戸建て住宅の売却を検討している方の中には、売却価格がどのくらいなのか、高く売るコツがあるのか気になっている方も多いのではないでしょうか?
売却相場やコツ、売却までの流れなどを事前に押さえてから売却に臨めば、少しでも高く・スムーズに売却できる可能性が高まるため、知識を身に着けてから売却に臨むことをおすすめします。
この記事では、戸建て住宅の築年数別の売却相場、高く売るコツ、売却までの流れなどを解説します。
1. 築年数別の中古戸建て住宅の売却額相場
戸建ての売却を検討している方の中には、築年数が売却価格にどのような影響を与えるのか気になっている方も多いと思います。
売却のタイミングを逃したことが原因で安く売却することになって損をしたという事態に陥らないためにも、築年数別の中古戸建て住宅の売却相場を把握した上で売却に臨むことが重要です。
国土交通大臣指定の不動産流通機構が運営するレインズは、不動産売却に役立つ情報を定期的に発信しています。
築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2020年)によると、首都圏における中古戸建て住宅の築年帯別平均価格は以下の通りです。
上記グラフからは、築20年を超えてくると価格の下落幅が大きくなっていることが分かります。
木造で築20年を超えた物件は、原則として買主が住宅ローン控除を利用できなくなるため、価格が大きく下がる主な要因となっています。
※住宅ローン控除とは、住宅ローンを組んで自宅を購入すると買主の所得税が節税できる制度です。
2. 一戸建てを高く売るコツ
ご売却を検討するご事情は様々ですが、不動産という大切な資産を少しでも高く売却したいと考えている方が多いと思います。
しかし、先述の通り、一戸建ては築20年を超えてくると売却価格が下がってくるため、少しでも高く売却したい場合は以下の4つのコツを押さえながら売却に臨むことをおすすめします。
- 複数の不動産会社に訪問査定を依頼する
- 築20年を迎える前に売却する
- 一戸建ての仲介を得意とする不動産会社に依頼する
- 可能であれば、空室で売る
それぞれのコツについて詳しく見ていきましょう。
2-1. 複数の不動産会社に訪問査定を依頼する
不動産会社に訪問査定を依頼する際は、1社だけでなく複数の不動産会社に依頼します。
その理由は、不動産会社によって販売力も差があり価格に対する判断が異なるためです。
例えば、売却する戸建て住宅が二世帯住宅だったとします。仲介を依頼するのが二世帯住宅を専門的に扱う不動産会社と二世帯住宅の販売実績が少ない不動産会社では、専門的に扱う不動産会社の方が営業力という点で有利なので、高い査定結果が出やすいと考えられます。既に顧客を抱えている不動産会社も同様です。
しかし、複数の不動産会社に査定を依頼するのは、手間と時間がかかるというデメリットがあります。そこで登場するのが一括査定サービスです。
一括査定サービスとは、一度物件情報を登録するだけで複数の不動産会社に査定を依頼できるサービスです。手間と時間を省けるため、効率良く自分に合う不動産会社を見つけられるでしょう。
2-2. 築20年を迎える前に売却する
先述の通り、築20年を超えると売却価格の下落が大きくなることから、築20年を迎える前に売却するのも選択肢の1つです。
築20年を超えてくると、壁紙やフローリング、畳、外壁、屋根瓦の傷みなどが目立ってきます。これらの経年劣化に対し何も手を加えずに放置していた場合、資産価値が下落するだけでなく、雨漏りなどのトラブルを生じさせることにもなるため、修繕が必要不可欠です。
購入後に多くの修繕が必要と予想される戸建ての場合、買主は価格交渉で少しでも購入価格を安く抑えようとします。
しかし、築20年以内の物件であれば、買主側の上記のようなデメリットが軽減されるため、高値で売却できる可能性が高まるでしょう。
2-3. 一戸建ての仲介を得意とする不動産会社に依頼する
不動産会社ごとに得意とする仲介のジャンルは異なるため、一戸建ての仲介を得意とする不動産会社に依頼することをおすすめします。
