相続や売却で必要な土地権利書とは|正式名称や紛失時の対応方法も解説

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相続や売却で必要な土地権利書とは|正式名称や紛失時の対応方法も解説

土地の売買や、相続の手続きを進める際には土地権利書が必要です。しかし、いざ必要になったときに「土地権利書のある場所がわからない」「紛失してしまった」となると焦ってしまう人も多いでしょう。

じつは、土地権利書とは正式名称ではありません。「そもそも土地権利書がどのようなものかわからず探しようがない」というケースも想定して、まずは基礎知識から身につけましょう。

この記事では、相続や売却において必須の書類である土地権利書について解説します。紛失時の対応方法、リスクもあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてください。

目次

1. 【独自アンケート】土地の権利書について

本記事では、土地を所有している人を対象に、所有している土地の権利書の所在について、アンケート調査を実施しました。

土地の権利書がどこにあるか分かっていますか?

結果として、「わかっている」と回答した人が91%と圧倒的に多数を占めていました。

不動産取引においては、権利関係を明確に示す書類が極めて重要です。今回のアンケート結果から、土地所有者の多くが、権利書の所在を把握し、適切に保管していることがうかがえます。

一方で、「わからない」と回答した人については、すぐに権利書の所在を確認し、適切に管理することが求められます。万が一、権利書を紛失した場合は、再発行の手続きが必要になるなど、将来売却する際にトラブルにつながる可能性があるので、早急に対処しましょう。

2. 土地権利書とは

「土地権利書」という名前の書類は実際には存在しません。不動産関係において、土地権利書とは土地の所有者を確認するための証明書全般のことを指します。

土地権利書として実際に用いられるのは「登記済証」「登記識別情報」といった名称の書類です。これらの書類は不動産の所有権を移転させるとき、名義人本人からの申請であることを登記官が確認するため提出が求められます。

主に、土地・建物・マンションの名義変更をする際や、売却や相続などをおこなうときに必要です。また、自宅を担保に新たな融資を受ける場合や、住宅ローンの借換えでも使用することがあります。

3. 【住宅購入年別】土地権利書の名称

前述したように、土地権利書という呼び名はあくまで通称です。もし、土地の売買や相続の手続きで、実際に土地権利書が必要になった際には次の書類のいずれかを用意します。

・登記済証
・登記識別情報(1)
・登記識別情報(2)

自身の土地権利書が上記のうちどれに該当するのかは、物件を購入した時期によって決まります。それぞれ名前だけでなく、書類の見た目や詳細も異なるため、順に確認していきましょう。

3-1. 2004年までは「登記済証」

2004年の不動産登記法改正までに不動産を取得した際、土地の所有者には登記所から「登記済証」が交付されていました。登記済証は現在発行されていませんが、土地権利書として用いることができます。

登記済証の見た目は登記を作成した司法書士の作成する登記原因証書の様式によりますが、受付年月日と「登記済」という文言の記載された赤いスタンプが押されていることはおおむね共通しています。

登記済証を使用する場合には、手続きをおこなう相手に対し登記済証そのものを提出する必要があります。古い書類であり、再発行はできない点に注意しましょう。

3-2. 2005年からは「登記識別情報(1)」

2005年から用いられている、土地権利書に該当するものが登記識別情報です。登記識別情報は、オンライン手続きを推進するため、登記済証に代わる本人確認の手段として導入されました。物理的な紙の書類のほか、安全性が確保されたインターネット経由でオンライン手続きもできます。

登記識別情報は、登記識別情報通知書に記載されるアラビア数字とアルファベットが組み合わさった12桁の符号で構成されています。この符号によって登記の名義人を識別します。書面上の記載箇所には目隠しシールが貼り付けられていることが特徴的です。

また、2005年以降に土地を手に入れた人で、司法書士に登記を代行してもらった場合、「不動産登記権利情報」などと記載された冊子状の書類を受け取っていれば、その冊子に登記識別情報を記した書類が綴じられているでしょう。

