空き家の売却は、できるだけ早く取り掛かることをおすすめします。空き家は活用していない間にも維持費がかかり続け、放置を続けると固定資産税の軽減措置が受けられなくなるなど、デメリットが多いためです。
本記事では、空き家の売却の流れや売却のポイント、気になる費用や税金についても解説します。空き家の売却に悩んでいる人はぜひ参考にしてください。
1. 【アンケート調査】空き家の売却、何が一番大変だった?
本記事では空き家を売却する上での参考にするために、空き家売却の経験者を対象にアンケートを実施しました。
アンケート結果では、空き家の売却で大変だった点として、「不動産仲介会社との契約」「売り出し価格の設定」が23%と同率で最も多く、次いで「不動産査定」が19%でした。
空き家を売却する際には、売却前に不動産会社と契約したり売り出し価格を設定したりなど、不動産査定までのハードルが高いことがわかります。
少しでも高く売るために自分たちで工夫することは大切ですが、自分一人で解決しようとせず、必要に応じて専門家に相談することが大切です。
2. 空き家は早期売却がおすすめな3つの理由
空き家があるなら、なるべく早く売却することをおすすめします。主な理由としては、所有しているだけで維持費がかかる・売却したほうが相続が楽・放置すると国定資産税が高くなる3つが挙げられます。それぞれの理由を詳しくみてみましょう。
2-1. 空き家の維持費の節約
まず、空き家は所有しているだけで維持費が発生します。人が住んでいるかや活用しているかは関係なくさまざまな費用が発生します。早期に売却して手放すと、維持費の節約が可能です。
空き家の維持費には、次のようなものがあります。
- 固定資産税・都市計画税
- 火災保険料・地震保険料
- 水道光熱費
- メンテナンスのための交通費や業者代
水道光熱費は、ライフラインの契約を続けている場合のみ発生します。また、空き家の管理には掃除や点検のために定期的な訪問が必要です。しかし、遠方に住んでいる場合は訪問のための交通費や時間、労力が発生します。
早めに売却することで、維持費だけでなく、管理の手間や時間も手放すことができるでしょう。
2-2. 将来の遺産相続でトラブル回避
遺産として空き家を相続する場合、売却して現金化したほうが公平に分けやすく、トラブルになりにくいです。
不動産のまま資産を分けようとすると、不公平感を持つ人がいるなど、トラブルになりやすくなります。また、空き家を誰か1人が受け取る場合に、代償金を支払えなかったり、後々維持費の負担に不満を感じたりと、揉め事に発展するケースも多いです。
親の空き家を相続する場合や、将来子供たちに自分の空き家を相続する可能性がある場合には、トラブルを回避するために売却しておいたほうが無難でしょう。
2-3. 特定空家や管理不全空家への指定を回避
空き家を適切に管理せず放置を続けると、特定空家や管理不全空家として指定される恐れがあります。指定されると、市区町村から指導・勧告を受けることになります。さらに、指導や勧告に従わず放置すると、本来受けられる固定資産税の軽減措置が受けられず、負担が大きくなるなど、リスクが高まるでしょう。
特定空家や管理不全空家の制度は、空き家問題を解決するために国が実施している政策のひとつです。倒壊や外壁の落下、害虫、景観の悪化、不法侵入といった空き家を放置することで発生する問題を防ぐ目的で法改正されました。
固定資産税の軽減措置がなくなると、土地の場合、負担が従来の3〜6倍になる恐れがあります。さらに、放置して隣家などに被害が及ぶと賠償責任も発生します。空き家は放置せず、活用しないなら早めに売却したほうがよいでしょう。
3. 空き家を売却する基本の流れ
では、空き家を売却する手順を解説します。売却方法はさまざまありますが、本章では不動産会社を介して売却する基本的な流れをまとめました。
※関連記事:不動産を売却する流れとは?不動産売却の流れを知っておこう。
※関連記事:不動産を売却する方法と流れ|家や土地を売るときに知っておくべき手続きと注意点
3-1. 不動産会社へ空き家売却の相談
まずは、不動産会社に売却を相談しましょう。相談のみでも利用できるので、売却するか迷っている人でも安心です。
不動産会社への相談は、直接店舗に行くのはもちろん、電話やメール、公式サイトの問い合わせフォームなどでも利用できます。不動産会社によっては、オンラインで完結するWeb面談の利用も可能です。
