引越しや相続などをきっかけに、家の売却をおこなわなければいけなくなったものの、はじめてのことでどこから手を付ければよいのか分からず困っていませんか。
家の売却は大きなイベントです。動く金額が大きいことはもちろん、手続きや税金などの複雑な要素が関わるため、ハードルを感じている人も少なくはないでしょう。
はじめて家を売却する人でも、基本的な流れや売却のポイントを把握しておけば落ち着いてプロセスを進めることができます。税金対策などの気になる点も含め、家の売却のやり方を確認していきましょう。
1. 【独自調査】家の売却に関するアンケート
本記事では、不動産売却経験者を対象に、成約価格や売却までにかかった期間の納得度についてアンケート調査を実施しました。
アンケート結果によると、44%の人が成約価格も期間も納得していることがわかります。一方で、32%の人は期間に、18%の人は成約価格に納得していないこともわかりました。約半数の人は価格か期間どちらかに不満を持ちながら不動産を売却したことが伺えます。
一方で、価格と期間の両方に納得していない人は6%と少数であることから、不動産会社との相談などを通じて、価格か期間どちらかを譲りつつ、どちらかは希望通りになるよう売却活動を進めていたことが推察されます。
2. 家の売却方法の種類と特徴
単に「家を売却する」といっても、売主と買主がどうやり取りをするのか、不動産会社はどのように関わってくるのかといった条件で種類や特徴も異なります。
家の売却に利用できる方法は、主に次の3種類です。
- 不動産会社による仲介
- 不動産会社による買取
- 個人間での家の売却
それぞれの特徴を見ていきましょう。
2-1.不動産会社による仲介
不動産会社による仲介は、売却活動の中で最も一般的な方法です。売主は不動産会社を通じて買主を見つけてもらい、売却が成功した際に仲介手数料を支払う方式となっています。
仲介による不動産の売却は、家の売却時に必要な売主・買主間の手続きや、引渡しまでのスケジュール調整を任せることができます。手数料こそかかりますが、スムーズな売却活動を実現でき、初心者でも安心して利用できるでしょう。
不動産会社による仲介で家を売却する場合、かかる期間は3〜6ヶ月ほどとされています。売却にかかる期間は不動産会社の営業や売主と共におこなう売却活動、周辺のニーズによって異なるため、目安として把握しておくようにしましょう。
2-2.不動産会社による買取
不動産会社による買取は、売却したい家を不動産会社に直接購入してもらう方法です。仲介と違い買主を探さないため、より短期間で、確実に現金化が見込める手法となっています。
買主を探すための売却活動も必要ないため、売主にとっての負担も比較的軽い手法といえるでしょう。確実かつ簡単な売却が見込めるぶん、売却額は仲介より低い傾向にあることは留意しておきましょう。
また、不動産会社による買取は、仲介ではなかなか買い手の見つからない物件を売却しやすいという点にもメリットがあります。「自分の家にニーズはないのではないか」「仲介による売却がうまくいかなかった」という場合には、買取の利用も検討してみてください。
2-3.個人間での家の売却
不動産会社を介さず、個人間で家を売却する方法もあります。仲介手数料がかからないため売主はより多くの売却益を得ることができますが、不動産に関する専門的な知識や買主との交渉ややり取り、契約締結を全て自分でおこなわなくてはなりません。
売却益を大きくできるという利点こそありますが、宅建業者の媒介印のない契約書は住宅ローンの審査に通りにくいなど、買い手がつきにくくなる問題も抱えています。加えて複数の専門的な知識が求められるため、不動産取引に詳しい人でなければあまりおすすめできない手法です。
また、個人間での家の売却は、手続き不備や説明不足によるトラブルの可能性が、不動産会社の関わる方法より高い傾向にあります。「はじめての売却で不安がある」という人は、無理をせずに不動産会社の仲介か買取の利用を検討しましょう。
3. 家を売却する7つのステップ
不動産会社の仲介を利用するケースを想定して、家を売却するときに必要な手順を全7ステップで解説します。
家の売却で考える事や把握しておきたいことは多くありますが、落ち着いて順番におこなうことが大切です。それぞれのステップの詳細について解説します。
3-1.相談して売却計画を立案
家を手放すことを決めたならば、まずは不動産会社への相談からはじめましょう。仲介による売却が一般的な手法とはいえ、売りたい家の立地や売主のニーズによって最適な手法は異なります。まずは不動産会社のような専門家への相談が賢明といえるでしょう。
