不動産売却をおこなう時には様々な書類が必要になります。その書類の一つに登記簿謄本というものがありますが、具体的にはどのような書類かわからないという人も少なくないでしょう。
提出を求められたときに困らないよう、あらかじめ知識を身に着けておきましょう。この記事では、不動産売却で求められる登記簿謄本の基礎知識や必要性、実際の取得方法を解説します。
不動産売却をおこないたい方、いま登記簿謄本を求められて悩んでいる方はぜひご覧ください。
1. 【独自調査】登記簿謄本に関するアンケート
本記事では、不動産の登記簿謄本を取得したことがある人を対象に、どのような方法で登記簿謄本を取得したかについてアンケート調査を実施しました。
調査の結果、法務局の窓口で取得した人が74%ともっとも多く、次いでオンラインの20%、郵送の6%という結果になりました。
アンケートの結果より、法務局の窓口まで足を運んで確実に取得しようと考える人が多いことがわかりました。手続きに不安がある場合は、その場で質問しながら確実に取得したいと考えたのかもしれません。
また、取得に慣れている人やネットリテラシーが高い人などは、オンラインでの取得をして手間を省いていると推察されます。
2. 登記簿謄本の基礎知識
まずは、登記簿謄本の基礎知識について把握しましょう。次の3点を解説します。
- 登記簿謄本とは
- 登記簿謄本の種類
- 登記事項証明書との違い
2-1.登記簿謄本とは
登記簿謄本は、不動産の立地や構造、面積、権利関係などが記載された書類のことです。法務局が管轄する公的な書類となっており、不動産の売買や相続の際などに求められることが多くあります。
登記簿謄本は誰でも取得することが可能です。不動産の所有者だけでなく、第三者も不動産の情報を調べられるようになっています。
また、登記に関する情報はインターネット上の登記情報提供サービスでも取得可能です。登記簿謄本の元データとなる登記簿は現在は電子的に管理されており、印刷物やPDFファイルとして閲覧できるケースも少なくありません。
2-2.登記簿謄本の種類
登記簿謄本には、全部で4種類の証明書があります。それぞれの特徴を表で把握していきましょう。
登記簿謄本の種類 |
特徴 |
全部事項証明書 |
・登記記録にある不動産の記録が全て確認できる ・過去から現在の所有者や権利関係が記載 |
現在事項証明書 |
・現在の所有者や抵当権などが確認できる ・現在有効な権利情報のみを記載 |
一部事項証明書 |
・特定の不動産または権利に関する情報のみを抜粋して記載 |
閉鎖事項証明書 |
・過去に存在した、現在は閉鎖された登記記録を記載した証明書 |
それぞれ記載されている情報が異なりますが、全部事項証明書は閉鎖事項証明書以外の他の登記簿謄本の情報が確認できます。
閉鎖事項証明書は現在有効でない不動産の情報が記載されている書類のため、不動産を売る準備をしている場合などでは取得できないでしょう。
2-3.登記事項証明書との違い
登記簿謄本と登記事項証明書は実際の運用上はほとんど同じ書類です。あえて詳細に区別するならば、登記簿謄本は昔に作成された紙の書類で、登記事項証明書は現在運用されているデジタルデータの登記情報と言えるでしょう。
登記簿謄本の「謄本」とは、原本の内容をまるごと書き写されたものを指す言葉です。紙の帳簿が主流であった時代に多く用いられました。しかし、現代では登記簿は電子化されており、発行も電子データの印刷などでおこなわれます。よって、謄本と区別するために登記事項証明書という呼び方が生まれました。
データの印刷によって取得した登記事項証明書は、慣習的に登記簿謄本と呼ばれます。「登記簿謄本が必要だ」と言われて法務局で取得したものが「登記事項証明書」という名前でも問題ありません。登記簿謄本=登記事項証明書と覚えておき、混乱しないようにしておきましょう。
3. 不動産売却での登記簿謄本の必要性
登記簿謄本は次のような場面で必要になります。
- 売却したい不動産の正確な情報収集
- 相続する不動産の権利関係の確認
- 住みかえ先の住宅ローン控除の申請
それぞれの場面で登記簿謄本が求められる理由を把握しましょう。
3-1.売却したい不動産の正確な情報収集
不動産売却をおこなう際、主に次の情報を確認するために登記簿謄本が求められます。
- 所在地
- 面積
- 延べ床面積
- その他査定に必要な情報
不動産売却において、物件の価値の査定は重要なプロセスです。登記簿謄本の正確な情報をもとに査定をおこなうことで、より精度の高い査定をおこなえるようになります。
3-2.相続する不動産の権利関係の確認
不動産の相続においても登記簿謄本が求められます。相続において、不動産の正しい所有権状況を把握することはとても重要です。登記簿謄本では、不動産が実際に被相続人のものであるか、または他の親族と共有されていないかを確認できます。
また、不動産がローンの担保となっている場合、相続人は対応する必要があります。登記簿謄本を利用し権利関係の情報を正確に確認できれば、相続手続き中の誤解やトラブルを避け、スムーズな相続をおこなえるでしょう。