相談では、売却の目的や希望価格、引き渡しの時期などを詳しく相談できます。空き家の物件情報を尋ねられることも多いので、購入時の売買契約書や重要事項説明書、図面、リフォーム履歴といった資料があると便利です。
3-2. 空き家の価値を査定
売却を検討しているなら、不動産会社に空き家の価値を査定してもらいましょう。査定は無料で受けられます。査定結果によって売却するか判断したり、不動産会社を選ぶ基準にしたりすることができます。ぜひ活用しましょう。
不動産会社による査定は、机上査定と訪問査定の2種類に分けられます。机上査定は、物件の情報と過去の取引データで査定する方法です。査定額の信用度はやや下がりますが、査定結果が即日から数日程度でわかるため、気軽に利用できます。
一方で訪問査定は、不動産会社の担当者が現地に訪問して査定するため、立ち会いのための日程調節が必要です。また、査定結果がわかるまで、申し込みから数日〜数週間かかります。訪問査定のメリットは、空き家の状態や周辺環境を踏まえて査定するため、査定結果の精度が高い点です。より成約価格に近い金額を知ることができます。
ただし、査定額は売却できると予測される価格であって、その価格で売却できる保証はありません。あくまで目安として参考にしましょう。
3-3. 複数社の査定結果を比較する
査定は、できれば複数社に依頼することをおすすめします。不動産会社によって取り扱いを得意とする不動産は異なり、査定結果にバラつきが生じるためです。
複数社に査定を依頼すると、査定結果を比較して相場を知ることができます。不動産会社によっては、契約を結ぶことを重視して高めの金額を提示する場合もあるため、相場を理解することは重要です。
不動産会社選びに迷ったら、査定額の根拠を担当者に質問しましょう。質問することで、根拠なく高額に査定する業者を避けることができたり、担当者の説明のわかりやすさや、対応の良さを確認できたりします。
※関連記事:同時に複数の不動産会社に声をかけても問題ありませんか?|ノムコム
3-4. 不動産会社との媒介契約
売却仲介を依頼する不動産会社を選んだら、媒介契約を結びます。媒介契約とは、不動産会社に仲介業務を依頼する契約です。
媒介契約には、一般媒介契約・専任媒介契約・専属専任媒介契約の3つがあります。それぞれ異なる特徴を表にまとめました。
種類 |
一般媒介契約 |
専任媒介契約 |
専属専任媒介契約 |
複数社との契約 |
〇 |
× |
× |
契約期間 |
定めなし |
3ヵ月以内 |
3ヵ月以内 |
自分で買い手を見つける |
〇 |
〇 |
× |
レインズへの登録義務 |
なし |
契約の翌日から7日以内 |
契約の翌日から5日以内 |
活動進捗の報告義務 |
なし |
2週間に1回以上 |
1週間に1回以上 |
専任媒介契約や専属専任媒介契約のほうが不動産会社の活動に積極性があることが多く、売却しやすい傾向にあります。一般媒介契約は、ある程度需要があり、買い手が見つかりやすい物件の場合に利用されるケースが多いといえるでしょう。※関連記事:『専任媒介契約』の特徴やメリットを知ろう! 「一般媒介&専属専任媒介」とは何が違う?※参考:媒介契約制度|REINS TOWER
3-5. 空き家の売却活動
不動産会社と媒介契約を結んだら、いよいよ本格的な売却活動を始めます。売却活動といっても、ほとんどは不動産会社に任せることができるので、売り手は内覧対応が主な活用内容です。不動産会社は、宣伝広告の作成・情報の公開・問い合わせ対応などをおこないます。内覧希望者には、基本的に売主が対応します。空き家の魅力が十分に伝わるよう、清掃するなどしてイメージアップに努めましょう。ただし、空き家が遠方にあって対応が難しい場合は、担当者に鍵を預けて内覧対応を任せることもできます。
3-6. 売買契約を結び引き渡し
購入希望者が現れたら、売買契約を結びます。ただし、売買契約を結ぶ前に、価格交渉や条件交渉がおこなわれることも多いでしょう。自身の希望を踏まえて、応じられる交渉には応えたほうが早期売却を目指せます。担当者と相談しながら交渉に応じましょう。引き渡しの日程や条件が決まったら、引き渡しの準備をします。空き家に家財が残っている場合、引き渡しまでに処分しておくことも必要です。ただし、不用品の処分には費用がかかります。引き渡し日には、成約価格の清算や登記登録の変更をおこないます。空き家に住宅ローンが残っていた場合、清算の際に完済や抵当権抹消の手続きもおこなうので、必要書類を確認しておきましょう。
