不動産税金ガイド

3.保有するときの税金

4.賃貸時の不動産所得

【1】不動産所得の概要

不動産を賃貸している場合には、その賃料収入は不動産所得として所得税の課税対象となります。また、その年の所得税額は、不動産所得に給与所得等の他の所得を合算して総合課税とされます。

【2】不動産所得の計算方法

不動産所得の金額=(1)総収入金額-(2)必要経費

  • (1)総収入金額
    総収入金額とは、不動産賃貸借契約によってその年の1月1日から12月31日までの間の収入すべき金額の合計額になります。収入金額に含める時期は、原則として賃貸借契約によって定められた支払日が属する年になりますので、12月31日現在にその年の賃料が未収入であったとしても、12月31日現在までに支払日が到来している賃料については、その年の収入金額に含めなければなりません。例えば、次のようなものが収入金額に含まれます。
    収入金額に含まれるもの
    • ・地代家賃、共益費
    • ・権利金、更新料、礼金
    • ・敷金や保証金のうち返還を要しないもの
  • (2)必要経費
    必要経費とは、不動産賃貸に伴って発生した支出の合計額になります。例えば、次のようなものが必要経費に含まれます。
    必要経費に含まれるもの
    • ・土地建物に係る固定資産税及び都市計画計画税
    • ・事業税、消費税、印紙税、不動産取得税
    • ・損害保険料
    • ・入居者募集に伴う広告宣伝費
    • ・減価償却費、修繕費(資本的支出に該当しないもの)
    • ・不動産会社へ支払う管理手数料、仲介手数料
    • ・賃貸物件取得や管理費等に利用した借入金の利子

【3】減価償却について

建物、建物付属設備、構築物及び器具備品(以下「建物等」)は、時の経過とともに老朽化して価値が減少します。建物等の取得価額をその価値の減少に比例してその使用可能期間に配分してそれぞれの期間の必要経費とすることを減価償却といいます。この使用可能期間に当たるものとして法定耐用年数が法令で定められています。ただし、一定の場合には、建物等の取得に要した費用をその取得価額とせずに、その取得をした年に全額必要経費とすることができます。なお、土地については、減価償却という概念はありません。

  • (1)少額の減価償却資産
    取得価額が10万円未満の場合又は使用可能期間が1年未満の場合には、その取得価額の全額を取得した年の必要経費とする。
  • (2)一括償却資産
    取得価額が10万円以上20万円未満の場合には、その取得価額の1/3の金額を3年間にわたり必要経費とすることができます。
  • (3)少額減価償却資産の特例
    取得価額が10万円以上30万円未満である場合には、その取得価額の全額を取得した年の必要経費とすることができます(年間上限300万円)。ただし、この特例は、青色申告をする中小事業者しか適用することができません。

【4】中古資産を取得した場合の取扱いについて

中古資産を取得した場合にも減価償却をする必要があるのだが、その使用可能期間は法定耐用年数ではなく、その取得した日以後の使用可能期間として見積もられる年数を適用することができます。また、使用可能期間を見積もることが困難な場合には、次のとおりに簡便的に算定した年数を適用することができます。

  • (1)法定耐用年数の全部を経過した中古資産の取得
    その法定耐用年数の20%に相当する年数
  • (2)法定耐用年数の一部を経過した中古資産の取得
    その法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数に経過年数の20%に相当する年数を加算した年数

【5】青色申告の特典について

青色申告を選択すると税務上の特典を受けることができます。ただし、その不動産賃貸が次のいずれかを満たす事業規模である場合に限ります。

不動産貸付けが事業的規模か否か
  • ・おおむね10室以上の貸間、アパート等を貸し付けていること
  • ・おおむね5棟以上の独立家屋を貸し付けていること
  • (1)青色申告特別控除
    青色申告を選択すると、所得から最大65万円を控除することができます。
    要件 控除額
    1
    • ①正規の簿記の原則によって記帳していること
    • ②貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付していること
    • ③仕訳帳等を電子保存していること又はe-taxを使用して確定申告書を提出していること
    65万円
    2 上記①②を満たすこと 55万円
    3 上記①②以外の場合 10万円
  • (2)青色事業専従者給与の必要経費算入
    事業に携わっている家族(青色事業専従者)に対する給与を必要経費とすることができます。
    青色事業専従者給与の特典を受けるための要件
    • ・青色事業専従者給与に関する届出書を税務署に提出していること
    • ・青色申告者と生計を一にする配偶者又はその親族であること
    • ・青色事業専従者が12月31日現在現在において15歳以上であること
    • ・青色申告者の事業に6か月超にわたって専従していること

【6】損益通算について

不動産所得を計算して赤字になった場合には、その赤字を一定の順序で他の所得と通算することができます。例えば、給与所得が400万円で、不動産所得の赤字が300万円の場合には、その年の課税所得は100万円となります。ただし、その赤字のうち、土地等を取得するための借入金の利子に相当する部分の金額等については、他の所得と通算することはできません。

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不動産税金ガイドの内容について
・当サイトの内容は、2023年4月1日現在の法令にもとづいて作成したものです。
年度途中に新税制が成立したり、税制等が変更になったり、通達により詳細が決まったりするケースがありますのでご了承ください。
・税金は複雑な問題もありますので、ケースによっては税務署や税理士など専門家にご相談ください。

不動産を購入時にかかる印紙税・不動産取得税など、売却時にかかる所得税・住民税など、保有をするときにかかる固定資産税・都市計画税などのほか、受けることのできる控除や特例などを一覧やケーススタディを交えて分かりやすくご案内します。

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