住宅ローンを組む際、連帯保証人の設定が必要になるケースがあります。多くの場合、配偶者や親がその責任を担うことが一般的です。連帯保証人が設けられた家は、売却する際いくつか注意点があります。
本記事では、「売却したい家の住宅ローンに連帯保証人が設けてあったかわからない」「連帯保証人のいる住宅ローンが残っていても売却できるか」など悩んでいる人向けに、住宅ローンの連帯保証人について基本的な情報をまとめました。契約内容の確認方法や売却時の注意点まで幅広く解説しているので、ぜひ参考にしてください。
1. 【独自調査】住宅ローンの連帯保証人に関するアンケート
本記事では、住宅ローンで連帯保証人を立てている人がどれだけいるのか調べるために、住宅ローンを組んだことがある夫婦にアンケート調査を実施しました。
アンケートの結果から、約6割の人は住宅ローンを組む際に連帯保証人を立てておらず、連帯保証人を立てずに住宅ローンを組むことは珍しくないことがわかります。
一方で、連帯保証人を立てて住宅ローンを組んでいる人は約4割いることがわかりました。マンション価格の高騰もあり、ペアローンや収入合算など、連帯保証人の設定が求められる形式で住宅ローンを組む夫婦も少なくないようです。
2. 住宅ローンの連帯保証人とは
そもそも、住宅ローンの連帯保証人とはどのような制度でしょうか。この章ではまず、連帯保証人について基本的な情報を解説します。
2-1.債務者に代わって返済の義務を負う人
連帯保証人とは、住宅ローンの主な債務者が返済できなくなった場合に、代わって返済の義務を負う人のことです。連帯保証人は、債務者と同等の返済責任を負い、住宅ローンを完済するまで返済義務は続きます。
連帯保証人には、主に配偶者や親・子が設定されることが多いです。保証人として契約するには、保証人本人の同意が必要なので、債務者本人だけの意思では設定できません。
また、複数人が連帯保証人になることもあります。その場合、保証人全員が返済の義務を負います。
2-2.原則住宅ローンに連帯保証人は不要
基本的に住宅ローンの契約に連帯保証人は必要ありません。住宅ローンの契約では、購入する家を担保とする、もしくは必要な場合は保証会社による保証を受けられるためです。
住宅ローンを契約する際、金融機関は抵当権を設定します。抵当権とは、住宅ローンの返済が滞った際に担保とした家を競売にかけて弁済を得られる権利のことです。つまり、家を担保にすることで同じような保証を得られるので、連帯保証人を設定する必要はないと考えられます。
また、保証人が必要なケースでも、個人ではなく保証会社に保証依頼が可能です。保証料は金融機関によって異なりますが、ローンの返済が滞った場合には保証会社が金融機関へ返済を行う仕組みです。
※関連記事:抵当権とは?売却・購入の流れや費用
2-3.連帯保証人と連帯債務者の違い
連帯保証人と似た言葉として、連帯債務者という用語があります。連帯保証人の場合は、主たる債務者とその保証人という形で契約しますが、連帯債務者は全員が主たる債務者として返済の義務を負います。
例えば夫婦が連帯債務者として住宅ローンを契約すると、夫と妻がそれぞれ債務者となって返済が必要です。合計の返済額が変わらなければ、夫婦間で負担の比率を変えられる点がメリットです。
また、住宅ローン控除や団体信用生命保険への加入といった、ローン契約によるメリットを債務者それぞれが得られる点も魅力でしょう。
3. 連帯保証人が設定される住宅ローンの例
住宅ローンには、原則連帯保証人を設定する必要はありません。しかし、契約したローンの種類や購入の仕方によっては、連帯保証人が設定されている場合があります。
ペアローンを利用した場合や、収入合算で審査を受けた場合、共有名義で家を買った場合のいずれかに当てはまるときは、連帯保証人が設定されていることがあるので確認が必要です。それぞれのパターンについて詳しくみてみましょう。
3-1.ペアローンを利用したケース
ペアローンで家を購入した場合、配偶者や親子が連帯保証人として設定されていることが多いです。
ペアローンとは、同居する親族(夫婦・親子など)がそれぞれ主たる債務者として組む住宅ローンです。双方が債務者となり、それぞれが相手の連帯保証人として設定されます。金融機関によっては、同性のパートナーや同居予定の婚約者など、親族でない場合でもペアローンを組めるケースもあります。
