相続で、家を相続する方は少なくありません。しかし、亡くなった方の家族が、家を出ている場合、相続した家が空き家物件になってしまうケースがあります。空き家は、放置しておくと急速に劣化が進み、最悪の場合倒壊する恐れがある上、所有しているだけで税金などのコストがかかります。
そのため、空き家となる物件を相続した場合には、売却したり、賃貸にしたりと何かしらの形で活用することをおすすめします。本記事では、空き家物件の管理方法と放置するリスクについて解説します。
1. 老朽化を防ぐ空き家の管理方法
家というのは、適切に管理しないと劣化が進むため、管理方法が大事となります。放置していると、倒壊する恐れがあるだけでなく、害虫や害獣の住処となり、近隣の住民に迷惑をかける可能性があります。そのため、空き家にしている場合でも、しっかりと管理をする必要があるのです。管理する方法は、主に以下の2つです。
・定期的に自分で管理をする
・業者に依頼して管理をしてもらう
1-1. 自分で管理をするのがおすすめな人
空き家の近くに住んでいて、定期的にお手入れをしに訪れることができるのであれば、ご自身で管理することをおすすめします。
【メリット】
- 費用がかかりません。
- 自分の目で見て確認できるので安心です。
【デメリット】
- 空き家が遠方の場合には困難です。
- 手間がかかります。
- 手不定期になる方も多いようです。
【業者に依頼するのがおすすめな人】
遠方に住んでいたり、定期的に空き家を訪れる時間がなかったりする方は、業者に依頼するようにしましょう。
【メリット】
- 空き家が遠方の場合でも管理をできる。
- プロの作業なので、空き家管理の質が安定している。
【デメリット】
- 費用が掛かる
管理を委託する費用は、行ってもらう作業によって変わりますが月々5,000円?10,000円程度が相場です。
2. 空き家物件の管理でやるべき5つのこと
家の老朽化を防ぐためには、定期的にお手入れをしなければいけません。頻度としては、1ヶ月に一度行うのが理想です。お手入れとして必ずやっておくべきことは、以下5つです。ご自身で空き家物件を管理される場合の参考になさってください。
出典:グリーン司法書士OnLine「相続手続きの全体スケジュールから手続方法まで【完全マニュアル】」
- 換気・・・窓を開けて、家の中の空気を入れ替えましょう。閉じっぱなしにしておくと、湿気がたまり、カビの発生や木材の劣化に繋がります。
- 通水・・・水道やトイレ、浴室などの水回りは、通水しないと、水道管が錆、破損する原因となりますし、水道管に溜まった水を放置すると悪臭の原因にもなります。また、水道管からネズミや害虫が侵入することもありますので、家の中の水回りは、一定時間水を流しておくようにしてください。
- 清掃・・・人がいなくても、ホコリがたまることがあります。また、カビや汚れが発生していることもありますので、しっかりときれいに清掃しましょう。
- ゴミ拾い・・・締め切っていて家の中にゴミはなくても、庭やベランダなどにゴミが落ちていることはあります。ゴミがたまると、外観の印象も悪くなりますし、害虫・害獣が住み着く原因にもなりますので、こまめに捨てるようにしてください。
- 雨漏りの確認・・・古い物件の場合、屋根の劣化により雨漏りする可能性があります。雨漏りを放置すると、湿気がたまり、カビや木材の劣化を早めてしまうので、しっかりと確認しましょう。雨漏りをしている部分はしみになっていたり、カビが生えていたり、壁紙が剥がれていたりと、何らかのサインがあるはずです。
- その他の注意点
上記のほか、防犯管理や、外壁の劣化の確認、近隣にあなたの家の木や草が入り込んでいないかを確認しましょう。また、庭に雑草が生い茂っている場合には、草むしりもしてください。定期的に確認し、何か異変がないかを確認することが大切です。
参照:空き家管理の3大原則と空き家を所有すると生じるコストとリスク
3. 空き家を所有するリスク!固定資産税が数倍になることも
空き家のまま所有していると、様々なリスクがあります。その一つに税金があります。
3-1. 空き家にかかる税金は固定資産税と都市計画税
空き家となって誰も住んでいない物件でも、所有しているだけで固定資産税と都市計画税が課税されます。これは、誰かに売却したりしない限りは、ずっとかかり続ける税金ですので、必要のない空き家であれば早めに手放すことを検討した方がいいでしょう。
3-2. 「特定空き家」に指定されると固定資産税が上がる
一般的に、家が建っている土地の場合、固定資産税・都市計画税の課税評価は軽減されていますが、「特定空き家」に指定されるとこの軽減措置を受けられなくなります。固定資産税・都市計画税の軽減率は、以下のとおりです。
固定資産税 | 都市計画税 | |
---|---|---|
敷地面積200m2以下の部分 | 固定資産税課税標準額×1.4%×1/6 | 都市計画税課税標準額×0.3%×1/3 |
