不動産登記とは?費用は?自分でもできる?宅建士が詳しく解説

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不動産登記とは?費用は?自分でもできる?宅建士が詳しく解説

不動産登記とは、不動産の所有者等を公に明らかにすることです。不動産を売買するときにはこの、不動産登記が欠かせません。この記事では、宅建士である筆者が、登記の目的や書類、申請方法などを解説しました 。また、不動産登記の申請は、司法書士や土地家屋調査士に依頼するのが一般的ですが、自分で申請することも可能です。どのような内容かを確認し、円滑な不動産登記を進めていきましょう。

1.不動産登記とは?

不動産登記とは?

不動産登記とは、不動産取引の円滑と安全を実現するために、不動産に関する権利の内容を公示する制度です。2008年の不動産登記法の改正によって、不動産登記情報のデータ化、オンライン化が進んだ結果、不動産登記に関する情報は全国の法務局で誰でも閲覧し、情報を取得することができるようになりました。不動産登記には表示に関する登記(表題登記)と権利に関する登記(権利登記)があります。

表題登記と権利登記

表題登記とは、未だ登記がされていない土地・建物について、不動産の基本的な情報を表示するために行う登記です。特に建物を新築したときには建物の所在地番、種類、構造、床面積、当初の所有者などの情報を登記しなければなりません。表題登記を委任する場合には、土地・家屋調査の専門家である土地家屋調査士に依頼します。

権利登記とは、所有権や担保権など不動産の権利に関する登記です。権利登記には、権利の発生や移転、消滅に関する登記情報が記載され、当該不動産についてどのような者(人・法人)がいつ、どのような権利を持っていたのかが明らかにされます。

所有権保存登記と移転登記

所有権保存登記とは、表題登記が行われた不動産について、初めての所有者を公示する登記をいいます。所有権保存登記を行わないと第三者に自己の所有権を主張することができないため、一般的には所有権保存登記と表題登記は同時に行われます。不動産の譲渡、贈与、相続などによって所有者がほかの人に移ったときには所有権移転登記を行います。これらの権利の移転が行われるたびに、登記簿には順番に番号が付されて登記情報が追加されていきます。

不動産登記のうち、表題登記は土地分筆時や建物を建設したとき所有者の義務と定められています。一方で、権利登記については法律上の義務とまではされていません。もっとも、不動産取引に関するトラブルを防止するため、権利登記についても必ず行うべきです。特に相続登記については、登記されずに放置されていることが多く、空き家問題などの社会問題の発端になっていることから、2024年6月1日より相続登記の申請が義務化されています。

表題登記は法律上の義務

新しく土地・建物を所有した者は、当該土地・建物について所有した日から1ヵ月以内に表題登記を行わなければなりません。表題登記のない土地はそれほど多くありませんが、建物の場合、新築されることで表題登記のない建物が生じることになりますので、新築後すぐに表題登記を行います。

表題登記を怠った場合には10万円以下の過料が科されます。また、表題登記がされていない不動産には権利登記もできないため、所有権の移転登記や担保権の設定登記もできません。

権利登記の効力

権利登記をしなければ、不動産に関する権利を第三者に対して主張できません。仮に、売主が当該不動産を二重に譲渡し、第二の買主が先に所有権移転登記を完了してしまえば、第二の買主が真の所有者になってしまいます。抵当権の場合には、ひとつの不動産に複数の抵当権を設定することが可能ですが、先に登記した方が第一順位の抵当権となり優先されます。このように、権利登記には強力な法的効果があります。土地建物の売買・贈与、また担保権の設定などの際には、権利登記も必ず行うべきでしょう。

2.登記簿謄本の記載内容

登記簿謄本の記載内容

登記簿謄本には、表題部、甲区、乙区があり、それぞれ記載される内容が異なります。調べたい内容によって、どこを見れば良いのか変わってきますので、記載内容を覚えておくと便利です。

