現在の土地価格は、不動産の購入や売却で一番気になる部分かもしれません。令和4~5年に地価は全国的に上昇し、令和5年地価公示では、上昇率が30%と全国最高になった地点もあります。30年以上続いた、地価の低迷から脱したとも言えるでしょう。地価上昇の報道などを耳にして、不動産投資や売却を検討する方も増えています。そこでこの記事では、土地の価格はどのように決まり、現在の価格を調べるにはどのような方法があるのか、宅建士がわかりやすく解説しました。
1. 土地価格の種類
土地の価格は大きく分けて、2種類あります。
1.公的機関が発表する指標としての標準的な価格
2.実際に売買取引された結果に基づく実勢価格
公的価格は国が調査し公表する価格と、都道府県が調査し公表する価格があります。土地取引の際、標準的な価格として活用されるほか、税制度における土地の評価額を定める基準にもなっています。
下図は数種類ある公的価格と実勢価格の関係をイメージとして表したものです。公的価格には「地価公示価格」と「基準地標準価格」があり、地価公示価格は「固定資産税評価額」と「相続税路線価」に反映されます。実勢価格は公的価格の影響をある程度受けますが、価格の決定は別の要因が大きく影響します。
1-1.地価公示価格とは
「地価公示法」に基づき、国土交通省が行う土地価格の公示制度により、毎年1月1日時点の価格を調査し3月に公表しています。この価格を「地価公示価格」と言い、単に「公示価格」と呼ぶ場合もあります。
全国26,000地点が標準地として定められており、毎年同一地点の土地価格を調査しています。そのため経年における価格の変動が把握しやすく、土地の標準的な価格として位置づけられるものです。
日本の土地価格は1990年代はじめのバブル崩壊により下落を続け、2007~2008年に一時的に上昇しますが、リーマンショックにより再び下落局面に入りました。その後、2017年にわずかな上昇がありましたが、コロナ禍の影響で下落。2022~2023年にようやく全用途で上昇が見られるようになり、現在に至っています。
1-2.基準地標準価格とは
地価公示価格から半年経過した、7月1日時点の価格を都道府県が調査しています。この調査を「都道府県地価調査」と言い、調査結果に基づく土地価格は「基準地標準価格」または「基準地価」と呼んでいます。
調査地点を「基準地」と言いますが全国に約20,000地点を指定しており、地価公示の標準地と同一の地点も含まれています。調査結果の公表は毎年9月であり、3月公表の地価公示価格と比較することにより、土地価格の変動傾向を把握することが可能です。
1-3.固定資産税評価額とは
固定資産税評価額とは、市区町村が土地の所有者に固定資産税や都市計画税を課税する際の「課税標準額」を決定する基準となる土地価格です。地価公示価格の70%が目安となっており、公示価格が公表された後に計算し4月頃に固定資産税が決定されています。
固定資産税評価額は本来、地価公示価格と連動するため毎年変動するものですが、現行制度では3年ごとに見直しがされており、見直しの年の地価公示価格が固定資産税評価額に反映されています。
なお2024年度は固定資産税評価額の評価替えの年であり、2023年と同様に地価公示価格が全国的に上昇すると、固定資産税・都市計画税も全国的に上昇すると考えて良いでしょう。
参考:固定資産税の概要 総務省
1-4.相続税路線価とは
相続税路線価とは国税庁が決定する土地の価格で、相続税や贈与税の課税の際に土地の評価をする目的で定める価格です。地価公示価格の80%が目安となっていますが、土地が接する道路(路線)ごとに標準的な価格を決めています。2方向や3方向に道路がある場合は、それぞれの路線価に基づき土地の評価額を計算します。
人口密度が少なく都市化のあまり進んでいない地域の場合は、路線価を決めずに固定資産税評価額に対する「倍率」を指定するケースもあります。
1-5.実勢価格とは
実勢価格とは、実際に売買されている価格が反映された土地価格であり、いわゆる「時価」とも言われます。不動産の売買は売主と買主の合意により最終的な価格が決定されるものですが、それぞれの売りたい事情や買いたい事情と希望などが、複雑に絡み合って価格が決まります。
