親から土地を相続した場合、相続税がかかるケースがあります。では、相続税は一体いくらかかるのでしょうか。計算方法や相場など、土地の相続税についての気になる情報をまとめて解説します。また、相続税が払えない場合の対処法なども解説します。「相続税が払えないかも」とお悩みの方もぜひご覧ください。
1. 土地の相続税とは
亡くなった人(以下「被相続人」と言います)の財産を残された人(以下「相続人」と言います)が受け継ぐことを相続と言い、相続した財産を取得した際に支払う税金が相続税です。相続税額は相続人が取得した財産の金額に応じて異なります。
相続税の申告と納税は被相続人の亡くなったときの住所地を管轄する税務署長に、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月目の日までに行います。
被相続人が亡くなる直前まで自宅として、事業用として、または他の人に貸していた土地に対しては、「小規模宅地等の特例」といって大幅にその土地の評価額を引き下げることができる制度がありこれを利用することで納税額を0円にすることができる場合もあります
2. 土地の相続税の計算方法
土地を相続した場合、その土地の評価額が基礎控除を超える場合は、超えた部分に対して相続税がかかります。
【基礎控除額】
3,000万円+600万円×法定相続人の数
相続税を計算するときの土地の評価方法には、二通りの方法があり、「路線価方式」と「倍率方式」と言います。
これは納税者側が自由に選べるのではなく、路線価図をみて、路線価のついている道路地に面している土地は路線価方式、路線価のついていない土地は倍率方式で評価することになっています。
土地を相続しても相続税は現金で納める必要があり、相続税の支払いができないことを理由に相続した土地を売却しなければならないという事態がしばしば起こります。そのため、相続が発生する前に必ず土地の評価額を把握しておくと良いでしょう。
3. 6000万円の土地の相続税の計算シミュレーション
6,000万円の土地を相続した場合、相続税額がいくらぐらいになるのか、シミュレーションしてみましょう。
6,000万円の土地(空地)を兄弟3人(法定相続人3人)で3分の1ずつ相続した場合について紹介します。
- 土地の評価額6,000万円
- 基礎控除額 3,000万円+600万円×3人=4,800万円
- ①‐②=1200万円←この金額に対して相続税がかかります
- 1,200万円×1/3=400万円←1200万円の土地を相続分で取得したと仮定します
- 400万円×10%×3人=120万円←法定相続分で取得した場合の持分に税率をかけます
- (120万+120万円+120万円)×1/3=120万円←⑤の法定相続分で取得した場合の相続税を一度合算して、そのあとに実際に取得し持分の割合をかけて各人の納税額を計算します。今回は法定相続分通りに相続したので同額になります。
- よって、1人当たり納税額は120万円
4. 土地の相続税はかからない人が多い?いくらが相場?
土地を相続した場合、「路線価方式」の計算方法は、「路線価×土地の面積」で計算されるので、路線価が高い地域や面積の広い土地を相続した場合には相続税がかかる可能性が高くなります。
一方、倍率方式で評価をする地域に関しては、路線価方式の地域と比較すると評価額の低い地域が多いと言えます。ですが、相続した面積の広さによっては基礎控除を超える場合があり、基礎控除を超える部分には相続税がかかることになります。
5. 土地の生前贈与には相続時精算課税制度がおすすめ
生前贈与を活用する方法の一つとして、「相続時精算課税」というものがあります。
相続時精算課税制度とは、その名の通り相続をしたら精算する、相続をするまで贈与税がかからないようにする税制です。
いくらの財産を誰からどれだけ贈与されても贈与税がかからないかと言うと、そうではありません。
原則として60歳以上の父母または祖父母から、20歳(注1)以上の子または孫に対し、2,500万円までの財産を贈与した場合において選択できる制度です。
2500万円を超える部分には20%の税率で贈与税がかかります。
また、相続が発生したときにその贈与を受けた財産は「相続」したものとして相続税の計算の対象となりますので注意が必要です。
(注1)「20歳」とありますが、令和4年4月1日以後の贈与については「18歳」です。
6. 土地の相続税の評価額の計算方法
自ら利用している土地の評価方法は2種類あります。これを自用地評価と言います。
国税庁が発表している路線価図に路線価がついている土地は路線価方式で評価を行い、「正面路線価×地積×各種補正率等」で計算されます。
路線価のついていない地域、路線価図に「倍率地域」と示されている地域は固定資産税評価方式で評価を行います。この方法は固定資産税の評価額で評価を行います。
また、アパートなどの賃貸用の建物が建てられている土地は「貸家建付地」と言い、の評価額は「自用地評価額-自用地評価額×借地権割合×借家権割合(30%)×賃貸割合」となります。
7. 土地の相続税が払えないときはどうする?
