された戸籍。当時の本籍地のあった市町村役場で取得できる。1通750円
  7. 住民票:故人や不動産を相続する人の住所を証明する書面。住所地の市町村役場で取得できる。1通300円
  8. 戸籍の附票:戸籍内の人の住所の移り変わりを記載した書面。住民票の代わりになる。本籍地のある(あった)市町村役場で取得できる。1通300円
  9. 印鑑登録証明書:市町村に届け出た実印の陰影証明書。住所証明としても利用可。現住所の市町村役場で取得できる。1通300円
  10. 郵便代:回数・重量により異なる

相続登記の必要書類取得でかかる費用の範囲は、数千円から数万円という範囲が多いです。相続人の人数が多ければ、それだけ取得する書類も増えますので、高額になります。
近年、マイナンバーカードを利用することで、コンビニで戸籍、住民票、印鑑証明書を取得できる自治体が増えてきました。コンビニ発行の証明書は、役所で取得するよりも安いことが多いので、節約のために利用されてもいいでしょう。1通あたり100円程度安くなっている自治体が多いです。

4. 司法書士への依頼費用

司法書士への依頼費用は、相続登記をする物件の数や相続不動産の評価額によって増減しますが、おおよその報酬相場は3?10万円程度です。
相続不動産や相続人の条件によって大きく変わりますが、著者の事務所での取り扱いでは、3~10万円(報酬相場)+諸費用で15~25万円くらいになることが多いです。

ただ、「相続登記はどれくらい費用がかかるか」というお問い合わせをよくいただきますが、司法書士報酬よりも登録免許税や戸籍取得などの実費の方が大きいので、詳しいお話を伺った後でないと正確な費用見積もりは出せないというのが実情です。
見積もりは無料としている事務所が大半ですので、見積もりだけとってみるのもいいでしょう。

5. 相続登記は自分でするか?司法書士に依頼するか?

相続登記の手続きは、多くの人は司法書士に依頼しています。ただし、自分で行うことも可能です。では、費用をかけて司法書士に依頼すべきなのでしょうか?次に相続登記を自分でするメリットとデメリット、相続登記を司法書士に依頼するメリットとデメリットを解説するので、自分に合う方をお選びください。

5-1. 相続登記を自分で行うメリット

相続登記を自分で行うメリットは、司法書士に依頼する費用がかからないことです。 相続にまつわる費用は相続登記の費用だけではなく、場合によっては相続税がかかることもありますので、少しでも節約をしたいという場合は、自分で行うことも検討した方がいいでしょう。

5-2. 相続登記を自分で行うデメリット

相続登記を自分で行うデメリットは大きくは3つあります。

デメリット1:時間がとられる

自分で相続登記を行うデメリットで一番大きいのは、ご自身の時間がとられることでしょう。相続登記の必要書類は一番簡単なものでもかなりの量があり、取得するだけでも労力を要するでしょう。さらに、必要書類のほとんどは公的機関で収集するものなので、平日に動く必要があります。なお、相続登記の流れだけでも次のような工程があります。

【相続登記の流れ】

  1. 物件調査
  2. 相続人調査
  3. 書類収集
  4. 遺産分割協議
  5. 遺産分割協議書作成・押印
  6. 登記申請書作成
  7. 法務局への申請
  8. 権利証の受け取り

デメリット2:スムーズにいかないことが多い

また、相続登記を自分でしようとされる大半の方は初めてのことですので、手続き方法を調べながら行う必要があります。さらに、慎重に行っても初めてのことなので、ミスをしたりすることもあるでしょう。登記申請書の作成などは、ミスがあるとやり直しとなり、何度も法務局へ申請しなければいけなくなります。

