空き家の増加は現代日本における社会問題の一つです。少子高齢化や人口の都市部集中などにより空き家は今後も増えていくと予想されており、今まさに「自分も空き家を抱えている」「将来的には実家が空き家になってしまうかもしれない」という人も少なくないでしょう。
空き家問題の当事者となると、空き家の管理や処遇をめぐって様々な問題に直面します。空き家問題の知識や対処法を身に付け、落ち着いて解決に進めていけるようにすることが大切です。
この記事では、空き家問題の背景や政府の対策、当事者の選択肢についての解説をおこないます。空き家問題が気になっている方はぜひご覧ください。
1. 【独自調査】空き家に関するアンケート
空き家問題に遭遇する人がどれだけいるのか調べるために、実家や親戚の家など身のまわりで近い将来に空き家になりそうな家がある人の割合をアンケート調査しました。
アンケート結果によると、6割以上の人が「近い将来、身のまわりで空き家になりそうな家がある」ことがわかりました。「ある」と回答した人の家がすべて空き家になるわけではありませんが、近い将来、私たちの身近で空き家問題に遭遇する人は少なくなさそうです。
空き家問題は私たちにとって身近な問題であり、衛生面や治安の面からも無視することはできません。早いうちから空き家が生まれる原因を知り、事前に打てる対策があれば実施しておくことが大切になるでしょう。
2. 空き家問題とは
空き家問題は様々なトラブルの引き金となり得る、現代の社会問題といえます。家屋が空き家となることで放置されると、管理不足による倒壊や破損、不法投棄、不審者の侵入を招くことになるためです。
家屋の管理不足を原因とするトラブルとして代表的なものの一つに、植栽(家の敷地内に植えられる樹木や草花のこと)の越境問題などが挙げられます。植栽の越境は庭に植え付けた樹木の枝葉などが敷地外に伸びることで発生します。越境された側が勝手に伐採をおこなうとご近所トラブルになる可能性があります。
近年では空き家が増加傾向にあり、2030年には空き家が470万戸を超えるという予測も総務省から発表されています。このまま空き家が増加していくとトラブルが起こる頻度も高まり、ご近所トラブルに悩まされる人も増えてしまうかもしれません。
「現在空き家を持っている」「将来的に実家が空き家になるかもしれない」など、空き家問題が他人事ではないという人も少なくないでしょう。管理されている空き家ならば問題の原因にはなりにくいため、トラブルの発生前に対策をおこなうことが重要です。
3. 空き家問題の原因
空き家問題の根本には「管理されない家屋が増加している」という背景が存在しています。その原因は、主に次の3点から説明できます。
- 少子高齢化
- 国の税制
- 一部地域への人口集中
それぞれの詳細を解説します。
3-1. 少子高齢化
少子高齢化は、空き家問題の無視できない要因です。高齢者が家を空けた際に、管理する人が居ないというケースは珍しいものではありません。老人ホームや子供の家などへの転居、あるいは死亡後の管理がおこなわれなければ、そのまま空き家となってしまいます。
特に家族や親族が遠方にいる場合、空き家の適切な管理はさらに困難になるでしょう。また、交通の便の悪い地方や立地の家屋も、家族・親族にとって管理する動機が薄く、放置されてしまう恐れもあります。家を相続する人の減少も問題に拍車をかけているといえるでしょう。
3-2. 国の税制
日本の住宅に関する税制は基本的に新築住宅の取得を促進しているため、中古住宅が増加しやすい構造となっている点も空き家問題を加速させています。新築優遇は戦後の住宅政策と高度成長期の人口増加へ対応する施策でしたが、人口減の続く現代には対応しきれていないと言えるでしょう。
また、空き家を解体して土地だけを保有する状態では、土地の固定資産税が上がってしまう点も重要です。「放っておいたほうが税金がかからない」と家屋を放置し、管理もおこなわないという姿勢が、空き家の管理不行き届きとそれに起因するトラブルの原因の一つでもあります。
3-3. 一部地域への人口集中
一部地域への人口集中も、空き家が増加する理由の一因となっています。特に人口が都市部に流出している地方の家屋は空き家になりやすい傾向があるといえるでしょう。