なお、2004年まで発行されていた登記済証を所持している場合、物件の権利の移転が無い限り有効です。登記済証を登記識別情報通知に変更することはできないため、注意してください。

3-3. 2015年以降からは「登記識別情報(2)」

登記識別情報通知見本

2015年以降も登記識別情報が用いられていますが、以前とは書類の様式が変わっています。2015年以降に住宅を購入した場合、登記識別情報のシール貼り付けがなくなっているのが特徴です。

なお、様式の変更日は登記所によって異なるため、2015年~2016年に入手した場合は旧様式になっていることもあります。

新しい様式の登記識別情報通知では折り込み方式が採用されています。情報を隠す必要がある際には、用紙(A4サイズ)の下部を折り込んでフチを糊付けすることで当該の登記識別情報が記載された部分を隠せます。

また、見本にあるように登記識別情報のそばにQRコードが記載されている場合もあります。このQRコードは主に法務局に勤務している登記官向けのもので、通常使用することはありません。

4. 登記識別情報とは

登記識別情報通知に記載される登記識別情報とは、アラビア数字その他の符号の組合せからなる12桁の符号であり、名義人、不動産ごとに作成されます。

2004年の不動産登記法改正まで、登記申請をおこなう際には原則として登記所に出頭する出頭主義を採用していましたが、登記申請者の負担軽減などを目的にオンライン申請が新設されました。符号から登記人を確認するため、物理的な書類は必要ないのが特徴です。オンラインで登記した場合は通知も登記名義人に対してインターネット経由でおこなわれるため、プライバシーを保ちやすくなります。

仮に登記識別情報の記載された書類を紛失しても、登記識別情報を権利者だけが把握している限りは問題ありません。しかし符号を忘れた、記載書類が盗難にあった、盗み見られたという場合には、不動産を管轄する登記所の登記官に対して失効の申出・不正登記防止申出が必要です。

5. 登記識別情報と登記済権利証の違い

2004年までに物件を取得したか、あるいは2005年以降に取得したかによって、登記済証と登記識別情報のどちらが交付されるかが異なります。オンライン申請が可能な点や物理的な紙の書類の重要性など、それぞれ違う点があるため把握しておきましょう。

登記識別情報と登記済証の違いをまとめると、次の通りになります。

登記識別情報と登記済権利証の違い

2つの最大の違いは写しの有効性にあります。登記済証は書面のためコピーを用いた申請はできません(原則として原本提出で、手続き後返却される)が、登記識別情報通知は書面の番号さえ合っていれば問題ありません。

しかし、オンライン申請時の細かい処理に違いはあるものの、登記識別情報と登記済証は実際の不動産取引ではほぼ同義の存在と扱われます。土地の売買であれば、司法書士に渡すものが紙の書面か、12桁の符号か程度の違いとなるでしょう。

6. 土地権利書を紛失した際の対応方法

仮に、登記済証や登記識別情報を紛失してしまった場合でも焦る必要はありません。土地権利書が無くとも、適切な対応をとれば不動産の売却を進めることができます。

土地権利書を紛失した際の対応方法は次の3つです。

・事前通知制度を利用
・資格者に代理申請を頼む
・公証人の前で本人確認を実施する

もし不安ならば、弁護士や司法書士など専門家のサポートを受けることも選択肢に入ります。注意点を踏まえたうえで、それぞれの対応方法を見ていきましょう。

6-1. 事前通知制度を利用

登記済証や登記識別情報を紛失した際には、事前通知制度が利用できます。事前通知制度とは、法務局に登記申請をおこなった際に、登記名義人に対し登記申請があった旨と登記内容が真実か否かの確認を通知する制度です。

たとえば、土地の売却時に権利書を添付できないことを登記所に申請すると、売主の住所へ本人限定受取郵便で通知が届きます。登記変更の意思があることに間違いないことを署名捺印し、返送すると、登記手続きを進めることが可能です。

事前通知制度は特に費用の負担もなく利用できますが、登記申請から2週間以内の提出が求められる点、所有権移転日がそのまま登記申請日となり引渡日とならない点に注意が必要です。