不動産業は、賃貸業、管理業、仲介業などに大きく分けられます。賃貸業では、アパート経営やマンション経営といった賃貸経営、管理業では、賃貸物件の管理や賃貸借の斡旋などをサポート。
仲介業では、売主と買主、貸主と借主を仲介して売買契約や賃貸契約の締結をサポートします。得意分野が異なるとサポートが不十分になる可能性があるため、賃貸業や管理業ではなく仲介業を得意とする不動産会社に依頼するのが重要です。
また、同じ仲介業でも売買なのか、賃貸なのかによっても異なります。そのため、戸建ての売買の仲介を得意としており、実績が豊富な不動産会社に依頼しましょう。
2-4. 可能であれば、空室で売る
可能であれば、空室で売却した方が売却に有利に働く可能性が高いと言えます。
その理由は、購入希望者が現れた場合に買主と内覧日の調整をする手間を省けるためです。空室であれば、購入希望者は自分の好きなタイミングでじっくり内覧できるため、機会損失を防ぐ効果が期待できます。
「生活感がある方が内覧に有利なのでは?」と思っている方も多いかもしれませんが、ホームステージングという空室でも家具を設置することによって生活感を演出できるサービスもあるので大きな影響はありません。
むしろ、内覧の都合がなかなか合わず購入希望者の希望が優先されない、部屋が乱雑で清潔感がない方がマイナスの影響を与えてしまうため、可能であれば空室で売却することをおすすめします。
3. 一戸建てを売却するまでの流れ
少しでも高く・スムーズに売却するには、戸建てを売却するまでの流れを事前に理解した上で売却に臨むことが重要です。
一戸建てを売却するまでの流れは以下の6つです。
- 相場を調べる
- 不動産会社に査定を依頼する
- 不動産会社と媒介契約を締結する
- 購入希望者と売買契約を結ぶ
- 物件を引き渡す
- 確定申告をする
それぞれの流れを詳しく見ていきましょう。
3-1. 相場を調べる
まずは売却しようとしている戸建てがいくらくらいで売れるのか相場を調べます。
「自分で調べなくても不動産会社に査定を依頼すれば分かるのでは?」と思った方もいるかもしれませんが、査定結果や売り出し価格が適切かどうかを判断するには、相場を把握しておくことが必要不可欠です。
相場を把握する方法として、不動産ポータルサイトで類似物件の売り出し価格を検索するという方法が挙げられます。不動産ポータルサイトとは、SUUMOやHOME'Sといった不動産情報が多数掲載されているサイトです。
最寄り駅、最寄り駅からの所要時間(徒歩)、間取り・専有面積、築年数などの条件が似ている類似物件の売り出し価格を確認すれば、おおよその相場がどのくらいなのか知ることができるでしょう。
3-2. 不動産会社に査定を依頼する
売却予定の戸建ての相場を調べた後は、不動産会社に査定を依頼します。
不動産会社の行う査定は、大きく以下の2つに分けられます。
- 机上査定(簡易査定)
- 訪問査定(詳細査定)
机上査定とは、現地を訪れずに、類似物件の過去の取引相場や公示地価といった公的価格に基づきながら行う査定です。簡易査定という別名の通り簡単な査定なので、早ければその日のうちに結果が分かりますが、査定精度は訪問査定よりも低いというデメリットがあります。
訪問査定とは、机上査定で得られた情報に現地確認で得られた情報を加える査定です。実際に現地を訪れて査定を行うので1週間程度の時間を要しますが、精度の高い査定結果が期待できます。
査定結果は各不動産会社によって異なるため、複数の不動産会社に依頼するのが一般的です。一括査定サービスを利用すれば、簡単に複数の不動産会社に査定を依頼できるので利用をおすすめします。
3-3. 不動産会社と媒介契約を結ぶ
査定を受けた後は、正式に依頼する不動産会社を選び、媒介契約を締結します。
媒介契約とは、不動産会社に依頼する仲介の契約のことです。
媒介契約には、一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3つがあり、以下のような違いがあります。
