旗竿地とは?メリット・デメリット・注意点+プロが教える施工術

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旗竿地とは?メリット/デメリットなど後悔しない買い方を徹底解説

旗竿地(はたざおち)とは、竿に旗が付いたような形の土地で、「道路」と「奥の大きな土地」が「細い通路」でつながっています。特殊な形なので、土地価格が比較的安いのが特徴です。「住環境や利便性が悪いのでは?」と、不安になるかもしれませんが、旗竿地のメリットが自身の価値観と合致すれば、旗竿地の購入は最適な選択肢となります。

この記事では、宅建士である筆者が、旗竿地の紹介やメリットやデメリット、旗竿地購入時のポイントや施工の工夫例、土地の評価方法やよくある質問までをわかりやすくまとめました。旗竿地の購入で後悔しないために、その特性を理解して自分に合うかどうかを見極めましょう。

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目次

1. 旗竿地とは?

旗竿地とは?

旗竿地とは、土地全体が「旗状」の形状をした土地のことです。建物が建つ四角い土地旗の部分と、通路や駐車場に利用される細長い路地状の柄の部分のように見えることからこう呼ばれています、土地の多くは、きれいな四角形ではなく、ある程度いびつな形状をしたものが多く存在します。

入り組んだり細くなったりして建物が建てられない部分は正味の住宅地として使えないことから、不整形部分を含む土地は、整形地よりも土地価格の単価が安いことがほとんどです。

旗竿地は、こういった形状から「敷地延長(しきちえんちょう)」や「専用通路(せんようつろ)」などと呼ばれることがあります。また、国土交通省や自治体の文書では「路地状敷地(ろじじょうしきち)」、国税庁の文書では「不整形地(ふせいけいち)」という語句が使用されています。

旗竿地は、前面の道路から奥へと続く通路を駐車場として利用し、奥の袋状になった位置に建物を建てるケースがほとんどです。

旗竿地の定義は自治体ごとで若干異なる場合がありますが、東京都立川市では以下のような基準を定めています。

路地状敷地(旗竿地)

建築基準法上の道路から死角となる部分を有する敷地

路地状敷地(旗竿地)

路地状部分の長さ

道路境界線から、敷地全体が見通せる位置までを結んだ線分の長さ

路地状部分の長さ

路地状敷地とならない例

建築基準法上の道路から敷地全体が見通せる敷地

路地状敷地とならない例

2. 旗竿地のメリット・6つ

旗竿地のメリット・6つ

価格が安いため、マイホームに求める条件や予算などと合えば、旗竿地を購入する十分な理由となります。旗竿地は間口が広い土地や整形地にくらべ資産的な評価こそ低くなりますが、さまざまなメリットが期待できます。

  • 土地単価が近隣相場よりも安い
  • 旗竿地に住んでみてわかる快適な住環境
  • 通路部分がデザインに活かせる
  • 延べ床面積を広くとれる場合がある
  • 家の配置に奥行きが感じられる
  • 高いコストパフォーマンスを家づくりに活かせる

地単価は近隣相場よりも安い

少々の間取りのクセや建物の形状、外観、日当たりなどに制約があっても、自分が叶えたい間取りが配置できるのであれば、整形地に劣ることはありません。

土地の市場流通価格は、同じエリアの整形地とくらべ2030%安い場合があります。これは、整形地のほうが旗竿地よりも人気があることと、通路部分には建物が建てられないことなどが、旗竿地が安い主な理由です。

以下の図のように、整形地の面積と旗竿地の旗部分の面積とが同じなら、旗竿地のほうが竿部分の面積分は広くなりますが、旗竿地のほうが土地価格や坪単価が安くなる場合もあります。

地単価は近隣相場よりも安い

また、土地の流通価格厳密には(厳密には地価公示価格)に連動してさまざまな課税評価額も低くなるため、土地の購入金額をはじめ固定資産税や都市計画税および、この先の相続税までも抑えられます。土地の取得価格を安く抑えた分で住宅設備や装飾を充実させられれば、整形地よりコストパフォーマンスが高い土地を選択したと言えるでしょう。