6-2. 資格者に代理申請を頼む

登記済証や登録識別情報などを紛失した際には、司法書士や弁護士などの有資格者に代理申請を依頼することも選択肢の一つです。本人確認情報を添付することで、権利書がなくても不動産の売却が可能になります。

代理申請を依頼する際には、本人であることと、売却の意思があることを確認する書面を作成する必要があります。本人確認書類、印鑑証明書、実印、購入時の売買契約書、固定資産税納付書や公共料金の領収書といった書類が必要なため用意しておきましょう。

代理申請は専門家のサポートを受けつつ安心して売買を進められる選択肢ですが、依頼手数料がかかる点には注意が必要です。

6-3. 公証人の前で本人確認を実施する

公証人による本人確認制度の利用も、登記済証・登録識別情報の紛失時の解決策になります。公証役場に訪問し、公証人の前で書面に署名または自認することで本人確認ができ、登記を進めることができます。

公証人によって書類が認証されれば、登記済証・登録識別情報の代わりの書類として契約書類などに添付が可能です。最寄りの公証役場を、日本公証人連合会の公式サイトから検索してみましょう。必要な書類や持参物は主に印鑑証明書や実印、身分証明書です。

6-4. 土地権利書の再発行はできない

土地権利書を紛失してしまった場合、再発行はできないのかと考える人もいることでしょう。しかし、登記済証も登記識別情報も再発行には対応していません。また、登記識別情報の番号変更も不可能です。

しかし、登記済証・登録識別情報が無いからといってただちに土地の権利が失われることはなく、売却や相続などの手続きも可能なため、必要以上に不安を感じることはないでしょう。

また、2005年以降に住宅を購入した場合は、登記識別情報通知に記載の英数字さえ控えておけば、本人確認は可能です。数字がわからないという場合でも、慌てずに事前通知制度や資格者の代理申請、公証人の利用を検討してみましょう。

7. 土地権利書の紛失時にかかる費用

登記済証・登録識別情報を紛失して不動産の取引をおこなう場合でも、次の手続きに対する費用はかかりません。

・不正登記防止申出
・登記識別情報の失効申出
・事前通知制度

登記情報の悪用防止のための手続きや、事前通知制度の利用では特別な費用は不要です。

一方で、司法書士や弁護士による本人確認手続きを実施する場合は、費用が10万円近くかかることがあります。また、公証人による本人確認でも3,500円ほどの手数料が必要とされる場合があります。

なお、司法書士・弁護士や公証人の利用による報酬や費用はケースバイケースで変動することがあります。詳細な金額は実際に依頼してみないとわからないため、利用を検討する際は最寄りの公証役場や司法書士・弁護士に一度問い合わせてください。

8. 土地権利書は悪用される?

登記済証・登録識別情報が無くても不動産の売却は可能ですが、万一盗まれた場合に悪用される心配を抱く人も少なくないでしょう。

土地権利書には悪用の可能性があるのか否か、また、悪用の可能性がある場合の対策方法を解説します。

8-1. 登記済証だけで悪用は難しい

仮に登記済証が盗まれた場合を想定しても、それだけで悪用をおこなうことは難しいと考えられます。不動産取引には、土地権利書に加えて本人の印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)と実印が必要になるため、登記済証だけでは不動産の名義変更や売却はできません。

また、不動産の所有権は登記に依存しません。登記はあくまで不動産の所有権を主張するために存在しており、所有権が先立つものとなっています。そのため、登記済証を紛失しただけでは権利には影響がないといえます。

8-2. 実印と印鑑登録証もない場合は対策を

登記済証や登記識別情報だけでなく、実印と印鑑登録証も盗難・流出が疑われる場合は対策が必要です。最悪の可能性として、不動産が勝手に売却される、名義が変更されることもありえます。

実印と印鑑登録証を紛失したら、役所への改印届や印鑑登録廃止届、警察への盗難届を出しましょう。また、実際に悪用されたとしてもその登記が無効であることを証明できれば、裁判により元の所有者単独でも所有権移転登記ができます。

