市街化調整区域の活用方法や建築許可とは?将来の資産価値はどうなる?

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市街化調整区域の活用方法や建築許可とは?将来の資産価値はどうなる?

市街化調整区域と聞いても、なんのことかわからず、この記事にたどり着いた方も多いのではないでしょうか。この記事では、市街化調整区域の特徴やメリット・デメリットを詳しく説明し、活用法や建築許可、将来の資産価値についても解説しています。建築・使用・変更などの制限が多い土地は、詳しい不動産会社のサポートが必須となります。事前に調整区域についての予備知識をつけておけば、手続きの内容や意味がよく分かり、不動産会社との話もスムーズに進められるでしょうます。

目次

1. 市街化調整区域とは

まずは、都市計画区域内にある3つの区域の違いや特徴から解説していきましょう。

1-1. 市街化区域

市街化区域とは、すでに市街地を形成している区域および、概ね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域とする(都市計画法第7条第2項から引用)とされています。駅などの交通の要所を中心とした市街地にあり、生活に不可欠な施設や店舗などが数多く集まる便利なイメージの地域です。

1-2. 市街化調整区域

市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域とする(都市計画法第7条第3項から引用)とされています。市街化調整区域では現状からの変更が容易にできないよう、宅地化などの開発行為や建造物の建築に対して自治体の権限で厳しい規制が設けられています。市街化調整区域の多くは、市街地から離れた郊外にあり、家屋などの建造物が少なくのどかな田園風景が広がっているようなイメージの地域です。

1-3. 非線引き区域

都市計画法第7条では、「都市計画区域において無秩序な市街化を防止し、計画的に市街化を進めていく必要がある場合は、市街化区域と市街化調整区域の区分(区域区分)を定めることができる」と規定されており、非線引き区域とは、都市計画区域内で市街化区域にも市街化調整区域にも区分されていない地域を指します。なお、非線引き区域とは一般的な呼称で、法律上の名称は「区域区分が定められていない都市計画区域」です。

2. 市街化調整区域の4つの特徴

市街化調整区域では、開発や建築に対して厳しい制限があり、ライフラインの敷設状況や生活施設の充実度などに特徴があります。

2-1. 市街化調整区域での開発行為には厳しい制限がある

市街化調整区域内での建て替えや増改築・リノベーションなどをする場合には、基本的に自治体の開発許可もしくは建築許可が要ります。

しかし、既存建築物の建て替えで一定の条件を満たす場合には、許可が要らない場合があります。一定の条件には、「建て替え後の延床面積が既存建築物の延床面積の1.5倍以下であり、構造や用途が既存建築物とほぼ同一である」などがあげられ、これらの要件を満たしている場合には、「許可不要の改築」となります。

2-2. 上下水道・電気・ガス・ネットのインフラ整備が不十分

市街化調整区域内にある既存の住宅地には、上下水道・電気・ガスなどのインフラは整備されています。しかし、将来のインフラ整備地域やコストを最小限にするために、建築許可がおりづらい地域もあります。さらに、道路のアスファルト舗装や上下水道などのインフラ整備に関して、現状ですでに自治体が負担してくれない場合は、整備費用はこの先も自己負担になるため注意が必要です。なお、民間サービスではありますが、光ファイバーやCATVインターネット接続などは、電柱の位置と住宅の場所によって、サービス加入を断られる地域があります。

2-3. 市街地の中心部から離れていて生活施設が少ない

市街化調整区域は、市街化区域よりも生活施設の絶対数が少ない傾向にあるのは否めません。しかし、地域住民の利便性が向上する業種や店舗は、設置許可がおりやすくなっています。そのため、場所によっては大型の家電量販店・園芸店・コンビニ・フランチャイズの飲食店・ガソリンスタンド・物流ターミナルなどがあり、人によっては利便性が高いと感じる地域もあるでしょう。

2-4. 需要が少なく流動性が低いため資産価値が不安定

市街化区域にくらべて開発や建築の制限が厳しいため、住宅需要も流通量も少なく敬遠されやすい地域です。そのため、流通価格が市街地にある物件の半分以下というような格安物件も存在するなど、資産価値が不安定です。また、担保価値も低く査定されてしまうため、住宅ローンの融資上限額が低くなったり融資がおりなかったりすることがあります。

いざ売却するにしても取引事例が少ないために、売り出し価格の参考になるような直近の類似売買事例が見つからないなど、売却査定が難しい場合も多いでしょう。そういった場合には、固定資産評価額や路線価など、公的な土地指数を根拠に相場を試算する場合もあります。

3. 市街化調整区域の建築要件と建築するメリット・デメリット

市街化調整区域は原則として建築不可であり、建築の許可を得るまでのハードルが高めです。

3-1. 市街化調整区域で建築の許可を取る流れ

市街化調整区域内で家を建てられる要件は下記のとおりです。

  • 古くから宅地扱いの土地で、以前の建物と同じ用途の建物を建てる場合
  • 上記土地内にある本家から分家をする場合
  • 近隣住民の利便性が向上する小売り店舗などと併用する住宅の場合
  • 市街化区域と隣接した市街化調整区域で比較的発展している場合
  • 自治体が条例で開発許可を出している市街化調整区域の場合