敷地面積200m2を超える部分 | 固定資産税課税標準額×1.4%×1/3 | 都市計画税課税標準額×0.3%×2/3 |
更地 | 固定資産税課税標準額×1.4% | 都市計画税課税標準額×0.3% |
「特定空き家」とは、倒壊する恐れや、近隣に迷惑をかける恐れがあると自治体が判断した空き家です。特定空き家に指定されると、軽減措置を受けられなくなり、最大で当初の税額の6倍近い税金を支払うことになる可能性があります。
3-3. その他のリスク
固定資産税が高くなる以外にも、以下のようなリスクがあります。
- 業者に依頼した場合管理コストがかかる
- 自身で管理をする場合、手間と時間がかかる
- 住宅用火災保険が使用できず、一般用火災保険に入りなおす必要がある
- 害虫・害獣の住処になったり、犯罪の温床となったりして近隣の迷惑になる
- 人口とともに住宅需要が減り、空き家の価値が下がる。
4. 空き家物件を売却した際のメリット
前章で紹介したリスクを考えると、空き家のまま放置するのであれば売却を検討したほうが良いでしょう。
メリット1:管理のコストやストレスから解放される
空き家を売却すれば、固定資産税や都市計画税を支払う必要はありませんし、もう管理をしなくて良くなります。自宅ではない空き家を定期的に管理するのは、思ったよりもストレスとなるものです。空き家を売却すれば、税金や管理を依頼する費用、自身で管理する手間・ストレスから解放されることとなります。
メリット2:空き家のリスクがなくなる
空き家を放置することで、建物が倒壊する恐れがあるほか、害虫・害獣の住処になったり、犯罪の温床となったりするリスクがあります。それによって近隣住民に迷惑がかかることもあるでしょう。売却すれば、そのリスクの責任を負う必要はなくなりますし、そもそも新たな住民が住めばこれらのリスクはなくなります。
メリット3:売却の優遇税制が受けられる
亡くなった人が暮らしていた家を相続し、その家が空き家となる場合、相続人が空き家を売却する際、売却益が3,000万円以内であれば非課税となる特例があります。(通称:空き家の特例)空き家の特例が認められるための一般的な要件は以下のとおりです。
- 1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された建物であること
- 空き家を相続したのが2016年(平成28年)1月2日以降であること
- 土地と建物両方を相続したこと
- 区分所有建物でない(マンションではない)こと
- 相続時から売却時まで、事業・貸付・居住などの用途として利用していないこと
- 建物が地震に対する安全基準を満たしていること
- 売却先が他人であること
- 売却代金が1億円以下になること
- 空き家の特例の適用を受けるための確定申告をすること
なお、この、空き家の特例が受けられるのは、相続した日から3年を経過する日が属している年の12月31日までです。
メリット4:遺産分割や納税がしやすくなる
相続財産の大半を空き家となる物件が占めていた場合、相続人で遺産を分けあう「遺産分割協議」が難しくなってしまいます。物理的に空き家を半分にするということはできないためです。
そこで、空き家を売却して現金に換えることで、相続人同士で分けやすくなります。また、相続税がかかる場合には、納税資金にすることも可能です。
出典:実家の売却はいつがベスト?手続きの流れや税金についても徹底解説|4章空き家の特例
5. まとめ
相続した家が空き家となる場合、放置することで様々なリスクが生じます。また、老朽化を防ぐために、定期的に管理をしなければいけません。定期的にメンテナンスをしていても、家は年月が経てばどんどん古くなり、資産価値も下がっていってしまいます。
実家として思い入れがあったり、定期的に親族が集まる場として利用したりする場合は別ですが、空き家を所有し続けることに大きなメリットはありません。空き家の特例で、売却益の控除が受けられるのも3年強の間だけですので、空き家を所有している場合には、なるべく早期に売却を検討することをおすすめします。手続きが難しい、不安という方は、専門家に相談してみることをおすすめします。
司法書士・行政書士 家族信託専門士 M&Aシニアエキスパート
「世界一やさしい家族信託」著者。相続の相談件数は業界でもトップクラスの年間1800件のグリーン司法書士法人の代表司法書士。一般の方向けのセミナーから、司法書士や税理士等専門家向けのセミナーまで講師として多数手がける。 オーダーメイドの家族信託を使った生前対策や、不動産・法人を活用した生前対策が得意である。
大阪司法書士会所属 登録番号大阪第2983号
大阪司法書士会
大阪府行政書士会所属 会員番号第6011号
大阪行政書士会
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