不動産の等価交換とは?メリット/デメリット&実際の流れを解説

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等価交換とは、現在所有している土地などの権利と、デベロッパーが開発して建てる新しい建物の一部の権利とを交換する方法です。土地所有者は、自己資金を出さずに開発計画に参画できます。また、竣工後(建物ができあがること)は自己の権利部分を自由に利用でき、賃貸物件としての活用も可能です。譲渡所得税を繰延べできる特例も適用できるため、土地などの不動産活用の手法として有効な方法と言えるでしょう。この記事では、宅建士である筆者が、等価交換の具体的な方法と、メリット・デメリットを解説します。

目次

1. 等価交換のしくみ

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不動産取引には「売買」ではなく「交換」という方法があります。不動産Aを不動産Bと交換するとき、ABの価額が違っている場合には、その差額を計算し現金などで清算します。この差額を「交換差金」と言いますが、不動産Aと不動産Bの価額が等しい場合には交換差金が生じません。このように交換する価額が等しい場合を「等価交換」と言います。

等価交換には譲渡所得税の繰延べや、譲渡所得税が発生しない特例があり、要件を満たすと適用することができます。デベロッパーが不動産開発事業を行うにあたって、特例に基づく等価交換により用地取得を行う事例が多くあります。

不動産の交換とは

不動産の交換にはいくつかのパターンがあります。

 1. 土地と土地を交換

 2. 建物と建物を交換

 3. 土地と建物を交換

 4. 土地建物を土地と交換

 5. 土地建物を建物と交換

 6. 土地建物を土地建物と交換

このうち[1]の土地と土地、[2]の建物と建物、[6]の土地建物と土地建物の交換は、同じ種類の不動産の交換になり、譲渡はなかったものとみなされます。これを「固定資産の交換の特例」と言い、一定の要件を満たすと譲渡所得税は発生しません。ただし交換差金がある場合、その金額が高いほうの価額の20%を超えると、交換差金に対し所得税が課税されます。

不動産の開発事業では、デベロッパーが土地または、土地建物の所有者から所有権を移転してもらい、建物完成後にその評価額に見合った建物の所有権を、土地所有者に配分する方法が採られます。

この方法は「等価交換」によるものですが、交換のパターンとしては「土地と建物の交換」あるいは「土地建物と建物の交換」になります。つまり先に述べた「固定資産の交換の特例」に該当しません。

そこで、不動産の開発事業では「立体買換特例」を適用する方法で等価交換を行うことが多くなっています。この特例は土地と建物あるいは土地建物と建物の交換の場合であっても、デベロッパーに譲渡する土地などの譲渡所得税を繰延べできるものです。

土地所有者は譲渡所得税が繰延べできるので事業に参画しやすく、デベロッパーは用地取得のためのお金を準備する必要がなくなるため、収益性の高い事業計画が実現しやすくなります。ただし、「立体買換特例」が適用できる地域は三大都市圏の既成市街地などや、これに準ずる地域に限定されており、地方都市などでは適用されない可能性があります。

等価交換による事業の例

等価交換は次のような不動産事業を行う場合に適しています。

  • 市街地の再開発事業
  • 土地活用事業
  • マンションの建替え事業

日本は、人口減少社会に対応するためコンパクトシティ政策を推進しており、都心部における再開発事業では、等価交換を活用した開発事業が今後増加すると考えられています。等価交換による再開発事業や土地活用事業では、土地所有者が単独であっても、複数の所有者がいる場合であっても可能であり、土地所有者の負担なく事業を進めたい場合に効果があります。

また、マンションの建替えでは、管理組合が主体となる組合施工よりも、デベロッパーが主体となる等価交換のほうが事業をすすめやすいケースもあり、有力な使い方と言えるでしょう。

2. 等価交換の手順

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等価交換は単純な不動産取引で行われることもありますが、すでに述べたように不動産開発事業などで用いられることも多いです。ここでは「土地活用事業」を等価交換により行う手順について解説します。

おおまかな流れは次のようなものです。

 1. 土地所有者は土地活用方法についてデベロッパーに相談し検討を開始する

 2. デベロッパーは事業計画を策定し等価交換方式を選択、土地所有者に提案する

 3. 提案内容に基づき土地所有者とデベロッパーとの間で基本合意する

 4. デベロッパーは事業計画の詳細を詰め交換価値を算定し本契約を締結する

 5. 全部譲渡方式の場合は、すべての土地所有権をデベロッパーに移転する

 6. 建物完成後、土地所有者は区分所有権を取得する

 7. 部分譲渡の場合は、土地所有者から所有権の一部をデベロッパーに移転する

 8. デベロッパーは等価交換以外の部分を販売し事業は完結する

手順のなかで「全部譲渡」と「部分譲渡」がありますが、土地所有者が複数の場合は全部譲渡と言って、すべての土地所有権を一旦デベロッパーに移転します。土地所有者が単一の場合は、交換により取得する建物価額に見合う分の土地をデベロッパーに所有権移転します。そのため、手順としては建物完成後の土地所有権移転も可能です。

一方、全部譲渡の場合は、事業着手後に土地所有者の事情により所有権の移転ができなくなるなどのトラブルを防ぐため、等価交換の本契約締結後すぐにすべての所有権をデベロッパーに移転するのが一般的です。

全部譲渡であっても部分譲渡であっても、土地所有者がデベロッパーに所有権を移転し、評価額に見合う交換資産を取得できることに変わりはありません。

等価交換方式成功のポイント

等価交換による開発事業はデベロッパーにとって、開発用地の取得に資金を投じる必要がなく、収益性の面では優れた事業計画になります。そのためデベロッパー側から、等価交換を提案されるケースは多いと言えます。そのとき次のようなポイントについて検討することが重要です。