都市部での雇用の集中により若い世代が地方を離れると、東京都心やその周辺のような一部地域へ人口が集中し、一方で都市から離れた農村部や山間部では過疎化が進行します。人口が少なければ住宅需要も落ち込むため、空き家が増加しやすくなってしまいます。親が亡くなるなどの理由で実家に戻るケースも減っており、実家が放置されることも珍しくありません。
また、人口減少に伴い地域の活力が失われることでも空き家が増加しやすくなります。商業施設や交通機関、サービスが低下して住み良さが失われれば、地域に住み続ける動機が失われ生家を放置する人が増加します。空き家問題は、人や商業活動の都市部一極集中と不可分の問題と言えるでしょう。
4. 統計データから見る空き家問題の現状
空き家問題は国にとっても大きな課題であり、解決を目指すためにさまざまなデータが統計されています。国の調査結果から、空き家問題の現状をチェックしていきましょう。
4-1. 空き家所有者実態調査
国土交通省による2019年の空き家所有者実態調査の結果によると、調査対象のうち52.8%の空き家が現在利用されていない状態にあり、54.8%の空き家では破損が見られることが明らかになっています。およそ半数の空き家が未活用または管理不行き届きの状態となっている現状から、多くの所有者が空き家の存在を持て余していることがうかがえます。
加えて、1980年以前に建築された家屋が空き家全体の69.1%を占めていることから、古い家の管理に課題があることも明らかとなっています。最も多い空き家の立地は大都市圏以外の市部(54.2%)、建て方は一戸建て(89.6%)、構造は木造(85.9%)です。
空き家の「今後の利用意向」についても調査されていますが、「空き家にしておく(物置を含む)」が最大の28.0%となっています。理由としては「物置として必要」が60.3%、「解体費用をかけたくない」が次いで46.9%です。
概ね、大都市圏から離れた古い木造の一戸建て住宅が空き家になりやすく、その所有者の多くが今後も空き家にしておくつもりという現状が確認できます。
4-2. 住宅・土地統計調査
統計局が5年ごとにおこなっている住宅・土地統計調査でも、空き家問題の現状をチェックすることができます。当該調査によると、長期的に利用されていない空き家は、1998年から20年で約1.9倍になったことが明らかとなっています。
長期的に利用されていない空き家率は全国平均が5.6%で、高知や鹿児島、和歌山などでは10%超えの数値が確認されています。いずれも東京や大阪、名古屋といった都市圏から距離のある立地であり、一部地域への人口集中という要因が絡んでいることもうかがえます。
また、総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は2018年時点で13.6%と過去最高を記録しています。空き家数・空き家率ともに1958年の記録から右肩上がりを続けており、今後も増加をすることが予想されるでしょう。
5. 空き家問題への政府・自治体の対策
空き家の増加は住宅政策における大きな問題となっているため、政府や自治体にとっても解決したい問題のひとつです。現在実施されている公的な空き家問題への対策についても把握しておきましょう。
主な対策は次の3点となります。
- 問題のある空き家に指導・勧告
- 空き家バンクの運営
- 空き家向けに補助金・助成金を出す
特に、問題のある空き家に対する指導・勧告は行政による強制力を伴った措置がおこなわれる場合があるため注意が必要です。
5-1. 問題のある空き家に指導・勧告
市区町村は問題のある空き家への対応として、特に「管理不全空き家」と「特定空き家」を対象に、指導や勧告を実施することができます。それぞれの定義は次の通りです。
管理不全空き家 |
特定空き家 |
|
定義 |
窓や壁が破損している空き家 |
そのまま放置すると倒壊などの恐れのある空き家 |
以前は特定空き家のみが対象でしたが、2023年12月13日に「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」が施行されたことにより、管理不全空き家も対象に加えられました。これまで「倒壊しなければいい」と空き家を放置してきた場合は注意が必要です。
いずれかの定義に当てはまる空き家が発生すると、空き家のある市区町村から指導がおこなわれます。指導に従わない場合は勧告がおこなわれ、固定資産税等の軽減措置が失われてしまいます。税制面で大きな不利を受けることになってしまうため、勧告前の対応が必要です。
