1.購入するときの税金
【1】贈与税の基本
贈与とは、民法においては贈与する者が贈与を受ける者に財産を無償で与える意思を表示し、贈与を受ける者がそれを受諾することにより成立するとされております。
なお、贈与税においては、民法の贈与に加え、低い価格で財産をもらった場合についても、贈与税が課されることとなり、法人から財産をもらう場合にはその財産について、贈与税はかかりません(所得税が課されます)。
また、財産をもらった場合、贈与を受ける者に対してその年中にもらった財産について税金が課されることとなります。
暦年課税 | 相続時精算課税 | |
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贈与者 | 贈与したすべての者(右に掲げる者を除く) | 特定の贈与した者(60歳以上の直系尊属に限る) |
受贈者 | 財産を取得したすべての者(右に掲げる者を除く) | 18歳以上 |
基礎控除 | 年110万円 | なし(※1) |
特別控除 | なし | 贈与した者ごとに累積2,500万円 |
税率 | 超過累進税率(18歳以上で直系尊属からの贈与の場合には軽減税率の適用がある) | 20% |
届出 | なし | 相続時精算課税選択届出書を贈与をした年の翌年2月1日から3月15日までに提出する |
※1:2024年(令和6年)1月1日以後に贈与により取得する財産については、特別控除と併せて「基礎控除:年110万円」が適用される。
【2】贈与税がかかる取引
名義人(実質課税) | 課税対象となる者は、原則名義人となるが、例外的に真の所有者が課税の対象となる者となる |
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贈与税の配偶者控除 | 婚姻期間20年以上の配偶者から不動産などを贈与を受けた場合に、2,000万円まで控除できます。なお、この規定は1度のみとなります。 |
みなし贈与 | 無償で財産を取得すること以外にも、債務免除などの財産を取得しなくとも贈与税が課税されたり、有償で財産を取得した場合にも課税されます |
・名義人(実質課税)
・贈与税の配偶者控除
婚姻期間が20年以上である夫婦において、家屋又は家屋の取得のための金銭の贈与を受け家屋を取得し、かつ贈与後も引き続きその家屋に住む見込みである場合、その価格から最高2,000万円まで控除することができます。なお、この規定は1度しか適用することができません。
・みなし贈与(債務免除など)
贈与税においては、無償による財産の取得以外に、債務免除や引き受けや第三者の債務の弁済があった場合や財産を時価以下の価格でもらった場合(低廉譲渡)についても贈与税が課されることとなります。
債務免除 | 親が子に金銭を貸付けており、その貸付けについて返済しなくてもよいとした場合、子はその貸付けていた金額について、贈与税が課されます。 |
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債務引受 | 子が有していた借入金について、親が代わりにその借入金の返済の義務を引き受けた場合には、子はその借入金について、贈与税が課されます。 |
債務弁済 | 連帯債務者が債務者の債務を弁済し、債務者への債務の求償権を放棄した場合、その放棄した求償権について、贈与税が課されます。 |
低廉譲渡 | 贈与税においては、時価により取得したものとして、税金が計算されます。このため、時価以下の価格でもらった場合は、その差額について、贈与税が課されます。 |
【3】住宅取得の非課税
2023(令和5)年12月31日までに父母祖父母から贈与により、家屋を取得するために必要な資金の贈与があった場合に、省エネ住宅などに該当する家屋を取得する場合は1,000万円まで、それ以外の家屋を取得する場合は500万円まで(いずれもすでに控除された金額を除く)の金額について、贈与税が課されません。
【4】ケーススタディ
■子が親からの借入をした後に、親から債務免除があった場合
子が親から1,000万円を借金として借入をし、その後の返済について基礎控除額以下で債務免除をした場合には、借入金については、金銭の貸借として、基礎控除以下の債務免除については、税金は生じない可能が考えられます。
なお、次の場合は贈与として取扱われる場合があります。
① 口頭契約である場合 | 民法上、贈与については、口頭契約でも有効とされています。なお、口頭契約では書面契約よりも立証が難しい場合があるため、書面契約を作成したほうが、税務調査の際に、真の金銭貸借とみなされます(下記②及び③を充足することを前提とする)。 |
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② 無利子での借入している場合 | 利息部分について、支払いを免除されているのと同じ考えになるため、その利息部分が贈与として取扱われる場合があります。このため、一定の利息を課したうえで借入れたほうが良いと思います。 |
③ 『出世払い』として、返済を先延ばししている場合 | 親子間においては、第三者からの借入と違い、返済能力等が劣っていたとしても『出世払い』などという形で借入ができます。このため、返済能力以上の借入がある場合には、その借入金自体が贈与として取扱われる場合があります。このため、返済能力などを考慮した借入金額と毎月一定額を返済することとしたほうが良いと思います。 |
【5】不動産の贈与
金銭ではなく不動産を贈与する場合、不動産の時価に対して税率を乗ずる必要があります。原則としては、取引価額となりますが、例外として、土地であれば路線価などを用いて価額を求め、建物であれば固定資産税評価額を用いて価額を求めます。
不動産を購入時にかかる印紙税・不動産取得税など、売却時にかかる所得税・住民税など、保有をするときにかかる固定資産税・都市計画税などのほか、受けることのできる控除や特例などを一覧やケーススタディを交えて分かりやすくご案内します。