不動産の所有権移転登記が必要となり「費用はいくらかかるのか?」「自分でも手続きできるって本当?」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。所有権移転登記は個人でも申請できますが、費用や税金、必要書類の確認など手続きに多くの手間がかかります。
本記事では、実際に所有権移転登記にかかった費用のアンケート結果の紹介や、費用の内訳、支払い手段や節約方法などを紹介します。司法書士へ依頼する場合だけでなく、自分で手続きをおこなう方法についても解説しますので、参考にしてください。
1. 【アンケート】所有権移転登記にかかる費用は?
本記事では、不動産の所有権を移転したことがある人を対象に、かかった費用についてアンケート調査を実施しました。
最も多かった回答は「5万円~10万円」で43.55%を占めています。次いで「10万円~20万円」が32.26%と続き、5万円以上20万円未満の範囲に大半が集中していることがわかります。
所有権移転登記の費用は、不動産の種類や規模、立地などにより変動します。物件価格からすれば大きな金額ではありませんが、購入資金を準備する際は念頭に置く必要があります。特に高額物件を購入する場合は、登記費用が増えることになるので注意が必要でしょう。
2. 所有権移転登記とは
所有権移転登記とは、不動産の所有権を持つ人が変わった場合に、登記簿へ記録されている所有者の情報を書き換える手続きのことです。通常、所有者が変わる不動産の売買や贈与、相続、財産分与といったタイミングで所有権移転登記をおこないます。
なお、登記簿とは、法務局に設置されている誰もが閲覧できる公の帳簿です。不動産の情報を登録し、誰が所有しているかなど権利を明確にする手続きを登記といいます。
それではなぜ、契約書などを交わすにもかかわらず所有権移転登記が必要となるのでしょうか。詳しく解説します。
2-1.所有権移転登記の必要性
所有権移転登記が必要となる大きな理由は、不動産の所有者を第三者に対して法的に証明できないというリスクが発生してしまうからです。民法177条では、次のように記載されています。
“不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない”
第三者から見て元の所有者(売主)のものと判断できる状態になっていると、元の所有者が別の第三者に不動産を売却し、代金を二重に受け取ることが可能になってしまいます。相続が発生した場合も、いったい誰が名義を取得しているのかわからなくなるなど、権利関係のトラブルにつながるかもしれません。
また、税金面でもトラブルが生じます。固定資産税は登記簿上の所有者に課税されるため、所有権移転登記をせずに放置すると、たとえば不動産売買をした際は元の持ち主である売主に税金が課せられ続けてしまいます。
このように、登記をせずにいると買主側は所有の証明ができず、売主側は税金が課せられるため、双方にとって損です。
2024年4月からは相続登記(相続で得た不動産の所有権移転登記)の義務化がスタートし、3年以内に相続登記をするよう義務付けられます。法律上の義務だけでなく、トラブルを避けるべく、不動産の売買や相続など所有権が移動する際は、所有権移転登記を必ずおこないましょう。
3. 所有権移転登記にかかる費用
所有権移転登記に関わる費用の内訳は、登録免許税、司法書士への依頼費用、および必要書類の取得費用です。不動産売買による所有権移転登記の場合、原則として買主が費用を負担します。ここでは、費用の内訳について詳細に解説するので、費用の目安を把握する参考にしてください。
3-1.登録免許税
登録免許税とは、所有権移転登記など、法務局にある登記簿に土地や建物の記録をつけて公示するための手続きに必要な税金です。登記の種類や不動産によって税率が異なるため、たとえば中古一戸建てであれば土地と建物に分け、それぞれ登録免許税の計算をおこないます。
原則として、計算式は以下の通りです。
登録免許税額=(課税標準)×(税率) |
課税標準は、申請する登記の種類によって異なります。固定資産課税明細書において、一般的に「価格」または「評価額」と表記されている価格が対象です。多くの自治体で毎年4月1日に決定されるため、3月31日までに登記をおこなう場合は前年度の評価額を使います。
土地の場合、租税特別措置法第72条第1項により、2026年3月31日まで軽減税率が適用され、税率は1.5%です。住宅用家屋は租税特別措置法第72条の2と第73条により、2024年3月31日までは0.3%とされます。
