1. 【独自調査】土地の売買時にかかる税金に関するアンケート
土地売買に関する税金について知っている人がどれだけいるのか調べるために、土地を売買する可能性がある人を対象にアンケート調査を実施しました。
アンケート結果によると、59%の人が「土地売却の税金について詳しくは把握していない」ことがわかりました。本調査から、土地売却の可能性を認識していながらも、土地売却に関する税金については詳しくは知らない人が少なくなさそうです。
土地売却で損をしないためには土地を高く売るほか、税金で損をしないことも大切です。土地売却後、少しでも多く手元にお金を残したい場合は、税率が下がる売却タイミングやお得な控除を把握しておくとよいでしょう。
2. 【売却・購入時】土地の売買で引き渡しまでにかかる税金
土地の売買においては、「印紙税」「登録免許税」「消費税」の3項目の税金がかかり、その後の確定申告で譲渡所得税がかかります。まずは売買契約時にかかる、3つの税金について把握していきましょう。
なお、3種のうち印紙税は売買契約書の原本を所有しないことで合法的に節税できますが、もし売買契約書に記載された事項でトラブルになり、裁判に発展した際に不利になってしまいます。この節税方法はリスクがあることに留意してください。
2-1. 契約書の作成で印紙税がかかる
印紙税は経済取引で契約書や領収書などの文章を作成した際に、印紙税法でその文章に課税される税金です。土地売買の契約書作成時に発生する税金で、契約書に記載された金額が1万円未満ならば非課税ですが、1万円以上になると、契約金額に応じて異なる税率が適用されます。
印紙税の税率は次の通りになっています。
契約金額 |
税額 |
軽減税率 |
1万円未満 |
非課税 |
非課税 |
1万円~10万円以下 |
200円 |
200円 |
10万円~50万円以下 |
400円 |
200円 |
50万円~100万円以下 |
1,000円 |
500円 |
100万円~500万円以下 |
2,000円 |
1,000円 |
500万円~1,000万円以下 |
1万円 |
5,000円 |
1,000万円~5,000万円以下 |
2万円 |
1万円 |
5,000万円~1億円以下 |
6万円 |
3万円 |
1億円~5億円以下 |
10万円 |
6万円 |
5億円~10億円以下 |
20万円 |
16万円 |
10億円~50億円以下 |
40万円 |
32万円 |
50億円超 |
60万円 |
48万円 |
なお、印紙税の負担者は売主と買主の両方となっています。
2-2. 登記の手続きで登録免許税がかかる
土地の売買においては複数の登記手続きが発生するため、これらに伴う登録免許税が必要となります。登記ごとの税率は次の通りです。
税率 |
軽減税率 |
|
所有権移転登記 |
土地の価格×2.0% |
土地の価格×1.5% |
抵当権設定登記 |
債権額×0.4% |
債権額×0.1% |
抵当権抹消登記 |
不動産1個につき1,000円 |
なし |
住所氏名の変更登記 |
不動産1個につき1,000円 |
なし |
所有権移転登記と抵当権設定登記は買主が負担し、抵当権抹消登記と住所氏名の変更登記は売主が負担します。土地売買における自分の立場に応じて、必要な登記費用を用意しましょう。
また、住所氏名の変更登記は、所有権の移転登記をする際に転居しているなどで、売主の氏名・住所が現況と異なっている場合にのみ必要です。土地売却までに変更登記をおこないましょう。
2-3. 土地を売買する手続きの諸費用で消費税がかかる
土地の売買に伴う手続きでは、不動産会社への仲介手数料、司法書士への報酬、ローン繰り上げ返済手数料など、様々なサービスに対して消費税が発生します。2024年4月時点で消費税は10%です。
消費税は買主、売主側でそれぞれ発生します。支払額に自動的に含まれるため、特別な手続きは不要です。
なお、法人が所有している物件に関しては、売買時に建物にのみ消費税が課税される点に留意しておきましょう。
3. 【売却後】土地売却の利益には譲渡所得税がかかる
土地の売買でかかる税金は、売却・購入時の手続きに伴うものだけではありません。土地の売却で利益が出た人は譲渡所得税も払う必要があります。譲渡所得税の基礎知識を把握していきましょう。
3-1. 課税対象となる土地の売買の利益とは
譲渡所得税は、譲渡所得(土地の売買で得られた利益)を対象に求められる税金です。譲渡所得は次の計算式で求めることができます。
譲渡所得=成約価格-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
