リロケーションとは、留守中の自宅を賃貸に出し、賃収を得る仕組みです。転勤や家族の事情などで中期にわたり家を空ける方は珍しくありません。そんなときに非常に役立つのがリロケーションです。そこでこの記事では、宅建士である筆者が、リロケーションの仕組みやメリット、注意点や手続きなどをまとめました。中期で家を空ける予定がある方は、ぜひ記事を読んで、リロケーションを検討してみてください。
1. リロケーションの仕組み
リロケーションは、生活の拠点を持ち家から別の住まいに移すときに、持ち家を活用する方法として有用です。しかし、契約の内容が一般的な賃貸借とは異なるため注意が必要です。
1-1. リロケーションとは
リロケーションとは、転勤や海外赴任などで一時的に持ち家を離れるときに、一定期間に限って持ち家を賃貸することです。自宅を購入しても、急な転勤等で引越しが必要になる場合もあるでしょう。自宅を売却するのもひとつの方法ですが、売却資金で住宅ローンを完済できない場合には、なかなか売却できません。そのようなときに考えたいのが持ち家の賃貸「リロケーション」です。
1-2. 一般的な賃貸借契約とリロケーションの違い
リロケーションは、定期借家契約もしくは一時使用賃貸借契約の方式がとられます。これらの契約は、期限の定めがあれば所定期間経過後は契約が終了し、更新はありません。リロケーションの場合、所有者が戻ってきたときにはまた持ち家に住むことを前提にして契約するため、期限が過ぎたらスムーズに住居の明渡しが行われるような契約形態になっています。これに対し、一般的な賃貸借契約は通常2年ごとに更新され、正当事由がなければオーナー側から解約できないことになっているため、リロケーションには不向きです。
1-3. 定期借家契約と一時使用賃貸借契約の違い
定期借家契約は借地借家法の適用があるため、契約方式が厳格です。原則として、あらかじめ定められた期間中は中途解約できません。そのため、赴任が予定より早く終了しても解約できない特徴があります。一方、入居者にとっては転居のスケジュールが立てやすい契約であると言えるでしょう。
一時使用賃貸借は一般的な民法が適用され、柔軟な契約が可能です。例えば、オーナーの赴任が終了した時点で賃貸借を終了させるような契約条項をいれることもできます。もっとも、入居者にとっては不利な条項ですので、賃料は低めに設定されることが多いようです。
2. リロケーションのメリット
リロケーションは留守中の自宅を活用して家賃収入が得られるほか、住宅のダメージを軽減したり、防犯に役立ったりと、さまざまなメリットがあります。
2-1. 家賃収入が入ってくる
持ち家を活用して家賃収入を得られることが、リロケーションのもっとも大きなメリットです。留守中であっても、住宅ローンのほか固定資産税・都市計画税やマンションの場合管理費・修繕積立金など、さまざまな経費がかかります。これらの経費を家賃でまかなえるとなれば、非常に心強いですよね。
2-2. 住宅の損耗が軽減される
住宅に人が住んでいるのといないのとでは、住宅の損耗の度合いが違います。住宅は空き家のままにしておくと、湿気によって建付部が損耗したり、水回り部分の壁や和室の畳にカビが生えたりと、どんどん劣化していくものです。誰かに住んでもらうことができれば、住宅を長持ちさせることができるでしょう。
2-3. 留守中の防犯に役立つ
リロケーションにより、空き家にしなければ、空き巣に狙われることも防げます。特に戸建の場合は、雑草が繁茂したり雨戸がずっとしまっていたりすると、長期間留守にしていると空き巣に狙われやすくなります。その点、リロケーションは防犯にも役立つでしょう。
3. リロケーションの注意点
リロケーションを依頼するときには、家賃相場のほか、契約方式や税金関係にも注意が必要です。引越した後の生活設計や資金計画に大きく関わってきますので、しっかり理解しておきましょう。
3-1. 家賃は相場よりも安め
リロケーションは、期間の制限がある賃貸になり、一般的な賃貸借にくらべて入居者に不利な契約になっていることが多いです。そのため、家賃を相場より安めにして賃貸募集するのが一般的です。賃貸期間にもよりますが、相場の80%~90%の家賃になることを予定しておいたほうが良いでしょう。