旗竿地に住んでみてわかる快適な住環境

土地の間口が狭いうえに家屋が奥に控えて建っているため、前面道路から宅地部分が見えにくくなるなど土地形状そのものがプライバシー確保に効果的です。しかも、家が建つ旗部分の敷地に入るためには人目に付きやすい長い通路を通らなければならず、さらに通路部分へゲートを設置するだけで、セキュリティ性能を上げやすい特徴もあります。

また、建築基準法には「斜線制限」「絶対高さ制限」「日影規制」といった、建物の高さ・距離・形状の規制によって通風や日照を確保する法令があるため、奥まって建っている家でも、環境が圧倒的に悪くなることはありません。

道路を往来する車やバイクの音、通行する人の視線などが気になる方は、自然とそれらが程よく軽減され、快適な住環境になり得るでしょう。

通路部分がデザインに活かせる

家の表情は、家の形状や色や装飾だけでなく、周囲の外構や前面道路から玄関までのアプローチのデザインなどで、個性やセンスが際立ちます。通路部分が長く、その奥の家の玄関が遠近感によって印象的に映えやすいので、前面道路から見える限られた部分に予算を集中してアプローチや玄関装飾にこだわれば、低予算で満足感の高い家に仕上げられるでしょう。

具体的には、ラティスと植物が爽やかな緑のトンネル・飛び石が続く重厚なアプローチ・通路に沿った花壇や植栽があれば、無機質になりがちな道路からのアプローチがパッと華やかに映えます。

また、家屋本体から通路部分へと玄関を突出させて個性的なポーチ屋根や妻飾りなどを設置すれば、通路の先で目を引くデザインが、家の印象を個性的に演出することでしょう。

延べ床面積を広くとれる場合がある

その土地に建築できる住宅の規模を決める建築面積と延べ床面積は、土地の面積に建ぺい率や容積率を掛けて計算します。旗竿地は同じ価格の整形地よりも面積が広いことが多く、建ぺい率や容積率を掛ければ建築面積も延べ床面積も大きくなります。つまり、旗部分の土地に間取りがうまく収まれば、整形地よりも大きな家が建てられる可能性もあります。

同じ建ぺい率と容積率のエリアで、整形地と旗竿地における建築面積および延べ床面積を比較してみましょう。なお、建ぺい率:60%、容積率:200%、建築面積は各フロアの最大面積、延べ床面積は全フロアの総面積です。

延べ床面積を広くとれる場合がある

整形地と旗竿地で建ぺい率と容積率をそれぞれ計算すると、以下のようになります。

整形地

旗竿地

建築面積

(敷地面積 × 建ぺい率)

30坪 × 60
18

35坪 × 60
21

延べ床面積

(敷地面積 × 容積率)

30坪 × 200
60

35坪 × 200
70

ただし、隣地境界からの距離の制限や斜線制限などに影響を受けて、建物の最上階の一部や部屋の一部が削られる(けた落ち・勾配天井)ことがあり、建築コストと予算の関係で建物を大きくできないなど、計算通りの建築面積や延べ床面積に仕上がらない場合に注意しておきましょう。

家の配置に奥行きが感じられる

同じように櫛状(くしじょう)に区割りされて横並びになった建物では、道路から建物までの距離がどれも同じく道路から建物の前面部分だけしか見えないため、どの建物も平面的な印象です。

しかし、旗竿地は分譲地内の家屋が手前と奥にずれて配置され、通路部分によって建物の2面が見える場合が多いなど、どの家も奥行きがあるので立体的に見え、建物の形状やデザインが一層個性的で効果的に映えます。

また、通路部分があることで土地に開放的な空間が生まれて圧迫感が少なくなるため、実際の面積以上に広くて奥行きがあるように感じられるでしょう。

高いコストパフォーマンスが家づくりに活きる

土地価格が安い旗竿地であれば、建物を含めた総額を安くできます。住宅の取得金額を抑えて毎月の住宅ローンの支払いを楽にしたり、土地取得を安く抑えて浮いたお金を建築や住宅設備や外構に回して建物の質を向上できるでしょう。

例えば、通路部分に据え置き型の倉庫を設置したり、数台が駐輪できる自転車置き場にしたりするなど、土地が広ければアイデア次第で利便性を高められます。高いコストパフォーマンスのおかげで家づくりの選択肢が増えることも期待できるでしょう。