共同担保目録は、共同担保がある場合に、希望すれば記載内容に追加できるものです。所有者がほかにどのような不動産を所有しているのか、担保評価に余力があるのか、などを調べる際には共同担保目録が役立つことがあります。

表題部

表題部には、土地・建物を特定するための基本的な情報が記録されています。土地と建物では表題部の記載内容が異なりますので、見比べてみると良いでしょう。

土地の表題部の記載:土地の所在地番、地目(宅地・田・畑・雑種地など)、地積、登記原因(分筆など)、当初所有者

建物の表題部の記載:建物の所在・家屋番号、種類(居宅・事務所・店舗など)、構造(木造・RC造など)、延床面積、登記原因(新築など)、当初所有者

甲区

甲区には、所有権の保存・移転に関する事項が記載されています。登記ごとに順位番号が付され、登記日と登記原因、登記名義人が記録されます。所有権の保存、移転のほか、所有権移転の仮登記、差押え、仮処分についても甲区の記載事項です。現在、誰がこの不動産の所有者なのか、また過去の所有者の履歴については、甲区を調べれば明らかにすることができます。

乙区

乙区には、所有権以外の権利(抵当権・質権などの担保権、地役権・地上権などの用益物権、賃借権)の設定・移転に関する事項が記載されています。抵当権の設定があった場合には、乙区に順位番号、登記原因、受付年月日・受付番号のほか、債権額(極度額)、利息、遅延損害金、債務者・債権者など抵当権の内容に関する情報が詳細に記載されます。

同一の不動産に複数の抵当権が設定されている場合の順位については、順位番号によって決することになっていますので、どの順位にて登記されているのかについても重要な情報です。順位の変更がある場合には、変更登記をする必要があります。

共同担保目録

共同担保目録とは、ほかの不動産と共同で担保が設定されている場合に、その不動産が一覧で表示されているものをいいます。どの不動産が共同で担保に入っているのか、またどの順位の抵当権の共同担保なのかが記載されています。これによって、当該不動産の担保価値を正しく把握することができるため、特に貸付側にとっては重要な情報です。

例えば、一戸建てのローンを組むときには、土地・建物を共同で担保に入れるのが通常ですが、これらは共同担保として各々の不動産登記簿の共同担保目録に表示されます。共同担保目録を請求するときには、登記簿を請求するときに、共同担保目録を合わせて請求する旨のチェックを入れ てください。

3. 不動産登記できる権利の種類

不動産登記できる権利の種類

不動産登記できる権利は、所有権と所有権に何らかの制約を加える権利(制限物権)に分けられます。不動産賃借権は本来的には債権に分類されますが、特別に登記できる権利として認められています。どのような権利が登記できるのかを知ることによって、登記簿の甲区や乙区にさまざまな権利情報の記載があったとしても混乱せずに読み解くことができるでしょう。

所有権

所有権とは対象となる不動産を自由に使用収益・処分できる権利です。不動産の売買を行うときの売主は原則として所有権者であり、登記簿上の所有権者と売主である相手方が同一であるかどうかは事前に必ず確認しておかなければなりません。

現在の所有者と登記簿上の所有者が異なる場合には、売主に所有権移転登記や変更登記を依頼するか、売買時に変更登記と所有権移転登記を同時に行うなどの方法がとれないか司法書士に相談することになります。所有権の代表的な登記原因は、所有権保存登記のほか、売買、相続、財産分与、贈与などがあります。

抵当権などの担保権

担保権とは、金銭の借り入れの担保のために設定する権利です。代表的なものは抵当権ですが、ほかに先取特権、不動産質権などがあります。抵当権の代表的な登記原因は住宅ローンの借入等による抵当権設定登記です。

抵当権設定登記はその順位番号も大きな意味を持つことから、第一順位の抵当権設定を確実に行うために、売買による所有権移転の登記申請と同時に行われます。

また、特殊な担保権として、不動産譲渡担保権があります。これは、担保のために登記する点では抵当権と同様ですが、譲渡担保を登記原因とする所有権移転登記(もしくは仮登記)を行う点で、ほかの担保権と大きく異なります。

