空き家を相続したものの活用方法がわからずにお悩みの方もいるのではないでしょうか?この記事では、日本の空き家の現状の他、所有すべきか否かについて解説。活用方法や活用事例についてもご紹介します。
1. 空き家の現状と課題
1-1. 空き家の現状
空き家の問題は昨今の大きな社会問題の1つとして各メディアにも取り上げられています。ここでは、そんな空き家の実数はどの程度なのか、現状を把握してみましょう。
総務省統計局では5年ごとに全国の住宅や土地についての調査及び統計を取っており、住宅・土地統計調査というもので発表しています。直近の調査である「平成30年住宅・土地統計調査」をもとに日本の空き家の実態はどのようなものなのか、お伝えしていきたいと思います。
まず、居住実態がない住宅は876万戸となり、総住宅数の14%ほどになります。この数字は前回の2013年調査よりも26万戸も増加、3.2%の伸び率となっており、総住宅数に空き家が占める割合は過去最高の数値になっています。
この数値は3年ほど前の数値ですので、現在の空き家状況はこの数値にかなりのプラスアルファがあると見ていいでしょう。
次に、空き家の種類(※)から見ると、「その他の空き家」での増加が目につき、総住宅数の5.6%がこのカテゴリーに属しています。
(※)空き家の種類は以下の4種類に大別される
- 賃貸募集用の空き家
- 売却中の空き家
- 別荘(常時人が居住しているわけではない空き家)
- その他の空き家(単に人が住んでおらず、用途も特に決まっていない)
この数値は賃貸用や売却用の空き家の伸び率よりも増加率が大きく、いわゆる放置された空き家が年々増加していることが伺えます。この数値を踏まえて、どのエリアでの空き家が多いかも見ていきましょう。
各都道府県別の空き家数値を見ると、1位が山梨県の21.3%、2位が和歌山県の20.3%、3位が長野県の19.5%という順ですが、その他、甲信越や四国4県では18%以上の数値が示されており、どうしても地方での空き家が目立つ傾向にあります。
また、逆に空き家率が少ないエリアは、首都圏の1都3県や主要地方都市のエリアでは低い水準となっています。
こうした数値を鑑みると、やはり地方での空き家は今後も増加傾向にあると言えるでしょう。
逆に、首都圏や地方都市のエリアでは空き家率は比較的少ない数値となっていますが、コロナの影響で首都圏を離れる人も散見されますので、今後の空き家率の推移に変化が生じる可能性があります。
1-2. 空き家が増える原因
これまでは空き家の実態についてお伝えしましたが、なぜこれほどまでに空き家は増えているのでしょうか。
その原因について少し考えてみましょう。
少子高齢化社会が進むにつれて、空き家自体も増加傾向にあるのは、皆さんでもご承知の通りかと思います。
いわゆる「その他の空き家」が増える原因の1つとしては、地方での過疎化が進むことが挙げられます。当然ながら、人口や世帯数の減少が進行し始めると、居住しない住宅は増えることになります。
また、こうした現象は地方の雇用状況に大きく影響されているかと思われます。
都心に人口が集中する原因には、地方での雇用が著しく少ないため、いずれ実家を出て東京に就職するという流れは何十年も間、変わっていないものです。
したがって、地方には高齢の両親や祖父母しかいないということになります。
後々、相続という流れで実家を引き継いだりするわけですが、そのエリアが東京並みの賃金や雇用体制があれば、再度、永住という選択もあるものの、現実は滅多にないので空き家がじわじわと増えていくという流れです。
1-3. 空き家が抱える課題
空き家が問題になるのはその管理状況が芳しくないために起きるケースが多々あります。
今後、増える傾向にある事例としては、例えば、空き家を放置しておけば腐朽や破損が多くなり、不法投棄の場や雑草などが生い茂って近隣に迷惑がかかるというようなものです。
これには空き家を所有する側の管理意識の欠如があり、法的な措置を講じないと難しい時代になりました。
そこで、こうした空き家問題を解決する1つの政策として、空き家を放置したままでは許さないという意識から「空き家対策特別措置法」という法律が2015年に施行されました。
この法律では防犯や景観、衛星面での危険や害があると「特定空き家」というものに認定され、立木の伐採や住宅の取り壊し私道や勧告、しいては行政代執行ということもできるものです。
また、「特定空き家」は固定資産税の軽減措置がなくなり、税金は6倍になってしまいます。
それだけ、法律で厳しくしていかなければならないというのが現状です。
最近では、所有者不明の不動産も多くなり問題となっていましたが、今年4月に所有者が分からない土地の問題を解消するための関連法が可決成立され、2024年をめどに土地や建物の相続を知った日から3年以内に登記するよう義務づけられるようになります。
加えて、管理が難しい場合は相続した土地を手放して国庫に納められる制度を新設するとのことですが、どこまで国庫は受け入れるのか今後の課題でもあります。
このように、少しずつではありますが空き家問題を解決するための施策が講じられるようになりました。
2. 空き家は所有すべき?活用すべき?