また、住宅については特定認定長期優良住宅の場合は、マンションであれば0.1%、戸建て住宅の場合は0.2%です。なお、本則税率では土地は2.0%、建物は2.0%となっています。
相続による所有権移転登記の場合は、土地と建物双方ともに0.4%です。ただし2025年3月31日までの間は、特例により登録免許税が免税となる場合があります。要件が複数あるため、法務局や税理士に相談しましょう。
また、登録免許税の支払い時期は法務局に申請するタイミングです。支払い後に、所有権移転登記をおこなってもよいか、書類に対する正式な審査が始まります。登録免許税の支払いについては、現金を税務署などに納付する方法やキャッシュレス納付のほか、税額が3万円以下の場合は印紙納付も可能です。
分割払いや後から納付することはできないため、あらかじめいくら必要になるか計算したうえで手続きを進めましょう。
3-2.司法書士への依頼費用
所有権移転登記を司法書士へ依頼する場合、登録免許税とは別に司法書士への報酬が発生します。以下は、2018年に日本司法書士会連合会がおこなったアンケート調査を基にした報酬の相場です。
登記の理由 | 報酬の相場 |
---|---|
売買 | 3万円~15万円 |
相続 | 3万円~12万円 |
贈与や遺贈 | 2万円~8万円 |
実際の報酬額は登記の理由や地域、評価額によっても異なります。上記を目安としつつ、実際の報酬額を詳しく知りたい場合は、お近くの司法書士へ相談しましょう。
3-3.手続きに必要な書類の取得費用
所有権移転登記には、複数の書類が必要です。所有権移転登記をする理由によって必要書類が異なりますが、次のような書類は発行時に費用が発生します。
• 登記事項証明書
• 印鑑証明書
• 住民票
• 固定資産評価証明書
上記の書類取得にかかる費用はそれぞれ数百円ほどです。また、贈与による所有権移転登記で贈与契約証書などの作成を司法書士へ依頼する場合は、作成費用に1万円前後が必要となります。
早めに手続きを進めるほか、マイナンバーカードを使って住民票などをコンビニ交付できるサービスを自治体が提供していないかチェックするなど、書類の取得にかかる手間を減らしておくことも大切です。
4. 費用や税金を抑える方法
所有権移転登記にかかる費用や税金をみていくと、思ったより負担になりそうだと感じた方もいるかもしれません。ここでは費用や税金を抑える方法を4つ紹介します。
4-1.自分で手続きを行う
所有権移転登記の手続きを自ら進めることで、司法書士へ支払う報酬を節約できます。必要書類の取得費用と登録免許税のみで済むため、不動産評価額にもよりますが数万円ほど費用を抑えられるでしょう。
しかし、書類に不備があると時間がかかるケースも多いです。法務局が窓口対応を受け付けている時間帯も、平日の午前9時から午後5時までに限られるため、人によっては足を運ぶのが難しい場合もあるでしょう。
また、不動産会社を通じて物件を売買する場合、買主側は住宅ローンの借り入れを伴うことから、司法書士による登記手続きを求められる可能性が高い点には注意してください。
4-2.複数の司法書士事務所に問い合わせる
報酬の基準は司法書士事務所によって異なるため、同じ条件の依頼でも司法書士事務所によって費用に差が出るのが一般的です。複数の事務所へ見積もりを依頼して比較すると、高額な報酬設定の事務所を避け、費用をおさえられます。
また、司法書士事務所を選ぶ際には、費用以外にも相談しやすさに注目して選びましょう。たとえば依頼した内容に対し詳しい説明を行ってくれる司法書士だと、不安点を解決しやすくなります。
4-3.登録免許税の軽減措置を受ける
登録免許税の軽減措置を受けることで、大幅に税金を抑えられる可能性があります。
たとえば、土地の売買による移転登記は2026年3月31日まで1.5%の軽減税率が適用されます。固定資産税評価額が1,000万円とした場合、この土地の登録免許税は15万円です。本則税率が2.0%のため、5万円税金を抑えられます。
軽減税率の適用の条件は、個人の住宅の場合や土地の売買などによってさまざまです。特定認定長期優良住宅や低炭素住宅などの認定住宅の場合は、さらに条件が細かく指定されています。
実際にかかる税金や軽減措置が利用できるかどうかについては、税務署や不動産登記に詳しい税理士に相談しておくとより安心です。
4-4.経費として計上する
事務所など、業務用不動産の所有権移転登記をおこなう際は、登録免許税を経費として全額計上できます。登記をおこなう際に支払うため、物件を購入した際に大きな経費化につながる反面、負担が大きいかもしれません。