また、市街化調整区域内で建築するまでの手続きの流れは下表のとおりです。

自治体へ事前相談
自治体と事前協議
都市計画法34条に該当開発行為【なし】
都市計画法34条に該当開発行為【あり】
開発審査会もしくは許可
29条の開発許可申請
建築確認申請
工事の着工

3-2. 市街化調整区域で家を建てるメリット

住居がまばらに点在するようなエリアでは人工的な音が少なく、こちらが発する音も気にしなくてよいことがほとんどです。また、敷地が大きい場合にはたくさんの駐車台数が確保でき、倉庫や作業スペースや離れなどを持つ方もおられます。さらに、庭園やBBQスペース、家庭菜園の設備なども比較的容易に確保できるでしょう。そして、市街化調整区域は市街化区域よりも不動産の流通価格が安く、固定資産評価額も低いため、取得費が安く固定資産税の負担が少なくて済みます。

3-3. 市街化調整区域で家を建てるデメリット

立地適正化計画(コンパクトシティ構想)によって、郊外から市街地の中心部へと緩やかに人口集中を誘導する流れがあります。そのため、市街化区域が解除され市街化調整区域に変わったり、新たな住居の建築許可がおりづらくなったりするケースもあります。

将来的には、過疎地域のインフラ整備計画は縮小していくため、生活の利便性もいまより悪くなると想定すべきかもしれません。また、住宅の需要が低下すれば家の売却が難しくなり時間がかかります。そして、資産価値は市街地のように安定せず、将来的にも下落傾向にあると推測できます。

なお、市街化調整区域では、家が現存していても必ず建て替えできるわけではありません。むしろ、その時点の自治体の規制方針に大きく影響され、開発や建築の許可取りは容易ではないでしょう。こういった背景から、金融機関のローン審査では市街化調整区域の家は再建築不可に近い担保評価になり、住宅ローンが組めない可能性もあります。

4. 市街化調整区域で建物を建築しない利用方法・6つ

ここでは、市街化調整区域に建物を建てず、土地を有効活用する方法を6つご紹介します。

4-1. 整地やフェンス整備で駐車場経営

月極の青空駐車場として貸し出すだけなら少なくとも地面が平らであればよく、砂利を敷いて区画ライン表示やフェンス設置などの整備をすればなおよいでしょう。ただし、荒廃した印象にならないよう、年に何度かは巡回をして草刈りや砂利の補充などの維持管理が必要になります。

4-2. 整備不要で転用しやすい資材置き場

資材置き場に利用するのであれば、よほどの高低差や傾斜がない限りは現状のままで建築土木会社や運送会社へ貸し出せます。ただし、大型車が出入りする場合には車両の荷重に耐えられるように地盤改良を要する場合や、通行人の巻き込みや横断の接触事故が起こらないような危機管理が大切です。また、資材置き場の場合には草刈りなどの管理は借主がしてくれて楽なのですが、資材の積み下ろしの騒音や景観の悪化で近隣からクレームになる可能性は想定しておきましょう。

4-3. 市街化調整区域に詳しい不動産会社で売却

市街化調整区域は、状況に合わせて土地の開発許可や建物の建築許可が必要になり、適切な書類を準備して決まった手続きを経ないと許可がおりません。また、現存する建物でも増改築や再建築が将来必ずできるという保証はないため、資産価値の減少や売却できないリスクをはらんでいます。

そのため、市街化調整区域の事情に疎く経験が少ない不動産会社では、トラブルのもとになる可能性がありますので、市街化調整区域の不動産を売却する場合には、買主へ現状と将来のリスクを正しく伝えられる不動産会社を選ぶようにしましょう。

4-4. まとまった土地に太陽光発電施設を建築

市街化調整区域の耕作放棄地などが太陽光発電施設として利用されるケースはたくさんあります。電気はどこで産みだしても価格に差はないため、市街化調整区域のように地価が安い場所に設置するケースが一般的です。
太陽光発電施設の運営は、設置してしまえば半自動で稼働し利益の大きな増減がなく安定しています。しかし、注意すべきは設置費用が高いことと自然災害時の被害が甚大になるかもしれないという点です。また、電気の買取価格の低下や節税効果がないことから、事業用地として貸すか売却するほうがよい場合もあります。

4-5. 墓地として専門業者に長期間の賃貸

市街化調整区域にまとまった土地があるなら、霊園などの墓地を扱う会社へ貸し出す方法もあります。墓地は少し不便な場所でも問題がなく、住宅地から遠いくらいのほうがむしろ喜ばれます。管理も収入が不安定になることもありません。しかし、一度貸し出して墓地になると簡単には撤去できないため、自分が使用したり処分したりできる状態がいつ来るのかはわかりません。数世代にわたって相続していくことを想定しておく必要があるでしょう。