契約数 | 自己発見取引 | 指定流通期間への登録義務 | 売主への報告義務 | 契約有効 期間 | |
---|---|---|---|---|---|
一般媒介契約 | 契約数複数可能 | 自己発見取引○ | 指定流通期間への登録義務任意 | 売主への報告義務任意 | 契約有効期間制限なし |
専任媒介契約 | 契約数1社のみ | 自己発見取引○ | 指定流通期間への登録義務7営業日以内 | 売主への報告義務2週間に1回 | 契約有効期間3ヶ月以内 |
専属専任媒介契約 | 契約数1社のみ | 自己発見取引× | 指定流通期間への登録義務5営業日以内 | 売主への報告義務1週間に1回 | 契約有効期間3ヶ月以内 |
一般媒介契約は複数の不動産会社と契約可能、自分で買主を見つけた場合の直接契約も可能なので、自由度の高い契約方法と言えます。
不動産会社同士が競い合うことで買主が見つかる機会が増える一方で、複数社から内覧希望がくるため、他の会社と内覧が重ならないよう自分で内覧スケジュールの調整・管理をしなければならない点がデメリットです。
専任媒介契約と専属専任媒介契約は1社だけの契約で不動産会社に課されている義務が多く、全力で買主を探してもらいやすい契約方法と言えます。しかし、専属専任媒介契約は、自分で購入希望者を見つけたとしても、不動産会社を介さずに売却することが出来ない点がデメリットです。
各媒介契約のメリット、デメリットを十分に理解した上で、信頼できる不動産会社1社に絞って売却に臨みたい方は専任媒介契約または専属専任媒介契約、自由度の高い契約方法を希望している方は一般媒介契約など、状況に応じた契約形態を選びましょう。
3-4. 売却活動を行う
媒介契約を締結した後は、契約に記載されている条件で不動産会社は売却活動を行います。
不動産会社は、自社の既存の購入希望者とマッチングした顧客に情報を提供する、ネット広告やチラシ広告といった広告を駆使しながら新規の購入希望者を探します。
購入希望者が現れた場合は、実際に現地を確認してもらう内覧を設定。 居住しながら売却を進める場合は、「内覧時の対応が悪い」「室内が汚れている」といったケースが内覧の印象に大きく影響するので注意が必要です。
空室の場合は、日程調整やカギの手配など、購入希望者とのやり取りを不動産会社が代行してくれるので、そういった気苦労はありません。
3-5. 購入希望者と売買契約を結ぶ
購入希望者と条件の合意に至ったら、売買契約の締結に移行します。 売買契約をいきなり締結するのではなく、購入希望者はまず不動産会社を経由して購入申込書を受け取ります。 購入申込書に記載されている主な項目は以下の通りです。
- 購入希望価格
- 購入希望者の融資利用の有無
- 各種金員の支払い条件(手付金・内金・残代金など)
- 引き渡しまでのスケジュール
上記の内容を確認し、買主と売主の双方が合意した場合に売買契約の締結に移行します。
売買契約前に、不動産会社は買主に対して重要事項の説明を行います。
売買契約の締結では、3者間(不動産会社・買主・売主)で以下の手続きを行います。
- 契約書の交付と説明、記名・押印
- 手付金の授受
住宅ローンの残債がある場合、引き渡し時に残債分を一括返済して抵当権の抹消手続きを行います。
抵当権を抹消するには、銀行が保有している書類が必要です。
引き渡しには住宅ローンを借りている銀行の担当者にも同席してもらう必要があるため、引き渡しの日時と場所が決まったら銀行の担当者に連絡することを覚えておきましょう。
3-6. 物件を引き渡す
売買契約を締結した後は、売買契約書に記載されている引き渡し期日に物件を引き渡します。
引き渡しに向けて引っ越しを済ませておく必要がありますが、引っ越しのタイミングは買い替えなのか単純な売却なのかで大きく異なります。適切なタイミングで引っ越しを済ませるためにも、不動産会社に事前に相談しておくことが重要です。
また、引き渡し時に残金の振り込みが行われます。振り込まれた残金によって住宅ローン残債を一括返済し、抵当権の抹消手続きも同時に行います。
