ご自身が所有しているマンションを売りたいと思った時、その価格はどうやって決めればいいのでしょうか?
また、実際に売れる価格と、なにがどう違うのでしょうか?
今回はマンションの売却を検討している人が、最も気になる売り出し価格や成約価格について、解説してみたいと思います。
1. マンションの売り出し価格とは?売り出し価格とは
売り出し価格とは
- 不動産仲介会社がマンションの相場データやお部屋の状態などを確認して出した査定価格と、
- 売り主の売却希望価格
をすり合わせながら決定した価格です。
不動産仲介会社は相場データに基づいた客観的な根拠に基づいた価格を提示しますが、最終的に売り出し価格を決定するのはその会社ではなく、売主です。売主にも「このくらいで売りたい」という希望価格があり、その希望価格で売却してくれるところにお願いしたいという思いを持っているでしょうから両者で会話をしながら決めていくのが一般的なマンションの売り出し価格決定の流れです。
2. 売り出し価格と成約価格の乖離率はどの程度?
公益財団法人 東日本不動産流通機構の「首都圏不動産流通市場の動向(2018年)」によれば、2009年から2018年までの10年間の平均で、首都圏のマンションは売り出し価格が平均2,843万円で、成約価格が平均2,787万円でした。
つまり、売り出し価格に対し成約価格は約-2%の乖離が生じているということになります。
また、(株)東京カンテイの調査によれば、首都圏における2007~2016年の10年間で、売り出し価格と成約価格の差(乖離率)を算出した結果、売却期間が1カ月以内の場合は乖離率が-3.8%、2カ月以内で-6.7%、12カ月以内では-19.5%と、売却期間が長引くにつれ、乖離率が大きくなっていくという調査結果もあります。
もちろん金利や税制の動向に加え、マンションそのものの個性もありますが、以上のデータから考えると、売り出し価格を決めても、成約に至るには、最低でも数%の割引が必要であり、それを渋って成約のチャンスを逃し時間が経つと、数十%の割引が必要になることを示しています。
3. 売り出し価格は査定価格とどの程度違う?
査定価格とは、不動産仲介会社が売買実例などから調査して、相場データ等を根拠に「このくらいで売れるであろう」と見積もった価格です。この価格は豊富な取引事例を知っている不動産仲介会社が、データと取引実績から算出するものであるので、ある程度精度が高いといえます。しかし、売り出し価格には、査定価格とは違い、売主の意向や希望などの主観的な意見が反映されている場合があるので、そこには多少の違いがあります。
具体的な例をあげましょう。売主が新築時にわざわざオーダーして設置した、こだわりの外国製キッチンがあるとします。デザインもおしゃれで、まだまだ使えるので、所有者目線からは価値があり、ウリだと思っています。
しかしそれは、購入者目線で見れば一般的な日本のキッチンとは異なり、日本人に合うサイズで作られていないことや、故障やメンテナンスをする場合でも扱ってくれる業者も少ないことが懸念され、むしろマイナスの評価になってしまうことがあります。
不動産仲介会社が調べた査定価格によって、客観的な価値を知り、査定価格を基準に売り出し価格は決められていくのが一般的ですが、中には「きっと、このキッチンの良さを理解してくれる人がいるはずだから、売り出し価格は査定価格よりも、高めに出したい」と、売主の強い要望もあるでしょう。その場合は、査定価格と売り出し価格には相当開くことになります。
算出方法がある程度画一化している査定価格は、不動産仲介会社によって大きくズレることは少ないため、価格の違いは売主の希望や抱えていらっしゃるご事情(ローン残債、住みかえ先の購入金額など)によって変化すると言えます。
4. 適切な売り出し価格の見極め方
先ほどのようにご自身の希望やご事情だけでは、適切な売り出し価格は決められません。
では、どのように決めたらいいでしょうか?一般的な流れに沿って説明していきます。
4-1. 相場価格を調べる
「売れる価格」を知るためには、まずは「買われている価格」を知ることが重要です。
マンションの場合、自分がいくらで買ったのかというのも、一つの参考にはなりますが、基本的には下がります。特殊な事情により値上がりするケースもありますが、全体の成約件数からみるとごく僅かでしょう。大事なのは自分のマンションの“現状”を“客観的”に把握することです。単に周辺のマンションがこれくらいで売れているからではなく、マンションそのものの比較は、築年数、立地、利便性お部屋の比較は、バルコニーの方角、階数、部屋位置などが挙げられるでしょう。今はインターネットで類似物件の価格を調べることは簡単にできますので、これらを自分のマンション、お部屋と比較してみましょう。
4-2. 住宅ローンがあるなら残債を調べる
月々のローンを払っていることを把握している人は多いと思いますが、その金利が現在いくらで、残債がいくらなのかまで正確に把握している人は少ないのではないでしょうか?
