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2024.02.08

住宅ローンの金利、2024年はどうなる?

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これまで何年もの間、世間では「引き続き低金利は継続の見込み」という同じような予想が続いたが、とうとう住宅ローンに大きな変化が生じるのではないかと考えている。おそらく一昨年に始まりとなった変化が、2024年は目にはっきりと見え始める年になるだろう。

住宅ローンの金利はどのように決まるか。予測の前提となる5つ要素

金利を決める要素として、一般的には主に3つが挙げられているようだ。それは「景気」「物価」「金融政策」だが、この3つを主な要因とするのは、金利の中でも特に「短期金融市場の短期金利」だろう。

一方の長期金利や住宅ローン金利は、さらに別の要素の影響を受けると考えている。住宅ローンにおいては短い期間で動く変動金利と、長い期間で決まっている固定金利があるため、上記3つに加え、さらに「海外金利」「金融機関の営業戦略」についても考察する。これら5つの要素の変化が、来年の金利を動かすと予想している。

現在でも各メディアではさまざまな予測がなされているが、本記事の見通しにおいては、以下の状況にあるという前提で考察する。

変動金利は二極化。金利上昇が始まる金融機関も

2023年12月現在において、短期金利は「景気」でも「物価」でもなく、「金融政策」によりその金利が決まってきたと言える。

GDP成長率でみれば、2023年は実質1.5%で「景気」はよかったといえるが、短期金利はその成長率を全く反映しなかった。また、「物価」も消費者物価指数は2%を超えていたが、それも短期金利には全く影響を与えなかった。

つまり、日本銀行は、景気や物価に関係なく短期金利をマイナスに維持するための政策をとっていたと言える。目標はあくまでも物価の「上昇率」であり、GDP成長率が示す経済成長率は目標として掲げられていなかった。結果として、10年間は目標である物価上昇率2%は達成できず、更に悪いことには潜在的な成長率を押し下げてしまったことから失敗だったと言えるだろう。物価上昇と経済成長はセットで考えられることが多いため、潜在成長率が下がったのは日本銀行にとっても予想外だったはずだ。

本来であれば、金融政策は10年間も目標が達成できず、成長率を押し下げる失敗を犯したのであるから直ちに日本銀行の金融緩和政策の解除をすべきだと思われるが、金利の急上昇はかなり日本経済の大きなダメージとなる可能性が高いため、緩やかに金利を上げていくことになると思われる。

2024年は、日本銀行が金融緩和政策の修正を進めていけば、その内容が金利を決定づける大きなポイントとなるだろう。現在、きっかけになりそうな事象は「マイナス金利の解除」「YCC(イールドカーブコントロール、日本銀行が2016年9月に導入した大規模金融政策の枠組みのひとつ)の修正または撤廃」などが取り沙汰されている。

「マイナス金利の解除」が行われると、短期金利は0%前後まで上昇するが、「ゼロ金利の解除」までは踏み込まないだろうと予想され、それ以上の金利上昇の可能性は低いと考える。上昇の時期としては来年の夏までの間にあると予想している。

「YCCの修正」は、短期金利を0%程度に維持する程度の修正が行われることを想定しているが、撤廃まではないだろう。時期としては、「マイナス金利の解除」と同時期を想定する。

つまり、2024年8月までの間に、金融緩和の修正があり、短期金利が0~0.5%まで上昇する可能性があると考えている。

これらの金融政策の修正を受けて、金融機関も本格的に金利を変更することになるだろう。ここで「金融機関の営業戦略」が関係してくる。特に、預金金利と短期プライムレート(金融機関が優良企業向けの1年未満の貸出に適用する際優遇金利)が変化するかどうかが鍵となる。

2023年12月からメガバンクを中心に預金金利の利上げが始まった。2024年はこのような動きが広がり、短期プライムレートも上昇すると見ている。上昇幅は0.2~0.5%程度、変動金利も同じくらい上昇するだろう。

ただ、すべての金融機関がこのように金利を上昇させるとは考えていない。現在、auじぶん銀行、住信SBIネット銀行など、変動金利で熾烈な金利競争を行っている銀行は、来年も金利を低いまま据え置く可能性が高いと考えている。