3. 旗竿地のデメリット・5つ

旗竿地のデメリット・5つ

旗竿地を購入する場合、以下5つのデメリットがあります。

  • 日当たりや風通しが悪い場合がある
  • 隣家との騒音問題を生じやすい
  • 駐車スペースがとれない場合がある
  • 建築や解体費用が高額になりやすい
  • 建築基準法や条例で再建築(建て替え)ができない場合がある

ここでは、それぞれのデメリットと、その解決策を解説していきましょう。

日当たりや風通しが悪い場合がある

周囲の建物が3階建てであれば、旗竿地の建物の日当たりや風通しが悪いこともありますが、下記の工夫によって暗さや圧迫感、リスクが緩和できます。

  • 3階建てにして延べ床面積や採光窓の数を増やす
  • 天窓、吹き抜け、室内階段、ステップフロア、2階リビング、屋上やルーフバルコニーなどを採用
  • 家の周囲に置く荷物を制限して風の通り道を確保し、万一の火災でも類焼も避ける

隣家との騒音問題を生じやすい

旗竿地の特殊な土地形状によって、騒音や防犯の問題を生じる可能性があります。

騒音について

周囲に家があれば、こちらの子どもやペットの声が隣戸への騒音になることがあります。また、近所と生活リズムが異なれば、洗濯や風呂や階段の昇降音などの生活音も不快に感じさせる場合もあります。騒音と認識するレベルは個人の感覚にかなり差がありますが、目隠しや遮音ガラスによる物理的な対策と居住者の意識や配慮も、近所とうまく付き合っていくためには必要になるでしょう。

光・音・臭いなどが漏れ出やすい窓や換気扇などの開口部を、隣戸と重ならない位置に配置する工夫も場合によっては必要になるでしょう。

防犯について

奥まっているためプライバシーが確保され、侵入も難しくなるためセキュリティ性能は高くなりますが、いったん侵入を許すと、不審者の行動が発見されづらい側面もあります。万が一に備え、通路から建物周囲へと簡単に入れないようなゲートを設けたり、監視カメラの設置や防犯意識を感じさせる工作物を設置したりするのが効果的です。

駐車スペースがとれない場合がある

旗竿地の通路部分は現在、開口が2.5m以上あることがほとんどですが、それでも車を駐車するには十分な幅だとは言えません。なんとか車が停められても、ドアの開閉や車の横を自転車やベビーカーが通行できなければ、利便性が高いとは言えないからです。

そのため、隣り合わせた通路の所有者同士で車や通行なら少々の越境を認め合うなど、ある程度の譲り合いが必要になるでしょう。ただし、一方の所有者が通路の境界にブロック塀やフェンスを設置すれば、駐車場として快適に利用できない可能性も視野に入れておく必要があります。

なお、境界上にブロックやフェンスを設置せずに隣地の居住者の通行を承諾する「協定道路」の合意を行い、お互いの通路を解放して利便性を上げる方法もあります。ただし、当事者間だけ有効の協定であり建築基準法や条例に対しての効力はありません。所有者が変わった場合に引き継げるかの懸念もあるため、協定道路は万能ではないと理解しておきましょう。

建築や解体費用が高額になりやすい

旗竿地での建築や解体工事では資材置き場や重機の設置スペースが限られ、建物周囲の足場設置や撤去もしづらい状況です。一般的な工事よりも人員や工期が余計にかかることもあり、コストアップは避けられません。また、周辺を囲まれていることで工事に伴う騒音や臭気や粉塵が問題になりやすいので、周辺対策費の予算も多めにとっておく必要があるでしょう。

土地の取得費が安い反面、これらの表面上見えない建築コストの蓄積により、住宅取得費が整形地と変わらない場合もあるかもしれません。

他方、前面道路から建物まで距離があるため、電気・ガス・水道・ネット回線などのライフライン引き込み費用が通常より多めにかかる場合があります。また、防火・準防火地域なら建築資材に不燃材を使用しなければならないといった可能性もあるため、常に予算に余裕を持って計画を立てていくと安心です。

建築基準法や条例で再建築(建て替え)ができない場合がある

建築基準法では、道路に2m以上接道していない敷地に家は建てられません。すでに家が建っていても接道要件を満たしていない場合(既存不適格)には再建築不可になります。

また、私人の敷地を周囲の住民が通行する道路として提供(私道負担)していたり、他人の土地に同意を得て自分の土地の一部として設定(敷地設定)して建築確認を取得していたりする場合があります。