経費計上について判断を迷う際には、詳しい税理士など専門家に相談しましょう。
4-5.専門家に相談する
税金や各種控除の適用がおこなわれるかわからない場合には、税理士や税務署への相談がおすすめです。税理士事務所や各地方の税理士会によっては、無料の税務相談サービスを提供していることがあります。不動産取引や相続等にともなう所有権移転登記で不明点があれば、こうしたサービスを活用してわからない点を解決したうえで進めていきましょう。
5. 所有権移転登記が必要なケース
所有権移転登記がおこなわれる状況は、不動産の所有権が変更される売買や相続、生前贈与、離婚による財産分与の4つが挙げられます。
それぞれの状況と登記にかかる費用の負担者について見ていきましょう。
5-1.不動産の売買を行うとき
不動産売買時には、所有権移転登記だけでなくさまざまな登記が必要になることがあります。購入した物件の種別や、新築か中古物件かによっても違うため、表で見ていきましょう。
購入した物件 | 必要な登記 |
---|---|
新築一戸建て(土地付き) | 建物表題登記 所有権保存登記 土地所有権の移転登記 抵当権設定登記 |
中古一戸建て・マンション(土地付き) | 抵当権抹消登記 住所変更登記 所有権移転登記 抵当権設定登記 |
土地のみ | 所有権移転登記 抵当権設定登記 抵当権抹消登記 住所変更登記 |
不動産売買に伴う登記は、引き渡し日に司法書士が立ち会い、所有権移転登記をおこなうのが一般的です。司法書士への報酬は一般的に買主が負担します。
5-2.不動産を相続したとき
不動産を相続したときには、不動産の所有者が相続人に変わるため所有権移転登記が必要です。相続に関連する登記のため、相続登記と言われることもあります。
これまで法律上義務ではなかったものの、所有者不明の土地が多く発生してしまう原因にもなるため、2024年4月1日より相続登記の義務化が始まります。不動産を相続人が取得したことを知ってから3年以内に、相続登記が必要です。正当な理由なく相続登記をしない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。
なお、2024年4月1日以前に相続した不動産も相続登記がされていない場合は、義務化の対象です。これまで相続登記をしていない場合には、2027年3月31日までに手続きを進めましょう。
なお、相続の場合は、費用を負担するのは不動産を相続する相続人であることが一般的です。
5-3.不動産の生前贈与を受けたとき
親や祖父母などの家族より、不動産を生前贈与された場合にも所有権移転登記が必要です。生前贈与後も所有権移転登記をせずに放置していると、贈与した人物が亡くなったあとに他の相続人と所有権でもめてしまう可能性があります。
贈与された土地を活用しようと考えていた場合でも、他の相続人とトラブルになってしまうと解決しない限り活用は難しくなります。確実に不動産の贈与を受けるためにも、贈与契約書を作成したうえで、所有権移転登記を進めていきましょう。
5-4.離婚による財産分与を行うとき
離婚によって財産分与をおこなう際、結婚中に不動産を建てた場合はその分配のために、所有権移転登記が必要なケースがあります。移転登記をせずに放置すると、固定資産税の支払い義務が発生するなどデメリットが生じます。
ただし、離婚成立後に手続きをおこなうことが可能となるため、離婚前の名義変更が必要な場合には贈与や売買といった他の手段の検討が必要です。
また、住宅ローンを利用している場合、銀行に無断で所有権移転登記をおこなうと契約違反となるケースがあります。住宅ローンを借りている銀行への相談も忘れずにおこないましょう。
基本的には所有権移転登記で所有権を取得する側が登記の費用を支払います。しかし場合によっては離婚相手と連絡が取りにくいなど、手続き面で不安が出ることもあるかもしれません。個人の力だけで解決せず、司法書士など専門家の力を借りるのがおすすめです。
6. 所有権移転登記の手続き
所有権移転登記をおこなう流れは、専門家である司法書士へ依頼する方法と、当事者がおこなう方法の2通りに分かれます。専門知識を求められるため、一般的には司法書士への依頼が推奨されるものの、所有権が移転する相手と合意があれば当事者が手続きを進めることも可能です。
まずは具体的な手続きの流れの全体像を解説した後、自分でおこなう場合と司法書士に依頼する場合の流れをそれぞれ紹介します。
6-1.所有権移転登記手続きの具体的な流れ