取得費とは、土地を購入した際の代金や仲介手数料、測量費などが含まれます。譲渡費用は売却のために直接かかった費用で、例えば仲介手数料や印紙税、司法書士への報酬などが対象です。特別控除額は、特定の条件を満たす場合に適用され、節税をおこなううえでの重要な要素となります。
3-2. 譲渡所得税の税率
譲渡所得税は前述の譲渡所得に税率をかけて求められますが、土地の所有期間によって税率が異なる点に注意が必要です。所有期間が5年以内で短期譲渡所得、5年超えで長期譲渡所得として分類され、それぞれ所得税と住民税の税率が変化します。詳細は次の表の通りです。
区分 |
所得税 |
住民税 |
長期譲渡所得 |
15% |
5% |
短期譲渡所得 |
30% |
9% |
長期譲渡所得の方が税率が軽いため、節税を考える場合は所有期間が5年を超えてから売却した方がよいといえるでしょう。
また、2037年までは確定申告の際に復興特別所得税(所得税額から差し引かれる金額を差し引いた後の金額に2.1%を掛けて計算したもの)を申告・納付する点にも留意しておきましょう。
3-3. 譲渡所得税を納税するための確定申告
譲渡所得税の納税は確定申告によっておこなわれます。土地を売買した翌年の2月16日〜3月15日(開始や終了日が土日だと変更あり)に、忘れずに税務署への申告をおこないましょう。
「普段はサラリーマンで確定申告をしたことがない」「確定申告のやり方がわからない」という場合には、期間内に地域の税務署で案内を受けながら申告することも可能です。税務署では相談コーナーが設置されていますが、申告時期は混雑しやすい傾向にあるため、予約して相談するか、早めに相談・申告をおこなうことがおすすめです。
なお、譲渡所得が発生していない、むしろ土地の売買で赤字になったという方は、原則として確定申告は不要です。しかし、確定申告によって受けられる救済措置も存在しているため、基本的には「土地の売買をしたら確定申告をする」ということを念頭に置いておくとよいでしょう。
3-4. 譲渡所得税の納税時期
譲渡所得税が発生した場合には、所得税は確定申告の時期に納税する必要があります。振替納税にしていると4月頃に引き落としとなるため、自動で納税をおこないたい場合には預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書を金融機関または税務署に送付しましょう。
住民税は、給与などからの天引きではない普通徴収の場合、確定申告をした年の5月以降に送付される納付書を使って納税することになります。一括払いか4分割払いかを選べるため、その時の経済状況に合わせて納付をおこないましょう。
また、住民税の納税は原則現金でおこなう必要がありますが、自治体によってはクレジットカード決済も可能です。
4. 【購入後】土地を購入すると不動産取得税がかかる
不動産取得税を支払う必要がある場合には、自治体から納税通知書が送付されます。税額は次の計算式で計算可能です。
不動産取得税=課税標準額(不動産の評価額)×税率
課税標準額(不動産の評価額)は、原則として固定資産税課税台帳に登録された固定資産税の評価額が用いられます。税率は土地・建物ともに4%となっています。
しかし、2027年3月31日まで3%に引き下げる軽減措置が施行されています。土地・建物(住宅)の価格の2分の1に相当する額を不動産の価格とする負担調整措置があるため、納税者は負担を減らして取引可能です。
取得した土地の価格が10万円未満の場合など、一定の要件を満たせば不動産取得税はかからない点にも留意しておきましょう。
5. 土地の売却にかかる税金の節税ポイント
土地の売買、特に売却では支払う税金の額が多く、ぱっと見では利益が得られたように見えても、支払う税金の額が膨れ上がってしまうこともあります。そこで利用可能なのが各種控除などの節税手段です。制度を理解して、節税ポイントを把握していきましょう。
5-1. 特別控除を利用する
土地の売却に特別控除が利用できないかどうかをチェックしてみましょう。たとえば、都市計画区域内にある低未利用土地等を売却した場合には、譲渡所得額から100万円を控除する特例が利用できる場合があります。この控除は、2024年4月時点で2025年12月31日までの売却に適用可能です。
低未利用土地とは、居住用や事業用などで使用されていない土地のことを指します。この特別控除を受けるためには、売却した土地が都市計画区域内に位置し、所有期間が5年を超えていること、成約価格が500万円以下(一定要件下で800万円以下)であることが必要です。