3-3.住みかえ先の住宅ローン控除の申請
住みかえ先の住宅ローン控除を申請する際にも登記簿謄本が必須です。
住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用してマイホームを購入した際、一定の要件を満たした場合に税金の控除が受けられる制度です。住宅の購入には多くの費用がかかるため、少しでも負担軽減をする場合には住宅ローン控除はぜひ利用したい制度となるでしょう。
住宅ローン控除の活用には確定申告が必要です。確定申告時の添付資料として購入した不動産の登記簿謄本が必要になるため、申告前にあらかじめ用意しておきましょう。
4. 登記簿謄本の取得方法
登記簿謄本は法務局の窓口や郵送だけでなく、インターネット経由(オンライン)でも取得可能です。それぞれの取得方法を把握しておき、自分にあったものを選びましょう。
4-1.オンラインで取得する場合
登記簿謄本はオンラインでも取得することができます。申請から受け取りまで全ての手続きがインターネット上で完結します。プロセスは次の通りです。
- 申請者情報の登録
- 不動産情報の入力と書類の選択、申請
- 電子納付
- 書類の受け取り
はじめに登記・供託オンライン申請システムにアクセスし、申請者情報を登録しましょう。IDとパスワード、氏名、郵便番号と住所、電話番号やメールアドレス等の連絡先の情報が求められます。
登録完了後に不動産の種別や所在地などの情報を入力しましょう。登記所コードや登記所名など身近でない情報が求められますが、こちらは入力画面からアクセスできるオンライン物件検索で調べることができます。
入力完了後、欲しい登記簿謄本の種類や数量を選びましょう。全部事項を選ぶことで、登記簿謄本の内容を全て取得できます(閉鎖事項証明書の内容を除く)。情報を確定したら申請書を送付できます。
申請書の送付後、納付ボタンをクリックして手数料の支払い方法を選びましょう。オンラインバンキングやPay-easy対応のATMを使用した電子納付が可能なため、収入印紙を用意する必要がありません。
申請完了後、選択した方法(郵送または最寄りの登記所・法務局証明サービスセンターでの受け取り)で書類が配送されます。オンライン申請システムは平日の21時まで受付をしているため、都合に合わせて利用を検討してみましょう。
4-2.法務局の窓口で取得する場合
法務局の窓口で登記簿謄本を取得することも可能です。法務局に来庁し、備え付けの請求書に必要事項を記入して窓口に提出しましょう。
オンライン申請の場合と同様に、不動産の種別や地番などの記入が必要です。手数料は1通600円で、収入印紙を請求書に添付して納めることになります。通常、収入印紙は法務局で購入できるため、事前に用意しておく必要はありません。
たとえ遠隔地の物件の情報が欲しい場合でも、最寄りの法務局の申請で登記簿謄本を取得できます。
4-3.登記簿謄本を郵送してもらう場合
郵送で申請をおこなうことも可能です。法務局のホームページから登記事項証明書交付申請書をダウンロードして印刷し、必要事項を記入して最寄りの法務局に郵送しましょう。返送までにはおよそ1週間ほどの時間がかかります。
記入する情報はオンラインや窓口申請の場合と概ね同じですが、切手を貼った返信用封筒を一緒に送付することが大切です。
また、申請はオンラインでおこない、受け取りを郵送にすることも可能です。
5. 登記簿謄本の取得費用一覧
登記簿謄本を取得する際の費用は、申請方法と受け取り方法によって異なります。以下は主な費用の一覧です。
- 書面請求(法務局での直接受け取りまたは郵送):600円
- オンライン請求・送付:500円
- オンライン請求・窓口受け取り:480円
ただし、この費用は切手代や交通費を除いたものである点に留意してください。オンラインで請求して窓口で受け取るのが最も費用のかからない取得手段といえるでしょう。ですが、法務局まで行く交通費や労力を考慮する場合は、郵送での受け取りも有効です。
なお、収入印紙売り場は法務局(出張所含む)内にあるので事前に購入する必要はありません。窓口請求を考えている場合には、必要費用を持って法務局に向かいましょう。
6. 不動産売却で登記に関わる手続き
不動産売却では登記に関わる手続きが複数あります。
- 住宅ローンの抵当権抹消
- 所有権移転登記
- 住所・氏名変更登記
それぞれの詳細を見ていきましょう。
6-1.住宅ローンの抵当権抹消
住宅ローンの抵当権抹消は、住宅ローン完済後に必要な手続きです。
抵当権とは、金融機関がローンの担保として不動産に設定する権利です。ローンの完済後にこの権利を登記簿から抹消することで、不動産を自由に取引できる状態になります。抹消には次のプロセスを踏む必要があります。
- 必要書類の準備
- 登記申請書の作成
- 登録免許税の納付
- 登記申請書の提出
必要書類はローンの支払い後に金融機関から送付されます。登記申請書の作成・申請はオンラインと書面の2種類から選択可能です。自分でおこなうのが不安な場合には司法書士などの専門家に依頼することも検討してみましょう。