4. 空き家を売却しやすくするポイント
続いて、空き家が売れやすくなるポイントを5つ解説します。空き家の状態によっては、売却に時間がかかったり、なかなか購入希望者が現れなかったりすることもあります。コツを押さえて、早期売却を目指しましょう。
4-1. 空き家の一部をリフォーム
なかなか買い手が現れない空き家は、一部をリフォームすることで売れやすくなる可能性があります。リフォームによって見栄えがよくなると、良いイメージを与えることができるためです。
例えば、色あせや日焼けがある壁紙を張り替えたり、古い水まわり設備を交換したりすると、購入希望者が増える可能性があります。
ただし、リフォームには費用がかかります。相場を考えると、かかった費用を上乗せして売却することは難しいので、費用をかける必要があるかよく検討することが必要です。大掛かりな改修はおこなわず、最小限にとどめるほうが費用対効果は高くなります。
また、空き家の購入を考える人は、リフォームやリノベーションを前提として家探しをしていることも多いです。
4-2. 解体して更地を売る
空き家の状態によっては、解体して土地として売却したほうがニーズが高いケースも多いです。また、更地にしたほうが建物の維持管理の手間から解放されるというメリットもあります。
土地としての売却だと、新築を建てる目的など、土地を探している人全般が新たなターゲットに加わります。幅広い層に宣伝できるので、売却のチャンスが広がるでしょう。
ただし、建物の解体には費用がかかります。また、更地にすると土地の固定資産税負担は増加します。コストによっては、解体せずに古家付きの土地として売り出したほうがよいケースも珍しくありません。解体したほうがよいかどうかは、不動産会社と相談して、費用と効果のバランスをみて検討しましょう。
※関連記事:家を解体する際の費用はどれくらい?更地にするメリット・デメリットなどを解説
4-3. 不動産会社に買取を依頼
売却活動が長引く場合や、相続問題などでなるべく早く現金化したい場合は、不動産会社に買取を依頼することもおすすめです。
不動産会社の買取とは、上記で解説した仲介売却と異なり、不動産会社が買い手となり直接空き家を購入します。直接の取引になるため、仲介手数料が不要になり、引き渡しや現金化までの期間を大きく短縮できる点がメリットです。
ただし、買取の場合は成約価格が相場の60~70%程度になるというデメリットもあります。不動産会社は、買い取った空き家を改修したり解体したりして販売することを目指します。そういった費用を含めて利益を出す必要があるため、買取価格はやや安くなる傾向です。
※関連記事:空き地など土地を買取会社と一般ユーザーに売るときとの比較
4-4. 空き家バンクで買主と直接交渉
空き家の有効活用のため各自治体が運営する空き家バンクを利用することもおすすめです。空き家バンクは、空き家を売りたい人と買いたい人をマッチングするサービスです。利用料は無料で、自治体によっては補助金が利用できるケースもあります。
ただし、空き家バンクでは売り手と買い手が直接取引する個人売買が主流です。契約書の作成や値引き交渉・条件交渉など、仲介売却であれば不動産会社に任せられる点も自分でおこなわなければなりません。仲介手数料がかからない点はメリットですが、直接交渉によってトラブルにつながる恐れもあります。
自治体によっては、提携する不動産会社に仲介を依頼できることもあります。自治体の窓口に問い合わせてみましょう。
4-5. 売却を依頼する不動産会社を厳選
売却を成功させるには、不動産会社選びも大切です。広告の出し方や内容、アピールの仕方など、売却活動は不動産会社によって異なります。売りたい空き家の魅力を理解して、適切な売却活動をしてくれる不動産会社を厳選しましょう。
不動産会社を選ぶなら、対応力・提案力・接客力・売却のサポート体制・査定額など、さまざまなポイントを比較して総合的に判断しましょう。顧客満足度や口コミを参考にするのもおすすめです。
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注1)2023年の実績
注2)2023年9月21日~2023年12月20日に取引した人のうち、
アンケートで「大変満足」「満足」と回答した人の割合
※関連記事:満足度の高い不動産会社はどうやって選ぶ?
