
登録免許税は、不動産の売買や相続による所有権移転登記や、ローンを組んだ際の抵当権設定登記の際に、国へ納付する税金です。登録免許税はいつどこへ払うのか、いくら払うのか、疑問に思う方も多いでしょう。
この記事では宅建士が、登録免許税の概要や税率の原則や、軽減措置後の税率などを解説。住宅の購入など具体的なケースをあげて、計算シミュレーションを行っています。相続時の免税措置制度に関する最新情報も紹介しますので、最後までご覧ください。
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1. 登録免許税とは
登録免許税とは、不動産や会社などの登記を申請するときに国へ納付する税金です。不動産登記では、売買・贈与・相続などで所有権を移転するとき、あるいは、住宅ローンを組む際に行う抵当権設定登記などで納付します。会社(法人)の登記では、会社設立や役員変更などを申請する際に納付します。
2. 主な登録免許税の軽減措置

登録免許税は、固定資産税評価額(課税標準額)に登録免許税率を掛けて計算しますが、固定資産税評価額が未設定である新築の建物であれば、法務局で認定した課税標準価格に税率を掛けます。
このとき、一定の要件を満たせば、税率が軽減される特例制度があります。例えば、「土地の売買」「住宅用家屋の所有権に関する登記」「住宅取得時の抵当権設定登記」など、主に個人の住宅取得を促進するための優遇措置が中心です。
軽減措置の対象となる要件や対象期間は法律で定義されており、主要な特例では、期限延長が繰り返されているものもあります。代表的な制度は以下3つです。
1. 土地の売買による所有権の移転登記等の税率の軽減(租税特別措置法第72条第1項)
登記の種類 |
本則 |
軽減措置 令和8年3月31日まで |
所有権の移転の登記 |
2.0% |
1.5% |
所有権信託の登記 |
0.4% |
0.3% |
この軽減措置は、期限内に行われる土地売買の所有権移転登記に対して適用されます。なお、登記する理由は売買に限られ、贈与や相続など、ほかの登記原因が理由の移転登記には適用されません。
2. 住宅用家屋の所有権の保存登記等の税率の軽減(租税特別措置法第72条の2、第73条)
登記の種類 |
本則 |
軽減措置 令和9年3月31日まで |
所有権の保存の登記 |
0.4% |
0.15% |
所有権移転の登記 |
2.0% |
0.3% |
※特定の住宅用家屋の所有権の保存登記等については、さらに税率が軽減されます。
一定の要件を満たす住宅用家屋(居住用で床面積要件などを満たすもの)が対象で、通常よりも大幅に税率が引き下げられるのが特徴です。なお、要件を満たすなら新築・中古の区別はありませんが、住宅用途を証明する書類の提出が必要になる場合があります。
3. 住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記の税率の軽減(租税特別措置法第75条)
登記の種類 |
本則 |
軽減措置 令和9年3月31日まで |
抵当権設定の登記 |
0.4% |
0.1% |
住宅ローンを組む際の抵当権設定登記に対しても、大幅な軽減が可能です。一般的な抵当権設定の場合の登録免許税率は0.4%ですが、要件を満たす住宅取得資金の融資なら0.1%まで下がります。住宅ローンの融資金額が大きいほど減税効果は大きくなるため、必ず適用要件に合致しているかどうか確認しましょう。
3. 特定の住宅用家屋における、登録免許税の軽減措置
特定の住宅用家屋の所有権登記に係る、主な3つの軽減措置について解説します。制度を適用するには「認定通知書」や「増改築等工事証明書」など、要件に該当する証明書類が必要です。
1. 特定認定長期優良住宅の所有権の保存登記等の税率の軽減(租税特別措置法第74条)
登記の種類 |
本則 |
一般住宅 |
軽減措置 令和9年3月31日まで |
|
所有権の保存の登記 |
0.4% |
0.15% |
0.1% |
|
所有権の移転登記 |
マンション |
2.0% |
0.3% |
0.1% |
戸建て住宅 |
2.0% |
0.3% |
0.2% |
長期優良住宅の認定を受けるには、耐久性・省エネ性・維持管理のしやすさなどいくつもの基準をクリアしている必要があります。
2. 認定低炭素住宅の所有権の保存登記等の税率の軽減(租税特別措置法第74条の2)
登記の種類 |
本則 |
一般住宅 |
軽減措置 令和9年3月31日まで |
所有権の保存の登記 |
0.4% |
0.15% |
0.1% |
所有権の移転登記 |
2.0% |
0.3% |
都市の低炭素化の促進に関する法律に基づいて低炭素建築物の認定を受けた住宅が対象です。長期優良住宅とは基準が若干異なります。
3. 特定の増改築等がされた住宅用家屋の所有権の移転登記の税率の軽減(租税特別措置法第74条の3)
登記の種類 |
本則 |
一般住宅 |
軽減措置 令和9年3月31日まで |
所有権の移転の登記 |
2.0% |
0.3% |
0.1% |
一定の耐震改修や省エネ改修など要件を満たす増改築であれば、所有権移転登記において税率が軽減されます。リフォームが施されている中古住宅を購入するなら、基準達成の有無や認定書類の完備をチェックしましょう。
4. 登録免許税の計算方法と、納付方法や時期
Webサイト上で提供されるさまざまな計算ツールを使えば目安の税額は瞬時に計算できますが、土地・建物の種類や取引内容、登記原因、軽減措置の適用可否などによって異なるため、正確な金額は必ず司法書士や法務局など専門家に計算してもらいましょう。
登録免許税の計算式
不動産取引における登録免許税の計算は、主に以下の計算式を用いて算出します。
登録免許税額 = 固定資産税評価額(課税標準額)× 登録免許税率
なお、固定資産税評価額は市町村役場から毎年送付される「固定資産税・都市計画税の納税通知書」に記載されています。登録免許税は、上記の計算式に加えて軽減措置や免税措置などの特例を加味して最終的な納税額が決まります。
登録免許税納付の時期および方法
登録免許税の納付時期は、原則として登記申請時です。納付方法は、紙の登記申請書を使って法務局窓口へ申請する場合、印紙税額が3万円未満なら申請書類に「収入印紙」を貼付して法務局へ納めます。このほか、収入印紙ではなく現金納付やクレジットカード決済、インターネットバンキングやスマホ決済などの決済方法も選べます。
なお、オンライン申請の普及によって電子納付が増えてはいるものの、実務では書面申請・印紙納付がまだ多数を占めています。特に個人の売買決済では、司法書士があらかじめ収入印紙を準備して決済に立会うことが多く、銀行決済時に買主・売主からお金を集めるのが一般的です。
5. 相続登記における登録免許税の免税措置