抵当権の抹消は、不動産を売却する際にも必須です。また、新たなローンを組む際にも抵当権の抹消が求められるため、ローン完済後は早めにおこないましょう。
また、金融機関によっては、抹消に関連する手数料が別途必要となることもありますので、事前に確認することが重要です。戸建てとマンションではかかる費用が異なる点にも留意してください。
6-2.所有権移転登記
所有権移転登記は、不動産の売買、相続、贈与などの際に必要な法的手続きです。不動産の新しい所有者を明確にするために欠かせないプロセスとなっています。所有権移転登記の手順は次の通りです。
- 売買契約の締結や相続の開始
- 必要書類の準備
- 登記申請
不動産の権利者が変わることが分かったら登記の準備をはじめましょう。必要書類は売買契約の場合、契約書、権利書、登録識別情報通知、印鑑証明書、住民票、固定資産評価証明書が求められます。相続では相続者全員の住民票、固定資産評価証明書、戸籍類一色が必要です。
登記申請には申請書への記入などのプロセスが必要です。専門的な知識が求められるケースも多いため、司法書士などの専門家へ依頼することがおすすめです。
なお、売買の場合、登記にかかる費用は通常買主負担となっています。費用は不動産物件の性質により異なり、司法書士への依頼費用も求められます。
6-3.住所・氏名変更登記
不動産所有者が住所や氏名を変更した際、登記簿に反映させるための住所・氏名変更登記が必要です。転勤、結婚、またはその他の理由で変更が生じた場合に求められます。手続きは次の流れでおこなわれます。
- 必要書類の準備
- 登記申請書の作成
- 登録免許税の納付
- 登記申請書の提出
住所変更では登記申請書の添付に住民票の写しが、氏名変更では戸籍関係書類と住民票の写しが求められます。
なお、2026年4月1日からは、住所または氏名に変更があった日から2年以内に変更登記を申請することが法的に義務付けられています。引っ越しや結婚をおこなった際には忘れずに住所・氏名変更登記をおこないましょう。
7. 登記簿謄本の取り扱いでよくある疑問
最後に登記簿謄本の取り扱いでよくある疑問を3つピックアップし、回答と一緒に紹介します。
- マイナンバーカードがあると取得は容易?
- 登記簿謄本をコンビニで取得できる?
- 登記簿謄本に有効期限はある?
- 登記簿謄本の提出はコピーでもよいか?
7-1.マイナンバーカードがあると取得は容易?
マイナンバーカードは登記簿謄本を申請する際の本人確認書類として利用できます。運転免許証やパスポートがない場合、マイナンバーカードは有効な代替手段となるでしょう。
一方で、マイナンバーカードを持っていること自体が登記簿謄本の取得を容易にするわけではありません。登記簿謄本の取得プロセスは変わらず、必要な手続きをすべて遵守する必要があります。
7-2.登記簿謄本をコンビニで取得できる?
2024年4月時点で、登記簿謄本をコンビニで取得することはできません。コンビニ交付サービスは主に住民票の写しや印鑑登録証明書などの一部公的書類の取得をサポートしていますが、登記簿謄本はその対象外です。
以下はコンビニで取得可能な証明書の例です。取得にはマイナンバーカードが必要です。
- 住民票の写し
- 印鑑登録証明書
- 住民票記載事項証明書※
- 各種税証明書※
- 戸籍証明書※
- 戸籍の附票の写し※
※一部市町村除く
不動産売却で必要な書類のうち、印鑑証明書はコンビニで取得することができます。
7-3.登記簿謄本に有効期限はある?
登記簿謄本に法律で定められた有効期限は存在しません。ただし、登記簿謄本の提出先によっては、発行から3ヶ月や6ヶ月以内のものを要求することがあります。
登記簿謄本を求められた際には、念のため発行から何ヶ月以内のものが必要なのかを提出先に確認しておくと安心です。
7-4.登記簿謄本の提出はコピーでもよいか?
登記簿謄本の提出がコピーで可能かどうかは、提出する手続きの内容によって異なります。
登記簿謄本を事実確認のために利用する場合、売買契約書などはコピーでも問題ありません。記載されている情報が正確であることが大切です。
しかし、住宅ローン控除の申請など、書類改ざんが問題を引き起こす可能性のある手続きでは原本の提出が求められます。不安な場合には提出先に確認し、コピーと原本のどちらが必要か確認を取るようにしましょう。
8. まとめ
登記簿謄本は、不動産の詳細情報が記録された公的文書で、不動産の権利者移転などをおこなうときに欠かせないものとなっています。
取得方法はオンライン、法務局窓口、または郵送でおこなうことができます。オンラインでの取得は費用が安く、法務局の現地に赴く手間も無いためおすすめです。
売買や相続、ローン控除の利用を考えている場合には、登記簿謄本を取得するようにしましょう。
※本記事は2024年5月1日時点の情報をもとに記載しています。法令等の改正により記載内容について変更となる場合がございますので予めご了承ください。
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