5. 空き家の売却にかかわる費用・税金
最後に、空き家の売却に必要な費用や発生する税金を解説します。必要な費用や税金を引き渡し前・引き渡し後に分けてまとめました。
※関連記事:不動産売却に必要な費用とは?仲介手数料などの計算方法などを解説
※関連記事:【不動産売却時にかかる税金】計算方法や納税時期、節税のコツを解説
5-1. 空き家の引き渡しまでにかかる費用・税金
空き家の売却・引き渡しの間には、仲介売却の場合、仲介手数料・印紙代・登記費用が発生します。
まず、仲介手数料は、仲介を依頼した不動産会社へ報酬として支払う費用です。成約価格に応じて上限が決められており、不動産会社は上限以上の金額を請求することはできません。上限額は、成約価格×3%+6万円+消費税で概算できます。査定額で計算しておくと、費用の見通しが持てるのでおすすめです。
次に印紙代は、売買契約書に貼り付ける収入印紙代です。成約価格に応じて1,000円〜数万円程度かかります。登記費用は、住宅ローンの抵当権抹消登記などにかかる費用です。登記費用と司法書士報酬がかかります。
また、空き家の状態によってはリフォームや解体費用、家財処分費用、測量費用などが発生するケースもあります。
5-2. 空き家の引き渡し後にかかる費用・税金
引き渡し後に発生するコストとして大きいのが、譲渡所得税です。譲渡所得税とは、空き家の売却によって利益を得た場合に発生する所得税の一種です。
利益といっても、成約価格全額が所得の対象になるわけではありません。成約価格から、空き家の取得や売却にかかった費用を差し引いた額が課税対象になります。税率は空き家の所有期間に応じて異なり、長期的に所有した物件のほうが税率が低くなります。
また、課税対象となる譲渡所得から、最大3,000万円が控除される特別控除の特例もあるので、実際には税金がかからないケースも多いといえます。ただし、こうした特例を受けるためには確定申告が必要ですので、忘れずにおこないましょう。
5-3. 保険料は売却によって回収できる可能性も
空き家を売却することによって、戻ってくるお金もあります。例えば、火災保険料をかけていた場合、保険の残り期間に応じた返戻金が受けられます。
ただし、火災保険は空き家を売却したら自動的に解約されるわけではありません。返戻金を受けるには、自分で解約手続きをおこなう必要があります。
また、火災保険の補償内容によっては、空き家の修繕に活かせる可能性があります。契約内容を確認して、保険を適用して直せる部分がないか考えてみましょう。
6. まとめ
空き家を放置すると、維持費や管理の手間がかかるだけでなく、固定資産税負担が増したり、倒壊などによって賠償責任が発生したりする恐れもあります。活用できない空き家があるなら、早めに売却しましょう。
空き家を売却するなら、まずは不動産会社への相談がおすすめです。売却のタイミングや手段についてアドバイスがもらえたり、査定を受けて空き家の価値を把握したりすることができます。査定は複数の不動産会社に依頼して、対応力や接客力などを総合的に比較したほうが、適した不動産会社を厳選できます。
本記事を参考に、信頼できる不動産会社を見つけて空き家を売却しましょう。
※本記事は2024年4月9日時点の情報をもとに記載しています。法令等の改正により記載内容について変更となる場合がございますので予めご了承ください。
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