以前は私道への接続を接道要件として建築できていた場合でも、現行法では解釈が変わって再建築の許可が下りないことがあるため注意が必要です。役所への事前相談で再建築可能と判断された場合には、後日のために担当者名と相談内容を証拠としてメモしておきましょう。

4. 旗竿地を買う際に、チェックしたいポイント

旗竿地を買う際に、チェックしたいポイント

旗竿地の購入を検討するにあたり、建築可否・建物設計・建築コスト・将来性・ご近所付き合いに関して注意すべきポイントを解説します。

通路部分に十分な幅があるかどうか

通路部分に十分な幅があり、法令上でも適切な接道が確保できていると判断されれば、その土地に建物を建築できます。もしも条件付きで建築許可が下りるようなら、どのような要件かを詳しく調べましょう。

当時は適格で周辺住民の同意が得られていたとしても、時代とともに制限が厳しくなったり当事者が代わって同意が得られなくなったりするケースがあります。特に、旗竿地ができた年代が古い場合には当時から状況が変化している可能性が高いため、現行法や条例でどのような判断になるのかを調べてから購入してください。

なお、再建築はできても建て替え後は今の建物ほど大きなものを建てられないなどの制限が付く場合もあるため、古い土地の場合は、なおさら注意が必要です。

路地状敷地に形態や建築に関する制限がある

旗竿地に建築する際は以下のような制限があるため、不動産会社や住宅メーカーなどの専門家からアドバイスを受けましょう。

路地状敷地とは(公的な定義)

狭い路地状部分により道路に接するため, 災害時の避難や消防活動に支障をきたすおそれのある敷地を言い、部分的に路地状となっているものを含む。

引用:神戸市建築物の安全性の確保等に関する条例|神戸市建築住宅局

旗竿地の形態や建築の制限

通路部分の長さに制限を課すのかどうかは、自治体ごとの規定によります。例えば、鎌倉市では以下のように定められています。

路地状敷地の延長、いわゆる「旗竿敷地」の竿部分の長さの制限は、本市においてはありません。

なお、3階建ての住宅等の場合は、非常用進入口の設置が必要となり、路地状敷地の場合には、道から非常用進入口までの距離20メートル以下の延長がありますのでご注意ください。

引用:建築指導課よくある質問QA|鎌倉市

代替進入口 とは

非常用進入口もしくは代替進入口とは、災害などの非常時に消防隊が外から進入するための開口部です。この開口部は破壊が容易なガラス窓のような形態を有し、格子で覆われたガラス窓や網入りガラスなど、破壊が容易でないものは含みません。

引用:8 非常用進入口の3非常用進入口|東京消防庁

隣地建物との距離感や位置関係

近隣住民との合意内容や隣地との境界標(境界のポイントを指示した杭や金属プレートの目印)の確認、ブロック塀およびフェンスなどの工作物設置におけるルールなどの確認が必要です。また、建築する建物の形状や間取りを設計するうえで、既存建物との開口部の位置関係は、騒音・臭気・目線の問題とも関係が深く重要です。

建築費用が割り増しになる箇所を知る

旗竿地での建築で施工費用が高額になりやすい条件や箇所は下記の通りです。
  • 重機設置、資材搬入、足場設置などの搬出入経路が狭いため人員や日数が余計にかかる
  • 前面道路から建物までのライフライン引き込み距離が長いため別途で費用がかかる
  • 絶対高さ制限、斜線制限、日影規制、防火地域などの制限で建物の形状や仕様が変わる
  • 長い通路部分の外構工事費用やアプローチの装飾費用、ゲートの設置費用がかかる

重機類やライフラインの進入経路になる竿部分の長い形状が、整形地よりも施工の難易度が上がる場合や施工範囲が増える場合には、費用が余計にかかります。

将来の建物解体や土地売却への影

旗竿地であれば、土地の購入費用も固定資産税額も安く抑えられます。しかし、通路の形状が細くて長いうえに周囲を建物に囲まれていることが多いため、整形地よりも余計な建築コストがかかる場合もあります。

また、銀行のローンの担保査定においては、旗竿地と周囲の土地の位置関係や権利関係が影響して査定額が低くなり、希望する融資額が下りないこともあります。これらは、将来の建物の解体時や売却時にも影響することになるため、将来的な展望も含めて慎重に検討していきましょう。