不動産会社での相談では、売却の理由や目的、売却希望金額を伝えることが大切です。不動産会社に希望を伝えフィードバックやアドバイスを受けたら、具体的な売却計画を組み立てましょう。
「いつまでに家を売りたいのか」「どのくらいの金額で売りたいのか」といった基準は、今後の売却活動でも重要になります。後から基準が二転三転すると、早く売ろうと焦ったり、無理な値下げをしたりする原因にもなるため、しっかりとした計画を立案することは非常に大切です。
3-2.売却したい家の査定依頼
不動産会社に売却したい家の査定依頼をしましょう。査定依頼はほとんどの不動産会社で無料提供されており、すぐに売却する予定がない場合でも利用できます。
不動産査定には簡易的な机上査定と、物件の現地に赴いて調査する訪問査定があります。机上査定は簡単におこなえるため、計画段階で相場感を知る手段としても有効です。不動産会社によって査定額にばらつきもあるため、一括査定サイトで複数社の査定結果を見比べることもよいでしょう。
売却計画が定まり、本格的に売却活動をおこなうことを決めたら訪問査定を利用しましょう。査定額の根拠などを担当者に確認し、信頼できる不動産会社をチェックすることも大切です。
3-3.不動産会社と媒介契約
査定をおこない、信頼できる不動産会社を見つけることができたら媒介契約を結びましょう。媒介契約とは、売主が不動産会社へ買主との仲介を正式依頼する契約のことです。仲介手数料をいくら支払うのかもこの段階で決まります。
媒介契約には、次の3種類が存在します。
- 専属専任媒介契約
- 専任媒介契約
- 一般媒介契約
専属専任媒介契約と専任媒介契約は1社のみと仲介契約を結ぶ媒介契約で、一般媒介契約は複数社への仲介が依頼可能な形態の契約です。専属専任媒介契約は不動産会社に買主探しを一任しますが、専任媒介契約では個人間での家の売却(自己発見取引)が可能となっています。
不動産会社へ任せる裁量が大きいほど売主の負担は減りますが、そのぶん信頼できる会社を絞り込むことが重要です。今後の売却活動で十分なサポートが得られそうか、担当者の対応力はどうかをチェックするようにしましょう。
3-4.家の売却活動
媒介契約を締結したあと、家の売却活動を本格的に開始します。家のアピールポイントをまとめ、売却広告に掲載する写真撮影などをおこないましょう。不動産会社の仲介があれば、売却活動のほとんどは不動産会社に任せられますが、内覧などには売主が対応する必要もあります。
売却活動の進捗や成果については不動産会社から報告があります。3種類の媒介契約のうち、専属専任媒介契約と専任媒介契約は報告が法的に義務付けられていますが、一般媒介契約に義務はない点に留意しておきましょう。
買主の候補が内覧を希望した際には、少しでも見栄えをよくできるように家の清掃などをおこなっておくようにしましょう。不動産会社や媒介契約の形態によっては、ハイクオリティな内覧前清掃を受けられるサービスもあります。
3-5.購入の申し込み・売買契約
購入希望者が現れると、購入希望額や契約締結の希望日などが届きます。価格交渉やスケジュール調整をおこない、両者が納得できたら売買契約が締結され、家の売却が確定します。売買契約は気軽にキャンセルできず、キャンセルには違約金リスクもあるため注意しましょう。
不動産会社の仲介があれば、価格交渉やスケジュール調整、契約書作成における手厚いサポートを受けられます。個人間での家の売却だとこのプロセスを自力でおこなう必要があります。
また、売買契約の締結にあたっては不動産の権利証や登記事項証明、身分証明書などの書類が求められます。必要な書類について不動産会社にチェックし、問題なく準備できるようにしておきましょう。
3-6.引越しなどの準備
家の売却が決まったならば、引越しの準備をしなくてはなりません。引越しの手配は可能な限り早めにおこないましょう。年度末などの引越しシーズンは業者の予約が取りにくいため、特に早めの手続きが重要です。
同時に、住宅ローンの残債があれば完済手続きも進めましょう。仮に家の売却益で住宅ローンの残債を支払いきれない場合、オーバーローンとなってしまい自己資金でローンを賄うことになります。抵当権の抹消手続きや、公共料金の精算も忘れてはいけません。
引越し1ヶ月前に業者の手配や新居のレイアウト決定、荷物の整理整頓を済ませておくと理想的です。子供が居る場合には、学校の転校手続きも忘れてはいけません。荷造りには時間がかかるため、引越しの1~2週間前から着手するようにしましょう。転出届やライフラインの手続きも2週間前が実施の目安です。
引越し後には役所や金融機関、運転免許、ローン・クレジット会社や保険会社に対し、住所変更に関する手続きが求められます。家の売却で忙しい状況ではありますが、それぞれ忘れず実施できるように準備しておきましょう。
