不動産売却をおこなう際には、不動産会社と媒介契約を結ぶことが一般的です。しかし、一口に媒介契約といってもいくつか種類があり、何を選べばよいのか迷ってしまう人も少なくありません。
専任媒介契約は、複数種ある媒介契約の形態の一つです。専任媒介契約の特徴を把握し、媒介契約を結んで不動産売却を次のステップに進めましょう。
この記事では、専任媒介契約の基礎知識やメリット・デメリットについて解説します。不動産売却で媒介契約を結ぼうとしている人や、不動産売却を検討中の方はぜひご覧ください。
1. 【独自調査】専任媒介契約に関するアンケート
本記事では不動産を仲介で売却した人を対象に、不動産仲介会社とはどの媒介契約を結んだのかをアンケート調査しました。
アンケートの結果は、一般媒介契約が46%、専任媒介契約が44%、専属専任媒介契約が9%となり、他の不動産仲介会社や買主の自己発見などの手段を残して売却活動をおこなう人が多いことがわかりました。
専任媒介契約にも囲い込み等のデメリットはありますが、レインズへの登録など一般媒介契約よりサポートが手厚いメリットもあります。どの契約方法が自分たちにあっているのか、それぞれの契約方法の特徴や違いを理解して判断するようにしましょう。
2. 不動産会社への売却依頼で媒介契約
まずは媒介契約そのものの意味について把握しましょう。媒介契約とは、不動産会社に物件の取引が成立するまでのサポートを依頼する契約の形態を指す言葉です。
現代の不動産取引では、売主・買主ともに不動産会社と媒介契約を結ぶことが一般的で、住居や不動産の売買・交換・賃貸と幅広い分野で用いられています。
不動産売買の媒介契約には「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」の3種類が存在します。これらの契約形態は宅地建物取引業法によってさまざまなルールが定められており、それぞれ異なった特徴やメリット・デメリットを持っています。
3. 専任媒介契約の5つの特徴
他の2種の媒介契約との違いを踏まえたうえで、専任媒介契約の特徴を見ていきましょう。専任媒介契約の特徴は、主に次の5点となります。
- 売却を依頼できる不動産会社は1社
- 自身で見つけた買主に売却できる
- 契約期間は3ヵ月
- レインズへの登録義務
- 2週に1回以上の業務報告
それぞれの詳細について解説します。
3-1.売却を依頼できる不動産会社は1社
まず、専任媒介契約の把握しておきたい特徴として「売却活動を依頼できる不動産会社は1社だけに限られる」という点が挙げられます。専任媒介契約の契約期間中は、他の不動産会社へ売却の依頼ができなくなります。
「複数の不動産会社に依頼できるかどうか?」という点は、特に一般媒介契約との大きな差異となっています。一般媒介契約であれば、契約数に制限なく複数社への依頼が可能です。
なお、専属専任媒介契約は専任媒介契約と同じく1社のみと契約が可能です。
3-2.自身で見つけた買主に売却できる
専任媒介契約と専属専任媒介契約は共に1社のみと契約が可能な媒介契約となっていますが、2種類の違いは「売主自身が買主を発見し売却(自己発見取引)できるかどうか?」という点にあります。専属専任媒介契約が不可能である一方で、専任媒介契約は可能です。
専任媒介契約を契約すると、不動産会社の担当者に買主を探してもらっている最中でも、売主自身が条件のよい買主を発見できた場合には自己発見取引で売買契約を結ぶことができます。自己発見取引は、基本的には仲介手数料も発生しません(契約内容によっては費用発生の可能性あり)。
しかし、自己発見取引は仲介となる不動産会社がいないため、自分で契約書を作成し、手続きをおこなう必要があります。法的な知識や確実な合意がないとトラブル発生の恐れもあるため、自己発見取引は不動産取引の知識を持っている人向けの取引方法といえるでしょう。
3-3.契約期間は3ヵ月
専任媒介契約の契約期間は、宅地建物取引業法によって最大3ヵ月と定められています。