相続税は、財産課税とよばれており、相続財産を取得した相続人が「現金」で納税を行う必要があります。相続財産の中に現金の割合が高ければ難なく納税できますが、土地や建物などの不動産などの割合が高いと現金で納税をすることが難しくなります。
その際に利用できる方法として、1延納制度、2物納制度、3相続財産を売却し現金化、4不動産を担保に金融機関から借入、最終的には5相続放棄、を検討する必要もあります。
8. 土地の相続税を抑えられる制度
土地の相続税を抑えられる制度をご紹介します。
配偶者の税額軽減
相続人の配偶者は、相続財産を共に形成した同一世代であることが多く、配偶者の老後の生活保障や遺産の維持形成に対する配慮から、税額を軽減する措置が取られています。
その金額は次の算式によって計算します。
相続税の総額 × 課税価格の合計のうち配偶者の法定相続分相当額(1億6千万円に満たない場合は1億6千万円)
÷課税価格の合計額
小規模宅地等の特例
相続や遺贈によって取得した財産のなかに、相続開始の直前まで被相続人または被相続人と同一生計の被相続人の親族の事業や住居の敷地となっていた土地や土地の上に存する権利に対しては、その利用用途に鑑み、50%もしくは80%の減額をして評価額とできるような措置が講じられています。
未成年者控除
相続人の中に未成年者がいるときは、納税の負担や将来の生活の保障を重視して、相続税額から以下の金額を差し引くことができます。
(18歳-相続開始時の年齢)×10万円
なお、年数を計算するときに例えば16歳1か月だとした場合の、1年未満の端数については、1か月は切り捨てとなり16歳として計算します。
相次相続控除
一般的には、相続の開始があってから次の相続の開始までの期間は相当期間があり、次の納税への準備ができると考えられていますが、短期間に立て続けに相続が発生してしまうケースでは納税者の相続税負担への配慮として、相次相続控除という制度が用意されています。具体的には最初に発生した相続から10年以内に次の相続が発生した場合に控除を受けることができます。
障害者控除
相続または遺贈により財産を取得した人の中に障害のある人がいる場合、障害者控除の適用を受けることができます。
その金額は、障害の程度によって異なりますが、以下の金額を差し引くことができます。
(85歳-相続発生時の年齢)×10万円(特別障害者の場合は20万円)
9. 土地の相続税はかからない場合がほとんど
土地の評価額が高額になるケースは路線価評価がされる地域の戸建てにお住まいの場合がほとんどです。マンションなどの区分所有の家屋は、土地自体の面積が広く評価額が高額になっても、最後に所有割合をかけることによって、評価額が相続税の基礎控除を超えるようなことがない可能性が高いです。ただ、土地に対しては小規模宅地等の特例を活用すると、その評価額は20%相当もしくは50%相当が相続税評価額となりますので、土地以外に財産が無ければほとんど相続税を負担せずに相続が可能です。
税理士
山田麻美税理士事務所代表税理士。商業高校在学中に日商簿記1級に合格したことがきっかけで税理士を目指す。専門学校卒業後、東証一部上場企業の東急電鉄の子会社の入社を経て、大手税理士法人へ転職。税理士法人の勤務を通じて大企業から中小企業まで100社以上の決算、税務申告の実務を学ぶ。2011年に税理士登録し、2014年に独立開業。法人及び個人の会計処理、税務申告業務の対応を、これまでのべ200社以上行っている。
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