2024年(令和6年)4月から「相続登記の義務化」がはじまり、不動産を相続したら、原則として3年以内の相続登記が必要です。
これまでは、相続登記が未了でもペナルティがなく相続登記をしないまま放置することが常態化しており、所有者不明土地問題や放置空き家問題を引き起こす原因のひとつになっていました。この現状を受け、相続登記を確実に促進させるためにも、特定空き家の取り締まり強化や登録免許税の免税措置が拡充されました。
以下では、相続した土地の所有権移転登記を行う場合に、登録免許税が免除(非課税)になる2つの特例について解説します。
1. 相続により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡した場合の登録免許税の免税措置
この制度により、被相続人である先代Bが先々代Aからの相続登記を行わないまま死亡して、その土地を孫世代Cが相続する場合には、先々代Aから先代Bへの相続登記の登録免許税が全額免除になります。
2. 不動産の価額が100万円以下の土地に係る登録免許税の免税措置
すでに、土地の固定資産税評価額が10万円以下の場合は登録免許税が非課税になる規定がありましたが、これが大幅に緩和されました。新たな規定では、 相続する不動産の固定資産税評価額が100万円以下であれば所有権移転登記の登録免許税が免除になる場合があります。とりわけ、評価額が低い田舎の山林や放棄地、田畑などの相続登記で効果を発揮すると考えられます。
6. 登録免許税額のシミュレーション
不動産取引の具体例をあげて、登録免許税の計算シミュレーションをしてみましょう。
事例:中古戸建を購入し所有権移転と抵当権設定を登記する
<前提条件>固定資産税評価額:建物1,500万円 / 土地2,500万円、融資借入金額4,000万円
(1)土地の所有権移転登記(軽減税率1.5%)
登録免許税額(土地のみ):2,500万円 × 1.5% = 37.5万円
(2)建物の所有権移転登記(軽減税率 0.3%)
登録免許税額(建物のみ):1,500万円 × 0.3% = 4.5万円
※一定要件を満たす以下の住宅の軽減措置は、2027年(令和9年)3月31日まで適用されます。
・特定認定長期優良住宅(マンション)軽減税率 0.1%
・特定認定長期優良住宅(戸建て住宅)軽減税率 0.2%
・認定低炭素住宅軽減税率 0.1%
(3)土地建物の抵当権設定登記(軽減税率0.1%)
登録免許税額(土地建物)= 4,000万円 × 0.1% = 4万円
7. まとめ
登録免許税は、不動産の所有権移転や抵当権設定の登記のほか、会社登記などでも課税される税金で、登記申請書に収入印紙を貼付して納税するのが一般的です。この登録免許税には、登記原因や取引状況によって軽減措置や免税措置があり、特定認定住宅による追加優遇を組み合わせれば、数万円から数十万円規模の節税になる場合もあります。正確な税額は制度や適用要件をよく知る司法書士や、税理士などの専門家に相談すると安心です。正しく制度を理解し、正確な税額計算や申請書類の準備を行いましょう。

宅地建物取引主任士、管理業務主任者
司法書士事務所に2年、大手不動産管理会社に5年、個人顧客を中心に不動産賃貸・売買の仲介営業会社に7年間従事。また、外資系金融機関にも2年間従事し個人顧客へ金融資産形成や相続税の節税アドバイスなどを担当。現在は不動産/金融業界での経験を活かし、記事を執筆にもあたっている。
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