地上権・地役権などの用益権

用益権とは対象不動産を利用する権利です。不動産をどのように利用するかによって、地上権、地役権、永小作権、配偶者居住権などがあります。これらの利用権については登記によって公示することで、たとえ所有権者が変わったとしても新しい所有権者に対しても今まで通り利用権を主張することができます。

賃借権

不動産賃借権も登記できる権利のひとつです。対象不動産を利用する権利という意味では地上権と類似しますが、民法上は債権に分類され、契約の相手方(賃借人)に対してのみ権利を主張できるとされています。

もっとも、不動産登記法によって登記が認められたことで、第三者にも賃借権を主張できることになり、法的性格としては地上権に近づくことになりました。特に賃料の額が大きい場合には、賃貸借契約締結と同時に賃借権登記が行われることが多いようです。

登記事項証明書(区分建物以外の建物)サンプル

登記事項証明書(区分建物以外の建物)サンプル

こちらは区分所有でない一般物件(一戸建てなど)の建物の登記例です。表題部には建物を特定するための情報が登録されています。所在地番のほか、家屋番号、建物の種類、構造、延床面積、登記原因および日付、所有者が記載されます。構造については躯体と屋根の構造の種類、延床面積は階数ごとに記載されます。

登記事項証明書(所有権移転)サンプル

登記事項証明書(所有権移転)サンプル

甲区に、所有権保存登記時からの権利移転の内容について、順位番号が付されて記載されます。例えば建物を売却した場合なら、権利部(甲区、所有権に関する事項)に登記の目的(所有権移転)、受付年月日・受付番号(令和〇年〇月〇日、第〇〇号)、権利者その他の事項(原因、令和〇年〇月〇日売買、所有者〇〇区〇〇町〇〇号、〇〇〇〇)が登記されます 。

登記事項証明書(抵当権設定)サンプル

登記事項証明書(抵当権設定)サンプル

例えば銀行から住宅ローンを借りて抵当権を設定した場合、権利部(乙区、所有権以外の権利に関する事項)部分に、登記の目的(抵当権設定)、受付年月日・受付番号(令和〇年〇月〇日、第〇〇号)、権利者その他の事項(原因、令和〇年〇月〇日金銭消費貸借同日設定、債権額金〇〇万円、利息年〇%(365日日割計算)、損害金年〇〇(365日日割計算)、債務者〇〇区〇〇町〇〇号、〇〇〇〇、抵当権者〇〇区〇〇町〇〇号、株式会社〇〇銀行)と登記されます。

登記事項証明書(抵当権抹消)サンプル

登記事項証明書(抵当権抹消)サンプル

債務を完済したら、抵当権登記を抹消しなければなりません。上記は抹消登記の例です。例えば銀行から借りた住宅ローンを完済し、抵当権の抹消登記をすると、抹消された抵当権に下線が引かれ、抹消された順位番号の抵当権が抹消されたことが登記されます。

住宅ローンを完済すると、金融機関から融資完済のお知らせが届きます。ただ住宅ローンの借入に伴い設定された抵当権設定登記は融資契約が終了しても自動的に抹消されません。抵当権抹消の手続きを行わないといつまでも登記記録に保存されたままになってしまいます。

したがって、金融機関から融資完済のお知らせがあったら、抵当権抹消に必要な登記済みの金銭消費貸借抵当権設定契約証書等の抹消手続き書類を金融機関から入手し、自分自身で手続きを進める必要があります。手続きは司法書士に依頼することが一般的ですが、自分で行うこともできます。

抹消登記に期限はないものの、不動産を売却処分するときには手続きを済ませておく必要がありますので、忘れないうちに手続きを済ませておきましょう。

4.敷地権の登記とは

敷地権の登記とは

区分所有建物(マンションの一室やビルのワンフロアなどに区分されて登記される建物)については、特殊な所有権の形態として敷地権という権利が認められています。区分所有建物の敷地である土地に敷地権の登記がされるようになったのは、1983年の区分所有法の改正によるものです。1983年以前のマンションには敷地権が設定されていないものもあります。

