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公示価格は、土地の価格を決める際の、指標になるもののひとつです。土地を売買する際には、価格を決める必要があり、公示価格は毎年3月に国土交通省が公表している公的価格の一種です。この記事では、価格の内容や調べ方、他の公的価格との違いについて、専門家である宅建士が解説しました。公示価格は、不動産売買の際、査定価格・売出価格・売買価格などを検討する材料となります。事前知識をつけておけば、正しい不動産売買につなげていけるでしょう。
1. 公示価格とは
公示価格は「地価公示法」に基づき、国土交通省の審議会である「土地鑑定委員会」が公示する土地の価格を言います。同一地点を2名の不動産鑑定士が調査し、取引事例や収益還元法などの手法を用いて土地の価格を算定し、エリアごとのバランスなども考慮し決定しています。全国約26,000地点が標準地となっており、1月1日時点の価格を調査し3月に発表されています。発表は国土交通省のHPで行っており、発表される価格はm2あたりの単価になっています。
2024年の公示価格
2024年は、全国平均の公示価格が3年連続の上昇となりました。とくに大きく上昇したのは、インバウンドの回復によるウィンタースポーツ関連の地域や、半導体の企業誘致が行われた地域です。さらに、2023年ほどではありませんが、札幌、仙台、広島、福岡の地方四市の上昇率は、2024年も引き続き高く、三大都市圏に加えて、都市部の再開発による地価の回復が目立っています。
一方、下落した地点もあります。福島県や石川県では、前年比マイナス8%前後の下落となった町もあり、格差が大きい点についても着目する必要があります。2024年の全国平均の公示価格の前年比変動率は、以下の通りです。
全 国 |
+2.3% |
|
三大都市圏 |
東京圏 |
+4.0% |
大阪圏 |
+2.4% |
|
名古屋圏 |
+3.3% |
|
地方圏 |
地方4市 |
+7.7% |
その他 |
+0.7% |
引用:国土交通省 地価公示
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_fr4_000043.html
公示価格の調べ方
公示価格を調べるには、国土交通省のHPにある「地価公示」にアクセスしてください。最新の地価公示の概要や、これまで発表された公示価格の資料の閲覧、ダウンロードができます。
特定地点の公示価格やエリアごとの価格推移など、詳細なデータを調べるときには「不動産情報ライブラリ」にアクセスしてください。このサイトも国土交通省の運営ですが、実際の取引価格のデータも確認でき、さらに都道府県地価調査のデータも確認できます。このサイトは2024年4月1日に運用が開始され、地図上で各種のデータが表示できるWebGISシステムが使われています。
2. 公的価格の種類
国などの公的機関が公表する土地の価格には次のような種類があります。
- 公示価格
- 相続税路線価
- 基準地価
- 固定資産税評価額
これらは、各公的機関によって価格を定める目的があり、それぞれの土地価格は社会経済活動のなかで利用され、その結果がまた土地価格に反映されるという仕組みがあります。ここでは公示価格以外の3つの公的な土地価格について、その目的や利用の方法について解説します。
基準地価
基準地価とは都道府県が行う地価調査により定められる土地価格です。全国約21,000地点を「基準地」として設定し、毎年7月1日時点の価格を標準地価としています。発表は毎年9月に行っており、m2単価が記載されています。公示価格は1月1日時点なので、ちょうど半年経過した時点における地価の変動状況を確認可能です。調査する基準地は、公示価格の調査地点と同一になっている地点が相当数あります。
基準地価を調べるには「不動産情報ライブラリ」にアクセスしてください。
土地の売却をする場合に不動産会社が行う「不動産査定」では、査定する時期により公示価格や基準地価を参考にしますが、公示価格と基準地価の推移から今後の変動状況を推測するなどの使われ方もします。
相続税路線価
相続税路線価は国税庁が相続や贈与に対する税金を課税する際、課税額を算定するために定めた土地の価格です。公示価格のおよそ80%に相当する価格になっていると言われますが、全国の約33万地点の路線に対しm2あたりの単価を決めています。
また価格表示は路線(道路)ごとに行われるので、特定の地点の価格を調べることができますが、市街地の郊外では路線ごとではなく、固定資産評価額に対する倍率を指定する「倍率方式」のエリアもあります。