旗竿地の攻略は近隣住民との関わり方

旗竿地での居住は、同様の通路部分を持つ方や周囲の建物所有者とのご近所付き合いが居住の快適さに影響します。自分が意図しないところで、騒音や臭気や粉塵によって迷惑をかけてしまうこともあるでしょう。特に、増改築や修繕工事および再建築時には確実に周囲のお世話になる場面が想定されるため、普段から持ちつ持たれつお互いさまの精神で、良好な近所付き合いを維持していくことが重要です。

自分では悪気がなく無意識であっても、隣り合う家への騒音や臭気などの嫌がらせをしてしまっているかもしれないと想定し、 騒音対策を行うなど検討しましょう。

5. 旗竿地活用法(デメリットを活かす施工術)

旗竿地のデメリットは、施工時に次のような工夫をすることでメリットへと転換できます。

長い通路部分を印象的な装飾にする

  • 低草、低木、中木の植栽を組み合わせて、玄関までのアプローチに遠近感のある樹木を配置する
  • 季節ごとに咲く色鮮やかな花が来訪者の目を楽しませてくれるように、花壇を設置する。

奥まった玄関を隠れ家のような雰囲気にする

  • 少しだけ見える建物の一部を印象的に飾り、通路部分にはタイルやレンガや飛び石などを敷いて、隠れ家のようなわくわく感のある雰囲気にする。

建物や開口部の位置によって採光と通風を確保する

空気や日光の建物内での流れや視線の重なりなどを想定して、開口部の位置や大きさを下記のように配置すると良いでしょう。

  • 建物を敷地の北側に寄せて高窓・天窓を設置し、南側から光が射し込みやすくする。
  • 採光のための建物形状(L字やコの字)と吹き抜けや中庭を、オシャレなアクセントにする。
  • 窓の位置が隣戸と重なる場合、窓を開閉しないなら採光だけの高窓にして隣戸との目線を外す。
  • 家全体の風の流れを考えた位置に、吹き抜けや窓を設置する。
  • 窓を全開放する場合には、すりガラス窓や不透過のアクリル板を設置して、なかが見えなくする。
  • 建物の基礎部分を高くして窓の位置を上下方向にずらし、目線が重ならないようにする。

低額の土地代で浮いた予算で設備を追加する

土地の購入費用を抑えて浮いた予算で、テレワークや学習スペース、ウォークインクローゼット、ウッドデッキ、高気密高断熱仕様、防犯設備、太陽光発電、蓄電設備、防災備蓄庫などの設備を追加してみましょう。

通路へせり出した玄関に有用な機能を追加する

シューズクローク、コートハンガー、土間スペース(自転車、ベビーカー)、ペット用散水栓やスロップシンクなど、玄関部分に利便性の高い設備を追加してみましょう。

3階建てなら階ごとの間取り配置を工夫する

より多くの光を採り入れるために、1階ではなく2階にリビングを配置する。2階にリビングがあれば、子どもは必ずリビングを通って3階に行くため、家族がリビングで顔を合わせやすく集まりやすくなります。また、2階に大型の収納スペースがあれば、各部屋からの季節ものの衣類や道具を1箇所にまとめて、整頓や管理が可能です。

周囲の死角はセキュリティ性能を向上する

周囲を他の家が取り囲んでいることが多いため、奥の家の敷地へ人が入り込んでしまうと、表の道路からは死角になります。そのため、家の裏手へと回り込めないように南京錠付きのフェンスを設置したり、家の周囲に砂利を敷いて、人が歩けば足音が出るようにしたりするのも一案となるでしょう。

また、通路と玄関を隔てる門扉や玄関から通路を映す監視カメラ、夜間の人感センサーライトなどを設置して、部外者や不審者への警備体制をアピールするもの効果的です。

隣り合う通路の利便性を上げる

隣り合った旗竿地の並んだ通路を協定道路にして、フェンスを設けずにお互いが通行できるよう合意することもあります。この場合は、未来に向かって協定内容を存続させ、第三者へも有効に承継させるためにも、協定書の締結および相手方の通路へ自分の通行地役権を設定しておく必要があります。