そのようにして決定された売買価格を国は調査しており、一部の主要都市における売買情報がデータベース化され公表されています。また、不動産の仲介を行う宅地建物取引業者が参加する情報ネットワークでは、不動産の売買成約情報を蓄積しています。一般には公開されませんが、宅地建物取引業者は常に、実勢価格を把握できる環境になっています。
実勢価格と公的価格である地価公示価格との間に直接的な関連はありませんが、一般的に実勢価格は地価公示価格の1.1~1.2倍と言われています。ただし都心部では2倍以上になることもあり、実勢価格は公的価格よりもダイナミックな変動をすると理解しておく必要があるでしょう。
2. 土地価格の算出方法
土地価格をどのように算出するのか、前述した公的価格と実勢価格とでは価格を決定するプロセスが異なります。
公的価格は「不動産鑑定士」や「不動産鑑定士補」が行う不動産鑑定によって算出します。実勢価格は売主と買主の合意により最終的な価格が決定するとすでに述べましたが、売主は不動産会社が行う不動産査定による価格を参考として売出し価格を決め、そこに買主の希望などが織り込まれて最終的な売買価格が決まっています。
2-1.土地の価格を決める要素
土地価格の公的価格は不動産鑑定により算出され、実勢価格は不動産査定の結果がもとになっていますが、不動産鑑定と不動産査定とで土地を評価するポイントにあまり変わりはありません。
不動産鑑定は「不動産の鑑定評価に関する法律」に基づく公的なものであり、不動産査定は実際の不動産取引の現場において、宅地建物取引業者としての免許を有した事業者が行う任意の価格算定です。
ただし不動産の評価方法に大きな違いはなく、不動産査定は不動産鑑定で用いられる手法により「いくらで売れるか?」といった視点で価格を算出します。
ここからは、不動産査定の際に重視するポイントを見ていきましょう。
法的規制
土地の評価のポイントとして「利用の制限」というものがあります。主に都市計画法などの法律上の規定による制限のことです。建物の高さに厳しい制限がある地域や、建てられる建物の種類が限定されるような土地は評価が低くなり、制限のゆるい地域ほど利用価値が高くなり評価も高くなります。
わかりやすい例としては、都市計画で「商業地域」に指定された土地と、一般住宅しか建てられない「低層住居専用地域」とでは、土地の面積に対する建物の床面積の制限(容積率)が数倍も違います。
商業地域は土地価格が高く、低層住居専用地域は低くなりますが、容積率の違いが土地価格に影響するのです。
また土地が有害物により汚染されているケースや地中に埋蔵文化財があるなど、利用の制限や利用できる状態にするまでに多額の費用がかかるケースもあります。そのため、法的規制が厳しいほど評価は低くなる傾向があります。
利便性
鉄道などの公共交通機関や道路交通条件の良いエリア、商業施設や娯楽施設が充実したエリア、あるいは医療機関や教育機関が近いなど、人によって優先度は違いますが、利便性の高いエリアにある土地の評価は高くなります。
とくに「駅徒歩圏」はさまざまな施設が建ち並ぶため、少々他の条件が劣っていても高くなる傾向があります。また、利便性は「良い立地」と同じような意味合いがあり、資産価値を決定する重要な要素と言えるでしょう。
形状や面積
土地の形状や面積によっても評価が左右されます。変形地や奥行の長い土地などは使いづらく、高低差のある土地は造成費用がかさむ場合もあり、評価は低くなる傾向があります。
面積も重要な要素です。例えば100坪以上の宅地は一般の住宅用地としては広過ぎますが、分割することのできない形状では価格帯が高くなり売却が難しい場合もあるでしょう。逆に面積の小さな土地は、建てられる建物の面積制限により用途が限定されるため、用途の選択範囲が狭く評価は低くなる傾向があります。
接道条件と方位
建物の敷地は原則的に一定の幅の道路に2m以上接していなければなりません。これを接道要件と言い、要件を満たせていない土地には、建物を建てることができません。