マンションを購入すると土地に関する「敷地権」と建物の権利(専有部分)の両方を取得しますが、専有部分と敷地権は、原則として分離処分(別々に処分すること)することが区分所有法により禁止されています。そこで、マンションの登記簿には、建物の表示と合わせて敷地権の表示がされているのです。敷地権は、敷地面積を専有面積で按分した持分として表示されます。

5.登記事項証明書の種類

登記事項証明書の種類

登記事項証明書には、証明書の記載内容によって4つの種類があります。請求する登記の種類を間違ってしまうと、必要な情報が記載されていなかったり、証明書の枚数が膨大になったりと不具合が生じます。提出先の担当者にどの種類の登記事項証明書が必要なのかを確認したうえで請求するようにしましょう。

全部事項証明書

全部事項証明書とは、閉鎖事項以外のすべての登記事項が記載されたものです。現在効力のある登記事項はもちろん、すでに抹消された情報についても記載されます。抹消された登記情報については、本文に下線が引かれて表示されます。今までの登記情報の履歴が分かるため、所有者の変遷や担保の設定・抹消の状況を知りたいときには全部事項証明書を請求するのが良いでしょう。

現在事項証明書

現在事項証明書とは現在において効力のある登記事項が記載されたものです。すでに抹消された登記情報や閉鎖事項は証明書に記載されません。変更登記申請や登記情報の訂正の申請を行うときには、現在効力のある登記情報が分かれば十分なので、現在事項証明書を請求します。また、今までの登記の履歴があまりにも多く、全部事項証明書では証明書の枚数が多すぎる場合にも、現在事項証明書を請求することがあります。

一部事項証明書

一部事項証明書とは、申請があった順位番号の権利のみが記載されたものです。例えば大規模なマンションで、一棟の建物に大人数の所有者がいる場合には、登記事項証明書の枚数が膨大になり不便です。このようなときには、一部事項証明書を請求することで、自分の家屋番号の登記事項のみを抜き出して証明書を請求することができます。

閉鎖事項証明書

閉鎖事項証明書とは、土地の合筆、建物の滅失等によって閉鎖された登記事項を証明するものです。土地の合筆や建物の滅失があった場合には、当該不動産について、これ以上権利関係が更新されることはありません。このような登記情報は閉鎖事項として処理されます。

用途としてはあまり多くありませんが、合筆される前の土地の所有関係を調べたり、滅失した建物がどのような用途で使われていたのか(土壌汚染や有害物質残留の恐れはないか)を調べたりするときに利用されます。

6.登記事項証明書(登記簿謄本)の取得方法

現在では登記のオンライン化が進み、データ化されている登記情報に関しては、全国の法務局にて登記事項証明書を取得することができるようになりました。法務局の窓口で申請するほか、オンラインでの請求も可能です。

登記事項証明書と登記簿謄本の違いは?

一般的には、どちらも登記事項証明書のことを指しています。したがって、必要書類に「登記簿謄本」と示されていても、登記事項証明書を提出すれば問題ありません。厳密に定義するならば、登記簿謄本とは電子化される前の登記簿の写しです。データ化される前の登記簿は紙で保存されており、それを複写して証明文言を付したものを登記簿謄本といいます。

登記事項証明書は、電子化された後の登記事項に関する証明書で、登記事項証明書(登記簿謄本)の取得方法には以下の3種類があります。

請求書を管轄登記所又は最寄りの登記所の窓口で申請する方法

請求書を管轄登記所又は最寄りの登記所の窓口で申請する方法

直接窓口で交付申請する方法です。データ化されている登記情報については、全国どこの法務局や出張所でも取得できます。

法務局備え付けの交付申請書に該当事項である「住所」「氏名」「種別」「請求する不動産の所在」「地番」「請求通数」「共同担保目録が必要な際の条件」にチェックを入れ申請しましょう。