契約期間は売主と不動産会社の双方の合意により更新が可能ですが、自動更新の条項を特例に設けても法的に無効とされます。
専任媒介契約と専属専任媒介契約には3ヵ月の制限がありますが、一般媒介契約書には法的規制がありません。しかし、行政指導上は一般媒介契約であっても3ヵ月が目安となっています。「3ヵ月以内に売れるかどうか」は不動産売却における一つの指標と言えるでしょう。
約更新の際には、売主が積極的に関与し、自らの条件に最適なサービスを選択することが重要です。
3-4.レインズへの登録義務
売主と専任媒介契約を結んだ不動産会社は、物件の情報をレインズに登録する必要があります。期限は契約締結の翌日から7日以内です。
レインズ(Real Estate Information Network System)は、国土交通省から指定された不動産流通機構が運営する不動産のネットワークシステムです。会員になっている全国の不動産会社は、登録されている物件情報の閲覧が可能です。
不動産取引の透明性や情報共有のスピードを高めるうえで、レインズは重要な役割を果たしています。なお、一般媒介契約の場合は不動産会社の任意登録ですが、専任媒介契約はより適正・公平な取引を実現するため、レインズへの登録が義務化されています。
3-5.2週に1回以上の業務報告
専任媒介契約を締結した場合、不動産会社は2週間に1回以上、売主に対して営業活動の報告を行う義務があります。報告は紙の文書、あるいは電子メールで実施されます。
不動産会社の営業は、売却活動を成功させるうえでとても重要な要素です。契約社が1社に限られる専任媒介契約ではなおさらです。必ず不動産会社から定期的に報告を受け、状況を確認するようにしましょう。
なお、一般媒介契約においても不動産会社は売主に報告するよう求められていますが、法的な義務はではありません。
4. 専任媒介契約で売却するメリット
他の媒介契約と比べ、専任媒介契約で売却するメリットは次の通りです。
- 一般媒介契約より対応の負担を軽減
- 専属専任媒介契約より買主探しの選択肢拡大
- 利用できる不動産会社のサポートが増加
- 売却活動の進捗状況の把握が容易
4-1.一般媒介契約より対応の負担を軽減
専任媒介契約を選ぶことによるメリットとして、対応の負担が軽減される点が挙げられます。売却活動を一つの不動産会社に委ねることができるため、内覧のスケジュール調整や情報の共有の手間がかからずに済むのです。
一般媒介契約では、複数の不動産会社に依頼するため、それぞれの会社とコミュニケーションを取り合う必要があります。メールや電話など個別に対応が求められるため、負荷がかかってしまう恐れがあります。
普段の生活や仕事をこなしながら売却活動を進めるときには、専任媒介契約で売却活動を一元化するほうが負担を軽減できるでしょう。
4-2.専属専任媒介契約より買主探しの選択肢拡大
専任媒介契約と専属専任媒介契約の大きな違いは「自己発見取引ができるかどうか」という点にあります。専任媒介契約で自己発見取引を積極的に活用しようとすれば、買主探しの選択肢を拡大できるでしょう。
専属専任媒介契約の場合は、仮に自身で条件のよい買主を見つけても売買契約ができません。一方、専任媒介契約であれば自身で買主を見つける選択肢を残せますが、このメリットは一般媒介契約にもあることを留意しておきましょう。
しかし、自己発見取引には複雑な知識が求められ、トラブルもある手続きです。そのため現在は自己発見取引で不動産売買をおこなう人が少ない傾向にあります。不動産取引の専門的な知識がない場合、選択肢拡大のメリットを受けにくい可能性には注意が必要です。
4-3.利用できる不動産会社のサポートが増加
専任媒介契約を選択することで、売却プロセスを支援する多様なサービスを利用できるようになります。一般媒介契約では、不動産会社の独自サポートが使えないケースがあるため、大きな利点と言えるでしょう。
例えば、「野村の仲介+」の戸建売却では次のようなサポートを利用できます。
野村の仲介+の戸建て売却サポート |
内容 |
あんしん設備補修 |