3-7.代金の決済・引渡し
代金の決済と物件の引渡しをおこなうことで、家の売却プロセスはひとまず終了となります。また、引越し当日に登記の名義変更をおこないましょう。買主からの入金を確認し、不動産会社への仲介手数料を精算して完了です。
全7ステップで紹介した手続きの多さから、はじめての人にはハードルが高いと感じられるかもしれません。しかし、不動産会社の関与があれば相談やサポートを受けることが可能です。はじめての家の売却では無理をせず、不動産会社の仲介や買取を利用するようにしましょう。
4. 家の売却にかかる費用と税金対策
家の売却には様々な費用がかかるため、成約価格がそのまま懐に入るわけではない点に注意しましょう。また、税金に関係する要素も多くあります。
家の売却にかかる費用項目と、節税のための税金対策を紹介します。
4-1.家の売却にかかる費用一覧
家の売却では、仲介手数料や印紙代など様々な費用が発生します。費用一覧を次の表にまとめました。
費用項目 |
費用の目安 |
仲介手数料 |
・成約価格200万円以下:成約価格×5%+消費税 ・200万円超400万円以下:(成約価格×4%+2万)+消費税 ・400万円超:(成約価格×3%+6万)+消費税 |
印紙代 |
200円~60万円 |
住宅ローンの繰り上げ返済手数料 |
金融機関に要確認 |
抵当権の抹消登記費用 |
2万円~3万円 ※司法書士への依頼時 |
必要書類の取得費用 |
1部につき数百円 |
土地の測量代 |
数十万円以上 |
これらの費用は成約価格から直接差し引かれることになります。10万円以上の高額出費もあるため、売買契約の成約価格がそのまま手元に残るわけではないことに注意が必要です。また、印紙代や必要書類の取得費用は、売買契約の前にも必要です。これらの費用が支払えないことがないよう、ある程度の元手を確保したうえで家の売却に臨むようにしましょう。
4-2.確定申告での納税額の計算方法
家の売却で利益が出た場合、その利益に対して譲渡所得税が課税され、確定申告の義務が発生します。この税額を計算するには、譲渡所得を求める必要があります。譲渡所得の計算式は次の通りです。譲渡所得 = 成約価格−(取得費+譲渡費用)課税譲渡所得 = 譲渡所得 −(特別控除)最終的な税額 = 課税譲渡所得 × 税率(所得税・住民税にかかる)所得税・住民税にかかる税率は、不動産の所有期間によって異なります。所有期間5年以下の場合は短期譲渡所得として39%(※)、5年を超える場合は長期譲渡所得として20%(※)が課税されます。およそ2倍も税額が異なる点に注意しておきましょう。※復興特別所得税は除く
4-3.各種控除を活用して節税
家の売却にかかる税金は、各種控除や特例を活用することで節税することができます。主な節税方法は次の表の通りです。これらの制度を利用するためには確定申告が必要です。仮に条件を満たしていても、自動的に適用されることはない点に注意しましょう。
費用項目 |
費用の目安 |
仲介手数料 |
・成約価格200万円以下:成約価格×5%+消費税 ・200万円超400万円以下:(成約価格×4%+2万)+消費税 ・400万円超:(成約価格×3%+6万)+消費税 |
印紙代 |
200円~60万円 |
住宅ローンの繰り上げ返済手数料 |
金融機関に要確認 |
抵当権の抹消登記費用 |
2万円~3万円 ※司法書士への依頼時 |
必要書類の取得費用 |
1部につき数百円 |
土地の測量代 |
数十万円以上 |
節税に使える控除・特例制度 |
概要 |
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例 |
一定の要件を満たした居住用不動産に関しては、譲渡所得に対し最高3,000万円までの特別控除が適用 |
マイホームを売ったときの軽減税率の特例 |
10年超所有した不動産の売却時は、一定面積まで長期譲渡所得より低い軽減税率が適用 |
特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例 |
譲渡損失が発生する場合、一定要件を満たせば損失と他の所得を損益通算可能 |
5. 家の売却で後悔しないためのポイント
家の売却はおこなえたものの、「思ったより低い成約価格になってしまった」「買主とトラブルになってしまった」というような後悔は招きたくないものです。
次の3ポイントを踏まえ、後悔しない家の売却を実現できるようにしましょう。
- 最新の相場を参考に売却
- 引渡しまでのスケジュールに余裕を持たせる