費用は法務局内にある窓口で収入印紙(600円分)を購入し、申請書に貼付して支払います。なお、マンションの登記事項証明書を取得する際は「家屋番号」を記載する必要があります。家屋番号は法務局の窓口や電話で確認することができます。

請求書を管轄登記所又は最寄りの登記所に申請書を郵送する方法

郵送で登記簿や証明書を申請する方法もあります。

法務局のウェブサイトから申請書をダウンロードし、法務局で直接取得する方法と同様に申請書に必要事項を記入し、郵便局等で取得した収入印紙(600円分)を申請書に貼付し、返信用の封筒を同封のうえ 、送付しましょう。特に、遠隔地から、データ化されていない登記情報を取得するときには郵送で取得する必要があります。

オンラインにより交付請求をする方法

オンラインで交付申請をすることも可能です。最寄りの法務局に取りに行く方法と希望する場所に郵送する方法が選択できて便利ですが、事前にサイトに個人情報等を登録しなければならず、多少の手間はかかります。

手数料はオンライン割引が適用され、オンライン請求・送付の場合は500円、オンライン請求・窓口交付480円です。

また、登記所が保有する登記情報をインターネットで閲覧できるサービスもあります。しかし、登記事項証明書と異なり証明文や公印等は付加されないため、証明書として提出できないことがありますので注意が必要です。

関連記事はこちら【不動産の登記簿謄本とは?取得方法や記載内容を解説!

7.不動産登記が必要なタイミング

不動産登記が必要なタイミング

不動産登記が必要なタイミングとしては、新築・土地の合筆などによって土地・建物が新たに生じた場合や、土地建物の基本情報が更新された場合、そして土地建物の権利内容に変更があった場合が考えられます。

【新たに建物を建築したとき】

新たに建物を建築したときには、建物の表示登記と保存登記を行う必要があります。 表示登記については土地家屋調査士、保存登記は司法書士に依頼するのが一般的です。

建物を滅失したとき】

建物の解体・撤去によって建物が滅失した場合には、建物の滅失登記を行います。滅失登記後の登記情報は閉鎖されますので、それ以上登記情報が更新されることはありません。

土地を分筆したとき】

1筆の土地を複数の土地に分けて登記することを分筆といいます 。分筆した場合には、1筆の土地ごとに表示登記と所有権保存登記を行います。

土地を合筆したとき】

複数の土地を合筆した場合には、1筆の土地として表示登記と所有権保存登記を行う。合筆前の土地の登記情報は閉鎖事項となります。

【不動産の情報が現況と異なる場合】

土地の再測量や建物の用途変更など、不動産の登記情報が現況と異なる場合には変更登記を行います。特に用途変更については現況と異なる登記になっていることも多いため注意が必要です。

土地建物を売買したとき】

土地・建物を売買したときには、売買を原因とした所有権移転登記を行います。契約日と決済日が異なる場合には、決済日に等式申請を行います。ローンの借 入 等による抵当権設定がある場合には、同時に登記申請を行います。

土地建物を相続したとき】

土地・建物を相続したときには、相続を原因とした所有権移転登記を行います。遺産分割協議を行い、分割協議書を登記申請書に添付する必要があります。

関連記事はこちら【相続登記の必要書類と申請方法。相続登記は自分で手続きできる?

土地建物を贈与したとき】

土地・建物を贈与したときには、贈与を原因とした所有権移転登記を行います。

土地建物を財産分与したとき】

離婚などによって土地・建物を財産分与したときには、財産分与を原因とした所有権移転登記を行います。

土地建物の抵当権の設定、抹消のとき】

住宅ローンを借り入れるときには抵当権設定登記、完済時には抵当権抹消登記を行います 。必要書類等は金融機関に確認しながら手続きを進めましょう。

関連記事はこちら【抵当権とは?売却・購入の流れや費用

【地上権・地役権等の用益権や賃借権を設定したとき】

地上権・地役権等の用益権や賃借権を設定したときは各々の設定登記を行います。ただし、賃借権設定登記は特に権利の公示の必要性が高い場合にのみ行われることが多いようです。