3-2. サブリース方式と管理委託契約方式がある
リロケーションの賃貸管理の方式には、サブリースと管理委託があります。サブリースは不動産管理会社が物件を一括借り上げする方式で、空室時にも賃料を受け取ることができるメリットがあります。一方で、管理料のほかに賃料の保証料を追加で支払う必要があるため、受取賃料は、シンプルな管理委託よりも低くなりがちです。
管理委託は、管理会社に賃貸管理を委託する方式で、管理手数料がサブリースよりも安くなります。一方で、空室リスクがある点は資金計画に織り込んでおく必要があるでしょう。
3-3. 住宅ローン控除が使えない
住宅ローン控除を活用するためには、自宅に自分や家族が住んでいなければなりません。リロケーションを行っている間は住宅ローン控除が使えませんので、住宅ローン控除を見込んで当初の資金計画を立てている場合には注意が必要です。
3-4. 確定申告の必要がある
リロケーションによる賃料収入は不動産所得となり、不動産所得が20万円以上になる場合には、確定申告が必要です。実際には、建物の減価償却費や住宅ローンの利息、管理手数料等を経費計上できるため、賃料がそのまま所得になるわけではない点も覚えておきましょう。
4. リロケーションの手続き
リロケーションのスケジュールは、転勤・赴任のスケジュールにも左右されます。引越し直前にドタバタしないよう、留守にすることが決まったら、早めの対応と決断が必要です。
4-1. スケジュールの確認
まずは、転勤・赴任までの期間、家を留守にする期間などのスケジュールを作成します。このスケジュールがリロケーション契約に反映されるため、重要な確認事項です。あわせて、住宅ローンがある場合には、金融機関の了解を得ておきましょう。転勤・赴任などの特別の理由があれば、金融機関の承諾も得られやすい傾向にあります。
4-2. リロケーション会社の選定
スケジュールのイメージがついたら、複数の不動産会社に賃料査定を依頼し、管理を委託する不動産会社を選定します。一般的な街の不動産屋さんではリロケーションの事例はそう多くはありません。不安であれば、リロケーションを多く取り扱っている大手の不動産会社をあたってみてください。
4-3. 賃貸借契約・管理契約の内容確認
転勤・赴任の期間や賃貸終了時に明渡しがスムーズにいかなかった場合にはどうするのかなど、さまざまな事情を考えて、担当者と相談しながらリロケーション契約の方式・内容を決定します。管理会社との契約について、サブリース方式にするか管理委託方式にするかは、赴任後の資金計画を考えて決定すると良いでしょう。
4-4. 清掃・クリーニング
引越し後は物件の清掃・クリーニングが必要です。クリーニング費用はオーナー負担になります。物件の補修箇所や設備の更新がある場合には、そのスケジュールや費用も考慮にいれてリロケーションの計画を立てる必要がある点も頭にいれておきましょう。
4-5. 賃貸募集・リロケーションの開始
賃貸募集や契約管理は管理会社に委託しますので、煩雑な手続きの手間はありません。管理会社とは離れた地域に移転してからのやり取りとなりますので、まめにコミュニケーションをとり状況を確認しましょう。
5. まとめ
リロケーションは、借地借家法に定期借家契約が盛り込まれたことで有用性が認められ、急速に広がっています。現在ではリロケーションを専門に受託している不動産会社もあるほどです。持ち家を留守にしなければならないときの活用方法として一般的になっていますので、転勤や海外赴任の際にはぜひ一度検討してみてください。
宅地建物取引士
株式会社イーアライアンス代表取締役社長。中央大学法学部を卒業後、戸建・アパート・マンション・投資用不動産の売買や、不動産ファンドの販売・運用を手掛ける。アメリカやフランスの海外不動産についても販売仲介業務の経験をもち、現在は投資ファンドのマネジメントなども行っている。
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