指導や勧告では、主に修繕や撤去に関する内容が伝えられます。この内容は段階が進むと強制力を伴った「命令」となる可能性があり、従わない場合は50万円以下の過料が求められる可能性があります。場合によっては行政代執行で解体され、費用が求められることもあるため注意しましょう。
5-2. 空き家バンクの運営
空き家バンクは、所有者と利用を希望する人々を結びつける役割を持つシステムです。このシステムに空き家を登録すれば情報が一般に公開されるため、売り手と買い手(もしくは貸主と借主)をマッチングすることが可能です。
空き家バンクは主に全国の地方自治体によって運営されています。その地方に家が欲しい人や移住をしたい人に向けて情報が発信されていますが、不動産会社仲介での契約のようなサポートはなく、基本的に直接交渉が必要な点には注意が求められます。
5-3. 空き家向けに補助金・助成金を出す
地方自治体によっては、空き家の管理、改修、取得、活用に対して補助金や助成金が出る場合があります。主に「空き家所有者の自己負担を軽減できれば、所有者の管理や活用を促進することができる」という狙いから提供されます。
自治体によって、空き家の活用形態や条件に応じて様々な支援が用意されているため、利用を考える際は詳細をよく確認することが重要です。また、空き家バンクと併用できるものも存在するため、合わせて利用を検討することも有効でしょう。
6. 空き家問題の解決策としてできること
自身が空き家問題の当事者となった場合の悩みは決して軽くはありません。問題を放置するリスクは小さくないため、なるべくスムーズに解決できるようにしましょう。
空き家問題の解決には、主に次の4つの手段を取ることができます。
- 空き家を相続放棄し相続財産清算人に引き渡す
- 管理を業者に委託する
- 空き家を新規ビジネスに活用する
- 空き家の売却・買取を検討
それぞれの詳細を見ていきましょう。
6-1. 空き家を相続放棄し相続財産清算人に引き渡す
空き家を相続放棄し、そのうえで相続財産清算人に引き渡すことができれば管理責任を負わずに済みます。ほかの相続人が居ればその人に任せ、居ない場合には家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てましょう。
「空き家の管理責任は相続者にあるため相続放棄をする」といった解決策を思いつく人は少なくありませんが、相続者が誰一人としていないようなケースでは空き家がただ放置されてしまうため、放棄時点での所有者が対応をおこなう必要があるのです。
なお、相続放棄をおこなうとほかの財産の相続権も失うことには注意が必要です。相続財産清算人の選任申し立てなどには様々な書類や手続きが求められるため、弁護士や司法書士へ相談したうえでおこなうとよいでしょう。
6-2. 管理を業者に委託する
「空き家を手放したいわけではない」「手放すことはできないが管理が難しい」といった場合には、管理を業者へ委託することも選択肢の一つです。委託費用はかかるものの、管理の手間を大幅に省くことができます。
たとえば、「地方の実家が空き家になっている都市在住者」が管理をおこなおうとすると、現地まで向かう交通費や労力の負担は重いものとなってしまいます。実作業では外観や内部の確認だけでなく、ごみ処理や草木の手入れが必要になるケースも少なくありません。管理を業者に委託するほうがより確実かつ簡単な管理を実現できるでしょう。
また、管理業者によっては近隣クレームの一次対応や、写真付きでの巡回報告をおこなってもらえる場合があります。管理の負担を減らし、安心して空き家問題に対処する手段として、業者への委託は有効な手段といえます。
6-3. 空き家を新規ビジネスに活用する
空き家をビジネスに活用することも選択肢の一つとなります。地域の需要に応じ、賃貸経営、サテライトオフィス、コワーキングスペースの設立などが可能かどうかを検討してみましょう。
「地方にビジネスの需要はない」と思い、ビジネスを選択肢から除外する人は少なくありませんが、近年ではテレワークの普及などにより、都心部のオフィスに集団で出勤する以外の働き方が選択肢に挙がっています。「田舎」とされる地域でも、都会の喧騒を離れ落ち着いて働きたい人にとっては需要がある可能性があるでしょう。