デメリット3:法的なアドバイスがもらえない

相続登記を自分でする場合には、司法書士などの専門家のアドバイスがもらえないことがもう一つのデメリットです。不動産は、現金とちがって簡単に分けられるものではないので、安易に相続登記をしてしまうと、後々問題が発生することがあります。
そして問題を解決するためには、相続登記のやり直しであったり、弁護士への依頼であったり、本来不要だった費用が発生することがあります。後日の問題発生を防止するためのアドバイスをもらえないことは大きなデメリットといえるでしょう。

5-3. 相続登記を司法書士に依頼するメリット

相続登記を司法書士に依頼するメリットは、相続登記を自分で行う場合のデメリットの反対になります。つまり、次の3つです。

  1. 自分の時間がとられない
  2. 相続登記がスムーズに進む
  3. 法的なアドバイスがもらえる

5-4. 相続登記を司法書士に依頼するデメリット

相続登記を司法書士に依頼するデメリットは、費用がかかるということです。複雑な相続登記の場合、費用が高額となることもあります。以上が、相続登記を自分で行う場合と司法書士に依頼する場合のメリット・デメリットですので、相続登記をどのように行うかの参考になさってください。
司法書士としての経験からいいますと、「親子間の相続で、さらに相続人が一人しかいない」といった単純な相続登記以外は、司法書士にご依頼されることをおすすめしています。
以下に、司法書士に依頼すべきケースをまとめましたので参考にしてください。

6. 司法書士に依頼した方が良いのはこんなケース

相続登記の手続きは、多くの人は司法書士に依頼しています。ただし、自分で行うことも可能です。では、費用をかけて司法書士に依頼すべきなのでしょうか?次に相続登記を自分でするメリットとデメリット、相続登記を司法書士に依頼するメリットとデメリットを解説するので、自分に合う方をお選びください。

ケース①相続人が複数いるケース

相続人が複数いる場合には、相続不動産をどのように分けるかを考える必要があります。
相続不動産の分け方を間違えると後々問題が発生して、解決のために弁護士費用が必要となる可能性があります。したがって、相続不動産の分け方を間違えないように、相続人が複数いる場合には司法書士に依頼することをおすすめします。

ケース②相続不動産の名義が故人のものではないケース

以下のような場合、相続不動産の名義が故人のものではないケースがあります。
そもそも故人がその親から相続した際に相続登記をしていなかった場合
両親が立て続けに亡くなったなど、2つ以上の相続の時期が重なった場合
上記のような場合、必要書類の公的保管期限が過ぎていて取得できなかったり、旧法に従う必要があったりと、複雑になる可能性があります。このケースでも、司法書士に依頼すべきと言えます。

ケース③早期に手続きを済ませたいケース

売却の予定があり、手続きを早期に済ませたいような場合、司法書士に依頼するべきでしょう。ご自身で行うと、書類の収集や申請書の作成などで時間を要することになるためです。

ケース④故人や相続人が外国籍、外国在住のケース

近年、著者の事務所では外国籍の方の相続登記を行うケースが増えてきました。 相続の内容は本国の法律にしたがうことになっていますので、相続関係は非常に複雑です。また、印鑑文化のない国がほとんどですので、書面手続きも複雑になります。 正直なところ、慣れていないと司法書士でも難しい相続登記なので、費用がかかっても依頼されるべきでしょう。

7. 相続登記の義務化と放置することで発生する費用

前章までで、相続登記にかかる費用について説明してまいりましたが、「結構費用も手間もかかるんだなぁ」と思われた方もいらっしゃることでしょう。しかし、相続登記をせずに放置すると、思わぬ出費を強いられる可能性があるので、なるべく早期に手続きをしておくべきです。
相続登記は、これまで義務ではありませんでした。そのため、相続登記をせずに放置する人が多く、所有者不明の土地が増加し続け、国や自治体が公共用地や災害対策に活用することができず、民間同士であっても売買ができないという問題が生じています。
そこで政府は、所有者不明の土地が発生することを防ぐため、「相続登記を義務化する改正案」を閣議決定し、法案は可決しました。2024年(令和6年)を目処に施行されることとなりました。施行後は、相続登記をせずに3年放置すると10万円の反則金がつくこととなります。無用な費用の発生を防止するという意味でも、相続登記は早期に済ませておくべきでしょう。