【登記名義人の情報が変更されたとき】

名義人の婚姻による名字の変更や住所変更などがあったときには、変更登記を行います。軽微な変更ならば、自分で書類を作成して手続きしても良いでしょう。

【登記情報が現在の権利関係と異なる場合】

契約解除によって所有権移転が無効になった場合には所有権移転登記の抹消登記を行います。また、登記情報が現況と異なる原因がよく分からない 場合には、錯誤を原因とする変更登記が行われ る場合もあります。

2021年不動産登記法改正

不動産登記は一般の人には馴染みがあまりないため、相続が発生してもそのまま放置しているケースも多くみられます。その結果、 所有者不明の土地・建物が多数存在し、 空き家として放置されるなど大きな社会問題となっています。

この問題を解決すべく、相続登記と権利者の住所変更が 義務となりました 。相続登記の義務化は2024年4月から、住所変更の義務化は2026年4月から施行されます。相続登記については、一定期間、登録免許税の免税制度もありますので、積極的に活用しつつ、登記手続きを進めていきましょう。

8.登記申請の方法、手順

 登記申請の方法、手順

登記申請は司法書士、土地家屋調査士に依頼するのが一般的ですが、自分で申請することも可能です。登記する際には、以下の手順で進めます。

STEP1 登記申請書を作成

登記申請書に所定の事項(登記の目的、申請人、添付情報、登記識別情報の通知希望の有無等)を記載します 。

法務局のサイトにケースごとの登記申請書の書式がありますので、参考にしてみるのも良い でしょう。

https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79.html

また、法務省にてオンライン申請用総合ソフトも提供されています。

STEP2 必要書類を集める

申請する登記の種類や登記原因によって必要書類が異なります。 登記申請書、本人確認書類、司法書士等に依頼する場合には委任状が共通の必要書類ですが、建物に関する専門書類や優遇税制適用のための書類など必要書類は多岐にわたるため、慎重に調べたうえで資料を収集することが大切です。また、登記原因を証明するための書類(遺産分割協議書、財産分与協議書など)については、新たに作成する必要があります。

(必要となる添付書類の例)

  • 表題登記に必要な書類

所有者の住民票、建物図面等、確認済証・検査済証

  • 所有権保存登記に必要な書類

住宅用家屋証明書(軽減税制適用のため)、その他確認済証の写しなど場合によって異なる。

  • 所有権移転登記に必要な書類

(売主側)登記識別情報通知(あるいは登記済証)、印鑑証明書、住民票、抵当権抹消に関する書類等、固定資産税評価証明書

(買主側)住民票、印鑑証明書

STEP3 管轄の法務局へ提出

不動産所在の管轄法務局に登記申請書と必要書類を提出します。費用も合わせて支払います。

STEP 登記完了証・登記識別情報通知の受け取り

1週間から10日ほどで登記手続きが完了しますので、登記完了証、登記識別情報通知を法務局から受け取ります。 データ化されていない登記の申請については1ヵ月近くかかることもありますので、申請時にどのぐらいの期間がかかるのか確認しておいた方が良いでしょう。

専門家に委任するのが安心

代表的な必要書類を紹介しましたが、実際の必要書類は登記原因や登記する権利の内容によって異なります。また、軽減税制を適用するための書類など登記に直接関係のない付属 書類もあるため、すべてを収集するのは一般人にとっては大変な作業です。慣れない場合には、登記申請を 専門家に委任するのが 安心です。委任する場合には、表題登記については土地家屋調査士に、権利登記については司法書士に依頼します。

9.登記識別情報通知(権利証)とは

登記識別情報とは、登記完了時に法務局から交付されるもので、登記された土地に関する情報と固有の識別番号が記載されています 。交付時には識別情報についてはシールで隠されています。従来の権利証に代わるものとして用いられます。

