相続した実家が空き家だと固定資産税が最大6倍に? しくみと対策を解説

  • facebookでシェア
  • twitterでシェア

「相続した実家が空き家だ」という世帯は年々増えています。空き家のまま放置すると、通常の6倍の固定資産税を払うことになる可能性があります。そうならないためにはどうしたらいいのでしょうか。今回、空き家の固定資産税のしくみと対策を解説します。

目次

1. 固定資産税が6倍になる「特定空き家」とは

自宅の建物や土地にかかる固定資産税は、本来、あまり高くありません。しかし、いったん「特定空き家」として認定されると固定資産税が一気に6倍に跳ね上がります。その背景には、深刻な空き家問題があります。

1-1.背景には「空き家問題」の増加

空き家問題とは、人の住まない家が急激に増えている現象をさします。少子高齢化や地方の過疎化が進んだ結果なのですが、この空き家が住環境や治安の悪化を招いているのです。この空き家問題を解決すべく、「空家等対策の推進に関する特別措置法」が2014年11月に国会で成立しました。現在、国土交通省を中心に、各地方自治体で所有者の特定や助言・指導といった対策が進められています。
家が空き家だからといって、すぐに固定資産税が上がるわけではありません。空き家かどうかは、人の出入りの有無や電気・ガス・水道の使用状況、所有者の住民票や家屋の管理状況などから判断されます。空き家の管理状況があまりにひどく、周囲に悪影響が及ぶと見られるものが「特定空き家」と認定され、固定資産税が6倍になるのです。そして、認定には一定の条件とプロセスがあり

1-2.「特定空き家」となる条件

放置された建物がどのような状態になると、「特定空き家」となるのでしょうか。国土交通省は、「空家等対策の推進に関する特別措置法」において、「空家等」つまり「使われていない建物や敷地」のうち、次の条件に当てはまるものが特定空き家に該当するとしています。

  • 放置すると倒壊など保安上の危険となるおそれのある状態のもの
  • 放置すると衛生上、著しく有害となるおそれのある状態のもの
  • 適切な管理が行われていないがために著しく景観を損なっている状態のもの
  • 上記の他、周辺の生活環境の保全の面から放置することが不適切であるもの

上記のどれかの条件に当てはまれば特定空き家とされるのですが、すぐに認定されるわけではありません。次のような流れを踏んで、最終的に「特定空き家」となります。

  1. 空家に関し、周辺住民などから苦情や相談が寄せられる
  2. 地方自治体の職員が空き家の状況を把握する
  3. 空家の所有者に管理状況を問い合わせる
  4. 所有者に対し、空き家の除却や修繕などを助言・指導する
  5. 4まで講じてもなお改善が見られなければ、所有者に通知した上、空家そのものを現地で調査する
  6. 5の結果、条件に当てはまると判断されれば「特定空き家」として認定する

空家も個人の財産の一つである以上、特定空き家として認定するまでのプロセスは非常に慎重です。家が古びていて誰も住んでいないからと言って、すぐに特定空き家になるわけではありません。ですが、放置して周辺環境に重大な影響を及ぼすのであれば、認定リスクは高まります。
特定空き家に認定され、その後、改善を怠った場合は最悪、50万円以下の過料が科されます。それだけではありません。自治体が空き家を取壊し、解体費用を所有者に請求することもあるのです。

2. 特定空き家になったときの固定資産税は

「特定空き家として認定されると、固定資産税は6倍になる」と言われています。なぜそうなるのでしょうか。ここで計算方法を確認してみましょう。

2-1.本来の住宅の固定資産税の計算

固定資産税は、土地や建物といった固定資産にかかる税金です。毎年1月1日、固定資産の所有者として固定資産課税台帳に登録されている人に対して課せられます。固定資産税の計算は、次の式で行います。

固定資産税=課税標準額×1.4%

課税標準額は通常、地方自治体が固定資産評価基準に基づいて評価した金額(固定資産評価額)となります。ただし、上記の計算式は、あくまでも原則です。住宅用の土地や建物については、生活に必要な財産であることから、いくつかの特例で軽減されています。その特例の一つが「住宅用地の特例措置」です。

住宅用地の特例措置とは、所有している土地が自宅や賃貸アパートなど、住宅用の建物の敷地であるときに受けられる軽減措置です。上物である建物が住宅用だと、面積に応じて次のように課税標準額が小さくなります。

【面積200平方メートル以下の部分(小規模住宅用地)】
課税標準額=固定資産税評価額×1/6

【面積200平方メートル超の部分(小規模住宅用地)】
課税標準額=固定資産税評価額×1/3

2-2.本来の住宅の固定資産税の計算

建物が住宅用として使われていると、その敷地の固定資産税は大きく抑えられます。上述の式で計算した課税標準額が課税標準額となるからです。200平方メートル以下の住宅用地の固定資産税は1/6になります。200平方メートルを超える住宅用地でも、200平方メートルまでは1/6、それを超える部分は1/3となります。