8. 相続登記をしないと発生するその他の費用

相続登記が義務化の反則金以外にも、相続登記を放置するとさまざまな費用が生じる可能性があります。どのような費用が生じるのか、理解しておきましょう。

8-1. 相続人が増えて調査費用や弁護士費用がかかる

不動産の相続登記をしないと、その不動産は相続前の名義人のままとなります。そのため、相続登記をしないままでいると、以下のように不動産の相続人がどんどん増えていってしまいます。

出典:グリーン司法書士OnLine「相続手続きの全体スケジュールから手続方法まで【完全マニュアル】」

もともと数通でよかった戸籍も、相続人が増えれば何十通も必要となります。その分費用もかかることとなります。また、相続登記するには、遺産分割協議をする必要があり、遺産分割協議では必ず相続人全員で話し合わなければいけません。相続人が大人数になってしまうと、その全員と話し合い、合意をすることは難しくなるでしょう。話し合いが調わない場合には、裁判になり弁護士費用が発生することもあります。

8-2. 塩漬け不動産の固定資産税

相続した不動産には、相続登記が終わっているいないにかかわらず、固定資産税がかかります。固定資産税から解放されるためには、売却などをして不動産の所有権手放す必要がありますが、売却するためには、あらかじめ相続登記をしておく必要があります。 前項のように相続登記を放置すると、相続登記自体が難しくなります。相続登記ができず、売却できなくなった不動産を塩漬け不動産といいます。不動産が売却できないと延々と固定資産税を支払い続けることになってしまいます。

8-3. 後見人の申立て費用

ほとんどの相続は、故人が高齢者です。そうなると、相続人も高齢であるケースが多いです。
2025年(令和7年)には、65歳以上の5人に1人が認知症になるという厚生労働省の調査結果があるなか、今は元気でも数年後に認知症を発症してしまう相続人も増えると考えられます。
認知症となった相続人は、遺産分割協議に参加することはできません。
遺産分割協議を開催するためには、家庭裁判所に成年後見人選任の申立てをして、認知症の相続人に代わって成年後見人に参加してもらう必要がありますが、裁判所への申立てですので、費用がかかることになります。

9. まとめ

相続登記には費用や税金がかかります。しかし、だからといって放置しておくとその他の費用が生じます。
2024年には相続登記が義務化されますし、なるべく早期に手続きをしておくようにしましょう。「時間がない」「手続きが不安」という方は、司法書士に依頼することもご検討ください。

中川徳将

中川徳将

グリーン司法書士法人のパートナー司法書士
グリーン司法書士法人は相続の相談件数が業界でもトップクラスの年間3278件以上。(平成29年度)2016年度には船井総研の司法書士事務所経営研究会で相続部門において最優秀賞を受賞。お客様へはわかりやすい言葉で「最適解」を提案し、より良いリーガルサービスを心掛けます。

東京司法書士会所属
登録番号東京第8699

あわせて読みたいコラム5選

不動産売却・住みかえをお考えなら、無料査定で価格をチェック!

カンタン入力!60査定したい不動産の所在地を選択してください

都道府県は?

ノムコムが選ばれる3つのポイント ノムコムが選ばれる3つのポイント

新着記事

もっと見る閉じる

人気記事ベスト5

カンタン
60
入力!

売却をお考えなら、
まずは無料査定から

都道府県は?

あの人に、頼んでよかった。野村の仲介PLUS
多くのお客様からご評価をいただきました

60
カンタン入力!
売却・住みかえの第一歩は、
まず価格を把握することから!

査定したい不動産の所在地を選択してください

都道府県は?

査定したい不動産の
郵便番号を入力してください
カンタン入力!60査定したい不動産の所在地を選択してください

都道府県は?

無料査定スタート