接道要件をぎりぎり満たしている土地と、接道要件を十分満たしている土地とでは評価が変わります。また1方道路よりも2方向に道路が接するケースや、いわゆる角地などは人気があり評価は高くなります。このほか、日当たりの条件も重要で、北側に道路があるよりも南側に道路があるほうが土地価格は高くなります。
需要状況
「住みたい街ランキング」などのように人気の高いエリアというものがあります。住宅地としての良い条件が揃っているエリアですが、住宅地だけではなく、商業地としてあるいは工業地としてなど、用途によって需要の高いエリアがあります。
2023年の地価公示では住宅地と商業地の変動率上位が、北海道札幌市周辺の都市に集中するといった現象がありました。
一方変動率下位を見ると、住宅地と商業地の下位10都市の半分以上が北海道の都市であり、需要の増減により二極化している状況が見て取れます。
将来性
日本はすでに人口減少社会となっており、世帯数も2023年をピークに今後は減少すると言われています。このような状況に対し全国的に「コンパクトシティ」政策が進むと考えられ、将来的に人口がより減少するエリアがあります。
反面、利便性の高いエリアは人口・世帯数の増加傾向が期待でき、将来性の視点が土地価格を決定するうえで重要な要素となるでしょう。
例えば、都心における再開発が活発になっています。三大都市圏だけでなく地方都市においても都心部の土地価格上昇は続くでしょう。地方都市では半導体の企業誘致で見られたように、地方の産業が発展する可能性のあるエリアは土地価格の上昇が期待できます。
将来性のあるエリアは投資対象としても期待されるため、需給状況以上に土地価格を上昇させる圧力がかかります。さらに金利や円安といった経済的環境が土地価格を押し上げる要因ともなり、「将来性」という要素は土地価格を決める極めて大きなポイントと言えるでしょう。
3. 土地価格を調べるには
現在は、インターネットでほとんど把握できます。下表は公的価格と実勢価格を調べる方法をまとめたものです。
土地価格の種類 | 調査の方法 |
---|---|
地価公示価格基準地標準価格 | ①国土交通省の標準地・基準地検索システム |
固定資産税評価額 | ②市町村窓口または固定資産税納付書 |
相続税路線価 | ③国税庁の路線価図・評価倍率表 |
上記4つの公的価格 | ④全国地価マップ |
実勢価格 | ⑤国土交通省の不動産取引価格情報検索 |
表の中に④「全国地価マップ」がありますが、4つの公的価格をひとつのサイトで確認できる便利なサイトです。
3-1.地価公示価格と基準地標準価格の調べ方
地価公示価格と基準地標準価格は、国土交通省が運営する①「標準地・基準地検索システム」で調べることができます。
【サイトの使い方】
1.地図上で調べたい都道府県をクリックし市区町村を選択
2.地価公示か都道府県地価調査のどちらかを選択するか、両方を選択することも可能
3.調査する年代と用途区分(住宅地や商業地など)を選択して検索
選択した市区町村内の指定地点の情報が一覧で表示され、地図上で地点を確認することもできます。
表示される地点は全国の数万点ですので、調べたい土地と同一エリアか近いエリアの地点のデータを確認し、調べたい土地の価格情報として参考にしてみてください。
3-2.固定資産税評価額の調べ方
固定資産税評価額は市区町村の窓口で「固定資産税評価証明書」を取得すると確認できます。また、手元に「固定資産税納付書」があれば、評価額が記載されているので証明書を取得する必要はありません。
評価替えの年に該当する場合は、4月以降に市区町村で調べるか納付書が届くのを待ちます。市区町村で調べる場合、土地が自身の所有でない場合は所有者の委任状が必要ですので注意しましょう。
3-3.相続税路線価の調べ方
相続税路線価は国税庁が運営する③「路線価図・評価倍率表」で調べることができます。
【サイトの使い方】
1.調べたい地点の都道府県を選択し「路線価図」を表示させる
2.調べたい市区町村をクリックし表示された「字名」の路線価図ページ番号をクリック
