相続などで手に入れたもう誰も住んでいないような古い家を売却処分する場合、解体して更地にするべきか、そのままにするべきか悩む人は多いはずです。
その場合に気になるのは、更地化するための費用や、更地化のメリット・デメリットではないでしょうか。
また、更地にするにあたっても注意すべきポイントがいくつかあります。
今回はこれらについて詳しく解説しますので、後悔しない賢い選択に役立ててください。
1. 古い家を更地にする場合に必要な費用
解体費用とは文字通り「建物を取り壊す」ための費用ですが、その作業には解体作業のための仮設や養生の設置、解体工事、廃材の処理作業に分かれます。
ただし一般的にはこれらを含めて考えるので、今回も細分化せずに一括での相場観をお伝えします。
1-1.家の解体費用の相場
解体費用に差が出る大きな要因は建物の構造です。重機などで一気に壊すことができる木造は比較的安くできます。
一方、頑丈な建物は、特別な装置が必要であり解体に時間がかかるためその分コストがかかります。
木造、鉄骨造、RC造のそれぞれの相場は以下の通りです。(坪当たり単価)
木造:3万円~5万円
鉄骨造:3.5万円~6万円
RC造:4万円~8万円
もちろん諸条件にもよりますが、概ね一般的な30坪の木造2階建ての戸建住宅の解体でも100万円前後はかかると考えたほうがいいでしょう。
1-2.立地環境でも解体費用は変化する
木造や鉄骨造などの建物の構造の違いは、解体費が安く済むのか高くなるのかの大きな違いになります。
しかし、それ以外にも解体費の金額に影響を与える要因があり、その一つが立地環境です。
先ほど、解体費の中には仮設費や養生費が含まれると説明しましたが、これらが立地によって大きく変わります。
一般的に、工場地のように比較的騒音があり、建物の間隔が離れていて、広い道路に面するようなところは解体工事はやりやすいです。一方、道路が狭いために大きな重機が入れず手作業が中心になるような住宅地や、多くの歩行者が往来する影響で安全性や騒音、粉塵に気を付けなければいけないような駅前などでは、その分コストがかさみます。
1-3.廃材の量がどれくらいあるか
木造や鉄骨造などの建物の構造の違いは、解体費が安く済むのか高くなるのかの大きな違いになります。
しかし、それ以外にも解体費の金額に影響を与える要因があり、その一つが立地環境です。
先ほど、解体費の中には仮設費や養生費が含まれると説明しましたが、これらが立地によって大きく変わります。
一般的に、工場地のように比較的騒音があり、建物の間隔が離れていて、広い道路に面するようなところは解体工事はやりやすいです。一方、道路が狭いために大きな重機が入れず手作業が中心になるような住宅地や、多くの歩行者が往来する影響で安全性や騒音、粉塵に気を付けなければいけないような駅前などでは、その分コストがかさみます。
2. 古家付き土地として売る際のメリット・デメリット
解体費の相場やその費用が高くなる理由を説明しましたが、解体せずに古家付きで土地を処分することもあります。
それにはメリットとデメリットがあるので次に見ていきましょう。
メリット①解体費用が発生しない
解体費は建物構造や立地環境でも変わりますが安くても数十万円、場合によっては数百万円かかることもあります。
しかし、現状の古家をそのままで買ってくれる人がいれば解体費を支払わずに済み、そのうえ本来は解体費がかかったと思えば低価格で売却しても売主に大きなメリットがあります。
このように取り壊すまではいかないものの、市場価値がない家付きの土地を売買するケースはよく見られ、不動産広告では「上物付土地」や「廃屋付土地」などと表示されることが多いです。
メリット②買主は住宅ローンを利用可能
家は古くても購入者が住宅として利用するなら住宅ローンは利用可能です。従って自己資金が少ない人でも購入できます。
ただし新築のローンに比べて、建物の担保価値がないので借りることができる金額が少なく、また借りることができた場合でも、建物の耐用年数が短いので返済期間も短くなる点には要注意です。
メリット③契約不適合責任が免責になる
あくまでも売主にとってのメリットになりますが、古家付き土地を土地の売買とし、古家はいわば“おまけ”として売ります。そしてその古家を利用しようが壊そうが購入者の自由とした場合には、建物の耐震性などに売買時に気が付かなった欠陥があっても、売主は買主からその責任を問われることはありません。売主側の責任は、契約不適合責任(かつて「瑕疵担保責任」と言われていましたが、2020年4月の民法改正により変わりました)といいますが、売買の主たる目的物を土地とすることで建物に対する責任は免責となるのです。