将来、不動産を売却する際にも必要となる重要書類なので、なくさないように大切に保管しましょう。 なお、「登記識別情報通知」はオンライン化された登記所、「権利証」はオンライン化未了の登記所で交付されます。 両方とも意味内容としては同じものとなります。

10.登記にかかる費用(登録免許税[一覧、軽減税率]、司法書士、土地家屋調査士)

登記にかかる費用(登録免許税[一覧、軽減税率]、司法書士、土地家屋調査士)

登記にかかる費用としては、主に登録免許税と司法書士又は土地家屋調査士への報酬があります。専門家に依頼する場合には、専門家に種々の費用をまとめて支払います。

【登録免許税】

登録免許税は、固定資産税評価額に一定の税率を乗じて算出します。登記の種類によっては軽減税制・免税措置がありますので、専門家に相談してみましょう。主な税率は以下の通りです。

  • 土地

売買による所有権移転の場合・・・1.5%(令和8年3月31日まで)

相続や共有物の分割等の場合・・・0.4%(一定の場合の免税措置あり)

贈与の場合・・・2%

  • 住宅用家屋

売買による所有権移転の場合・・・0.3%(令和9年3月31日まで。優良住宅等一定の要件を充たす場合には0.1%)

相続や共有物の分割等の場合・・・0.4%(一定の場合の免税措置あり)

贈与の場合・・・2%

  • ・抵当権設定登記

借入額の0.4%

【司法書士への報酬の目安】

司法書士報酬の自由化により、報酬額は司法書士によって異なります。目安としては所有権移転登記で5-10万円、抵当権設定登記で5万円程度をみておけば良いでしょう。

【司法書士へのその他費用の目安】

登記を依頼するときには、遺産分割協議書など特別な書類の作成をあわせて司法書士に依頼することがあります。その際には、出張費用、資料取得費用等は実費および日当(1万円から)、相続の場合の遺産分割協議書等の書類作成費用として5万円から10万円程度などの追加費用がかかってきます。


また諸費用として、事後の謄本請求、受領書の発行、還付金の請求は3,000円程度、登記識別情報通知の引渡しは2,000円程度の費用が追加されることがあります。

【家屋調査士への報酬、その他の費用の目安】

土地家屋調査士への費用としては、主に測量費用と表示登記の代行費用があります。測量費用としては一戸建てほどの広さで30~50万円程度ですが、場所や広さ、現況によって大きく異なりますので、事前に見積りお確認した方が良いでしょう 。表示登記費用としては5万円~10万円程度です。

11.登記の期限

登記の期限

不動産登記には登記の期限が定められているものがあります。期限は表示登記に関するものが多いですが、不動産の取引にかかわる登記も放置して良いわけではありません。実務上、権利移転が生じたら速やかに登記することが一般的です。


不動産に関する登記で法律により決められた期限のあるものは以下の通りです。

  • 新築した建物の代表的な表題登記はその所有権の取得の日から1ヵ月以内
  • 建物の種類や構造、床面積にについて変更があった場合は、その変更があった日から1ヵ月以内
  • 建物が滅失したときは、その滅失から1ヵ月以内
  • 相続登記に関しては、相続が開始し、所有権の取得を知ったときから3年以内

12.まとめ

不動産に関係する登記には期限のあるものや期限のないものなどさまざまなものがありますが、登記を済ませておかないと後々トラブルに発展してしまうケースもあります。登記の原因が生じたタイミングで速やかに手続きを行いましょう。登記は権利を正当に主張するための重要な書類です。誤った情報が登記されないよう、登記申請は専門家に委任することをおすすめします。

徳田 倫朗

徳田 倫朗

宅地建物取引士
株式会社イーアライアンス代表取締役社長。中央大学法学部を卒業後、戸建・アパート・マンション・投資用不動産の売買や、不動産ファンドの販売・運用を手掛ける。アメリカやフランスの海外不動産についても販売仲介業務の経験をもち、現在は投資ファンドのマネジメントなども行っている。

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