住宅設備に関して、専門家が検査・補修し、引渡し後、万が一不具合が発生した場合、補修を受けることができるサービス |
あんしん建物補修 |
建物に関して、専門家が検査・補修し、引渡し後、万が一不具合が発生した場合、補修を受ける事ができるサービス |
ホームステージング |
「モデルルーム」のようなインテリアコーディネートをし、最大限に魅力を引き出し、住まいの価値を高める |
ホームクリーンアップ |
居住中の住まいの、片付け・クリーニングを共にプロの手で行い、美しく見せる |
ハウスクリーニング |
汚れが目立ちやすい室内箇所をプロがクリーニング 部屋の印象アップ |
荷物一時預かり |
ゴルフバッグやキャリーバッグ、家電など、売却期間中、一時的に荷物を最大10点預かり |
リユース回収 |
住まいに残されている家具などの不要なものを最大20点まで提携サービス会社がまとめて回収 |
あんしん土地診断(土地測量) |
顧客が所有する土地・戸建に対して、土地測量の専門家が調査を実施し、無償で仮測量を作製 |
4-4.売却活動の進捗状況の把握が容易
専任媒介契約の下で売却活動をおこなう際、不動産会社は定期的な業務報告の義務があります。売主は報告義務によって売却進捗の把握が容易となり、いつでも最新の市場動向や買主の反応を知ることができます。
一般媒介契約には業務報告の義務はないため、報告を求めても十分に対応してくれない可能性があります。また、一般媒介契約は価格の見直しを依頼した際に複数社の足並みが揃わないと、二重価格のようにネット掲載されてしまうことも留意しておきましょう。
専任媒介契約であれば、売却活動を一元化できるため、進捗管理も容易
5. 専任媒介契約で売却するデメリット・注意点
専任媒介契約には複数のメリットがありますが、次のポイントがデメリットになる恐れもあるため注意しておく必要があります。
- 売却できるかは担当の実力の影響が大きい
- 囲い込みをされるリスク
- 売却中であることを周知される
5-1.売却できるかは担当の実力の影響が大きい
専任媒介契約の注意点の一つとして、不動産会社の担当者の実力次第で、物件の売却の成否が大きく左右される点が挙げられます。担当者の能力や経験が足りていないと、想定通りの価格や期間で売却できない可能性があるでしょう。
一般媒介契約でも担当者の実力は重要ですが、専任媒介契約は1社のみに依頼先を絞る分、担当者の実力に依存する度合いは高いといえます。もちろん、実力のある担当者と結びつくことができればよりよい成果が得られるでしょう。
1社のみに依頼する都合上、担当者が独りよがりな視点に陥ってしまう可能性もあります。そうしたケースを防ぐためにも、担当者とは密に連絡をとって、なんでも質問や相談をできる関係を作るようにしましょう。
5-2.囲い込みをされるリスク
専任媒介契約には囲い込みのリスクがあります。囲い込みとは、不動産会社が物件の売買を独占し、他の仲介業者や買い手に情報を公開しない行為を指すものです。
囲い込みは不動産会社にとっては利益を追求しやすい手法となりますが、売主にとってはデメリットになる場合もあります。囲い込みは売却機会を減らし、市場価格より低い価格での売却や売却プロセスの長期化の原因となりがちです。
売主が自ら囲い込みをされていることに気付くことは簡単ではありません。
5-3.売却中であることを周知される
専任媒介契約に限らないことですが、不動産会社に仲介を依頼した場合、買主を探すため広告が出されることになります。「不動産の売却を知られたくない」という人にとって、プライバシーの問題が発生します。
しかし、買主を探そうとすれば広告を出すことは避けられないと言えます。広告に立地や物件外観が映る都合上、マンションよりも戸建ての方が特定されやすい傾向があるため、戸建てを売りたい人にとっては気になるかもしれません。水面下での売却については、事前に担当者へ相談しましょう。
どうしても売却活動を知られたくない場合には、不動産買取という選択肢もあります。不動産買取は不動産会社に直接物件を買い取ってもらう方式の取引で、仲介よりも成約価格は下がりますが、より確実に売れやすいというメリットもあります。