「本業が忙しい」「遠隔地の空き家で運営に手間をかけられない」というケースでは、運営を土地活用の専門家に委託することも選択肢となります。立地や周辺のニーズから最適なビジネスモデルを提案してもらえる場合もあるため、興味がある場合は相談してみるとよいでしょう。
※関連記事:空き家の活用方法6選!成功した活用事例もご紹介|不動産売却【ノムコム】
6-4. 空き家の売却・買取を検討
空き家の売却や買取をおこなうことも選択肢となります。不動産会社から査定を受け、現在の価値を把握してみましょう。基本的に売却が確定するまで費用はかからないため、まずは査定だけでも受けてみることがおすすめです。
査定後、不動産会社の仲介を受けて買い手が見つかれば空き家を手放すことができます。買い手が見つからない場合でも、不動産会社そのものによる買取が受けられる可能性があります。
不動産売却を検討する方は、こちらの記事も合わせてご覧ください。
7. 空き家問題に関連するよくある疑問
最後に、空き家問題の当事者が抱きがちな疑問を回答とともに紹介します。疑問と答えを予め把握しておき、自身が空き家問題に悩むことになった際でもスムーズな対応ができるようにしておきましょう。
紹介する疑問は次の3点です。
- 空き家を無償譲渡できる?
- 空き家の対策はどこに相談すればいい?
- 特定空き家などの判断基準は、自治体によって違う?
7-1. 空き家を無償譲渡できる?
法律的な観点からすれば、無償譲渡は「贈与」と見なされ、これが禁止されることはありません。個人間のやり取りであれば、無償譲渡をおこなった側には税金は発生せず、受け取った側に贈与税が発生して引き渡しがおこなえます。
ただし、自力での無償譲渡は手続きが煩雑な点に注意が必要です。専門知識の必要な契約書の作成等を自身で行わなければならず、ハードルは低いとは言えません。仮に契約内容に不備があると法的トラブルの原因にもなりかねず、知識が無い限りはリスキーな選択肢といえるでしょう。
不動産会社が仲介に入った売却や買取であれば、手続きを大幅に簡略化することができます。無償譲渡と違い売却益を得られる可能性もあるため、より安全かつお得な手段といえるでしょう。
7-2. 空き家の対策はどこに相談すればいい?
空き家問題に関する全国統一の窓口はありませんが、おおむね各自治体の役所が相談の窓口となる傾向にあります。空き家の所在する市区町村役所の窓口に相談が可能かどうか問い合わせてみましょう。空き家バンクや補助金などの案内が受けられる場合があります。
また、空き家対策として売却を選ぶことが決まっているならば、不動産業者への相談が有効です。
7-3. 特定空き家などの判断基準は、自治体によって違う?
指導や勧告の対象となる特定空き家の判断基準は、自治体によって多少異なることがあります。基準に含まれる「衛生上有害となるおそれのある状態」や「適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態」といった表現は少々明確さに欠けるため、判断者や対象によるブレが発生する可能性は否めません。
たとえば用途地域が「商業地域」でさまざまなお店が所狭しと並んでおり、古い商業ビルも混在しているエリアと、用途地域が「第1種低層住居専用地域」で区画整理もされ、新しい戸建てが多いエリアとでは「景観」の判断基準は変わってしまうでしょう。
また、近隣住民からのクレームによって特定空き家と認定される場合もあります。特定空き家に認定されるか否かは概ねケースバイケースといえます。
8. 8. まとめ
空き家問題は、管理不足による倒壊リスクや景観悪化などのリスクを引き起こしています。政府や自治体も対策の必要性を感じ様々な施策を実施しており、同時に空き家の所有者にも適切な対応が求められています。
空き家を所有するなど、問題の当事者となった場合には、売却や管理委託などの解決策を講じる必要があります。空き家の放置は税制上の優遇を受けられないことや、行政代執行、過料の徴収を招く恐れがあるため禁物です。必要に応じて専門家との相談をおこない、問題の解決を導けるようにしましょう。
※本記事は2024年4月9日時点の情報をもとに記載しています。法令等の改正により記載内容について変更となる場合がございますので予めご了承ください。
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