- 契約書は細部まで確認し納得してからサインする
5-1.最新の相場を参考に売却
家の売却時には常に最新の市場相場を確認しましょう。不動産は非常に高額な商品のため、市場の動向や売却方法によっては同じ価値の物件でも100万円以上の差が発生することがあります。
不動産の相場は常に変動しているため、成約価格の決定は最新の情報に基づいていることが求められるでしょう。
不動産サイトのノムコムであれば、物件の査定を受ける前に相場の確認が可能です。
5-2.引渡しまでのスケジュールに余裕を持たせる
家の売却は想定以上に時間がかかってしまうものと考えておき、スケジュールに余裕を持たせるようにしましょう。仮にスムーズな売却が実現しても3ヶ月から6ヶ月の時間がかかり、うまくいかなければ引渡しまで1年以上かかるケースもあります。
スケジュールに余裕がないと引越しや手続きが慌ただしくなってしまうリスクがありますが、それ以上に注意したいのは「スケジュールに余裕がないため無理な値下げ交渉に応じてしまう」ことです。
家の価格は市場のニーズなどにも影響されますが、「スケジュールに余裕があればもっと高く売れた」というような、自分に原因がある後悔は辛いものです。想定以上に安い金額で家を手放すことにならないよう、スケジュールに余裕を持って家の売却をおこなうようにしましょう。
5-3.契約書は細部まで確認し納得してからサインする
契約書へのサインは、内容の細部まで確認し納得してからおこなうようにしましょう。次のポイントを厳重に確認することが、後悔しない売却を実現するために重要です。
- 売買の目的物の表示
- 売買代金、手付金等の額
- 支払日・土地の実測売買または公簿売買の確認
- 所有権の移転と引渡し、登記手続き
- 抵当権等の負担の消除
- 公租公課等の分担
- 手付解除
上記は不動産の取引時にトラブルの原因になりやすい要素となっています。わからない部分があれば不動産会社の担当者に解説してもらうことが大切です。
また、契約書に付随する「物件状況報告書」や「付帯設備用」に、買主に対して告知すべき瑕疵や問題点を明記しておくことも忘れないでください。これらを口述で伝えると、後から「言った」「言わない」の水掛け論になりかねないため、書面におこしておくことも求められます。
売主と買主の両者が対等な情報と立場で、相互に納得したうえでサインをするようにしましょう。
6. 家を売却する際のよくある疑問
最後に、家を売却する際によくある疑問を、回答と共に紹介します。
6-1.ローン中でも家を売却できる?
可能ですが、不足分を自己資金や住みかえローンなどで補填できることが前提となります。家を売却してもローンを完済できる目途が立たない、といった場合では金融機関から売却が許可されない可能性もあるでしょう。
家の成約価格がローン残高より下回っている状態をオーバーローンといいます。成約価格がオーバーローンにならない価格設定をおこなうようにしましょう。立地やニーズからオーバーローンの回避が難しい場合には、まずは金融機関に相談することが大切です。
6-2.家の売却で確定申告が不要なケースとは?
家の売却で利益が発生しない場合、確定申告の義務は発生しません。しかし、損益通算や繰越控除などの節税措置を適用するには確定申告が求められます。
控除や特例は基本的に確定申告を前提としています。家の売却があった翌年の2月16日から3月15日までに、自主的に確定申告しない限りは制度を利用できません。少しでも手元に残るお金を増やしたい場合には、確定申告を実施するようにしましょう。
「確定申告は難しそう」とハードルを感じている場合には、申告受付期間中の税務署への訪問がおすすめです。多くの税務署では確定申告コーナーを設置しており、担当者と相談をおこないながら確定申告を進めることができます。
7. まとめ
家の売却手段は主に不動産会社の仲介と買取、個人間での家の売却の3種類に分けられます。
売却計画を立ててから引渡し完了までには専門的な知識が求められるため、はじめて家を売却する人には仲介か買取の利用がおすすめです。万が一トラブルとなっても、場合によっては免責とすることも可能であるため、不動産会社と相談できる態勢を整えておくことが大切です。
家の売却は簡単には見えないかもしれませんが、不動産会社と協力することで、疑問や不安を解消できます。信頼できる不動産会社を探し出し、家の売却を進めていきましょう。
※本記事は2024年5月1日時点の情報をもとに記載しています。法令等の改正により記載内容について変更となる場合がございますので予めご了承ください。
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