贈与税は親子も必要?110万以下や住宅購入援助など非課税の例も解説

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親子間の贈与には、一定のルールによって贈与税が必要です。親から子へ財産を引き継ぐ際には、「親が元気なうちに、自分自身の意思によって渡したい」という意向から「贈与」を活用する方も多く、相続対策としてもよく用いられています。ただし贈与には、贈与税がかかるケースと、かからないケースが存在し、一定のルールを守らないとペナルティが課されます。そこで本記事では、税理士である筆者が、親子間での贈与におけるルールや注意点を網羅的にまとめました。

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目次

1. 親子における贈与と税額計算方法

親から子へ財産を贈与した(あげた)場合に課される贈与税について、贈与税の基礎知識と親子間での贈与の計算方法、そして、適用される税率と、注意点を見ていきましょう。

贈与とは?

贈与とは、自身の財産を譲ることです。財産をあげる方(贈与側)が「自分自身の財産をあげる意思」を表示し、財産をもらう方(受贈側)が「承諾する」ことで成立します。財産をあげる方自身が「元気なうちに、自分自身の希望通りに、譲りたい方へ財産を渡すことができる」ので、相続の生前対策としても活用されることが多いです。

一方、贈与には「贈与税」がかかります。贈与税は、もらった方に課される税金で、一般的には相続税率より高く設定されているため、上手に活用する必要があります。

税率と計算方法

親子間における贈与の計算方法と注意点を紹介します。注意点は、財産をもらう方の年齢により、適用される税額が違う点で、「特例税率」と「一般税率」に分かれます。特例税率のほうが、税率が低く設定されており、特例税率を適用できるのは、以下の要件を満たす方です。

◆特例税率の要件
あげる方:直系尊属(父母や祖父母など)
もらう方:贈与を受けた年の1月1日において18歳以上の者

◆特例税率

基礎控除後の課税価格

200万円以下 400万円以下 600万円以下 1,000万円以下 1,500万円以下 3,000万円以下 4,500万円以下 4.500万円超
税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 - 10万円 30万円 90万円 190万円 265万円 415万円 640万円

◆一般税率

基礎控除後の課税価格

200万円以下 300万円以下 400万円以下 600万円以下 1,000万円以下 1,500万円以下 3,000万円以下 3,000万円超
税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 - 10万円 25万円 65万円 125万円 175万円 250万円 400万円

引用:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)

◆計算方法
贈与財産が500万円の場合の計算例
◇特例税率:(500万円 - 110万円)× 15% - 10万円 = 48.5万円
◇一般税率:(500万円 - 110万円)× 20% - 25万円 = 53万円

贈与財産が2,000万円の場合の計算例
◇特例税率:(2,000万円 - 110万円)× 45% -265万円 = 585.5万円
◇一般税率:(2,000万円 - 110万円)× 50% -250万円 = 695万円

2. 贈与税がかからない2つのケース

贈与税がかからない2つのケース

親子間における贈与の中には、贈与税がかからないケースも存在します。ここでは、贈与税がかからないケースを2つと、注意点を見ていきましょう。

生活費・教育費

民法上の扶養義務者(配偶者、直系血族、兄弟姉妹)から受け取る生活費や教育費のうち、通常必要と認められるものについては贈与税がかかりません。生活や教育を受けるために必要不可欠なお金に課税するのは、支障があるため配慮されています。よって、子どもの留学費などでも、必要なものなら非課税になるほか、親への生活費の仕送りなども課税されません。

ただし、名目上生活費や教育費でも、別の目的に使用(預貯金や有価証券の購入等)した場合や、必要になる都度贈与されていない場合は、非課税とはなりませんので、注意が必要です。

110万円以下

贈与税は、年間110万円以下の贈与であれば不要です。贈与税は、基礎控除額として年間110万円が引かれるため、財産の価格が110万円以下の場合、課税対象額がゼロになり、贈与税がかからないこととなります。

◇年間110万円以下の贈与における注意点

基礎控除額の110万円は、贈与を受けた方ごとに年間110万円となり、贈与をした方ごとに110万円控除できる訳ではありません。例えば、同じ年に父から100万円、母から100万円の贈与を受けた場合は、合計200万円の贈与を受けたことになり、200万円から110万円を引いた90万円に贈与税が課税されます。

3. 贈与税がかかる4つのケース

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ここからは、贈与税がかかる贈与と、贈与において、間違いやすい事項を紹介します。特に、実際に現金やものを受け取らない形でも、贈与となるケースがあります。贈与に該当することの認識が薄い方も多いため、注意が必要です。

110万円を超える贈与

親子間の贈与では、基礎控除額の年間110万円を超えて贈与を受けると、贈与税がかかります。贈与を受けた金額が年間110万円を超えると贈与税の申告が必要です。贈与契約書の写しとともに申告期限である贈与を受けた年の翌年315日までに住所地の所轄税務署へ申告書を提出し、納税を完了してください。