2-1. 空き家を所有・活用するメリット・デメリット
これまでは空き家の現状やその課題についてお話しましたが、いざ自分が空き家を何らかの形で所有することになった場合、空き家を所有・活用するメリットやデメリットはどこにあるのでしょうか。このあたりを探ってみましょう。
空き家を所有・活用するメリット
空き家が自身の生活圏にある、あるいは賃貸ニーズがあるエリアに空き家が存在する場合、空き家を直して自己居住用や賃貸用の住宅として活用することが可能になります。自己用としては、今の住まいよりも利便性が高い場所であれば、転居という選択肢はあります。
また、賃貸用として活用すれば、家賃収入が入ってきますのでメリットはあります。
ただ、こうした活用をする際には、空き家自体をリフォームするなどの作業が必要にはなり、そのコストがあまりにかかるような場合には活用自体を検討する必要があります。
活用自体で収入を得たり、自宅として活用のメリットがあれば、その所有、継続にはうま味があります。
空き家を所有・活用するデメリット
空き家自体の不動産価値があまりない場合には、保有コストがかかり過ぎて維持管理の割にうま味がないとなれば、大きなデメリットとなります。
保有に意味が薄れるのであれば、最終的には売却してお金に換える方法を選択することが得策ともいえます。
都心の空き家であれば、保有のメリットも見込まれますが、地方であれば、その不動産に需要がないと売るにも売れず保有コストだけがかかるという場合もあります。
3. 空き家の活用方法
3-1. そのまま貸す
一番手っ取り早い方法はそのまま貸し出すということになります。
この場合、建物の状況にもよりますが、コストをかけずに活用することができればうま味はあります。
ただ、家賃の額や貸し出しの条件にマイナス面があれば、リフォームをして活用した方がいい場合もあります。
3-2. リフォームして貸す
築年数が経過している建物であれば、何らかの形でリフォームをした方がいいでしょう。 但し、リフォームは最小限に留めておかないとその費用回収に時間がかかり、うま味は少なくなります。
3-3. シェアハウスにする
賃料が高い場所であれば、シェアハウスという選択肢はあります。
この場合もリフォームは必要にはなりますが、家賃との兼ね合いでどこまでリフォームをすればいいか難しい判断が必要にはなります。
入居者が魅力を感じるようなシェアハウスが運営できれば理想的かと思います。
3-4. 民泊にする
民泊としての活用は旅館業の類になりますので、その運営は専門の業者に委託する場合が多いものです。
オーナー自身での運営は通常の賃貸用住宅とは異なりますので、民泊にした方が良い場合は選択してもいいでしょう。
ただ、コロナ禍でインバウンド向けの民泊自体は壊滅状態ですので、今後の状況次第では活用する選択肢としては難しいかと思います。
3-5. 建物を解体して土地活用する
ひどく老朽化している建物であれば、解体して更地で活用するメリットはあります。 都心部ではコインパーキングでの活用はよくありますが、地方でその土地に対する需要、例えば、駐車場や家庭菜園などの需要がないと解体しても収益性が低い場合もあります。
3-6. 売却
空き家を活用することが難しい場合、最終的には売却という選択になります。
保有継続してもその維持管理に手前や費用がかかり、面倒だと感じた場合には売却していったんはお金に換えるという流れを視野に入れておくべきでしょう。
実際に空き家がいくらで売れるかは不動産サイトや地域の不動産業者に問い合わせしてみて、おおむねの売却値を把握しておくことをお勧めいたします。
また、売却した際には譲渡所得税の課税の可能性がありますので、売却値を想定して税金の計算をしておくことです。
ある意味、売却はいつでもできますので、活用ができるかとどうかをよく検討したうえで売却の判断をされてはと思います。
4. 空き家の活用、成功事例
空き家を活用して成功した2つの事例についてご紹介します。
【ケース1】
- 人物(職業・年齢・性別)
自営業・50歳代・男性 - 土地
東京23区内・50坪 - 建物
築50年・店舗併用住宅(店舗のみ自営業で運営) - 活用方法
建替して賃貸用マンションに転用。親の所有していた不動産を建物建て替えで活用。自身の物販の自営業は賃貸業に転換。 - 結果
相続対策で空き家を活用。高齢の親の所有する不動産を建て替えして賃貸マンションに転換。不動産評価の高いエリアであったため、土地の評価減と税金対策を行う。家族信託を利用して相続対策。
【ケース2】
- 人物(職業・年齢・性別)
会社員・50歳代・男性 - 土地
首都圏郊外に130坪 - 建物
工場併用住宅・築20年・延床面積50坪 - 活用方法
両親が他界し、次男が空き家の対象不動産を形式的に相続。子3人が相続で揉め、遺産分割協議は不調。長男が親の事業を引き継ぐが、長男が不慮の事故で寝たきり状態になり事業継承は不可能になり、誰も事業継承はせず。併用住宅のため活用が難しい、賃貸には向かず最終的に売却へ。 - 結果
不動産業者に空き家不動産を買取してもらい売却。売却資金は子3人にて分配して遺産分割は完了。最終的には売却してお金に換えるという結果。
5. まとめ
相続した空き家をそのまま所有すべてき、手放すべきか、それとも活用すべきか、判断が付かない方も多いでしょう。今回ご紹介したメリット・デメリットを参考に、どのような判断をすべきか考えてみてください。
活用というと、不動産に慣れない方は不安に思うこともあると思いますが、物件や立地に合った方法を選ぶことで多くのメリットが得られます。慎重に検討して、空き家の活用方法を選びましょう。
住宅&保険・住宅ローン コンサルタント
アネシスプランニング株式会社代表取締役。大手ハウスメーカーに勤務した後、2006 年にアネシスプランニング株式会社を設立。住宅の建築や不動産購入・売却などのあらゆる場面において、お客様を主体とする中立的なアドバイスおよびサポートを実施。これまでに2000 件以上の相談を受けている。東洋経済オンライン、ZUU online、スマイスター、楽待などのWebメディアに、住宅やローン、不動産投資についてのコラムなどを多数寄稿。
著書に『不動産投資は出口戦略が9割』『一生役立つ「お金と住まい」の話』(クロスメディア・パブリッシング)がある。
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