夫婦や親子両方の口座からローンの引き落としがおこなわれている場合では、お互いが連帯保証人となっていることが多いです。契約内容を確認してみてください。
3️-2.収入合算で審査を受けたケース
家を購入する際、夫婦や親子など複数人の収入を合わせて住宅ローン審査を受けた場合も、連帯保証人が設定されているケースがあります。このように、2人の収入を合わせて住宅ローン審査を受けることを、収入合算といいます。
収入合算とペアローンの大きな違いは、住宅ローンの契約が1つである点です。収入合算で審査を受け融資を受けた場合、片方が名義人として住宅ローンを契約し、もう一方が連帯保証人になります。ローンの引き落とし口座も1つになるので、連帯保証人になったか覚えていないケースもあるかもしれません。
収入合算で審査を受けたケースでも、結果片方の収入のみで住宅ローンを組む場合もあります。その場合は基本的に連帯保証人の設定はありません。
3-3.共有名義で物件を購入したケース
最後に、購入した不動産を夫婦や親子の共有名義で所有している場合、連帯保証人の設定がある可能性が高いです。
共有名義で物件を所有する場合、代表者が住宅ローンの名義人として主たる債務者になります。その他の共有名義者は、住宅ローンの連帯保証人として契約することが一般的です。
所有する家が共有名義かどうかは、法務局で登記簿謄本を取得して確認しましょう。
※関連記事:不動産登記とは?かかる費用や証明書の取得方法
3-4.保証人の有無は契約書や個人信用情報を確認
返済中の住宅ローンに連帯保証人が設定されているかどうかは、まずは住宅ローンの契約書を確認しましょう。ネット銀行などで借り入れた場合、書面で保管せず、金融機関のホームページにログインして確認できる場合もあります。契約書の「保証」や「保証委託」などの項目を確認しましょう。
契約書を見てもわからない場合や、事情があって契約書が見られない場合には、個人信用情報を確認する方法もあります。連帯保証人になっている可能性のある人が、自身の信用情報を調べることで、保証人としての契約があるか確認が可能です。
一般的な金融機関でローンを借り入れた場合は、全国銀行協会の個人信用情報センターで登録情報の開示を申し込めます。その他の業者から借り入れた場合は、指定信用情報機関(CIC)で開示を申し込みましょう。
4. 住宅ローンから連帯保証人を外す方法
連帯保証人は、金融機関との契約で設定されているので、容易に外すことはできません。住宅ローンの契約から連帯保証人を外したい場合、主に3つの方法が考えられます。住宅ローンを借り換える・繰り上げ返済して完済する・家を売却するの3つです。それぞれの方法を詳しくみてみましょう。
4-1.連帯保証人不要の住宅ローンに借り換え
まず、連帯保証人がいらない住宅ローンに借り換えるという方法があります。借り換える段階で、現在の住宅ローンを完済するため、債務者・連帯保証人共に契約が外れることになります。
住宅ローンの借り換えは、金利が下がって返済負担が軽減されたり、返済期間が短縮されたりする可能性がある点がメリットです。また、金融機関によっては団体信用生命保険の保証内容が充実する場合もあります。
ただし、借り換えにはデメリットもあります。まず、住宅ローンの審査や契約といった手続きの手間がかかる点です。また、現在の住宅ローンを一括返済する手数料や、事務手数料といったコストも発生します。金融機関によっては、借り換えをすることで返済負担が大きくなる恐れもあるので、金融機関選びは慎重におこないましょう。
4-2.余裕資金で繰り上げ返済する
繰り上げ返済をして早期の完済を目指すことも選択肢のひとつです。余裕資金がある場合に限る方法ですが、完済してしまえば住宅ローンの支払いがなくなるので、生活にゆとりが生まれるメリットもあります。
繰り上げ返済は、一度に返済すると手数料がかかるケースが多いので、一部繰り上げ返済を都度おこなうほうが効率的です。毎月の返済額を安くしたり、返済期間を短縮したりできるので、家計の負担も減らすことができます。
ただし、繰り上げ返済は手元の資金が減る・住宅ローン控除額が減るなどのデメリットもあります。
4-3.アンダーローンの状態で家を売却する
最後に、家を売却する方法があります。住宅ローン残債があっても、成約価格で完済できれば家の売却は可能です。このように、成約価格で相殺できる住宅ローンの状態をアンダーローンといいます。アンダーローンであれば、売却時に住宅ローンが完済されるため、連帯保証人の契約が外れます。
