2022年の近畿圏平均は24.02とやや低下するも24ポイント台は維持
マンションPERが最も低かった駅は「鷹取」の11.54、最高駅は「神宮丸太町」の45.31
2022年における新築マンションPER(=マンション価格が同じ駅勢圏のマンション賃料の何年分に相当するかを求めた値)の近畿圏平均は24.02(対象99駅)と前年から0.06ポイント低下したものの、昨年と同じく24ポイント台を維持している。
新築マンションの平均価格(70m2換算)は前年比+0.7%の5,554万円、分譲マンションの平均賃料(70m2換算)は+1.5%の194,469円と揃って上昇、今回は賃料の上昇率が上回ったことで回収に要する期間は前年に比べて僅かに短くなった。
ただし、水準自体は直近の最高値を大幅に更新した2021年と大差なく、依然として賃料見合いで割高な状況が続いている。なお、今回はマンションPERの最大値が首都圏と遜色ない45.31まで上昇、2012年に記録したピークを2ポイント以上も上回った。
各駅のマンションPERを色分けした路線図を見ると、青色の駅は近郊~郊外エリアのみならず大阪市内や神戸市内でも散見されているが、後者に関しては純粋に値頃な価格で販売されているわけではなく、そのほとんどは高額な賃料事例の流通によって"見かけ上"割安感が強く示されているケースとなっている点には留意する必要がある。
表面利回り換算で5%以上を維持している緑色や比較的割安感がある黄色は揃ってシェアが縮小しており、一般的な勤労者が新築マンションを選択・購入できるエリアは一段と狭まってきている。
近畿圏においても今や表面利回り換算で4%を割り込む駅は珍しくなくなってきている。今回、茶色に移行した駅のほとんどは大阪市内や北摂~京阪エリアに位置しており、新型コロナ禍の下でも底堅い実需・投資ニーズを背景に販売価格が着実に押し上がってきている。
近畿圏で最もマンションPERが低かった(割安感が強かった)駅は昨年と同じくJR神戸線「鷹取」の11.54で、賃料換算での回収期間は近畿圏平均より12年以上も短い。当該駅での新築価格と賃料事例は、今回も1つの物件から発生している。
新築マンションの平均価格は3,723万円で、神戸市中心部寄りに隣接する「新長田」(4,397万円)に比べて600万円以上も低い水準に留まっている。
一方、月額賃料は268,758円と「新長田」(162,199円)をはるかに上回る水準を示している。「鷹取」での賃料事例は全て最上階のプレミアム住戸から発生したものであり、隣接する駅と比べて値頃な販売価格であることには違いないが、賃料見合いでの割安感に関してはあくまで参考値として捉えておくべきだろう。
「鷹取」「JR小倉」「湊川公園」「コスモスクエア」「摩耶」を除く15駅に関しては、いずれも賃料事例が発生している物件の方が最寄駅に近い立地であったりタワー物件を多分に含んでいるため、それぞれのマンションPERを幾分か割り引いて見る方が妥当である。
一方、最もマンションPERが高かった(割高感が強かった)駅は京阪鴨東線「神宮丸太町」の45.31で、賃料換算では近畿圏平均と比較して21年以上も余計にかかる計算となる。
今回対象となった新築マンションは最寄駅から徒歩圏内で、かつ京都御所と鴨川の間を南北に通る河原町通沿い(鴨川の西側エリア)に立地するという希少性の高さもあって、平均価格は周辺の「京都市役所前」や「丸太町」に比べて1,000万円以上も上回っている。
当該駅勢圏においては鴨川を挟んだ東西エリアで賃料相場に大きな隔たりがある。今回賃料事例が発生していた物件は鴨川の東側エリアの徒歩圏内に位置しており、相対的な賃料水準の低さからマンションPERが実態よりも上振れてしまった感は否めないが、周辺相場や賃料水準を度外視するほど強気に設定されたものとは言い難い。
ランキング下位駅においては今回もターミナル駅であるJR京都駅と京都市中心部を結ぶ京都市営地下鉄烏丸線から「今出川」「丸太町」「五条」「烏丸御池」の4駅が登場してきており、平均価格は軒並み7,000万円台~8,000万円台と他のランキング下位駅に比べて相対的に高水準となっている。
また、大阪市中心部に位置する「大阪」「天王寺」「西長堀」では新たに分譲されたタワーマンションが平均価格を押し上げていた。当該物件からの賃料事例の流通はまだ確認されておらず、来年以
前年に比べて最も割安感が強まった駅はJR神戸線「元町」で、賃料換算で回収期間は11年近くも短くなった。これは、新築マンション価格が約1千万円も水準を下げたことに加えて月額賃料が大幅に上昇したためであるが、価格については2022年に新たに分譲された徒歩12分の物件による影響が大きい。
一方、月額賃料に関しては今回新たに対象として加わったのが徒歩3分の駅近立地であったり、旧居留地に位置する準タワー物件ということもあり、それぞれの賃料水準は20万円を大きく上回っていた。特に、後者に関しては高層階に位置する200m2前後のプレミアム住戸から高額な賃料事例が数多く発生しており、駅平均を押し上げる一因となった。
掲出した20駅の多くが前年に比べて賃料水準を押し上げており、「元町」と同じく月額賃料が10%以上も上昇した駅は7駅(「茨木市」「北千里」「堺」「福島」「天満橋」「四天王寺前夕陽ヶ丘」「塚口」)にも及ぶ。
一方、前年から最も割高感が強まった駅はJR京都線「高槻」で、2021年に比べて約9年も長期化した。賃料水準が低下したことも一因に挙げられるが、やはり平均価格が大幅に上昇した影響が大きいとみられる。
今回は新たに分譲された物件のうち、2物件は駅至近でいずれも7,000万円台、残る1物件も徒歩圏内で大手デベロッパーが手掛けたということもあり6,000万円台と、前回から継続販売されている物件価格を大幅に上回っていた。
また、ほとんどの駅では「高槻」と同じく好立地や高スペックの物件が新たに分譲され始めたことに起因して、新築マンションの価格水準が大幅に上昇している。なお、「池田」「二条城前」「甲子園」「西院」「山田」の5駅における賃料低下は物件バイアスによるもので、実質的な割安感は前回からほとんど変化していないものとみられる。
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