8-3. 登記内容に変更がないかチェック

土地権利書の悪用の恐れが出た場合には、不動産の登記内容に変更がないかを確認するため、法務局で不動産登記事項証明書を取得し、記載内容に変更がないかをチェックしましょう。

また、権利証(登記済証)や実印、印鑑登録証を紛失した旨を法務局に伝え、不正登記防止申出をおこないましょう。不正登記防止申出は、申出から3ヶ月以内に対象の不動産に何らかの登記申請があった場合に、申請があったことを申出人に通知する制度です。

不正登記防止申出がおこなわれていれば、仮に自身の意図しない登記があった際に通知を受け取ることができます。また、2005年以降に不動産を取得している場合は、登記識別情報を失効させる申し出もできるため、利用を検討してみましょう。

8-4. 3ヶ月後に再びチェックを

市区町村役場に改印届や印鑑登録廃止届を提出した後、3ヶ月以上経過したら、再び不動産の登記事項に変更がないかどうかを確認しましょう。

手続きに必要な印鑑証明書は発行から3ヶ月以内のものでなければ効力が発生しないため、登記事項に変化がなければ、ひとまず区切りとなります。

再度紛失や盗難をおこさないためにも、土地権利書や実印、印鑑証明書は厳重に管理するようにしましょう。

9. 土地権利書(登記内容)に変更が生じたら

土地の所有者や実印、住所・氏名など土地権利書の記載内容に変更が生じた場合には、所有権移転登記が必要になる場合があります。次の3つに変更が起きた際の対応を解説します。

・名義変更
・実印変更
・住所・氏名変更

9-1. 名義変更

売却や相続などで所有者が変わった場合、不動産の所有権移転登記を実施する必要があります。所有権移転登記には登録免許税がかかります。不動産の所有権移転登記の場合、登録免許税は、次の計算式で計算可能です。

登録免許税額=不動産の固定資産税評価額×税率

計算に用いる税率は、売買・贈与と相続で異なる点に注意しましょう。

・売買・贈与の場合:税率2%
・相続の場合:0.4%

相続の税率0.4%は、売買や贈与による所有権移転登記の際の登録免許税の税率2%と比べて、5分の1と低くなっている点が特徴です。

9-2. 実印変更

実印を変更した場合は、特に土地権利書に関する手続きは不要です。登記の名義変更をする場合に古い実印を用意する必要はなく、新しい実印と印鑑登録証、権利書があれば問題ありません。

実印として登録している印鑑を変更したい場合には、現在の登録印を廃止したうえで、新規に別の印鑑を登録する申請をおこないましょう。申請は自分が居住している自治体の役所でおこなえます。

9-3. 住所・氏名変更

結婚や引越しにより住所や氏名に変更が生じた場合、不動産の所有者は住所・氏名変更登記を実施する必要があります。この変更は2026年(令和8年)4月1日から義務化されるため、注意しておいてください。

登記事項証明書(登記簿謄本)を法務局などで取得後、住民票などの必要書類と申請書に収入印紙を添えて、法務局の窓口に提出する必要があります。この手続きは住所・氏名の変更日から2年以内におこないましょう。

仮に正当な理由なく期限内に変更登記を実行しなかった場合、5万円以下の過料が科せられてしまうことになります。

10. まとめ

土地権利書という名前の書類は存在せず、登記済証と登録識別情報がその役割を果たしています。2004年以前に取得したものは登記済証、2005年以降のものは登録識別情報となるため、自身の物件の取得時期を踏まえて確認しておきましょう。また、登録識別情報通知については、2015年以降の書面の様式が変化している可能性があります。

不動産の売買や相続には登記済証か登録識別情報が必要になるため、しっかりと保管しておくことが大切です。

仮に土地権利書にあたる書類を紛失したとしても、売買や相続をおこなうための対応策が存在しています。紛失や盗難にあった場合でも焦らず、実印と印鑑登録証などの状態を確認して不正利用が起こらないようにしましょう。

※本記事は2024年3月12日時点の情報をもとに記載しています。法令等の改正により記載内容について変更となる場合がございますので、予めご了承ください。

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