公示価格が定める地点は約26,000地点ですが、不動産査定では対象地点の付近に地価公示の標準地点がない場合があります。そのため公示価格を参考にした査定が難しい場合があります。
一方、相続税路線価は、ほとんどの土地の価格を算出できるので、不動産査定では地価のデータベースとして使いやすいものになっています。相続税路線価を調べるには、国税庁の「財産評価基準書」にアクセスしてください。
固定資産税評価額
固定資産税評価額は市区町村が固定資産税と都市計画税を課税する際に、課税標準額を算出するベースとなっている土地の価格です。固定資産税評価額は特定の土地ごとに定められるので、単価ではなく総額で表示されます。
公示価格のおよそ70%を目安にして算定されていると言われますが、見直しは3年に1回行われています。そのため、見直しのない年に地価が大きく変動すると、必ずしも公示価格と連動するわけではない点に、注意が必要です。
固定資産税評価額は、公示価格、基準地価、相続税路線価のように、一般に公表されることはありません。毎年4月ころに土地の所有者あてに「固定資産税・都市計画税納付書」が届くので、確認することができます。土地の所有者以外が固定資産税評価額を調べるには「固定資産税評価証明書」を、市区町村から交付してもらうもので、所有者本人の委任状が必要です。
3. 実勢価格と公的価格
土地の価格には、公示価格などの公的価格のほかに「実勢価格」があります。実勢価格とは不動産市場で実際に取引される価格のことで、公的価格と実勢価格とは相互に影響を与え合う関係です。実際の不動産売却に際して、実勢価格の推移は無視できない大変重要な指標になっています。
実勢価格とは
実際の不動産市場で売買される土地の価格を「実勢価格」と言いますが、実勢価格は個々の不動産取引のなかから、土地の代金をデータ化することにより明らかになります。
土地取引のデータベースは次のような方法で作られています。
- 国土交通省が土地の購入者を対象として行う「土地取引状況調査」
- 不動産会社のネットワーク「レインズ」で実施している成約登録
実勢価格は一般的に、経済成長が大きいと上昇傾向となり、経済が停滞すると地価も停滞する傾向があります。さらに経済状況の大きな変動により下落することもあります。例えば「バブル崩壊」や「リーマンショック」による地価の下落です。
土地の売買価格は取引時点の需要と供給のバランスや景気動向にも左右され、売主や買主が抱く動機や目的といった、個人的な事情によっても変動します。
つまり、実勢価格はさまざまな要因の影響を受けた結果が表れたものであり、それが次の取引に影響を与えて、新たな実勢価格のデータが作られる、といったように理解をするとわかりやすいかもしれません。
そして1年間をとおして変動した実勢価格は、翌年の1月1日に「取引事例」のデータとして参考にされ「公示価格」に反映されます。
実勢価格の調べ方
実勢価格は既に紹介した国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で調べることができます。トップページにある「不動産の情報をご覧になりたい方へ」から、データのダウンロードが可能になっており、全国の市区町村における実際の取引データを確認できます。
実勢価格は次のように2つの価格情報に区分しています。
1. 不動産取引情報
国土交通省が行う土地取引状況調査による価格情報
2. 成約価格情報
レインズに登録された成約価格情報
*実際の取引価格や成約価格は個人情報となるので、住所から物件を特定できないよう詳しい住所は記載されていません。
4. まとめ
公示価格は土地の評価をする場合や、売買における相場観を把握するための指標となっている公的な価格です。土地の公的価格には、ほかに基準地価、相続税路線価、固定資産評価額があります。これらの公的価格は公示価格とある程度の相関関係があり、実際の売買取引の際に売買価格を決定する参考値となるでしょう。
実際の取引による土地価格は、実勢価格と言われ、これも公的機関がデータベースを作成し、不動産取引の際の価格決定に活用されています。さまざまな価格があるため、不動産売買の際にはぜひ参考にしてみてください。

一級建築士・宅地建物取引士
国立大学建築工学科卒業後、一部上場企業にてコンクリート系工業化住宅システムの研究開発に従事、その後工業化技術開発を主体とした建築士事務所に勤務。資格取得後独立自営により建築士事務所を立ち上げ、住宅の設計・施工・アフターと一連の業務に従事し、不動産流通事業にも携わり多数のクライアントに対するコンサルティングサービスを提供。現在は不動産購入・投資を検討する顧客へのコンサルティングと、各種Webサイトにおいて不動産関連の執筆実績を持つ。
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