一方、みずほ銀行、楽天銀行などの住宅ローン業務へ注力しなくなってきた金融機関は、変動金利の金利を引き上げていくと予想する。具体的には、日本銀行の金融政策の修正を受けた金利上昇と、「金融機関の営業戦略」の変更にもとづく金利上昇により、0.2~1.2%程度の上昇を想定している。

以上から来年は、変動金利において金融機関の分断が起きて、二極化が起こると予想する。

固定金利は2%を超えるも、上昇は一定のところで止まると予想

2023年12月時点において、長期金利は先の5つの要素のうち「物価」「海外金利」「金融政策」の影響によって金利が決まってきたと見ている。

長期金利においては「景気」の動向が金利に影響を与えてきたとは言えない。しかし、「物価」については、その上昇時期と長期金利の上昇のタイミングがある程度連動しているように見えるため、影響があったと言ってよいと考えている。

「金融政策」については、YCCの修正及び柔軟化により、長期金利の上昇が少しずつ進展した。長期金利の上昇は、国内の要因だけではなく、「海外金利」の上昇も要因になったと見ている。

2024年は、前述のように「マイナス金利の解除」「YCCの修正または撤廃」により、長期金利の上昇がまた一段と進展すると考えている。現在、実質的にYCCは長期金利については無力化されているが、日銀が金利の急上昇への対策としてYCCを残すという選択を考えているのではないだろうか。

加えて10年国債は1%を超える可能性があると予測する。ただ、1%前後の10年国債については、機関投資家による購入意欲が強いと予想され、一方的な上昇はないだろう。また、欧米の長期金利の低下傾向がでてくると、日本の金利上昇も限定的となるのではないかと考える。

これらの金利の上昇は、住宅ローンの固定金利に大きな影響をあたえる。2023年は、フラット35の基準金利は2%未満にとどまっていたが、来年は2%を超えるような上昇が起きると考えている。民間金融機関の長期固定金利も上昇はするが、長期金利の動きが止まれば、同じように金利がどこかで止まり、3%を超えるようなことにはならないだろう。

2024年はエポックメイキングな年に。金利期間別の検討が必要

2024年は変動金利において、とうとう「金利のある」世界の扉が開くエポックメイキングな(その以前と以後で大きな社会的変化を与えるような)年になると考えている。ただ、すべての銀行が金利を上げる訳ではなく、銀行が二極化し、上げる銀行と上げない銀行に分かれることを述べた。

2023年は、auじぶん銀行、住信SBIネット銀行、SBI新生銀行、PayPay銀行、ソニー銀行、三菱UFJ銀行、りそな銀行などが更に変動金利を引き下げたが、このような銀行の半分くらいは、住宅ローンの取引を増やそうとせず、国債や事業融資等に資金を振り向けるのではないかと思う。

つまり、変動金利を上げる金融機関は住宅ローン以外の運用先に資金を振り向けるためで、金利を上げない金融機関は運用先を見つけられない金融機関となるのだろう。

また、地方銀行などが残高確保のため、相対的に金利水準を低くする動きが拡大する動きが広がるかもしれない。固定金利といっても、さまざまな金利が提示されることになるので、「固定金利」全般についての検討は意味がなくなり、「●●銀行の固定金利」と個別の金融機関の金利について検討することが必要になるだろう。

2024年のリスクシナリオも押さえておこう

2024年の金利の動きで最もリスクと考えるのは、以下のシナリオだろう。
・日本銀行の金融緩和政策の修正が遅れること:金利上昇の動きが鈍化
・欧米の金利低下の動きが起こらない:金利上昇が加速
・物価上昇が更に進展する:金利上昇が加速
・日本銀行に対する信用不安:金利が急上昇

これらはテールリスク(発生する確率が非常に低いリスクにより、暴落が発生すること)として、万一このようなことが起こった場合にどのような対策をとるのか、本記事の読者には検討をしておいていただきたい。

淡河範明(おごう・のりあき)

淡河範明(おごう・のりあき)

ホームローンドクター株式会社代表取締役。
住宅ローンアドバイザー。銀行、外資系証券会社を経て、1997年に住宅ローン専業のコンサルティング会社の同社を設立。家を購入するための資金計画づくりと住宅ローンの選択について、金融知識と実務経験を活かし、将来の生活にゆとりを築くための設計をするサポートしている。住宅ローンの著書5冊、日経電子版コラムの執筆など。

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