全体的な手順としては、まず登記申請書の作成と必要書類の用意をおこない、法務局に提出します。書類に不備がなければ、法務局から登記完了証と登記識別情報通知書を受け取って登記が完了する流れです。
申請から完了までは、通常1~2週間かかります。自分で申請した場合には、登記完了証などの受け取りを法務局でおこなう際に、申請書へ押印した印鑑と身分証明書が必要です。郵送希望の場合は申請時にその旨を記載し、本人限定郵便で受け取ります。
司法書士に依頼する場合は、完了報告後に登記完了証などを司法書士から受け取り次第、請求書に沿って報酬を支払うのが一般的です。
より詳しく、自分でおこなう場合の流れと司法書士へ依頼する場合の流れを解説します。
6-2.自分でおこなう場合の流れ
自分で手続きをおこなう場合は、次のような流れで進めていきます。
1. 法務局で必要な書類や手順を確認し、必要な申請書を入手
2. 登録免許税を計算
3. 書類を法務局に窓口・郵送・オンライン提出のいずれかで提出
4. 登録免許税を法務局へ納付
5. 法務局での審査が開始
6. 不備があれば修正や再申請
7. 登記完了後、登記完了証及び登記識別情報通知書を窓口・郵送で受け取る
必要書類は、所有権移転登記をおこなう状況によって異なります。
ケース | 書類名 |
---|---|
相続の場合 | • 住民票(相続する全員分) • 相続する人の印鑑証明書 • 固定資産評価証明書 • 亡くなった人の戸籍書類一式(戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍) • 相続関係説明図 • 遺言、遺産分割協議書など相続の理由に合わせた書類 |
売買の場合 | • 売買契約書(登記原因証明情報) • 買主(登記権利者)の住民票 • 売主(登記義務者)の印鑑証明書 • 登記識別情報又は登記済証(権利証) • 固定資産評価証明書 |
贈与の場合 | • 贈与契約書(登記原因証明情報) • 登記識別情報または登記済証(権利書) • 義務者(贈与する側)の印鑑証明書 • 権利者(贈与される側)の住民票 • 固定資産評価証明書 |
財産分与の場合 | • 財産分与協議書(登記原因証明情報) • 登記識別情報または登記済証(権利書) • 義務者(分与をする方)の印鑑証明書 • 権利者(分与を受ける側)の住民票、身分証明書、認印 • 固定資産評価証明書 |
また、相続の場合には被相続人の戸籍謄本が必要になるなど、相続する内容によって書類が異なる場合があります。取得が必要書類について不明点がある場合は、あらかじめ法務局に相談しておくと安心です。各法務局に対し、実際に相談する日時を電話や法務局手続案内予約サービスを通じて予約できます。
6-3.司法書士に依頼する場合の流れ
司法書士に依頼する場合は、自分自身で手続きをおこなわないため、司法書士へ適切な必要書類や委任状を提供することが大切です。司法書士事務所によって報酬額も異なるため、費用をできるだけ抑えたい場合は複数の事務所から見積もりをとっておきましょう。
1. 依頼先の司法書士を決定し相談
2. 依頼先の司法書士に登記申請書や必要書類、委任状を提供
3. 報酬と登録免許税の決定
4. 法務局へ司法書士が登記申請を代行
5. 法務局の審査
6. 登記完了後に、司法書士から登記完了証及び登記識別情報通知書を受け取る
7. 報酬の支払い
必要な書類として、司法書士への委任状が求められます。不安な点があれば司法書士へ相談し、早めに書類を用意しましょう。
7. まとめ
所有権移転登記とは、法務局で不動産の所有者を変更する手続きのことです。所有者を不正確な状態にしておくと、税金の支払いや不動産の活用にトラブルが生じるなど、さまざまなデメリットになりかねません。
個人でも所有権移転登記の手続きが可能ですが、トラブルや書類の不備を避けるために司法書士へ依頼するケースが一般的です。司法書士によって報酬の計算方法が異なるため、複数の司法書士から見積もりをとっておくと、費用の節約につながることもあります。
また、所有権移転登記の費用の大部分を占める登録免許税は、軽減税率が適用されることもあります。気になる点があれば法務局や税理士、司法書士へ相談し、不安なく所有権移転登記を進めましょう。
※本記事は2024年3月12日時点の情報をもとに記載しています。法令等の改正により記載内容について変更となる場合がございますので、予めご了承ください。
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