メリット④固定資産税を安くできる
雨露さえしのげればいいと考える人にとっては、どんな古い家でも快適に住むことはできます。さらに居住用の木造住宅の場合、固定資産税上の耐用年数は33年なので、それ以上経過した建物なら、0にはならないもののかなり査定は低くなり、税金は安くなります。 建物を増築したり、木造から鉄骨に構造を変更したりすれば固定資産税の評価が上がるので税金も上がりますが、内部をリフォームするぐらいでは税金は変わりませんので、ランニングコストを安くしたい人にとっては大きなメリットとなります。
デメリット①相場より価格は安くなる
買い手から見れば、古家をリフォームするのにどのくらい費用がかかるのか分からず、もし取り壊すことになった場合の費用もよく分かりません。これらの不安があるため、古屋付き土地は手が出しにくく、その結果価格を割安にしないと売れないことがあります。建物がある分、土地だけの値段より高いだろうと、売り手は考えますが、買い手にとっては古家がネックになり、むしろ安くしないと売れないことに気を付けましょう。
デメリット②買い手がつかないことがある
東京などの土地価格が高いエリアなら解体費をかけてもそれ以上の金額で売れますが、地価が安い地方都市では、数百万円の解体費をかけた土地でも地価が安いために数十万円でしか売れないこともありえます。
そうなると売主にとっては大損なので、なんとか古家付きで引き取ってほしいと思いますが、そう簡単に都合のいい買い手が見つかることは少ないです。
この所有者の思惑と購入者のギャップが結局そのまま古屋を放置するような空き家問題につながり、買い手もつかないまま、家が朽ちてしまう原因と考えられます。
3. 古い家を解体して更地として売る際のメリット・デメリット
自分が建物を建てて使ってきた土地を、更地に戻して売るほうが取引としてはシンプルですが、メリット以外にデメリットもあるので見ていきたいと思います。
メリット①売却しやすい
古家がないことで、購入者はすぐに自分が建てたい建物を建てることができます。もちろん、一定の都市計画法や建築基準法などの法規制の枠内ではありますが、この「自由に出来る」価値は高いので古屋付きで売る場合と比較して明らかに早く処理をできると思います。
メリット②土地の状態の確認・調査が容易
古家が建っているものの、実は隣接する土地に越境していたり、逆に越境されていたりすることに気が付かないケースも良くあります。
その場合、更地化して境界を再度確認し、面積の測量などをすることで正確な土地の状態が分かります。
建物があっても一部は可能ですが、ないことでより調査が可能になることも考えられます。
デメリット①解体費用が発生する
解体費用は見積もりをしてもらい、実行しなければ正確な金額が分かりません。解体するということは所有者がその確定していなコストを負担するということになります。
デメリットではありますが、更地にして売りやすくための必要な投資と考えたほうがいいと思います。
デメリット②固定資産税が高くなる
建物が無くなるのに税金が高くなるのを不思議だと感じる人も多いと思います。確かに建物がある場合にはその分の税金は上がりますが、先に記述したように古家の場合にはその額は大きなものにはなりません。
土地は建物を建てて一定の要件を満たした「住宅地」として利用している場合には、固定資産税は200㎡以下の部分について1/6、200m2超の部分については1/3に減額されるのです。一方、更地として放置している場合にはこの減額措置がなくなるので、税金が最大で6倍になると考えられます。
このように更地化してそれを放置すると、税金の負担が増えることに注意しなければなりません。
4. 更地にしたほうが良いケース
古家付きの売却と更地化する際のそれぞれのメリットやデメリットが分かりましたので、実際に起こりやすいケースをもとに、どちらにすべきかの説明をしたいと思います。
4-1. 建物が古すぎて住めない
いくら個人の好みといえども、安心して食事や睡眠をとることができないといった家の機能が失われている場合には、取り壊しのうえで更地化したほうがいいと思います。
また、最近は防災の意識が高まっているので、一見奇麗そうに見えても見た目がきれいなことと安全性が確保できているのは別の問題と捉えてしっかりと注意したほうがいいです。
4-2. 空き家の維持管理が困難な人
「散り壊すには目先の費用が掛かるし、建物もまだ使えそうでもったいないので、そのうち何とかしよう」という形で空き家をそのままにして、何ら維持管理をしてない場合は要注意です。
自分で決める以外は「そのうち」はやってこないですし、放置すれば解決の道は遠のくばかりです。