6. 旗竿地が生まれる理由と土地評価額への影響

旗竿地が生まれる理由と土地評価額への影響

旗竿地は、大きな土地を分筆(登記簿上ひとつの土地を、分割して登記しなおすこと)する過程で生まれます。この形状は、土地の価値を少しでも高く維持しつつも価格を抑え、建物の外観や間取りの自由度が高くなるように考えられた、優れた分筆方法です。

駅からの距離も買物の利便性も隣あう整形地と同じであるなど、利便性と価格のバランスが良い形状であるため、コストパフォーマンスを優先する方はお得に感じる土地と言えます。

旗竿地ができる理由と地形の特色

旗竿地ができる理由のひとつが、1区画が大きなままでは土地価格が高額になり、購入者が限られることによる土地の分筆です。このとき、ある程度の間取りが入るように効率よく分割すると、旗竿地が生まれます。

例えば、1億円の土地をより売りやすくするために2つに分割しても、それぞれの土地は5,000万円なので、建物価格を加えた総額になると、まだまだ高額な価格となり、購入者が少数に限定されます。

そこで、区割りを4分割にすると、ひとつの土地の価格は、2,500万円まで下がります。手の届く購入者を大幅に増やすことができ、需要の多い価格帯へ変えることができます。

ただし、下図の左の例のように単に縦に4等分すると、土地の間口が狭くなり、建築できる間取りが極端に限られ、4つの売れない土地ができあがってしまいます。

しかし、下図の右の例のように奥に2つの旗竿形状の土地を配した4分割にすれば、建物が建つ旗の部分をきれいに保ちつつ、柄の部分は駐車スペースにするなどの工夫ができるため、4つすべてが居住性の高い良い間取りが設計できる効率的な土地になります。

つまり、旗竿地であれば、土地の活用効率を高めて土地の価値を上げながら、価格を落として購入しやすくできるのです。

(旗竿地の例)

(旗竿地の例)

左図のような櫛(クシ)状の4分割では間口が狭くて使いづらい間取りしか設計できませんが、右図のように家が建つ部分を前後にずらして旗竿状にすれば、快適な間取りが設計しやすくなります。

また、分譲地のなかで価格・家の形状・外観・間取り・外構デザインなどにバリエーションが生まれ、より多くのニーズを満たすことができ、売りやすい分譲地となります。

「旗竿地は買うな!」では良い家と出会えない?

旗竿地は家が建たない竿部分の評価が低いため、土地全体の資産価値は同じ面積の整形地より低くなりがちです。しかし、土地の評価が低ければ価格や税金が安くなるため、土地評価の低さはメリットにもなり得ます。

また、マイホームに求めるニーズは人によってさまざまで、旗竿地の形状を理想とする方もいらっしゃいます。例えば、駐車場スペースを必ず2台分欲しい、奥に控えた位置で人目につきにくい家が好ましい、玄関までのアプローチに花壇や植栽を設置したい、ゲートを設置して防犯対策をしたいといった理由が挙げられるでしょう。

土地形状が不整形で不格好だからと旗竿地を避けるのではなく、購入費用・敷地の収納力・使い勝手・間取り・セキュリティ面など、さまざまな角度から旗竿地を検討してみると、コストパフォーマンスに優れた良い家と出会うチャンスが格段に広がります。

なお、建築基準法のもと、建物を建てる土地では、前面道路に接する「間口」を2m以上確保しなければなりませんが、竿部分の間口が必要最低限の2mになると車の駐車が十分にできません。さらに、今後の法改正で必要間口が今よりも広くなれば、再建築できない土地になる可能性があるため、間口は少しでも広いほうが安心でしょう。

7. 旗竿地の評価額を計算する方法

旗竿地の評価額を計算する方法

旗竿地の評価方法は、相続税路線価(通称:路線価)の評価・補正方法を参考にした3つの方法があります。なお、相続税路線価とは国税庁が毎年71日に発表する公的な土地評価指数で、一般的な土地市場流通価格の80%程度に設定されています。路線価は土地に面する道路(路線)ごとに1平米あたりの単価が1,000円単位で決められており、主に土地の相続税評価や流通価格の査定根拠として使われます。

奥行きのある土地として評価

路線価を土地面積に掛けた土地評価額に対して、前面道路から奥行きが長い土地は使い勝手が若干悪くなるとして評価を下げる補正をします。奥行価格補正の方法は下記の式で計算します。