5-1-1. 居住用財産売却時に使える3,000万円特別控除
居住用財産(マイホーム)を売却した際には、譲渡所得から最高3,000万円までの特別控除が可能です。これは、現在自分が住んでいるマイホームだけでなく、過去に住んでいたマイホームを売却する場合にも適用されます。
ただし、特別控除を受けるための条件には、売却される家屋が自分が所有し住んでいた住宅であること、そしてその住宅を自分が住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日以内に売却することが含まれます。
居住用財産の売却による譲渡所得に対してのみ適用されるため、土地の売却をおこなう人全てが利用できるとは限りませんが、マイホームごと土地を売る人はこの特例の適用を申請してみるとよいでしょう。
5-2. 土地の取得費を正確に計上する
土地の取得費は譲渡所得税の計算上で重要な要素となりますが、先祖代々の土地などを売却する際には正確な取得費の確認が困難を極めます。その際には成約価格の5%を取得費として計上できますが、実際の取得費を反映していると言い難いケースでは納税額が不当に高くなる恐れがあります。
土地の売却の場合には、可能な限り取得費の参考となりそうな資料を探し出すようにしましょう。契約関係の書類でなくとも、当時のチラシや過去の路線価などから合理的に計算された数字であれば、取得費として使える場合があります。
購入した不動産会社が分かれば、購入時の年代のチラシやパンフレットを探してもらうことも有効です。登記簿謄本の抵当権の欄にある購入時のローン情報から推測していく方法もあります。不動産鑑定士に過去の取得費を算出してもらうことも検討してみましょう。
しかし最終的に資料が認められるかどうかは税務署次第となるため、場合によっては税理士に相談することも大切です。
5-3.取得費加算の特例を利用する
相続により取得した土地や建物を売却する場合、納税した相続税額の一部を譲渡資産の取得費に加算できる特例があります。短期間の間に同じ財産に対して、相続税と譲渡所得税の二重課税になることを避けるために設けられている特例です。
特例を利用するためには、相続開始のあった日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡することが求められます。
5-4. 利益がない場合も確定申告する
「土地売却で利益が出なかったから確定申告は不要だ」と考えるのは早計です。不動産売却における譲渡損失が生じた場合、確定申告を通じた「損益通算」という制度で、損失を給与所得などにかかる税金計算の控除に利用できます。
損益通算では、譲渡損失を他の所得と相殺して全体の課税所得を減少させることができるため、結果的に所得税や住民税の負担を軽減することができます。また、損失が収入を超える場合、3年間は繰り越して控除が可能となります。
しかし、この措置を受けるためには確定申告が必須で、自動適用はありません。自身で確定申告をおこなうか、税理士など専門家との相談のうえで手続きを進めるようにしましょう。
5-5. 所有期間が5年を超えるのを待つ
土地や建物を売却する際、その所有期間が売却年の1月1日時点で5年を超えると長期譲渡所得と見なされ、税率が短期譲渡所得と比較して約半分になります。
区分 |
所得税 |
住民税 |
長期譲渡所得 |
15% |
5% |
短期譲渡所得 |
30% |
9% |
5年超えの判断は、売却する年の1月1日時点を基準におこなわれます。たとえば、取得日が2019年4月1日で売却日が2024年4月1日というケースでは、所有期間が5年以内となってしまうため注意しましょう。
しかしながら、土地の売却にはそれなりの時間がかかります。5年を超える前年から売り出す準備をしていても特に問題はないといえるでしょう。
5-6. 自身で登記手続きする
不動産の登記手続きを自分でおこなえば、司法書士への依頼報酬を節約できます。登記手続きは法的には自力で実施可能で、専門家への依頼は必須ではありません。マイナンバーカードを用いてオンライン上で完結できるため、知識があれば節税手段として考えられるでしょう。
しかし、専門的な知識が無い場合には注意が必要です。手続きでミスが起こりやすい、必要な書類がわからず集めきれない、その結果として不動産の表示に関する登記申請の期限(取得から一か月以内)に間に合わず過料が発生するなどのリスクを抱えることになります。
また、仮に司法書士に依頼をおこなわなかったとしても、登録免許税や必要書類の取得費用は自己負担となります。手続きが多岐にわたるうえ専門知識も求められるため、基本的には専門家である司法書士などの手を借りることが安定した手段といえるでしょう。