対して、オーバーローンとは、成約価格でも住宅ローンが完済できない状態です。オーバーローンの場合は、自己資金や他のローンを使って残りを返済するか、任意売却を利用することになります。任意売却については、後の章で詳しく解説します。
住宅ローンの状態は、不動産会社の査定で確認しましょう。査定は無料なので、気軽に利用できます。
5. 連帯保証人がいる不動産を売却する注意点
連帯保証人を外したいときや、返済が滞って家を手放したいときは、不動産を売却する方法があります。ただし、連帯保証人が設定された家を売却する場合、いくつかの注意点があります。それぞれの注意点を詳しく解説します。
5-1.売却時はローンの完済が必要
まず、不動産を売却する場合、住宅ローンを完済する必要があることを念頭に置いておきましょう。住宅ローンが残っている場合、成約価格で完済するのが一般的です。
住宅ローンを利用して購入した家には、抵当権が設定されています。抵当権がそのままでは家を手放すことができないので、住宅ローンを完済し、抵当権を抹消する手続きが必要です。成約価格でローン残債が払いきれない場合は、自己資金などで補って完済する必要があります。
また、連帯保証人が設定されている場合は、連帯保証人にも売却の同意を得たほうがスムーズです。離婚などの事情がある場合でも、売却する際は相談して同意を得ておきましょう。
※関連記事:【不動産売却】住宅ローン返済中の家を売る方法とは?売却方法や注意点を解説!
5-2.連帯債務型は売却に同意が必要
双方が債務者となる連帯債務型の住宅ローンを契約している場合、片方の意思のみでは売却ができません。売却するには、双方の同意が必要です。
連帯債務型の場合、夫婦や親子の共有名義で不動産が登記されていることが多いです。しかし、住宅ローンの契約を双方がおこなっているため、共有者の同意を得ずに片方の所有分のみを売却することはできません。同意があれば片方の所有する分だけを売却することは可能ですが、もう一方が所有する部分に抵当権が残るため、現実的には売却は難しいでしょう。
双方の同意を得て売却したほうが、成約価格も高額になりやすいです。協力して売却活動をおこなうほうが無難でしょう。
5-3.任意売却は連帯保証人の同意を得る
売却しても、成約価格で住宅ローンが完済しきれないオーバーローンの家は、任意売却という選択肢があります。任意売却とは、住宅ローンを借り入れた金融機関の同意を得て、家を売却する方法です。主に住宅ローンの返済が厳しくなった際、競売に代わる方法として用いられます。
任意売却をおこなう場合、連帯保証人の同意が必要です。任意売却では、売却後も連帯保証人に支払い義務が残ります。連帯保証人は、債務者が任意売却後に自己破産などした場合でも支払い義務が残るため、事前の同意が必須です。
任意売却は競売よりも高く売却でき、任意売却後に任意整理ができるなど、連帯保証人にもメリットがあります。しかし、連帯保証人に支払い義務が残るなどの理由から、トラブルに発展するケースも多いです。本当に売却が必要なのか、他の選択肢も含めてよく検討する必要があります。どうしても任意売却が必要なら、任意売却の経験が豊富な不動産会社に相談しましょう。
6. まとめ
住宅ローンの契約には、連帯保証人が設定されているケースもあります。例えば、ペアローンを組んだ場合、収入合算した場合、共有名義で家を持っている場合などは、連帯保証人がいる可能性が高いです。連帯保証人を外す方法には、住宅ローンの借り換えや完済、売却などの選択肢があります。
連帯保証人が設定された住宅ローンが残る家を売却する場合、連帯保証人に売却の同意を得る必要があります。成約価格で完済できるアンダーローンのときは問題ありませんが、オーバーローンの場合は、自己資金を使ったり、任意売却したりといった工夫が必要です。特に任意売却の場合、連帯保証人とトラブルになるケースもあるので気を付けましょう。
本記事を参考に、住宅ローンの契約状況を確認し、スムーズな売却を目指しましょう。
※本記事は2024年4月9日時点の情報をもとに記載しています。法令等の改正により記載内容について変更となる場合がございますので予めご了承ください。
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