長い期間を考えた場合、結局無駄な維持管理は解体費用よりもはるかにお金がかかることも多いので、維持管理が難しいと感じたら早めに決断して更地化することをおすすめします。
5. 更地にしないほうが良いケース
かつては住宅を買う=新築を買うというのが当たり前でしたが、近年は住宅購入者のニーズは多様化しているため、更地化しないほうがいいケースも見られます。これらについて解説します。
5-1. リフォームなどをすれば需要のある建物
生活するうえで、外壁や屋根の防水性や室内の水回りの劣化は避けられません。しかし古い家の中には、現在はなかなか使われないような資材をあえて使うといったデザインを採用したものがあります。このような物件はむしろそのレトロ感に価値があるため、特にお風呂やトイレ、キッチンの水回りを直すことで新たな価値が発見されることがあります。その価値や希少性を個人で判断するのはなかなか難しいので、建築の専門家に相談したほうがいいかもしれません。
5-2. 再建築不可の建物
都市計画法や建築基準法などは年々改正されますが、改正以前に建っている建物は「既存不適格建築物」という扱いになり、その建物が存続する限りは建物使用を継続できます。
このような既存不適格建築物は更地化してしまうと、同種同規模の建物は二度と建築できない可能性があるので、安易に取り壊さないほうがいい場合もあります。
5-3. 立地が良い
駅に極めて近いとか、生徒数が多い大学のすぐ近くなど、利便性が極めて高い物件の場合には、その立地条件に価値を見出して建物の状態はあまり気にしないという人もいます。
また最近では外国人技能実習生が多く来日しています。そういった方々の中には、自分の職場や生活日用品を購入できるスーパーなどのお店さえ近ければ、駅の距離はあまり気にしないという人もいます。そして母国で暮らした家よりも日本の古家のほうがはるかに暮らしやすいという場合もあります。従って、この立地は日本人のみならず、その地域に暮らす人全体にとってどうなのかを考える必要があります。
6. 更地にする際に気をつけたいこと
いろいろ検討した結果、解体するのがベストという結論になった場合に注意すべき点があります。それは解体費用のローンが組めるか否かという点です。
解体して新たに建物を建てる場合には、建物の建築費の一部としてローンでカバーすることができます。
ただし、単に更地化して売るために取り壊した場合には、担保となるべきものがないので、ローンが活用できない場合もあるのです。
しかし最近は、空き家問題が多く発生している地方については地銀を中心に空き家解体ローン商品が多く提供されるようになりました。また地方自治体などの助成金も多く見受けられます。
ローンを活用する場合でも、金利は高いので注意が必要ですし、助成金も様々な書類の作成や手間暇がかかります。しかし、これらは上手く活用すればかなり解体費用を節約できるので、十分に比較検討するべきです。
7. まとめ
今回は古い家を解体する費用やそのメリットやデメリットなどについて説明しました。家を壊すということはとても大きな勇気と決断がいることであり、悩ましい問題だと思います。
また、自分一人で考えているとなかなか決めることが出来ず、資金調達や補助金などの有益な情報も得ることが難しいかと思います。
そんな場合こそ、専門家である不動産仲介会社に相談して適切な判断をしてください。
不動産コンサルタント
不動産鑑定士として25年のキャリアを持つ。訴訟や調停、並びに相続等の税務申告のための鑑定評価書の作成が得意。 最近はマレーシアを中心としたビザの取得と海外移住のサポートを通して、トータルな資産コンサルティングも展開している。
あわせて読みたいコラム5選
不動産売却・住みかえをお考えなら、無料査定で価格をチェック!
新着記事
-
2024/11/12
【プロ直伝】中古マンション売却法|流れ・価格の決め方・書類・税金も解説
-
2024/11/12
築40年マンションを買っても大丈夫?プロが教える!古い物件の選び方
-
2024/11/12
不動産登記とは?費用は?自分でもできる?宅建士が詳しく解説
-
2024/11/12
宅建士が教える「一戸建て売却成功法」流れや費用に加え、具体策も紹介!
-
2024/11/12
一戸建て査定とは?旬のAI査定や、査定価格UP方法なども解説
-
2024/11/07
不動産買取をわかりやすく解説!デメリット・注意点を把握して利用
人気記事ベスト5
不動産売却ガイド
- 最初にチェック
- 不動産の知識・ノウハウ
- 売却サポート
- Web上で物件を魅力的に魅せる! サポートサービス
- お買いかえについて
- お困りのときに
カンタン60秒入力!
売却をお考えなら、まずは無料査定から