5-7. 兄弟間などでの取引は売買と贈与を比較する
兄弟間などでの取引をおこなう際にも注意しましょう。身内で土地の売買をする際、取得費用の節約や節税のために安価な金額で売るという選択肢を取る人は少なくありませんが、金額があまりにも低すぎると売買ではなく贈与と見なされ、贈与税が新たに発生してしまう恐れがあります。
贈与税が発生すると、購入時の税金よりもかえって高くつく恐れが高まります。特に親から子への贈与などに比べて、兄弟間は税率が高い(一般贈与財産扱い)ため注意が必要です。
不動産の条件によっては、贈与より売買の方が良い場合もあります。要件を満たせば3,000万円の特別控除も利用できるため、節税のために贈与を選ぶのではなく、適正価格での売買と贈与のどちらがよいか比較することが大切です。
6. 土地の売却時の税金を納める際の注意点
土地の売却時に税金を納める必要が出た場合には、次のポイントに注意しておくようにしましょう。
- 売却後の確定申告を忘れると罰則がある
- 譲渡所得税の納税額を残しておく
- 最新の税制をチェックする
6-1. 売却後の確定申告を忘れると罰則がある
購入では住民税や所得税に影響がないため、確定申告の必要は原則ありません(住宅ローンや控除を利用する場合は必要)が、売却では確定申告が必須です。仮に確定申告を怠ると、無申告加算税や延滞税が課される可能性がある点に注意しましょう。
ひとくちに「確定申告をおこなわなかった罰則」といっても、期限に遅れつつも自ら申告した「期限後申告」と、そもそも申告をおこなわなかった「無申告」では扱いが異なります。
期限後申告のペナルティー |
無申告のペナルティー |
年率7.3%(納税期限の翌日から2か月を経過する日まで) 年率14.6%(上記以降の期間) |
納付すべき税額に対して |
なお、確定申告が法的に求められる立場であっても、税務署から事前の通知があるわけではありません。自ら確定申告の必要性と時期を把握し、追加の税を支払う事態にならないよう備えておきましょう。
6-2. 譲渡所得税の納税額を残しておく
土地売却に伴う利益と納税の時期は間隔があるため、売却利益を事前に他の用途で使い切ってしまうと、納税時に手持ちの資金が不足する可能性があります。事前に譲渡所得税を計算しておき、「納税時にお金がない」といったトラブルを避けられるようにしておきましょう。
譲渡所得税の計算や納税の手続きなど、確定申告関係の手続きに不明点がある場合には、売買を依頼した不動産や、最寄りの税務署に相談することをおすすめします。
※関連記事:意外と残らない不動産売却後のお金 |ノムコム・プロ
6-3. 最新の税制をチェックする
本記事で紹介した税制に関する内容は、2024年4月時点のものとなっています。以後の時期には税制の変更が発生しているかもしれないため、適宜最新の情報をチェックするようにしましょう。新しく利用できる控除が新制度として生まれている可能性もあります。
また、紹介されている控除には適用の期限があり、実際に売買をする際には使用ができないかもしれません。「現在はまだ売却の検討段階である」「税金関係の情報収集をしたいだけだった」という場合には、実際に売却をおこなう段階になってから再度調べることが大切です。
「現在すでに土地の売却後であり、確定申告がどうなるか知りたい」という方は、申告は翌年になるため、売却時に対応してもらった不動産会社やファイナンシャルプランナーに相談することをおすすめします。
7. まとめ
土地の売買に伴う税金には、売買時に発生する印紙税、登録免許税、消費税に加え、売却後の譲渡所得税、購入後の不動産取得税など様々なものが存在しています。それぞれ税金の額や発生・納付する時期も異なる点に注意しておくようにしましょう。
かかる税金は軽いものではありませんが、特別控除などの手段を活用することで節税ができます。控除の利用には確定申告が求められるため、売買をおこなった翌年は忘れずに申告をおこなうことが大切です。
また、土地をはじめとした不動産を取り巻く税や法は、その時々に廃止・改正・新設されることがあります。常に最新の情報をチェックし、実際に土地売買をおこなう時点での知識を用意できるようにしましょう。
※本記事は2024年4月9日時点の情報をもとに記載しています。法令等の改正により記載内容について変更となる場合がございますので予めご了承ください。
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