親の土地を子どもの名義に変更

親が所有している不動産を、子に渡した場合も贈与税がかかります。不動産は高額な財産であり、贈与税も高くなることが一般的です。不動産の名義を親から子へ変更することにより、親から子への贈与契約が成立し、予想外の贈与税がかかる場合もあります。事前に贈与税をしっかり計算しておきましょう。名義変更しただけでは贈与と気付きにくく、無申告になるケースもあるため注意が必要です。

住宅ローンの肩代わり

子がマイホームを購入する際、親から住宅資金の援助を受けたときや、住宅ローンの肩代わりをしてもらったときに、もらった額が年間110万円を超えると、贈与税が課税されます。金額の多寡により贈与税が高額になることもあるため注意しておきましょう。一部特例があるため、こちらは記事の後半で解説します。

生命保険契約の保険料負担

保険料を親が負担した場合、次の2つのケースでは贈与税がかかります。

・契約者:父親(保険料負担者)、被保険者:母親、子が死亡保険金を受け取る

・契約者:父親(保険料負担者)、子が満期保険金を受け取る

このように、保険料の負担者と受取人が異なる場合は、親から子への保険料相当額が贈与されたものと認められ、贈与税が課税されます。

4. 贈与における注意点

贈与を行う際、注意点を守っていないと、贈与税とは別にペナルティの税金が課せられることがあります。ここでは、さまざまな贈与税の注意点を紹介します。

親子での贈与が無申告だと、税務署にばれる可能性も高い

贈与税は自らが申告書を作成し、自らが納める税金であるため、「申告しなくてもばれることはない」と考える方がいます。しかし、親が亡くなって相続が発生した場合や、不動産の売買や贈与の情報収集から、税務署が贈与の事実を把握する可能性も高いです。

また、贈与税の申告が無申告とばれると、本来納める贈与税だけでなく、延滞税や無申告加算税(悪質な場合は重加算税)が課せられ、最初から申告したときより、重い税負担を求められます。

あまりにも安い金額で売った場合は?

無償(タダ)で財産をもらうと贈与税がかかるので、時価よりも低い価格で譲り受けることを考える方がいるかもしれませんが、時価よりも低く譲ってもらった部分の金額は贈与に該当します。そのため、時価と買い取った金額の差額が贈与となり、贈与税の申告が必要になります。

贈与契約書は必要か?

贈与を行った場合、贈与契約書を作成しましょう。法律上贈与は口頭でも契約は成立しますが、税務署による税務調査の際に、贈与の証明ができません。すると、相続対策として行った贈与が証明できず、対策の意味がなくなってしまうこともあり得ます。贈与の都度、契約書を作成しましょう。

5. 贈与で活用できる3つの制度

贈与税には年間110万円の基礎控除のほか、さまざまな特例制度が準備されています。贈与税を節税しながら贈与したい場合に検討できる制度もあるため、事前に確認しておきましょう。

住宅取得資金の贈与

子がマイホームの購入資金を親に援助してもらうときには、住宅取得等資金贈与の非課税の特例が利用できます。令和611日から令和81231日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、マイホームの建築等を行うと、贈与を受けた方ごとに省エネ等住宅の場合には1,000万円まで、それ以外の住宅の場合には500万円までの住宅取得等資金の贈与が非課税となります。適用するには、贈与税の申告書と契約書等の写しなど一定の書類を添付して提出が必要です。

学費や子育て資金の贈与

教育資金を一括で贈与してもらうときや、結婚・出産費用を親から出してもらうときにも、非課税の特例が利用できます。教育資金の場合は1,500万円まで、結婚・子育て資金(出産費用も含む)1,000万円までが非課税です。

相続時精算課税制度

短期間で多額の贈与を受けるときは、相続時精算課税制度を検討しましょう。この制度を使うと、累計2,500万円まで特別控除が適用でき、贈与税を課されずに贈与を受けることができます。また、令和6年より毎年110万円までの基礎控除が適用できるようになりました。

具体的には、以下の計算で贈与税が計算されます。
(
「年間の贈与額-年間110万円の基礎控除」の累計額-2,500万円の特別控除)×20

年間110万円の基礎控除を超えた金額が2,500万円を超えなければ贈与税は課税されませんので、多額の財産を贈与する際は、検討しましょう。

6. まとめ

相続対策の一環として贈与を行うケースは多いですが、一定のルールが存在し、ルールに則っていなければ対策の効力は発揮されません。贈与を行うのであれば、いつ、どの財産を誰に渡すのか目的を明確にして、手続きで不備がないよう準備していきましょう。

末永 寛

末永 寛

税理士
一般企業における経理事務を約25年経験した後、大手税理士法人勤務を経て税理士事務所開業。フリーランス・中小企業専門の税理士として、税務業務のみならず、将来の企業運営も含めた経営サポート業務を提供。また、近年の電子帳簿保存法やインボイス制度への対応も含めたITツールの導入にも積極的に導入サポートを行っている。

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