3-7. 確定申告を行う
引き渡しが完了して残金を受け取った後は、確定申告の準備に移行します。
確定申告は戸建てを売却した全ての人が行うものではありません。原則として売却代金から取得費と諸費用を差し引いてもプラス(売却益が生じた)になっている場合に確定申告が必要です。
そのため、マイナスになっている場合は原則として確定申告を行う必要はありません。しかし、マイナスになっている場合でも、他の所得との損益通算によって税金を抑えられるケースもあるため、確定申告についても調べておくことをおすすめします。
確定申告は売却した年の翌年2月16日~3月15日までに行います。確定申告の手順は以下の通りです。
1. 確定申告に必要な書類を準備する
2. 譲渡所得を算出する
3. 確定申告書を作成する
4. 所轄の税務署で確定申告を行う
書類の準備や手続きに何かと時間と手間がかかるため、税理士に依頼するのも選択肢の1つです。しかし、税理士に依頼する際は、税理士報酬が発生するということを理解した上で依頼しましょう。
4. 一戸建てを売却するために必要な費用・税金
一戸建ての売却費用全てを買い替え資金や、自由に使えるお金にできるというわけではありません。一戸建てを売却するためには以下のような費用や税金がかかるということを理解しておく必要があります。
- 仲介手数料
- 印紙税
- 登記費用
- 住宅ローン一括返済費用
- 譲渡所得に生じる税金(所得税・住民税・復興特別所得税
仲介手数料とは、売買契約を締結に導いた不動産会社に支払う報酬です。いくらでも自由に請求できるわけではなく、宅地建物取引業法(国土交通省の告示)に定められている「(売買価格×3%+6万円)+消費税」(取引額が400万円超の場合)という速算式の範囲内で設定する必要があります。
印紙税とは、売買契約書に貼付して納める税金の1つです。戸建てがいくらで売れたのかで異なりますが、1,000円~6万円程度を想定しておきましょう。
登記費用とは、抵当権抹消の登記にかかる手数料です。抵当権抹消の登録免許税は不動産1個につき1,000円です。土地1個、建物1個の戸建ての場合は2,000円となります。司法書士手数料は1万円~2万円程度を想定しておく必要があります。
住宅ローン一括返済費用とは、住宅ローンの残債を一括で返済する際にかかる繰上返済手数料です。手数料は金融機関ごとに異なりますが、1~3万円程度が一般的です。
譲渡所得税に生じる税金(所得税・住民税・復興特別所得税)とは、売却時に売却益が生じた場合に課される税金です。譲渡所得に対する税率は、売却した年の1月1日時点の所有期間が5年以下で39.63%、5年超で20.315%となります。
引っ越し費用や仮住まいを確保するための賃料などが発生する場合もあるので、具体的にどのような費用がかかるのかを事前によく確認しておきましょう。
5. まとめ
戸建てを売却するにあたり、自分で購入希望者を探すことは容易ではありません。また、直接契約した場合、何かしらのトラブルに発展する可能性が高いため、不動産会社に仲介を依頼するのが一般的です。
しかし、不動産会社がいくら不動産の専門家だとしても、仲介を依頼するのはどこでも良いというわけではありません。
依頼した不動産会社によっては、相場よりも安く売却することになったり、購入希望者がなかなか現れずに損をしてしまったりする可能性もあるので注意が必要です。
少しでも高く・スムーズに戸建てを売却するためには、コツや売却までの流れを把握した上で売却に臨むことが重要です。この記事に書かれているコツや流れを事前にしっかりと理解してから売却に臨みましょう。
不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者の代表取締役。
不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士の資格を保有。
大阪大学出身。
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