・事業計画の実現可能性

事業計画の成否は開発用地の立地条件が大きく影響し、立地条件に適した事業計画の策定が求められます。デベロッパーの経験値や事業ノウハウなどが信頼できるか、また対象とする土地が予定する事業に適しているのかなど、事業の実現可能性を検証することが重要です。

・還元床の計算方法

等価交換はデベロッパーに提供する土地などの価額と、デベロッパーから所有権を取得する建物の価額が、等しいものでなければなりません。そのためには土地の評価を正確に行うこと、そして取得する建物の評価も正確に行うことが必要です。

土地の評価は不動産鑑定により明確になりますが、取得する建物部分の評価方法は簡単ではありません。また完成した建物のうち土地所有者に配分する面積(「還元床」と言います。)を算定するには次の2種類の方法があり、デベロッパーとの協議により決定します。

  • 出資比率による方法
  • 売価還元による方法

2つの方法で算出した場合の結果はケースバイケースであり、どちらが土地所有者に有利ということは言えないので、十分に算定根拠などを確認し検討することが大切です。

・地権者同士の信頼関係

市街地再開発事業などを等価交換方式で行う場合には、土地所有者は複数となることが多く、デベロッパーはたくさんの土地所有者との意思疎通を図り、事業をスムーズに進めようとします。同時に土地所有者同士も意思疎通を図り、信頼関係を築いておくことが重要です。

土地所有者全員の合意形成ができなければ、事業に着手できなくなる可能性があり、事業成否の重要なポイントと言えるでしょう。

3. 等価交換のメリット

等価交換によりデベロッパーが行う不動産開発事業に参画した場合、土地所有者には次のようなメリットがあります。

1.資金を負担せず土地活用を図ることができる

土地活用のために行う事業の主体はデベロッパーであり、土地所有者は土地の提供をするだけで事業に参画できます。土地をデベロッパーに提供する見返りとして、開発された建物の一部を所有し自宅にすることも可能ですし、賃貸物件として活用し家賃収入を得ることができます。

2.相続時の遺産分割が容易である

大きな土地を相続するときに相続人が複数いる場合は、土地を分筆するか共有するかになります。分筆することにより使いづらい土地形状になることもあり、共有にした場合は売却する時点で共有者全員の合意が得られないと、売却できないケースもあります。その点、等価交換により複数の区分所有物件であれば、相続時に遺産分割が容易になります。

3.賃貸用不動産の相続は評価額が減額され相続税対策になる

等価交換により取得した区分所有物件を賃貸用に使っていると、相続するときには「借地権割合」や「借家権割合」が相続財産評価に適用でき、評価額が下がるため相続税の減額が可能です。

4.譲渡所得の繰延べができる

所有していた土地や建物をデベロッパーに譲渡すると、売却益に対し譲渡所得税が課税されます。しかし土地活用でビルやマンションなどの事業開発を行い、等価交換で還元床を取得したときは、土地などの譲渡所得に対し「立体買換特例」が適用できるため、譲渡所得税を繰延べすることができます。

4. 等価交換のデメリット

等価交換には土地所有者にとって、注意をしておきたいデメリットもあります。

1.区分所有物件は維持管理が面倒

土地所有者は自身の資金により土地活用などの事業をすることもできます。その場合は土地も建物も自身の所有なので、建物の維持管理や将来的な売却についても、自身の判断で行うことができます。

しかし等価交換方式の事業では、共用部と敷地は他の所有者との共有になります。そのため維持管理の方法や費用負担について、所有者全員による協議で決めなければなりません。そのような面を考えると、不動産を単有している場合と比較し維持管理が面倒になります。

2.還元床の面積を決定する基準が不明確で不利になる場合もある

デベロッパーとの間で完成後の建物の配分比率を決めるには、出資比率から算出する方法と売価還元による方法がありますが、どちらにしても計算の根拠はデベロッパーが提示するので、土地所有者に不利な配分になる場合もあります。

3.収益性の高い事業にはある程度の土地面積が必要

等価交換による土地活用や再開発事業は、デベロッパーにとっても収益性の高い事業でなければ取り組むことはありません。そのためには小規模な開発用地では事業計画が成立しません。つまりどのような土地でも、等価交換による事業開発が可能ではない点に注意が必要です。

5. まとめ

等価交換とは不動産を取引する方法のひとつです。等価交換には譲渡所得税が課税されない場合や、譲渡所得税を繰延べできる特例があり、不動産開発事業において広く行われている方法となっています。所有地の土地活用を考えデベロッパーに相談すると、等価交換による方法を提案されるケースも多く、逆にデベロッパーから開発事業のために土地の提供を求められるケースもあるかもしれません。

等価交換による不動産開発事業は、土地所有者にとってメリットは多いですがデメリットもあります。等価交換の仕組みや手順をよく理解したうえで取り組みことが大切です。

弘中 純一

弘中 純一

一級建築士・宅地建物取引士 
国立大学建築工学科卒業後、一部上場企業にてコンクリート系工業化住宅システムの研究開発に従事、その後工業化技術開発を主体とした建築士事務所に勤務。資格取得後独立自営により建築士事務所を立ち上げ、住宅の設計・施工・アフターと一連の業務に従事し、不動産流通事業にも携わり多数のクライアントに対するコンサルティングサービスを提供。現在は不動産購入・投資を検討する顧客へのコンサルティングと、各種Webサイトにおいて不動産関連の執筆実績を持つ。

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