奥行価格補正をした評価額 = 路線価 × 土地面積 × 奥行価格補正率

間口が狭い宅地として評価

土地間口が8m以上の普通住宅であれば一定の基準(100)を満たしているとされ、それよりも間口が狭い旗竿地は評価を下げる補正をします。間口狭小補正の方法は下記の式で計算します。

間口狭小補正をした評価額 = 路線価 × 土地面積 × 間口狭小補正率

不整形地として評価

長方形や正方形のようなきれいな四角形でない土地は「不整形地」と言われ、想定整形地とくらべて欠けた部分である「かげ地」が、想定整形地に占める「かげ地割合」に対応する補正率を使って補正します。不整形地補正の方法は下記の式で計算します。

不整形地補正をした評価額 = 路線価 × 土地面積 × 不整形地補正率

これらの方法で評価額を計算する際に注意すべきは、形が不整形であるほど計算が複雑になる点です。実際に相続税の申告書を作成する際は、複数の計算方法を使い計算の途中経過を記した「評価明細書」を添付しなくてはならないため、税理士のような税の専門家でなければ正確な評価は困難でしょう。

ただし、旗竿地をマイホーム用地に選ぶかどうかの判断であれば「その土地に理想の間取りが設計できるのか」や「固定資産税額はいくらなのか」がわかれば細かい計算は不要です。どの要素が土地の評価に影響するのか、土地査定の感覚を大まかに掴んでおきましょう。

8. 旗竿地にまつわるQ&A

旗竿地にまつわるQ&A

最後に、旗竿地に対してよくある質問をご紹介します。

旗竿地の建物は建て替えられますか?

通路の幅員が接道義務(建築基準法上の道路に2m以上接道する)を満たしていれば建て替え(再建築)可能です。ただし、隣り合う旗竿地で間口が2mに満たない通路同士を協定道路にして建築していた場合、未来に向かって協定道路を承継しなければ建て替えができません。

他方、通路の間口が2mに届かず協定道路でもなく、現状で建て替えができない場合でも、隣地を譲り受けて通路を拡幅したことで間口が2m以上になれば、建て替えができるようになります。

旗竿地を売却する際のポイントは何ですか?

同時期に同様の立地条件で整形地と旗竿地が売りに出された場合に、旗竿地の坪単価が整形地の坪単価を超えることはまずありません。つまり、直近の整形地の取引事例が格安だった場合には、整形地の坪単価よりも高い金額で旗竿地を売り出しても、売れる可能性はかなり低くなるでしょう。

旗竿地売却のポイントは、建て替えができる土地であるならその旨を明確に証明して、買主に安心感を与えて購入意欲へとつなげることが大切です。

旗竿地でよくある近隣トラブルは何ですか?

旗竿地は、周囲の家に囲まれた環境であることがほとんどです。そのため、隣戸同士の騒音、臭気、目線、境界付近に置いたものや工作物、越境通行など、相隣関係のトラブルがもっとも多いと考えられます。

旗竿地を購入して後悔することはありますか?

細い通路なので、車種(車幅)が限定されることもあるほか、縦列駐車になることが多く、車の前後入れ替えや出し入れが面倒に感じるかもしれません。また、周囲を家に囲まれているため、見られているようで落ち着かないと感じる方もいます。奥まった立地のため日当たりや風通しが悪くなりやすい点が、気になる方もいるでしょう。

将来資産価値は下がる?

実際に、マイホーム購入予算に余裕があるなら、整形地に住みたいと言う方が多いのも事実です。したがって、整形地のほうが需要は高く、流通価格は高額という傾向は変わりません。

ただし、旗竿地が不人気のために将来値崩れして資産価値が下がりやすい事実はありません。いつの時代も安い土地を求める方々の一定の需要が、旗竿地の価格を下支えしています。

柴田 敏雄

柴田 敏雄

宅地建物取引主任士、管理業務主任者
司法書士事務所に2年、大手不動産管理会社に5年、個人顧客を中心に不動産賃貸・売買の仲介営業会社に7年間従事。また、外資系金融機関にも2年間従事し個人顧客へ金融資産形成や相続税の節税アドバイスなどを担当。現在は不動産/金融業界での経験を活かし、記事を執筆にもあたっている。

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