1. 抵当権とは
民法第369条1項
(抵当権の内容)
抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
抵当権とは、住宅ローンを利用して不動産を購入した購入者等が住宅ローンの借入に伴う抵当権をその不動産に設定することで、その不動産を金融機関等に占有させることなく、また承諾を得なくても購入者等が自由にその不動産を使用・収益・処分することができるようにするものです。
そのかわり、住宅ローンの返済が滞り約束通りの返済が行われないときは、抵当権者である金融機関等が競売等による競売代金から優先的に弁済を受けることができます。
抵当権の目的物として代表的なものが土地や建物等の不動産であり、抵当権が実行されると競売にかけられることが一般的です。また、もっとも代表的な抵当権は住宅ローンの利用に伴い設定される抵当権です。
2. 抵当権が設定された不動産を売却するとき
抵当権が設定された不動産を売却するときは、「残債があといくらあるのか、抵当権を抹消するのに必要な手続きと手続きに要する時間はどれくらいか」を確実におさえておく必要があります。
また、残債は買主から受け取る売買代金を全額充当したり一部充当したり、不足分は自己資金を充当することを金融機関に伝えておかなければなりません。
なお、残債がある場合の抵当権抹消手続きは金融機関側の指定する司法書士に委任することもありますが、あらかじめ依頼する司法書士と抹消内容をよく打合せておくことが大切です。
3. 抵当権が設定された不動産を購入するとき
抵当権が設定された不動産を購入するときは、一般的に買主から支払われる売買代金や売買代金の一部で売主は抵当権を抹消することがほとんどですが、売主の抵当権が抹消されないまま買主へ所有権が移転されてしまうと、抵当権も一緒に買主に移転してしまいます。
そのため、抵当権が確実に抹消されるのはいつなのかなどが売買契約書に記載されているかを確認することが大切です。
(売買契約書の条文例)
(売買代金を返済に充当しない場合、所有権以外の権利の設定が無い場合の条文)
売主は、本物件について、所有権移転の時期までに、その責任と負担において、先取特権、抵当権等の担保権、地上権、賃借権等の用益権、優先買取権、優先交渉権その他名目形式の如何を問わず、買主の完全な所有権の行使を阻害する一切の負担を除去抹消するものとします。ただし、第○○条記載の賃貸借契約及び第○○条記載の容認事項は除くものとします。
(売買代金を返済に充当する場合の条文)
売主は、本物件について、その責任と負担において、先取特権、抵当権等の担保権、地上権、賃借権等の用益権、優先買取権、優先交渉権その他名目形式の如何を問わず、買主の完全な所有権の行使を阻害する一切の負担を除去抹消するものとします。ただし、第○○条記載の賃貸借契約及び第○○条記載の容認事項は除くものとします。なお、売主及び買主は、当該負担の除去抹消時期については、売主が買主から受領する売買代金を充当して、その債務を完済し抹消するため、当該抹消登記申請手続きが前条に定める所有権移転登記申請手続きと同時になることを互いに確認します
相続等において不動産を取得する場合、抵当権が抹消されていなくても住宅ローンはすでに完済されている場合があり、仮に弁済が済んでいなくても住宅ローンの借入に伴う抵当権なら、被相続人かつ債務者の死亡により住宅ローンの団体信用生命保険等で債務がなくなっている可能性もあります。もし、返済が必要な抵当権の場合には、負債の額によっては相続を放棄するなどの選択肢もあります。
4. 抵当権設定及び抹消手続きと費用、司法書士への報酬等について
そもそも抵当権は金融機関等との抵当権設定契約により成立しますが、一般的にその前提として存在するのが住宅ローン等の利用に伴う金融機関等との金銭消費貸借契約や保証会社との保証委託契約等です。
抵当権設定の手続きは、金銭消費貸借抵当権設定契約書や抵当権設定(関係)契約書といった金融機関等の専用の書類や司法書士への委任状に署名捺印を行い進められます。
住宅ローンを利用して不動産を購入する場合における抵当権の設定については、所有権保存登記や所有権移転登記も合わせて同じ司法書士に依頼するのが一般的です。
抵当権設定に関する費用は「①司法書士の日当や交通費」「②司法書士への報酬」「③登録免許税」の3種類に大別されます。
4-1.【司法書士への日当や交通費、報酬等の目安】
抵当権設定報酬:45,000円~
日当:10,000円~
交通費:3,000円~
附属書類作成、事前調査:10,000円~
事後謄本、受領書、還付、郵券等:3,000円~
登記識別情報通知引渡し:2,000円~
抵当権の設定に対する登録免許税の税率は借入額の0.4%(令和3年3月31日までの軽減措置)です。
※一定の要件を満たした個人の住宅の場合の特例税率は0.1%。令和4年3月31日まで。
※登記の種類、依頼する司法書士、地域により、目安の費用は異なります
4-2.【住宅ローンの借入額による登録免許税額】
●住宅ローン借入額3,000万円の場合
3,000万円 × 0.4% = 120,000円
4-3.【一定の要件を満たした個人の住宅に対する、住宅ローンの借入額による登録免許税】(令和4年3月31日まで)
●住宅ローン借入額3,000万円の場合
3,000万円 × 0.1% = 30,000円
住宅ローンの完済や不動産の売却に伴い取得した資金で抵当権を抹消する場合の抵当権抹消に関する費用は「①司法書士への報酬等」「②登録免許税」の2種類に大別されます。
抵当権抹消報酬:20,000円~
事後謄本、受領書、還付、郵券等:1,000円~
登録免許税:1,000円×抵当権が設定されている不動産の数(一戸建ての場合、土地1,000円と建物1,000円の合計2,000円~
※依頼する司法書士、地域により、目安の費用は異なります
5. 共同抵当と抵当順位について
共同抵当とは、同一の債権を担保するために、複数の不動産を目的として設定された抵当権のことです。例えば、住宅ローンを利用して購入した建売住宅の土地と建物といった別個の不動産双方に抵当権を設定する場合があげられます。
抵当順位とは、同じ不動産に設定された複数の抵当権の順位のことで、原則として抵当権の設定登記の前後によって決まります。抵当権が実行されると、第一順位の抵当権が優先的に弁済を受けられるため、後順位の抵当権は十分な弁済が受けられない可能性があります。
6. 抵当権と根抵当権
抵当権と似たような権利に根抵当権といった権利があります。
民法第398条2項
前項の規定による抵当権(以下「根抵当権」という。)の担保すべき不特定の債権の範囲は、債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるものその他債務者との一定の種類の取引によって生ずるものに限定して、定めなければならない。
金融機関等から事業資金等の融資を継続的に受けようとすると、融資や完済の都度、抵当権の設定や抹消を繰り返すため手間や時間、費用が余計に掛かります。そこで、極度額の範囲内なら何度でも融資を受けたり返済したりできるような取引に設定されるのが根抵当権です。
根抵当権は抵当権のように実際の債権額(借入額)が登記されるわけではなく、借入の限度額となる極度額が登記されるため、実際の債権額は極度額と異なっている場合があります。また、同じ不動産に抵当権と根抵当権が設定されている場合もあります。
7. まとめ
抵当権が設定された不動産を購入するときと売却するときでは、注意するポイントが異なります。また、住宅ローンを利用して不動産を購入するときと住宅ローンを払い終えた場合とでは同じ抵当権の手続きでもその方法や費用はずいぶん異なります。とくに、住宅ローンを払い終えた場合の抵当権抹消の手続きは忘れずに済ませておきましょう。
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