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不動産売買を行う際には、買主は売主に対して「手付金」を支払うのが一般的です。そこでこの記事では、この不動産売買における手付金について解説します。また、頭金、内金、中間金など、似たような支払金などとの違いについてもまとめました。これから不動産の購入を考えている方は、手付金の意味や、内容をしっかり押さえておきましょう。
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1. 不動産売買における手付金とは
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不動産売買における手付金とは、契約の成立を証明するために、買主から売主に対して支払われる金銭のことをいいます。これは、買主が売主に、契約の意思を明確に示すために一定の金額を支払う商慣習です。手付金の支払うことによる法的な効果は、売買契約書に定められています。手付金は、売買金額の一部として充当されるため、基本的に返金されることはありません。
手付金を支払う時期
手付金は、契約時に支払うのが原則です。不動産の契約手続きとして、売買契約から引渡しまで1~2ヵ月程度の期間を設け、その間に、住宅ローンの申し込みや物件引渡しの準備を行います。住宅ローンの申し込み前に支払うこととなるため、手付金を住宅ローンでまかなうことはできません。手付金の支払い分は、現預金で用意しておく必要があります。
手付金の支払い方法
手付金は、原則として契約日当日に現金で支払います。不動産の手付金額は数百万円となることが多く、現金を引き出して持ち歩くことになりますので、細心の注意が必要です。この点については、仲介担当者や売主と日時・金額・受け渡し場所について、事前にしっかり確認しておきましょう。
2. 手付金にはどんな効果がある?
手付金には、さまざまな法的効果があります。契約を明確にする証約手付のほか、解約手付、違約手付の効果を持たせることが一般的です。
解約手付の取り扱い
民法では、手付金が支払われたときには買主は手付を放棄し、また売主は手付の2倍を返金することで契約を解除できると定められています。この「手付放棄・手付倍返し」の商慣習は不動産売買についても当てはまり、解約手付の効果として不動産売買契約書に定められます。
もっとも、契約の相手方が契約の履行に着手した場合、手付解約はできません。判例では、売主による物件引渡しに向けた準備としての賃貸借契約の解約、土地売買における境界画定作業、売買物件の抵当権の抹消などが「契約の履行に着手」にあたるとされました。
違約手付の取り扱い
売買契約に、債務不履行があったときの損害賠償額の予定として手付金が定められた場合、手付金に違約手付の効果が付されたものとされます。このとき、買主が契約条項に反した場合には、手付金額を損害賠償金として支払う(つまり手付金は没収される)ことになります。逆に、売主に違反があった場合には、手付金を返還するとともに、手付金に相当する金額を損害賠償額として支払うことになります。売主が宅建業者の場合には、損害賠償の予定額について売買金額の10分の2を上限としなければなりません。
3. 頭金や申込証拠金などとの違い
手付金に似たものとして、不動産売買の際には、手付金、頭金、内金、中間金など、さまざまな金銭のやり取りが行われます。もっとも、契約条項の中で金銭の法的な効果を明らかにしない限り、手付金のような効果が生じるわけではありません。
頭金・内金・中間金との違い
頭金とは、売買金額から住宅ローン金額を差し引いた残りの部分です。買主から考えて、売買金額のうち手元資金で確保しておかなければならない金額を指します。解約手付、違約手付のような法的な意味合いはありません。
内金・中間金は、売買金額の一部として、物件引渡し前に支払われる金銭です。売買契約前に売買金額の一部を2回以上支払う場合には2回目以降の支払金を「中間金」と表現します。頭金と同じく、契約条項に特別の定めがない限り手付金のような法的な効果はありません。
4. 手付金の金額と保全
手付金の額は具体的に法律で定められているわけではなく、契約書の定めによって決められます。売主が不動産業者で契約から引渡しまで期間がある場合は、売主の倒産に備えた保全措置も必要になるでしょう。
一般的な手付金の相場
一般的な手付金の相場は5~10%程度です。もっとも、昨今では不動産価格が高騰しているため、実務においては5%前後となることが多くなっています。1億円を超すマンションの売買が多くなる中で、手付が1,000万円超の取引ばかりかというと、そうではありません。
また、宅建業者が売主になる場合には、宅建業法において手付金の金額は売買金額の20%が上限と定められています。一般の買主に不当に重い解約手付・違約手付の負担を負わせるのは正当ではないからです。
手付金の保全措置
手付金の保全措置とは、売主が倒産したり、大規模な地震など売買物件が引渡しできない不測の事態が生じたりしたときに、確実に手付金を返還するための措置です。売主が宅建業者の場合、一定の条件のもとに手付金等の保全措置が義務付けられています。このときの手付金等には、内金や中間金も含まれます。
未完成物件の場合には、物件価格の5%を超えるもしくは1,000万円を超える手付金等の授受があったとき、完成後の物件の場合には10%を超えるもしくは1,000万円を超える手付金等の授受があったときには、宅建業者の売主は手付金等の保全をしなければなりません。このとき、売主は不動産保証協会に手付金等の保全措置を申し込むのが一般的です。
一般保証制度を活用しよう
手付金の保全義務がない場合でも、売主が不動産保証協会に加入していれば、無料で一般保証制度を活用することができます。宅建業者であれば、免許取得時に不動産保証協会に加入していることが多いため、一般保証制度の活用を相談してみましょう。
5. 手付金が返ってくるケース
手付金は売買代金の一部に充当されるため、残金決済・引渡し後に手付金が返ってくることはありません。ただし、売買契約に住宅ローン特約が定められている場合には、住宅ローンが本審査で否認されると、手付金は返ってくることとなります。
売買契約は住宅ローンの仮審査の承認を経て締結されますが、売買契約後に改めて本審査の申し込みを行います。そのため売買契約には、「住宅ローンの本審査が通らない場合には、契約を解除できる」旨の条項を盛り込むのが一般的です。これを住宅ローン特約といいます。住宅ローン特約によって契約が解除された場合には、契約がなかったことになりますので手付金が返ってきます。
住宅ローンを活用する場合には、住宅ローン特約を契約条項に盛り込まれますので、契約時に確認しておきましょう。
6. 手付金はローンに組み込める?
手付金は、住宅ローンの本審査の前に支払い、売買代金に充当される金銭であるため、住宅ローンに組み込むことはできません。住宅ローンは手付金を除いた売買金額について申し込みます。また、手付金は諸費用ではないため、諸費用フルローンの住宅ローンを組んだとしても、手付金をローンに組み込むことはできません。
7. まとめ
手付金は、契約時に売買金額の一部として買主から売主に支払われる金銭です。頭金・内金・中間金は、手付金とは別物で、契約で定めない限り、手付金の性格を有しません。手付金には解約手付、違約手付としての特別な法的効果がありますので、手付金額は慎重に決定しましょう。宅建業者が売主の場合には、手付金額・物件の種類によって保全措置義務の有無が異なります。あわせて担当者に相談してみてください。
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宅地建物取引士
株式会社イーアライアンス代表取締役社長。中央大学法学部を卒業後、戸建・アパート・マンション・投資用不動産の売買や、不動産ファンドの販売・運用を手掛ける。アメリカやフランスの海外不動産についても販売仲介業務の経験をもち、現在は投資ファンドのマネジメントなども行っている。
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