4-6. 農家や家庭菜園の耕作地として貸す

車が近くまで寄せられる道がある場合には、家庭菜園など一般の方の耕作地として使ってもらうという選択肢があります。しかし、耕作地にする場合は不動産事業のような大きな収入にはならず、場合によっては使用貸借(無償で貸し出す)になることもあります。大きな収入にはならなくても、利用者が自分に代わって巡回や管理をしてくれると考えれば、メリットある選択肢になるかもしれません。

5. 市街化調整区域に建物を建築する方法・2つ

市街化調整区域であっても、建物の用途やサービスの目的によっては問題なく建築できる場合があります。

5-1. 高齢者向け施設や福祉施設に利用

高齢化社会が加速し、2025年に団塊の世代が75歳に達することで、後期高齢者人口は約3,500万人になるといわれています。総務省は、有料老人ホームなどの高齢者施設の需要の高まりを受け、土地が安くて閑静な環境が多い市街化調整区域内での開発許可条件が緩和し、施設設置計画の審査対象を拡大中です。市街化調整区域は土地が安く静かな環境が多いため、高齢者施設や福祉施設の設置に適しているといえるでしょう。

5-2. 地域の利便性を高める店舗に利用

市街化調整区域であっても、地域住民の利便性を上げる業種や店舗の設置許可について自治体は柔軟に対応しています。たとえば、農機具および農業小物や林業の資材を扱うホームセンター、コンビニ・ドラッグストア・飲食店・医療機関など、周辺居住者の生活にとって利便性が高く公益上必要と考えられる場合に許可される傾向です。

6. 市街化調整区域で開発許可を申請する方法と費用

ここでは、市街化調整区域で開発許可を得る方法や期間、概算費用について解説していきましょう。

6-1. 開発許可をもらうまでの手順

市街化調整区域内で都市計画法43条の建築許可を得るまでの流れは下記のとおりです。

  • 自治体へ事前届けを提出
  • 標識の設置、住民説明、説明報告書を提出
  • 説明報告書の縦覧、住民から意見が上がれば事業者が見解書を提出
  • 事業者の資料をもとに事前協議を行い、自治体は回答書を交付
  • 開発事業協議として施設の規模・構造・管理者などを協議する
  • 協議が整えば、事業者と自治体が協議締結を行う
  • 開発許可申請で提出された資料をもと技術基準の審査を行う
  • 許可になれば「開発行為の許可証」を事業者へ交付
  • 建築確認申請が許可されれば工事着工
  • 工事完了の検査を行い検査済証交付と完了公告を実施

なお、市街化調整区域で開発予定の土地が農地の場合には、上記に加えて農地法4条もしくは5条の転用許可を取得しなければなりません。

6-2. 開発許可がおりるまでの期間

開発許可申請の審査期間については、下記の標準処理期間をご参照ください。

市街化調整区域での開発許可の審査期間(目安)
開発規模審査期間
0.3ha未満 約25日
0.3ha以上5ha未満 約40日
5ha以上 約55日

引用:よくある質問と回答(開発許可などの申請の審査期間)|神戸市 都市局 都市計画課

なお、開発審査会への諮問など別途手続きを要する場合には、上記期間にさらに30〜60日を加える場合があります。

6-3. 申請を代行してもらう場合の費用

第34条の開発許可申請の代行は、建築士(もしくは土地家屋調査士・測量士)や行政書士に依頼することになるでしょう。代行費用は40万円〜が目安ですが、申請対象の土地の面積や農地法の許可などの手続きが増えるに従って増額します。可能であれば、代行費用の見積もりをいくつか取得して、信頼できる方かどうかも含め比較検討するとよいでしょう。

7. まとめ・市街化調整区域は制限があるが活用できる

市街化調整区域は、市街化を抑制する目的のために土地の開発や建物の建築の規制が厳しい区域ですが、既存の建築物と同様の建物なら再建築許可がおりやすい場合もあり、住宅用地として利用価値がないわけではありません。ただし、許可要件が厳格に決められており、将来の建て替えや資産価値を考慮するのであれば、マイホームや建築用地には向かない場所もあります。もしも、環境や価格を気に入って購入を検討したい場合には、市街化調整区域に詳しくて取引実績が豊富な不動産会社のサポートが必須となるため、不動産会社と二人三脚で進めていきましょう。

柴田 敏雄

柴田 敏雄

宅地建物取引主任士、管理業務主任者
司法書士事務所に2年、大手不動産管理会社に5年、個人顧客を中心に不動産賃貸・売買の仲介営業会社に7年間従事。また、外資系金融機関にも2年間従事し個人顧客へ金融資産形成や相続税の節税アドバイスなどを担当。現在は不動産/金融業界での経験を活かし、記事を執筆にもあたっている。

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