しかし、住宅ローンが残っている物件は、売却価格によって残債を一括返済する必要があり、最低でも売却価格>残債になるように、売り出し価格を決定したいところです。
それでも売却想定価格よりも、住宅ローン残債が上回ってしまう場合は、できるだけ高く売るように(状況によっては売らないという選択を)する必要があります。
売却検討の手始めとして、売却するなら最低でもこれくらいで売れないといけないというラインを意識すると良いでしょう。
4-3. 不動産仲介会社に査定を依頼する
不動産仲介会社に査定のみを依頼するケースは、内見対応や契約、引き渡しなどの「売却活動を全て自分でやる場合」などでしか発生はしませんが、方法は後述のとおりです。
ご自身で相場を調べ、住宅ローンの残債も調べ、これらの情報から出した価格が大ハズレではないかを確認したいわけですので
なるべく実績のある会社にお願いしたほうがいいでしょう。
近くにある不動産仲介会社の中から、大手で選ぶのか、地域密着型で地元に特化している不動産仲介会社などを選びましょう。
査定を依頼するにあたっては、複数の会社に依頼することで、適正価格が把握しやすくなるため、躊躇せずに複数の会社にお願いしましょう。
5. 売り出し価格を決めるポイント
それでは売り出し価格を決めるにあたって、そのポイントとなることや注意点について次に解説します。
5-1. 最低売却価格を決める
ご自身が希望している売却価格よりも査定価格が低いことはよくあります。
さらに、その査定価格で売り出したが、何カ月経っても売れないなんてことも起こりえます。
従って、売り出し価格を決めるにあたっては、「値下げしていいのはここまで」という線引きをあらかじめ決めておくのがいいでしょう。
そうしないと、焦って大幅な値下げをしてしまうことや、逆に最初に決めた価格に固執して全く売れない、ことが起こりえます。
マンションの価格はみなさんの想像以上に様々な要因の影響を受け、変化しやすいものであることに注意しましょう。
5-2. 値下げ価格、スケジュールを決めておく
マンションを売却しようとすると、購入希望者が複数現れ、こちらの希望通りの売り出し価格で話が進むこともありますが、値下げ交渉が入ることもよくあります。それを断って、別の購入希望者を根気よく待つというのも一つの選択肢です。
しかし、値下げに応じないのではなく、値下げ交渉をされる前提で、値引き分の金額をプラスした価格設定を予めするのも一つの方法です。
ただし、その設定する金額が高すぎると逆に裏目に出てしまうので、事情に詳しく、信頼できる営業担当に相談すると良いでしょう。
また、このような値下げ交渉もすぐに応じる必要はなく、問い合わせの状況とその推移を見て適切なタイミングで行うべきです。
そのスケジュール間については、例えば不動産の取引が活発な春に向けては短めに、逆にやや沈静化する秋にはやや長めにするなど、季節に合わせて調整することも大切だと思います。
5-3. 同じマンション内の売り出し状況を確認しておく
いざ売り出そうと思った時に、自分の住んでいる同じマンションで、同様の面積、同様の階層で、売り出されることもあります。
分譲戸数が少ないマンションでは稀かもしれませんが、タワーマンションなどでは、むしろその可能性が高いと考えた方がいいでしょう。
当たり前ですが、同じマンションでは間取りや立地がほぼ同じ物件が売り出されることになるので、売り出し価格が安い部屋が選ばれます。
一度、安値で取引されてしまうと、それが「成約事例」となってしまいます。
よほど内装のリフォームにこだわっているか、購入したがまったく入居しておらず、内装が新品同様という特殊事情がない限り、過去の売買実績から大きく乖離することはないと思います。
以上から同じマンション内の売り出し情報には日ごろから注目し、仲介を依頼する不動産会社に、同じマンションで売りに出ている部屋がないか確認してもらう必要があります。
6. マンションの売り出し価格は慎重に決めましょう
今回はマンションの売り出し価格、査定価格、成約価格の違い、そして売り出し価格の決め方やそのポイントについて解説しました。
ご存知のようにマンションは一生で1回買うかどうかの大きな買い物なので、少しの金額差がその後の生活に大きな影響を与えます。しかし、売り出し価格はどんなにネットが進化し、情報が集まるようになったとしても、最終決定は売主という人間です。
時には情報を仕入れすぎて整理しきれず混乱することもあるでしょう。
そんな時は信頼できる不動産仲介会社につながる優良なサイトを選び、査定をしてもらい、プロの適切なアドバイスを受けるようにしましょう。
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