しかし、建物が人の住んでいない空き家で、かつ周辺環境に悪影響を及ぼすほどの「特定空き家」になると、この軽減措置の対象から外れます。結果、特例措置があるときの課税標準額の6倍の金額に税率を乗じることになり、納める固定資産税が6倍になるのです。

3. 相続した家を空き家のままにする3つのリスク

この空き家リスクがもっとも高いのが「相続した親の家」です。たいていの相続人は亡くなった親と別居しています。そのため、相続した親の家は空き家になりがちです。
しかし、親の家を放置しておくと、次の3つのリスクが生じます。

3-1. 固定資産税を毎年払う

既にお伝えした通り、相続した家が特定空き家として認定されれば、固定資産税が6倍になります。仮に認定されなくても、所有している間は、固定資産税を毎年払わなくてはなりません。

3-2. 不動産の価値が低下する

家は生き物です。多少古くても、人が住んでいる間はあまり傷みません。しかし、いったん空き家になると、一気に老朽化します。

窓の開け閉めをしなくなれば、湿気が溜まってカビやダニが繁殖します。トイレや水道を使わないので排水管が傷みます。庭木の手入れがなくなれば雑草が生い茂り、虫も増えます。結果、不動産としての価値がどんどん下がり、売りたくても売れなくなってしまうのです。運よく売れても、高い値段では売れません。

3-3. 犯罪や苦情を招きやすい

人の住んでいない空き家は、第三者の侵入を招きやすくなります。盗難だけでなく「知らぬ間に人が住みついていた」などという事態になるかもしれません。

また、雑草の繁殖や害虫の発生、悪臭などで周辺環境に悪影響を与えることもあります。近隣住民から自治体に苦情が寄せられれば、損害賠償や特定空き家の認定リスクが高まるのです。

4. 空き家の固定資産税を軽くする3つの方法

空き家を放置すれば、最悪、特定空き家として認定され、固定資産税が6倍になってしまいます。しかし、次の3つのいずれかを選択すれば、このリスクを避けられます。

4-1. 自ら入居する

親の家を引き継いだ子ども自身がその家に住めば、固定資産税は軽減された金額で抑えられます。また、空き家として放置することもないので、家も傷みません。その結果、住宅としての価値を維持できて周辺住民からの苦情も避けられます。

4-2. 賃貸に出す

「相続した家を賃貸に出す」のも一つの方法です。「賃貸に出したら固定資産税は上がるのではないか?」と疑問に感じる方もいるかもしれません。居住用アパートや居住用マンションも、住宅用地の特例の対象となります。店舗や事務所といった事業用ではなく、生活するための居住用として貸し出せば、固定資産税は軽減されたままになるのです。

また、賃貸に出せば、定期的に賃貸料や共益費などといった収益も見込めます。「持ち家がある」「実家が遠すぎる」といったケースならば、こういった活用を検討してみても良いかもしれません。

4-3. 売却する

相続した家を売却するというのも検討の余地があります。余計な固定資産税を払わずに済みますし、まとまった資金を得ることもできます。また、売却益には所得税と住民税がかかりますが、条件に当てはまれば特例を適用して節税することも可能です。

5. 空き家の放置は危険…プロに相談を

空き家にかかる固定資産税を抑える方法はありますが、どれがベストな選択肢になるかは人それぞれ違います。一人で対処するのも大変です。悩んだら、不動産のプロに相談すると良いでしょう。

鈴木まゆ子

鈴木まゆ子

税理士・税務ライター
2000年中央大学法学部法律学科卒業。㈱ドン.キホーテ、会計事務所勤務を経て、2012年税理士登録。WEBを中心に記事執筆・税務監修が多数。分かりやすい解説に定評がある。共著「海外資産の税金のキホン」(税務経理協会、信成国際税理士法人・著)。

あわせて読みたいコラム5選

不動産売却・住みかえをお考えなら、無料査定で価格をチェック!

カンタン入力!60査定したい不動産の所在地を選択してください

都道府県は?

ノムコムが選ばれる3つのポイント ノムコムが選ばれる3つのポイント

新着記事

もっと見る閉じる

人気記事ベスト5

カンタン
60
入力!

売却をお考えなら、
まずは無料査定から

都道府県は?

あの人に、頼んでよかった。野村の仲介PLUS
多くのお客様からご評価をいただきました

60
カンタン入力!
売却・住みかえの第一歩は、
まず価格を把握することから!

査定したい不動産の所在地を選択してください

都道府県は?

査定したい不動産の
郵便番号を入力してください
カンタン入力!60査定したい不動産の所在地を選択してください

都道府県は?

無料査定スタート