3.詳細地図上で調べたい地点の路線価を確認する
路線価は、都市部であればほとんどの道路に路線価が記載されています。路線価が記載されていない場合は「倍率表」を確認します。倍率表とは、路線価を算出するために固定資産税評価額に掛ける係数を一覧表にしたものです。サイトの使い方の1番目の手順に戻り「評価倍率表」から土地の用途を選択し、地名を選択すると倍率表が表示されます。
3-4.実勢価格の調べ方
実勢価格を調べる場合、現状の相場を知っておきたいといった理由や、売るとしたらいくらになるかなど、いくつかの目的があると思います。その目的により方法は異なりますが、実勢価格を調べるには2つの方法があります。
1.最新の実績を含めて調べるには⑤「不動産取引価格情報検索」を利用します。
2.現時点の売買予想価格を知りたい場合は不動産査定を依頼します。
不動産取引価格情報検索の使い方
⑤「不動産取引価格情報検索」は2通りの方法があります。
1.特定の地点やエリアの価格を調べる
2.任意の市区町村の価格情報をデータとして取得する
知りたいエリアや地点がある場合は、地図上で地点を指定しデータを表示させることができます。過去からの推移を知りたいなどの目的でデータを取得したい場合は、期間と市区町村を指定して検索するとデータが一覧表示され、CSVデータとしてダウンロードすることが可能です。
価格は実際に取引きされた価格がベースとなっており、一般的な条件で売買されたケースや、特殊な事情が価格に反映されているケースもあります。データを活用する際には特殊事情などを考慮する必要がありますが、実際の売買価格データですので非常に参考になるでしょう。
不動産査定の依頼方法
上記の不動産取引価格情報検索のデータは、すでに売買された「過去の価格」という性格があります。
対して、不動産査定により算出する価格は「売れると思われる価格」であり、現在価格あるいは将来価格という性格があります。そのため、価格査定する目的を明確にして査定依頼することが望ましいでしょう。不動産の売却計画があり、そのために不動産査定を依頼するケースでは目的が2つあります。
1.売出し価格決定のため
2.売却を依頼する不動産会社を選ぶため
この2つの目的を満たすためには、複数の不動産会社に査定依頼することが重要です。不動産査定は「現在価格」や「将来価格」の性格があるため、不動産会社により評価の方法や視点に微妙な違いがあり査定価格に幅があります。
また査定のプロセスの中で、それぞれの不動産会社の姿勢や担当者の人間性などを知ることができ、売却を依頼する会社として相応しいかどうかを判断することも可能です。不動産を売却する場合には、必ず行う必要があると考えられるでしょう。
4. まとめ
土地価格には公的機関が公表する「地価」と、実際に不動産市場で取引きされる「実勢価格」があります。公的価格は毎年2回調査の結果を公表しており、この結果にはある程度実勢価格が反映されますが、実勢価格とは異なる体系の価格と認識する必要があるでしょう。
実勢価格は実際の売買取引きの結果であり、そのもとになる不動産査定には公的価格がある程度影響する場合もありますが、公的価格から想像される価格とは、異なる価格帯で取引きされることも少なくありません。公的価格と実勢価格を調べる方法もありますが、売却計画がありその検討のために価格を調べるのであれば、不動産査定を依頼することが、より正確な価格を算出する近道となるでしょう。
一級建築士・宅地建物取引士
国立大学建築工学科卒業後、一部上場企業にてコンクリート系工業化住宅システムの研究開発に従事、その後工業化技術開発を主体とした建築士事務所に勤務。資格取得後独立自営により建築士事務所を立ち上げ、住宅の設計・施工・アフターと一連の業務に従事し、不動産流通事業にも携わり多数のクライアントに対するコンサルティングサービスを提供。現在は不動産購入・投資を検討する顧客へのコンサルティングと、各種Webサイトにおいて不動産関連の執筆実績を持つ。
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