6. 専任媒介契約する不動産会社の選び方
専任媒介契約を結ぶ際には信頼できる不動産会社を選ぶことが大切です。不動産会社の選び方についても把握しましょう。
専任媒介契約を結ぶ際に意識したい不動産会社の選び方は、主に次の3点です。
- 不動産会社の提供サービス
- 不動産の査定額
- 不動産会社の担当の対応
6-1.不動産会社の提供サービス
不動産会社の提供サービスを比較し、専任媒介契約を結ぶ会社を選ぶようにしましょう。特に、売却活動をサポートするサービスが充実しているかどうかは、不動産をスムーズかつ効果的に売却するための鍵となるでしょう。
例えば、ハウスクリーニングのサービスなどが付随している会社と媒介契約を結ぶことができれば、プロの技術で部屋の見栄えを改善してもらえるため、内覧時に大きな利点となります。また測量などの売却時に必要なプロセスを一元化できれば費用節約にもつながります。
サービスが利用できるかどうかは、専任媒介契約を結ぶか以外にも条件がある場合があります。契約締結前にあらかじめ確認しておくようにしましょう。
6-2.不動産の査定額
不動産の査定額が相場から高すぎず、低すぎない不動産会社を選ぶことが大切です。相場から極端にはずれた査定をするところは避けるようにしましょう。
査定額の正確さをチェックするためには、まず自分で相場感を掴むことが大切です。査定を複数社で受けて比較することが有効でしょう。また、査定をおこなった担当者に査定額の根拠を聞くことも大切です。
6-3.不動産会社の担当の対応
担当者の対応力をチェックすることも大切です。利用予定の店舗の評判を事前に確認しておくようにしましょう。
店舗に赴き、実際に話してみて信頼できるかどうかを判断できればベストです。評判がよいところでも、担当と相性があわないケースがあります。
口コミや評判はインターネットで調べることができますが、信憑性に問題があることも否めないため、参考程度にしておきましょう。
7. 専任媒介契約で売れない時の対策
不動産売却において、物件が予定通りに売れない可能性は常に考えられます。次のような対策を把握しておくことも大切です。
- 売り出し価格の値下げ
- 媒介契約する不動産会社の変更
7-1.売り出し価格の値下げ
相場にあわせた価格にしていても、買主が見つかる保証はありません。そうした際に対策としてまず考えられるのは売り出し価格の値下げですが、ただ値下げをすればよいというわけではありません。
値下げをおこなう際には、スケジュールを決めて計画的に値下げをすることが大切です。焦っていきなり大幅な値下げをおこなうと、想定以上に低い価格で売却しなければならないことになります。
特に過度な値下げがオーバーローン(成約価格がローンの借入額を下回ること)を引き起こさないよう注意が必要です。
7-2.媒介契約する不動産会社の変更
専任媒介契約で売れない場合は、不動産会社の変更も検討してみましょう。現在契約している不動産会社よりも信頼できる会社を探すことが大切です。3ヵ月経過後の契約更新をしなければ、スムーズな解約がおこなえます。
サービスに不満があるといった理由での途中解約は困難ですが、万が一義務の不履行をおこされた場合には途中解約を申し出ることも考えましょう。
8. まとめ
専任媒介契約は、不動産売却時に1社のみと結ぶ契約です。売却活動を一元化し、スムーズに売却プロセスを進めるために有効な契約の形態となっています。しかし、担当者の実力に左右される点などは注意しておきましょう。
媒介契約を結ぶ不動産会社が信頼できるかどうか、実力がしっかりと備わっているのかどうかをチェックすることも大切です。サービス内容や査定額に加え、担当者の対応といった側面も要注目です。
※本記事は2024年5月1日時点の情報をもとに記載しています。法令等の改正により記載内容について変更となる場合がございますので予めご了承ください。
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