個人の土地転がしは違法?個人投資での注意点とプロが行う「3つの手法」

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個人の土地転がしは違法?個人投資での注意点とプロが行う「3つの手法」

土地を転売して利益を得る「土地転がし」。とくに短期間のうちに土地売買を繰り返して利益を得る投資手法の一種です。バブルの頃にはこの手法で財を成した方も多かった手法ですが、2023年現在も投資方法として成り立つのでしょうか? また、違法性は? そこでこの記事では、現在の土地転がしについて、不動産のプロである宅建士が解説していきます。個人が行う土地転がしと税金から、プロの手法についても解説しているので、ぜひご一読ください。

目次

1. 土地転がしとは

「土地転がし」とは、広い意味では単に土地を転売することをいいますが、とくに、価格を釣り上げながら短期間のうちに土地売買を繰り返すことをいうことが多いでしょう。あまり良い意味では用いられず、値上がりしそうな土地を買い占める地上げ屋のイメージが強い言葉です。

1-1. 土地転がしが横行した背景

土地転がしが横行した背景には、バブル期の不動産価格の急上昇があります。昭和の終わりから平成初期にかけてのバブル期に、都市部を中心に不動産価格が上昇し、土地を購入すれば高く売れるという土地神話が生まれました。こういった経緯から、地上げなどによって土地を買い占め、すぐに売却する土地転がしが頻繁に行われたのです。

1-2. 土地転がしはプロが見抜く

土地転がしが行われる土地は、不動産業者の利益がかなり上乗せされた金額で売り出されていることが多いため、不動産のプロは売買を敬遠しがちです。土地転がしがあった土地は、短い期間に複数の所有権移転登記がなされます。プロは、不動産登記の履歴を確認することで土地転がしの形跡を見抜くのです。

2. 土地転がしの違法性

土地転がし自体、行為としては土地の転売にあたるため違法性はありません。もっとも、市場経済にゆがみが生じますし、不動産売買に慣れていない一般消費者が高値掴みをしてトラブルに巻き込まれる可能性があるのも事実です。そこで、宅建業法上の規制や税法上の仕組みにより、むやみに土地転がしが行われることを抑制しています。

2-1. 宅建法上の規制

土地転がしは、土地の購入・売買を繰り返して短期間に利益を上げる行為です。宅建業法上、「業として」土地取引を行う者は宅建業としての免許・登録が必要とされており、土地転がし行為は不動産取引の反復継続性がみとめられるため、「業として」の定義に当てはまります。したがって、土地転がし行為は宅建業者しかできないことになります。このため、暴利を狙うような短期間での売買は一定程度に抑えられているといえるでしょう。

3. 個人が行う土地転がしと税金

個人の所得税制においても、不動産の短期売買を抑制する施策がとられています。バブル期の不動産価格の急騰の主な原因が土地転がし、不動産の短期転売にありました。こういった経緯もあり、不動産の譲渡所得税の計算において短期売買による譲渡所得税の税率は、高めに設定されています。

3-1. 短期譲渡所得と税率

所有不動産を譲渡した年の1月1日時点において所有期間が5年以下の場合、短期譲渡所得として譲渡所得税の税率は39.63%(住民税・復興特別所得税含む)に設定されています。つまり、利益の40%近くを譲渡所得税として納めなければならないことから、短期で不動産を売買して利益を上げることが難しくなるのです。

3-2. 長期譲渡所得と税率

一方、不動産を譲渡した年の1月1日時点において所有期間が5年を超える場合、長期譲渡所得として税率は20.315%(住民税・復興特別所得税含む)となります。これは、給与や事業で得られた所得税の税率に関係なく一律に定められた税率(分離課税)ですので、人によってはかなり優遇された所得税率であるといえるでしょう。

4. 土地転がしは割に合わない投資

現代では土地神話は終わり、土地価格が1、2年で急激に上昇することはありません。また、譲渡所得税についても短期譲渡所得としてかなり高い税率が適用されるため、土地転がしはハイリスクローリターンのわりに合わない投資であるといえるでしょう。少なくとも、一般の不動産投資家が狙うべき投資ではないことは確実です。

5. 土地転売のプロの手法

単純な土地転がしで利益を出すのは難しいため、不動産のプロは交渉や調査に時間と労力をかけて少しずつ土地の価値を上げたうえで売却します。土地の転売で利益を出すには、プロの経験による技と卓越した情報収集能力が必要になるでしょう。このような土地売却は、不動産業者であれば誰しも経験のある一般的なものというものではなく、長期間の交渉をいとわない一部の不動産のプロが業務として行っているという印象があります。

5-1. 隣地とまとめて売却する

旗竿地などの不整形地や、無道路地、接道の悪い土地は、隣地をまとめて売却することで不動産の価値を上げて高く売ることができる場合があります。隣地を合わせることで、土地の利用価値が上がるからです。また隣地を合わせて開発することで、接道状況が改善されたり隣地の容積率が優先されて適用されたりすると、容積率が上乗せされることがあります。これも不動産価値アップの手法です。

5-2. 共有地の法律関係を整理する

相続が生じたときに、遺産分割協議がまとまらず、とりあえず不動産を共有のままで登記し、その後、放置されている不動産があります。共有不動産は売主が複数いて、一括で購入しようとしても交渉がまとまりにくい傾向にあります。

共有持分を購入しても基本的に再販売ができないため、市場価格よりかなり安い金額で取引されるという性質があり、法律関係を整理して、共有持ち分のすべてを取得して売却することで、本来の価値で売却することができます。

5-3. 再開発を見込んで土地を取得する

地下鉄の延線や再開発を見込んで土地を取得し、長期間保有して値上がりを待つという手法もあります。地下鉄の延線計画や幹線道路の開発、駅前再開発の計画は、東京都であればホームページ等で確認することができます。しかし、いつ行われるかわかりませんし、永遠に着手されない可能性もあります。じっくり待ちながら、タイミングを見て売却する戦略ですので、一般の不動産投資向きではありません。

6. まとめ

土地転がしという言葉は今でも見かけますが、2023年現在では、ほとんど行われていない印象があります。これは、宅建業法や税法によってむやみに不動産を短期売買することが抑制されているから。土地の売買で利益を上げるためには、対象の土地の利用価値を上げて売却するのが本筋です。なにかの機会に土地の価値を上げられそうな土地を所有することになったときには、不動産のプロに相談しながら売却方法を検討してみましょう。

徳田 倫朗

徳田 倫朗

宅地建物取引士
株式会社イーアライアンス代表取締役社長。中央大学法学部を卒業後、戸建・アパート・マンション・投資用不動産の売買や、不動産ファンドの販売・運用を手掛ける。アメリカやフランスの海外不動産についても販売仲介業務の経験をもち、現在は投資ファンドのマネジメントなども行っている。

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